お昼はカレーだったらしい。
私は霊夢が半ばまで食べ終わるのを待ってから、スプーンを使ってカレーを食べる。
「まあ、こんな物かしらね?」
霊夢は私が食べ終えたカレーの器を見て、そう言うと「ごちそうさま」と呟いて手を合わせる。
……うむ。
見事な食いっぷりだった。
「まあ、不味くはなかったわ。もっとも、以前の咲夜の料理程じゃなかったけどね?」
「……」
その言葉に咲夜さんは意気消沈しているが、霊夢はそんな事関係ないと言わんばかりに続ける。
「そもそも、統合失調症……だったっけ?
よく解らないけど、あんたの気にし過ぎなんじゃないの?」
「霊夢。私も統合失調症だから言うけれど、そんなに単純な物じゃないんだ。
統合失調症ってのは再発の恐れもある繊細な精神の病なんだよ」
「ふうん。あ、そう」
霊夢は興味無さそうに私の言葉に素っ気なく答える。
こう言うところは健全者である人間と発症した事のある人間の認識の違いだろう。
その違いはなかなか、理解されないものだ。
ーーと、霊夢が何かを思い出した様に私に振り返る。
「そう言えば、紫が言ってだけど、貴方、あのスペルカード擬きを貰ったそうね?」
「え?ああ。白符だったかな?
一応、貰ったけど……」
「それじゃあ、私からは幽霊避けの御札を渡しておくわ」
そう言うと霊夢は巫女服の懐から一枚の御札を取り出して、私に手渡す。
……これ、元気って文字を分解しただけじゃないかな?
こんなので効果あるのかな?
「貴方は少なからず、信仰するモノがあるみたいだけど、この幻想郷の幽霊には質が悪いのもいるから念の為に持って置きなさい」
「あ、うん。ありがとう、霊夢」
「気にしなくて良いわ。ご馳走にもなったしね。それじゃあ、私はこれで失礼するわね」
そう言うと霊夢は立ち上がり、食堂を後にする。
やっぱり、霊夢ってツンデレなだけなんじゃないか?
私はそんな事を思いながら、咲夜さんに顔を向ける。
「それじゃあ、一息吐いてから仕事に戻りましょう」
「え?ええ」
咲夜さんは上の空で私の言葉に頷く。
霊夢が言った事を気にしているのかな?
私が咲夜さんの事に「気にしなくて良いですよ」と励まそうとすると突如、地下から轟音が響く。
「な、なんですか!?地震!?」
「……ああ。また魔理沙(まりさ)の様ですね」
「魔理沙って、あの霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)ですか?」
「ええ。その魔理沙です。恐らく、また本を盗みに来たのでしょう。追い払って来るので少々お待ち下さい」
咲夜さんはそう言うと指を鳴らし、忽然と消える。
一人取り残された私はとりあえず、咲夜さん、霊夢と私が食べ終えて空になったカレーの器とスプーンを台所で洗う。
ーーと洗い終えた所で突然、食堂の扉が開かれた。
「くそっ!なんか、この館、狭くなってないか!?こんな事なら真っ直ぐ館から逃げるんだったぜ!!」
私が振り返るともうもうと上がる煙の中から、傷だらけの白いエプロンと黒い服を着て、魔法使いが被る様な帽子を頭に乗せた金髪でウェーブの掛かった少女がむせながら飛び込んで来る。
そこで、その少女と目が合う。
ああ。この外見と状況からして、この娘(こ)が霧雨魔理沙か……。
「……誰なんだぜ?」
「陰猫(改)です。宜しく、魔理沙」
「ん?なんで、私の事を知ってるんだ?」
「あっちの世界でも有名ですからね。名前位は私も知ってますよ」
「そうかそうか!私も有名人になったんだぜ!」
魔理沙は起き上がりながらそう言うと胸を張る。
「まあ、紅魔館では白黒の泥棒だとも聞いてますが……」
「泥棒とは心外なんだぜ!私は死ぬまで借りているだけだ!
あと、私にそんな堅苦しい呼び方は良いんだぜ!
私も陰猫って呼ぶからな!」
元気良く魔理沙は私に叫ぶと何かを向ける。
「見た事ないけど、陰猫って言ったか?ーーお前も紅魔館の奴なんだろう?」
魔理沙がそう言うとその八方形の何かが展開した。
「なら、会って早々なんだが、先手必勝なんだぜ!!」
それがミニ八卦炉と言う巨大なレーザーを打ち出す物だと解った瞬間、魔理沙の代名詞、恋符"マスタースパーク"が放たれる。
「陰猫さん!逃げて!」
慌てて食堂に飛び込んで来た咲夜さんの叫びを聞きながら、私は避けれないと悟る。
そこで咄嗟に私は紫さんとパチュリー様の言葉を思い出す。
「……風魔」
私はそう呟きながらギュッと瞼を閉じ、これから来るであろう衝撃に備える。
そしてーー
「我は魔を防ぐ風なり」
聞き慣れた声ーーいや、イメージにあった声が響き渡り、私は目を開けて黒いロングコートにサングラスを掛けた一見怪しい男が佇み、両腕を突き出して魔理沙の放つマスタースパークを四散して弾いているのを目の当たりにする。
その男が誰なのかを私は知っている。
当たり前だ。それは私の考えたキャラクターなのだから。
「風魔」
私がもう一度、その名を呟くと風魔はサングラス越しに此方を振り返って笑う。
そして、マスタースパークをなんとか相殺してボロボロになった両腕でロングコートの懐から取り出した一対のガンブレードを魔理沙に向ける。
「悪いが、これ以上はやらせない」
「私のマスタースパークを防ぐなんてやるな!お前何者なんだぜ!?」
「俺の名は風魔。しがないトレジャーハンターだ」
風魔は弾丸を発射しながら魔理沙に名乗る。
「おっと!」
魔理沙は風魔の放った弾丸を避け、風魔に対抗する様に魔法の弾幕を発射する。
それを巧みに避けながら風魔はガンブレードから弾丸を放ち続けて、素早く再装填を行う。
私は二人の弾に当たらぬ様に身を屈めながら、咲夜さんのいる食堂の入り口の方へと避難して二人のやり取りを見守る。
風魔の弾丸が魔理沙に当たらないのは、風魔の腕が悪いからではない。
寧ろ、マスタースパークのダメージがあるのに彼女を的確に捉えている辺り、大したものだ。
だが、魔理沙の反応速度がそれ以上に速い。
「弾幕勝負で私に挑んで来るなんて100年早いんだぜ!」
「そうか。だが、伊達に俺も修羅場は潜ってないんでな?」
会話を交えながら二人の攻防は数分にも及んだ。
「おっとっと!なかなか、やるな!
だが、悪いが此処までだ!弾幕はやっぱり、パワーなんだぜ!」
魔理沙は立ち止まりながら、そう言うと再びマスタースパークを放とうとミニ八卦炉を構える。
「我は魔を払う風なり」
そのミニ八卦炉が発射する為に展開されるそれよりも早く風魔が"あの言葉"を呟くと身体が青い光を放ち、瞬時に魔理沙の眼前まで迫るとミニ八卦炉をガンブレードの刃で弾き飛ばし、魔理沙のこめかみにもう片方のガンブレードの銃口を突き付ける。
あまりに突然の出来事に放心する魔理沙。
「チェックメイトだ、霧雨魔理沙」
「……お前、何をやったんだ?今の魔法だろ?」
「悪いが、陰猫を傷付ける奴に種を教えてやるほど、俺は甘くない」
風魔がそう言うと悔しそうに瞼を閉じる魔理沙に引き金を引こうとする。
「風魔、もう良い。魔理沙を殺すな」
「……解った」
私がそう言うと風魔はガンブレードをしまい、魔理沙の盗んだ本を拾う。
「ほれ」
咲夜さんに本を投げ渡すと最期の瞬間を覚悟していた魔理沙がキョトンとした顔をする。
それに対して風魔はサングラス越しに魔理沙を見下ろして苦笑した。
「陰猫に感謝するんだな?お前を殺すなと命令したんだからな?」
そう言って風魔は此方を振り返り、もう一度だけ笑うと空気に溶ける様に消える。
「なんだったんだ、あの風魔って奴は?」
「風魔は私の作品の登場キャラクターだよ」
「作品?登場キャラクター?」
私は魔理沙にそう告げると胸元が熱くなるのを感じ、懐のスペルカードが一枚、灰になって消えるのを見詰める。
多分、これが紫さんの言う私だけの白符の使い方なのだろう。
