「あらあら。行っちゃったわね?」
「行っちゃったわね?ーーじゃないですよ。変な噂が立ったら、どうするんですか?」
「それが狙いよ」
「え?」
「非力な貴方を守るなら後ろ楯が必要でしょう?
だから、私と何らかの接点があれば、大抵の妖怪は襲って来ないわ。
何せ、私は幻想郷の大妖怪にして妖怪の賢者様なのだから」
「……成る程。つまり、私の身を守る為の芝居だったと?」
「まあね?」
紫さんは片目を瞑って見せるとクスクスと笑う。
「私は本当に付き合っても良いのだけどね?
たまには非力な人間と付き合うのもアリだと思うし、何より私が陰猫さんのファンなのだから」
「あ~……お気持ちだけ受け取って置きます」
「あらあら。本当に連れないわね?」
紫さんは私の言葉にそう言うと真剣な表情をする。
「まあ、これで貴方は幻想郷でも一目置かれる。良い意味でも悪い意味でもね?」
「? それはどう言う意味で?」
「熱狂的な私の信者に狙われるって事よ。
もっとも、私の夫に手を出す命知らずは幻想郷の住人にはいないでしょうけどね?」
「じゃあ、狙われるとしたら……」
「幻想入りした能力を持つ人間か、私の裏を掻きたい妖怪達ね?」
私はその言葉にしばし考え込んでから紫さんに尋ねた。
「それって逆に危ない事になるんじゃないですか?」
「まあ、どう転ぶかは運次第よ」
「いや、運次第って……」
「大丈夫♪大丈夫♪
明日には此処に幻想郷屈指の実力者が三人も集まるんだから♪」
「……まあ、確かに」
私は何処か釈然としない気持ちで頷くとスキマを作る紫さんを眺める。
「余程大きな出来事でも起きない限りは大丈夫でしょう。それじゃあ、また明日ね?」
「あ、はい。また」
私は軽く手を振るとスキマに消える紫さんを見送る。
スキマが閉じると私は背筋を伸ばし、ベットに横になった。
今日一日、色々あったな。
ーーと開かれたままだった扉から咲夜さんが現れる。
私は起き上がって咲夜さんを見詰めた。
「咲夜さん、どうしました?」
「就寝前に失礼しました。入浴の時間ですので、お入り下さい」
「あ、はい」
「それからまかないも用意されています。そちらも食して下さい」
「解りました。では、まかないから頂きます」
「ええ。では、食堂へどうぞ」
私は咲夜さんの言葉に頷くと食堂へと向かう。
そこにあったのは白身魚のフライが入った海苔弁当だった。
しかもコンビニの弁当ではなく、手作りの奴だ。
私は頭を掻くと箸を使い、白身魚を裂いて、それを口にする。
手作りだからか、揚げたてで美味しい。
しかも丁寧に骨抜きされている。
うん。温めたコンビニのフニャフニャの白身魚のフライよりも普通に美味しい。
小悪魔さん、本当に料理が得意なんだな。
私はそんな事を思いながら、白身魚の海苔弁当を食べ終えると空になったお弁当箱を片付けてから浴室へと向かう。
おおっ!広い!
脱衣場で服を脱ぎ、浴室に入ると中は銭湯の様に広かった。
しかもバラか何かのエッセンス使ってるのか、良い匂いがする。
私は体と髪を洗うと湯船に浸かった。
「は~」
この心臓に負担が掛かる感触さえ無ければ、気持ち良く入れるんだがなぁ。
私には少々、お湯が熱かったらしい。
私はそんな事を考えながら徐々に身体が慣れて負荷が掛からなくなるまで湯に浸かり、気持ち良く入浴を楽しめるまでになるまでお風呂を堪能した。
一通り、入浴を楽しむと安全カミソリで髭を剃り、私は浴室を出て身体を拭く。
ーーと普段着に着替えているところで誰かが入って来た。
入って来たのはなんと美鈴さんだった。
「あ、陰猫さん。どうも」
「め、めめめ美鈴さん!?なんで、こんな所に!?」
「いや、門番しているから必然的に私が一番最後にお風呂に入るんですよね?」
「いや、そうじゃなくて!」
私は頭(かぶり)を振って叫び、ある事に気付く。
そう言えば、此処、浴室とは書いてあったが、男湯とは書かれてなかったな。
つまり、此処は混浴か!?危なっ!!
そう思っていると美鈴さんが私の事をジッと見て来る。
「陰猫さん、洗いが足りないんじゃないですか?
まだちょっと垢が付着してますよ?髭も少し残ってますね?
なんなら、私が身嗜みを整えて上げましょうか?」
「いや、結構です!ーーと言うか、男に対して抵抗ないんですか!?」
「あはは。大丈夫ですよ。
私、こう見えても強いですから、貞操を守る位なら、なんとでもなりますし……」
「いやいや、それ以前に男湯と女湯を分けましょうよ!」
「いや、だって、空間を縮小しちゃったから混浴になっちゃった訳で……」
「そ、そうなんですか!?な、なら、個室のシャワーとかはないんですか!?」
「ありますよ。咲夜さんもお嬢様達もそちらを使ってます」
「なら、美鈴もそちらを使って下さい!」
「え~。でも、私、此方の湯船に芯まで浸かるのが好きなんですよ。
それに私の入る時間になるとみんな、入り終わった頃ですから、広い浴室を独り占め出来るし……」
「いやいや!それ以前に女である自覚を持って下さい!
不埒な輩が入ってたら、どうするんですか!?」
「いや、だから、そんな輩に私は負けないと言ってるじゃないですか~?」
なんか、美鈴さんと押し問答して入浴したのにドッと疲れた。
ーーと視線を感じて、そちらへ顔を向けると先程、去って行った筈の文が黒い手帳を手にペンを走らせていた。
「……何してるの、文?」
「いや~、コメントを聞き忘れたんで戻って来たら、まさか、もう他の女性に手を出していたとは……」
「いや、出してないからね?」
「見出しは"大妖怪の夫、まさかの二股"ですかねえ」
「……風魔」
私は迷わず、スペルカードを使い、風魔を召喚する。
「ん?それは例の白符と呼ばれるスペルカード擬きですか?
そんな使い方があったとは驚きですね?
でも、そのスペルカードを使った位で私と弾幕勝負でもするつもりですか?
生憎とただの人間の作った傀儡(くぐつ)に弾幕勝負する程、私は愚かじゃーー」
「我は魔を払う風なり」
文の言葉を遮り、風魔が瞬撃の型に移行して青い光を放ちながら文の背後に瞬時に回り込み、その両腕を掴んで捕らえる。
「あややっ!?なんですか、この傀儡!?天狗の私が後ろを取られるなんて!?
しかも、油断していたとは言え、私が目視出来なかったとは!?」
「悪いが、この手帳は没収だ」
「ちょっーー何するんですか!私の商売道具なんですから、返して下さい!」
そんな文の言葉に風魔は此方を見て、どうするかと言う顔をサングラス越しにするので、私は首を左右に振った。
「残念だが、駄目だそうだ」
「そ、そんな~」
風魔は文から手帳を取り上げると黒いロングコートの懐にしまう。
「それで?こいつはどうする、陰猫?」
「……ポイしちゃって」
風魔は私の言葉に頷くと残像を残して消えた。
想像通りなら紅魔館の出入口から文をポイと放り投げただろう。
本当に今日は色々と疲れる一日だな。
そんな事を考えながら美鈴さんに視線を移すと美鈴さんが丁度、ズボンを脱ぐところだった。
「ちょっーー何を脱いでいるんですか!?」
「良いじゃないですか。一緒に入りましょう?」
「いや、さっき入ったばかりですし!」
「私と入るのは嫌ですか?」
「嫌じゃないけど、駄目でしょ!」
「ん~?なんで、駄目なんですか?」
美鈴さんはそう言うとゆっくりと私に歩み寄って来て、胸を押し当てて来る。
ーーって、酒臭い!
美鈴さん、お酒を飲んでいるのか!?
ーーと言う事は茶化されているのか、無自覚なのか?
どちらか解らないが、流石の私もパニックを起こしそうだ。
美鈴さんとーー女性と裸で風呂に入るってーー。
駄目だ。思考回路がショートした。
その結果ーー
「す、すみません!やっぱり、男女で裸のお付き合いとか私には無理です!ごめんなさ~い!!」
ーー私は妙に迫って来る美鈴さんに謝り、慌てふためきながら脱衣場から出て、逃げる様に自室へと向かった。
美鈴さんの入浴の件に関してはレミリアお嬢様に言おう。
ヘタレの私には刺激が強過ぎるし……。
いや、でも、なんて説明すべきか?
脱衣場で女性に迫られて逃げて来ました、かな?
我ながら、凄いチキンな説明だな。
性別が逆だったなら解るけど……。
私はそんな事を思いながら、薬をスポーツドリンクで飲むとベッドに潜り込み、無理矢理に瞼を閉じて眠りに付く。
そんな私が見た夢は浴室でバスタオルを巻いた姿になって迫ってくる美鈴さんと言う物だった。
……そうか。紅魔館にはサキュバスもいるのか。
小悪魔さんとかかな?
いや、本当にもう勘弁して下さい。
そんな事を思いながら、私は夢の中の美鈴さんに美味しく食べられた……色んな意味で。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない