紫さんが生み出す空間の狭間ーー通称"スキマ"の中に入った私は周囲を見渡す。
スキマの中は無数の目だけでなく、標識や看板、果ては電車等が漂っていた。
「此処がスキマの中……」
「そうよ。さ、行きましょう」
紫さんにそう言われて、私は彼女の後ろについていく。
此処で立ち止まって拒絶しても帰れないだろうし、噂に聞こえた幻想郷にも興味があったからだ。
「そう言えば、こう言う展開だと主人公は何らかの能力を身に付けて戦ったりしますよね?
私も何か能力でも身に付けるんですか?」
「あら?陰猫さんも何か能力が欲しいの?」
「聞いてみただけですよ。それに私の小説はそんなご都合主義なものはありませんからね。
否定する訳じゃありませんが、ト◯ー・◯ャーやジャッ◯ー・◯ェンみたいな生身の人間から来る強さの方が好きです」
「修行したりして強くなるのよね?
今時のそんな小説は受けが悪いだけだけど、陰猫さんはそう言う方が好きなのね?」
「"努力した者が全て報われるとは限らん。
しかし、成功した者は皆すべからく努力している"。
私の好きな漫画に出てくる言葉です」
「ふふっ。やっぱり、変わってるわね、貴方。
でも、そんな努力ばかりしているから、身体だけでなく、精神も壊すのよ。
24時間不眠で働くなんて事していると今度こそ過労で死ぬわよ?」
「まあ、確かに医者とかにも頑張り過ぎだと言われましたが……」
「まあ、今はほどほどに頑張る事を心掛けてる様だから良いのだけど。
私としても読んでいる物語の作者が亡くなるのは寂しいわ」
「……そうですね。気を付けます。
でも、紅魔館って門番の美鈴(メイリン)さんが寝ずに昼夜問わず働かされている程の結構ブラックな所だとも聞きますし、本当に今の私なんかでやっていけるんでしょうか?」
「実はそれも兼ねて、陰猫さんを呼んだのよね」
「? どう言う事ですか?」
私が問うと紫さんは歩みを止め、此方を振り返る。
「実は最近になって紅魔館の完璧メイドさんーー十六夜咲夜(いざよい さくや)と言ったかしら?ーーが過労で倒れたの。
まあ、あの娘(こ)も一応、人間だしね。
それで紅魔館でも働き方改革をしようって事になったの。
それでホワイトな職場を目指す事になったのだけど、どうしたら改革出来るかなんて私達妖怪じゃ解らないし、人里の住人はそう言うのを経験した事がないし……」
「成る程。あの咲夜さんが……」
「そこで陰猫さんを呼んだ訳よ。
貴方ならブラックとホワイトな所を両方経験済みだし、過労で弱っているあの娘の手助けも出来るでしょう?」
「え?でも、私、統合失調症になってから動きが普通の人よりも著しく低下してますよ?
それに料理とかもコンビニ弁当で済ませてますから、家事全般が苦手な方ですね。
他の人に頼んだ方が良いのでは?」
「勿論、そこも解っているわ。だからこそ、お試しの短期バイトなのよ」
「……ふむ」
「まあ、後はなる様になるわ。それにこれは運命よ」
「運命?」
「そう。運命を操る程度の能力……こう言えば、貴方なら察しが着くでしょう?」
その言葉を聞いて、私は紫さんに頷く。
運命を操る程度の能力……それを持つ者は紅魔館の主にして幼き吸血鬼でもあるレミリア・スカーレット以外にあり得ない。
「どんな理由であれ、貴方は私に出会い、幻想郷に受け入れられる運命にあるのよ。
あの小さな吸血鬼さんの手によってね?」
「……そう言う事なら仕方ありません。やるだけやって見ます」
そう言うと紫さんは私に微笑み、再び前を向く。
「まあ、私も何の能力も持たない人間があの館でどう仕事するか興味があるしね。
しばらくは退屈しないで済みそうだわ」
紫さんは小声でそう言うと楽しげに笑いながら再び、私の先を歩き始める。
……ちょっと不安になって来た。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない