私は美鈴さんの部屋まで来ると扉をノックをしようとする。
「この気は陰猫さんですね?」
ノックする前に美鈴さんは扉の先でそう言うと何かガタガタと物を動かす音が響く。
「ちょっと待ってて下さい。今、開けーーうわっ!?」
一際、大きな物がドスンと落ちる音がして、私はドアを開けようとする。
しかし、中から鍵が掛かっているのか、ドアは開かなかった。
とりあえず、無事かどうかだけでも確認しなくては……。
「大丈夫ですか、美鈴さん?」
「あ、はい。なんとか……」
「本当ですか?一応、咲夜さんでも呼んで来ましょうか?」
「いえ!本当に大丈夫ですから!もう少し待ってて下さい!」
美鈴さんはそう言うとまた部屋の中でガタガタと何かを動かす音が響き渡る。
やがて、何も聞こえなくなると扉の鍵が解除され、中から衣服のやや乱れた美鈴さんが出てくる。
「お待たせしました。中へどうぞ」
そう言って美鈴は衣服の乱れを整えながら、屈託のない笑顔で私を中へと入れる。
中は急いで片付けたのだろうが、ダンベル等の筋肉を鍛える道具が棚からはみ出ていた。
衣服が戸棚の隙間から見えるチャイナ服や私服から察するに咲夜さんより女の子らしい。
あとはボードゲームの駒やらカードゲームのカードやらが転がっているのと、棚を押さえる様にカンフー映画なんかで見る帽子掛けみたいな物があった位だろう。
ぶっちゃけ、私の部屋よりも散らかっているなあ。
「あ~。やっぱり、咲夜さんの部屋と比べると汚いですよね?」
「え?いや……」
「気を使わなくて良いですよ?本当の事ですからね?」
「えっと……まあ、十人十色で良いと思いますよ?」
私はそう言うと話を誤魔化す為に部屋に転がっているボードゲームの駒を拾う。
「それはそれとして、ゲームが結構ありますね?」
「あ。はい。最近は妹様もよく遊びに来るので、色々とゲームを用意したんですよ」
「ああ。成る程。それでですか……」
私は納得した様に美鈴さんに頷くと、美鈴さんは「あはは」と笑って後頭部を掻いて笑う。
「ところで此処へは何しに?」
「ああ。そうだ。美鈴さんがさっき、何か言いたそうだったから聞きに来たんですよ」
「え?咲夜さんを一人にして来たんですか?」
「これはその咲夜さんの指示ですから。あとは霊夢にも好意を持ってくれている美鈴さんをフォローしろと言われました」
私がそう言うと美鈴さんは頬を掻く。
その顔は途端に複雑そうなものになる。
「う~ん。確かに陰猫さんの事は気にはなります。
けど、さっき、陰猫さんにフラれたばかりですし」
「いや、別にフッた訳では……」
「別に気を使わなくて良いんですよ。好意は確かにありますが、ちょっと気になっている程度と言うかなんと言うか、そう言う程度ですし……さっきも単に食事に誘おうと思っただけですから……」
「そう言う事でしたら言ってくれれば良いのに」
「あはは。すみません」
美鈴さんは再び頭を掻いて笑う。
ちょっと気になる程度か……。
まあ、紅魔館には異性が少ないからな。
それでつり橋効果にでもなっているだけだろう。
仮にもし、美鈴さんが告白したとしても、その時には紫さんの時と同様に断る気だったけどーーそもそも、美鈴さんが私に恋心を抱くとは思えないしなあ。
でも、さっき、フラれた様でショックだったとか言ってたな?
もしーー本当にもし、美鈴が告白して来た時、私は断れるだろうか?
美鈴さんを泣かせたくないとは思う。
だが、好意を寄せられても今の私は困るだけだ。
それは病気の事や環境の違いなんかもあるが、結局のところ、好きな人に負担を掛けたくないからと言うところから来ている訳だが、自分を守る為の言い訳なだけかも知れない。
本当に私はどっちなんだろうか?
