Fate/stay night : 2.5i+3.10i+BERSERK = The Future Remember 作:形のない者
俺は――――
「判った。イリヤと一緒に寝る」
「わーい! やったー! 実はね、シロウ。わたし、家族と川の字になって寝るのが夢だったんだー!」
……そうか。それは良かった。
それからお付きのメイド二人は、電気を消したあと寝室を出て行った。
ちなみに今のイリヤは下着姿になっている。
いきなり目の前で服を脱ぎだされた時はびっくりして、本当に心臓に悪かった。
いや、イリヤって案外、大胆なんだなって意味で……。
そんなイリヤは、肌が少し透ける白いブラウスを一枚だけ着ている。
寒くないのだろうかとは思ったけど、ベッドに触れてみたら結構暖かかったので大丈夫だと判断した。
……俺とイリヤは、一緒のベッドに入る。
「ねーシロウー。腕まくらして?」
「はいよ」
右腕を差し出して、イリヤの小さな頭がそこにのっかる。
……近い。丸くうずくまったイリヤの頭が、だいたい俺の顎らへんに来ている。
つまり俺の胸に、イリヤの吐息が掛かる形になる。
「……おやすみ、シロウ」
「あぁ、おやすみ」
――はぁ。今日もまたいろいろあって疲れた。
というかこの頃、毎日がいろいろあったという状況の連続ではないか?
「……ふう……」
とにかく全身の気怠い感覚を拭うため、さっさと眠ることに集中する。
「…………」
――すると集中するあまり、なるべく感じないように気をつけていた事が、逆に感じやすくなってしまった。
それはと言うと、なんとイリヤの寝息が、自分の胸に掛かっているのだ。
恥ずかしながら、それだけで俺の鼓動は早まっていく――――
――――はたして、そのままの状態がどれくらい続いただろうか。
まだ五分? もう十分?
「……シロウ。すごいドキドキしてるね」
起きていたのか、イリヤが小さな声で話しかけてきた。
それからずいっと身を乗り出して、イリヤは自分の体を俺の体に密着させた。
それは抱きついてきたと言ったほうが良い。
横向きの抱っことでも言おうか。コアラみたいに抱きつく姿は、本当に妹のように愛らしかった。
「……ねぇ、シロウ」
「……なんだ?」
「シロウは、わたしのこと、好き?」
「そりゃあ――――」
好き、だけど。……それは、そのまま好きと口にしていいものか判らなかった。
こういうのは一瞬でも迷ってしまうと、なかなか答えられないものだ。
そうやって俺が迷うさまを見て、イリヤはくすくすと笑っている。
「好きなの?」
ここで嫌いなの? と続かないあたり、イリヤは判って訊いている。
まったく卑怯だと思うんだが、そういうの……。
……だが、ここは兄貴としての甲斐性を見せてやらなければなるまい。
「――――あぁ、好きだぞ。俺はイリヤの事が好きだ」
「……んっ」
それきりイリヤは黙り込んだ。
どう受け止めたのかは判らない。判らない以上、俺の勝手な判断で、何かをしてしまうわけにはいかなかった。
――あくびをして、目を瞑る。
……。
これで、次の日に目を覚ましたら、イリヤと一緒に家に帰るんだ。
…………。
…………――――、
――――ふいに、ほっぺにこそばゆい感触を覚えた。
それがなんであるかに、すぐに気がついた俺は――――
「――って、うぇえええい?!」
ガバッと顔だけ起き上がってみる。
すると枕の上には、身を震わせて笑いをこらえているイリヤの姿があった。
「……い、イリヤ……お前、いま――――俺にキスしただろ?」
「くっ……ふふふっ……」
「まったく。驚かせやがって、この!」
「あ! あははは! や、やめてシロウ! ごめんなさーい!」
「悪さをするいたずら娘には、こちょこちょの刑だ!」
しばらくじゃれあって、互いの息が切れた頃には、もう俺たちは眠たくて仕方がなくなっていた。
「……んぅ。こんどこそ、おやすみなさぁい……」
「あぁ、おやすみ」
そこで俺は最後の仕返しとして、イリヤのおでこにキスをしてから、何事もなかったかのように狸寝入りに入る。
「――――――――」
……ふっ。目を瞑っていても判るぞ。
今のイリヤは、おそらく赤面しているに違いない。
そう思うと、本当にイリヤが赤面しているのかが気になったので、ほんの少しだけ目を開き、今のイリヤの様子を確認してみると――――
「…………、」
赤ら顔で口を閉じ、瞳孔は見開いていた。
それは、極度の羞恥を表している。
「――――ぁ」
さらに心なしかイリヤの体が熱くなっている気がして、トクットクッと、小さな鼓動も聞こえているような気がした。
……そんなイリヤの体を、優しく抱き寄せる。
「ぁ――シロウ……」
これで思う存分、お互いに恥ずかしがった。もう遠慮する事は何もない。だって家族なんだから。
あとは、本当の家族のように。兄妹姉弟、仲良く眠りに就いて、一緒に朝日を拝むだけだ――――
/了
甘い。
いえいえ、健全なじゃれあいです。他人に見せられないようなじゃれあいでも、全く以て健全です。
というか、兄妹や姉弟のプロレスって、大体こんな感じでしょう?(兄妹喧嘩をしたことがない人感)