ーーと、そこへ息も絶え絶えの小悪魔さんとパチュリー様が入って来た。
「はあ……はあ……。やっと追い付いたわ、魔理沙」
「……」
「さあ、魔理沙。本を返して頂戴」
「パチュリー様、これを……」
そう言って、パチュリー様が放心する魔理沙にそう言えばと咲夜さんが割って入って、パチュリー様に本を差し出す。
「あら?咲夜さんが取り返してくれたの?」
「いえ、突如、現れた男性が魔理沙を無力化しまして……」
「突如、現れた男?」
パチュリー様は咲夜さんから本を受け取りながら、しばし考え込むと私に顔を向けた。
「早速、召喚したのね?」
「あ、はい。出来ちゃいました」
私がそう言っている間に未だ放心している魔理沙を小悪魔さんが簀巻きにして行く。
「魔理沙を無力化するなんて凄いわね?何を呼び出したの?」
「あ、はい。風魔と言う小説家でなろうで書いた私の作品の登場キャラクターを……」
「風魔、ね?名前からして忍者かしら?」
「いえ。神統暦と言う私が作った世界のトレジャーハンターですね」
「私も見てみたかったわ」
「あ、あんなのチートだ!天狗よりも速かったんだぜ!」
ようやく、放心から解き放たれた魔理沙は私とパチュリー様の会話に割って入りながら叫ぶとジタバタともがく。
「ああ。あれは瞬撃の型と言う魔力を四肢に集めて素早さと攻撃力を高める型だよ」
「ふむ。イメージ的に命蓮寺(みょうれんじ)の聖白蓮(ひじり びゃくれん)が使う身体強化の魔法みたいな物かしら?」
「風魔はただの人間です。ただ、度重なる修行の末に7分30秒程、瞬撃の型を維持出来る様になりました。
その間の素早さと威力はサイボーグやアンドロイドととも、まともに戦える程のものです」
「サイボーグやアンドロイドね?
つまり、発動中は鬼にも匹敵する力を得ると……中々興味深いキャラクターね?今度、私にも見せてね?」
「はい。解りました」
「それじゃあ、私は魔理沙から他の本を返して貰うから、これで失礼するわ」
そう言うとパチュリー様は小悪魔さんともう一人の髪とスカートの短い小悪魔さんーー通称『こあ』さんと『ここあ』さんだろうーーと一緒に「もう一回やらせろ!」「次は勝つんだぜ!」と簀巻きにされながらも何度も繰り返し叫ぶ魔理沙を担いで部屋を後にする。
そんなパチュリー様達を見送ると咲夜さんが私に申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ありません、陰猫さん!私が不手際を起こした為に貴方を巻き込んでしまって!」
「気にしないで下さい、咲夜さん。それにあれは不可抗力ですし……」
「ですが、今日だけで何度、陰猫さんにご迷惑を掛けた事か……これでは紅魔館のメイド長失格です」
「そんな事ありませんよ。それになんのかんの言っても咲夜さんは私をフォローしてくれてるじゃないですか?
もっと自信を持って下さいよ?」
「……陰猫さん」
「さっきは言えませんでしたが、霊夢の言う事も気にする必要はありません。
健全者にはなかなか、理解されないものですから。
まずは頑張り過ぎず、病である自分を受け入れるところから始めましょう」
「はい!」
「さ、そろそろ次の仕事に移りましょうか?」
私と咲夜さんと笑い合うと仕事を再開する。
【風魔】
小説家になろうで陰猫(改)になって間もない時に書いた長編の処女作である"トレジャる?"の主人公の一人
不定期更新ながら同じく小説家になろうで書いている"教えて、風魔さん"の解説もやっている
その怪しげな黒いロングコートとサングラスと言う格好とは違い、根はいい人
戦闘にも長けており、攻めの為の瞬撃の型と守りの為の防壁の型を修得している
その他にも着弾時に爆発するバーストバレットや着弾箇所を中心に無数の銃弾が体内から飛び出すレギオンバレット等がある
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
-
見たい
-
見たくない