自身の幸せか、美鈴さんの幸せか。
美鈴さんの事を愛を受け止められるか、否か。
私はそう思いながら美鈴さんの笑顔を眺める。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでも……」
私は言葉短く美鈴さんに返答すると頭を振り、手にしていたボードゲームの駒を手渡す。
「なんでもじゃないでしょ!なんでコクらないのよ!」
不意に小さな声で野次が飛んで来るのが聞こえて振り返り、扉の方を見ると咲夜さんや霊夢、妖夢までが扉の縁から顔を覗かせ、私達を見ていた。
「……あ」
目が合うと三人は扉の縁から慌てて顔を隠す。
「……何してるの、三人共」
私が扉の方へ近付いて廊下へと出ると既に三人の姿はなかった。
「? 本当にどうかしましたか?」
「……咲夜さん達がいました」
「え?」
「私の時みたく気配で解らないんですか、美鈴さん?」
「いや、えっと……あはは……咲夜さん達位の人になると気配を消すのが上手くて……」
美鈴さんは頭を掻くと困った様に笑う。
まあ、あの三人なら気配を消すのなんて簡単だろう。
私は笑っている美鈴さんに一言言おうと口を開く。
「めーいーりーんー!あーそーぼー!」
ーーと不意にフラン様がノックもせずに美鈴さんの部屋に入って来る。
「妹様!?」
「おや、フラン様」
「あ、陰猫とか言うおじちゃん!」
「ちょっーー妹様!おじちゃんなんて呼んじゃ駄目ですよ!せめて、お兄さんと呼ばないと!」
「ああ。良いんですよ、美鈴さん。私がそう呼んで下さいと言ったんですから」
此方を指差すフラン様に注意する美鈴に私はそう言うと部屋を後にしようとする。
「あ、あれ?陰猫さん、どうかしましたか?」
「フラン様は美鈴さんと遊びに来たのでしょう?
なら、厄介者は出て行こうかなと……」
「厄介者なんかじゃないですよ!折角ですから、三人で遊びましょう!?妹様もそう思いますよね!?」
「ん~、陰猫と遊んでもつまんなそう」
「妹様!?」
フラン様は正直だな。
まあ、私もフラン様にはあまり、関わるなと言われているし、此処等で退場しよう。
「そう言う訳ですから、美鈴さんはフラン様と遊んで上げて下さい。陰猫はクールに去ります」
「ちょっーー待って!」
美鈴さんの言葉を聞き流し、部屋から出ると私は廊下へと出て、呆れ顔の咲夜さん達へと顔を向ける。
……いつ戻って来たんだろう?
私は一際睨む霊夢に歩み寄る。
「……あんたねえ」
「とりあえず、話はしたよ」
「そんな事はどうでも良いわよ!フランが来るのも想定内だったけど、あんた、此処の門番をフォローするんじゃなかったの!?」
「やっぱり、フォローになってないかな?」
「当たり前よ!」
私の言葉に霊夢が叫ぶと私の頬をその両手で挟む。
「むぎゅっ!ちょっーー霊夢!?」
「良いから黙って聞きなさい!」
そう言われて静かにしているとフラン様と美鈴さんの声に耳を傾ける。
「なんで泣きそうな顔をしているの、美鈴?陰猫に何かされたの?」
「……いえ、大丈夫ですよ。なんでもありません」
「でも、美鈴、凄く辛そう。本当に何があったの?フランには教えて?」
「本当に何もないんです……何も……」
そう言うと美鈴は声を殺して泣き出す。
それを聞いて、私は困惑するのと同時に何処か遠い所の様にも感じる。
「なに、女の子を泣かせているの!何がクールに去るよ!
あんた、ただ女の子の思いを引っ掻き回しただけじゃない!」
「そうは言われても、私だって、どうしたら良かったか解らないよ」
そう言うと霊夢が私の両頬を挟む手を放し、ビンタする。
「あんたは門番が好きだって言ってやれば、良かったのよ!」
「そんな恋愛小説じゃないんだから、そう簡単に人を本気で好きになったりはしないよ。
少なくとも、そんな経験は一度しかした事がないからね?」
私はビンタされた頬を押さえながら霊夢にそう言うと美鈴さんの泣き声を聞きながら、その場を後にした。
「少なくとも門番は本気だったんだよ!この馬鹿!
あんたは知らないでしょうけど、門番だって何度も他の男に告白されているのよ!でも、断り続けた!
あいつは妖怪だし、此処の門番だからよ!
あんたと一緒で自身が負担になる事を恐れてよ!
その門番が本気で好きになったって言うなら、あんたは男として答えてやりなさいよ!」
そんな霊夢の叫びを耳にしながら……。
最後に人にしかられたのって、いつ以来だろう?
少なくとも恋愛経験で叱られたのはこれが初めてだな。
そんな事を考えながら、私は廊下を歩いて行く。
あのまま、美鈴さんと一緒にいるのが正解な気もしない。
結局、どの様な答えでも結果は変わらなかったろう。
私はただ、この選択が正しいと信じる他ない。
そう思おう。
……なんてのは無理だな。
美鈴さんを泣かせてしまった罪悪感は拭えそうにもない。
本当に何が正しかったのか、誰か教えてくれないだろうか?
『あんたは門番を好きだって言ってやれば、良かったのよ!』
……やはり、霊夢の言葉が正解だったんだろうか?
しばらく、その事で悩みそうだ。
次回、ハーメルンでR-18にした問題の話し
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない