その後、お昼になるまで咲夜さんと仕事をこなした。
最近、めっきり身体全体を動かす仕事はしてなかったから、ややバテ気味だ。
「少し休まれますか?」
私の様子を見て、咲夜さんが声を掛けてくれる。
「いや、もう少し頑張れると思います。それに今は出来るだけ、考え事はしたくなくて……」
「……美鈴の事ですか?」
私はその言葉に顔を上げ、咲夜さんを見る。
「先程は申し訳ありませんでした。私が出過ぎた事を言ってしまったせいで状況を悪化させてしまって……」
「咲夜さんのせいじゃないですよ。気にしないで下さい」
私は咲夜さんにそう言うと掃除していた部屋を後にする。
「陰猫」
そんな私の後ろからレミリアお嬢様が声を掛けた。
「これはレミリアお嬢様。どうされましたか?」
「美鈴が泣いていたそうなのよ。
フランの話じゃ、貴方が関係しているらしいじゃない?……美鈴に何をしたの?」
その問いは厳かで威圧感のある言葉だった。
レミリアお嬢様の発する言葉が私に重くのし掛かる。
「まさかとは思うけど、本当に美鈴に何かした訳ではないでしょうね?
幾ら貴方でも私の家族を泣かせるのは許さないわよ?」
「……」
「答えなさい。貴方、美鈴に何をしたの?」
「手は出してませんよ。でも、それがいけないんだと霊夢に言われました」
「……? どう言う意味?」
「それについては私から話すわ」
訝しい顔をするレミリアお嬢様に霊夢がやって来る。
「あら、霊夢?仕事は?」
「後でやるわよ。それよりも今はこいつと門番の事でしょう?」
霊夢はそう言うとレミリアお嬢様に説明してくれる。
それを聞いて、お嬢様は何やら複雑な表情をし、聞き終えると同時に溜め息を吐く。
「貴方、何をそんな事で美鈴を泣かせているのよ?」
「すみません」
「でも、美鈴に何もしてないから逆に傷付けた、ね?」
「ええ。そうよ。で、どうするの、この馬鹿の後始末は?」
「そうね。陰猫。貴方は少し美鈴から距離を取りなさい。食事も食堂じゃなくて自室で構わないわ」
「かしこまりました。では、私は仕事に戻ります」
「その必要もないわ。貴方はもう休みなさい」
レミリアお嬢様のその言葉に私は動きを止める。
「え?いや、しかし……」
「これは命令よ。咲夜も貴方の体調を気にしていた様だし、アドバイザー自身に無理されちゃ敵わないわ。
咲夜の指示があるまでキチンと休みなさい」
レミリアお嬢様にピシャリと言われ、私は頭を掻くともう一度、「かしこまりました」と言ってお嬢様に背を向け、自室へと向かう。
私は自室に戻ると忘れていた疲労が襲い、ヘトヘトになりながらベッドにダイブする。
……本当、何が正解だったんだろうな?
もし、告白されても振る気でいたんだから、結局、傷付ける事には変わらない。
私はどうすれば、良かったのかな?
そんな事を考えた後に私は瞼を閉じるとしばらく、何もせずにベッドに横になり、時間が過ぎるのを待つ。
ー
ーー
ーーー
自室へと戻ると私は椅子に座り、美鈴を呼んだ。
「お呼びでしょうか、お嬢様?」
美鈴はそう言うと膝をついて、私に頭(こうべ)を垂れる。
私にも解る程、美鈴は気弱そうに見えた。
此処まで落ち込んだ美鈴は本当に珍しい。
それ程、陰猫に想いを寄せていたのだろう。
「フランや霊夢から聞いたわ。散々だったわね、美鈴」
私の言葉に美鈴は顔を上げず、言葉も返さない。
相当、今回の件が堪えているのだろう。
「貴女が陰猫と会わぬ様にシフトを組むから、安心なさい」
「……はい」
その返事は酷く弱々しく、普段の美鈴からは考えられないものだった。
その時、私は陰猫のまた皆に甘えて良いと言う言葉を思い出す。
私はニヤリと笑うと美鈴に尋ねた。
「それでなんだけど、美鈴。陰猫を私の眷族に迎えいれようと思うのだけど、どう思う?」
「……え?」
私の言葉に美鈴が顔を上げ、何と言われたか解らないと言う顔をする。
私は悪戯っぽく笑いながら、美鈴に言葉を紡ぐ。
「正確には奴隷よ。私の家族を泣かせたんですもの。相応の礼をしなくてはならないでしょう?」
「だ、駄目ですよ、お嬢様!」
私の言葉に美鈴が感情を顕にして叫ぶ。
「あら?なんで駄目なの?」
「だって、そんな事したら、陰猫さんが陰猫さんじゃなくなってしまいます」
「別に良いじゃない?それとも、貴女はまだ陰猫の肩を持つの?」
「それは……」
「紅美鈴」
私は反論して来た美鈴に静かに囁く。
「陰猫の事が忘れられないなら、力ずくで奪いなさい」
「……え?」
「もう我慢する必要はないのよ。貴女は貴女の意思で陰猫の心を奪いなさい。それが出来ないと言うのなら、咲夜にやらせるわ」
私の言葉に美鈴はしばらく頭を下げていると意を決した様に立ち上がり、「失礼します」とだけ言って部屋を後にする。
ーーさて、計画は少し狂うけど、構わないわ。
紅魔館で一番我慢している者が幸福になっても罰は当たらないもの。
私はそう思いながら、陰猫の使うスマホとか言う機械を弄りつつ、運命を操作する。
ーーー
ーー
ー
しばらくすると部屋の扉がノックされ、私は目を覚ます。
レミリアお嬢様から自室で休む様に言われて、ベッドに横になった後、少し眠っていたらしい。
部屋の扉は少し間を置いてから再びノックされる。
恐らく、咲夜さんだろうか……。
「咲夜さん。待ってて下さい、今、開けますから」
私はベッドから起き上がると扉を開ける。
すると、そこにはなんと美鈴さんの姿があった。
その目は泣いていたからか赤みを帯びている。
「……あ」
私はそんな美鈴さんを見て、言葉を詰まらせる。
美鈴さんから距離を取れと言われていたばかりなのに、これはどう言う事だろう?
「どうしたんですか、美鈴さん?」
私が問うと美鈴さんは俯きながら、手にしたおぼんに乗せられた料理を無言で差し出す。
「ああ。食事の時間でしたか。ありがとうございます」
私はそう言って、おぼんを受け取ると自室に戻ろうとする。
「……あの、少しお話しても良いですか?」
「? ええ。大丈夫ですが……」
私が机におぼんを置きながら頷くと美鈴さんは私の部屋の中へと入って来る。
部屋に入る事まで許可した覚えはないが、まあ、良いか……。
それにしても美鈴さん、雰囲気変わったかな?
なんか、か弱げな子猫みたいで守って上げたくなる程、頼りなく見える。
「それでどうしたんですか?私の部屋にまで転がり込んできーー」
ベッドに座りながら私がそう問おうとすると美鈴さんは急に私に抱き着いて来る。
その反動で私はベッドに押し倒された。
そして、美鈴さんにキスされる。
そうこうしている内に私の上に跨がった美鈴さんがおもむろに服を脱ぎ始めた。
「ん……め、めいり……」
「ん……ちゅっ……何も言わないで……」
美鈴さんは潤んだ瞳でそう言うと私の衣服を脱がせ始める。
そうして、私は初めて感じる快楽に身を委ねるのだった。
ー
ーー
ーーー
「ふむ。こんなものかしら?」
陰猫の書く小説を陰猫のスマホから書き足しながら私は独り、そう呟くとスキマからムスッとした顔で現れた八雲紫へと視線を移す。
「どうしたの、紫?」
「どうしたの、じゃないわよ!貴女、また運命を弄ったわね!?」
「何の事かしら?」
「惚けないで頂戴!」
私がそう呟くと紫が叫ぶ。
「貴女、陰猫さんの運命を操って、此処の門番ーー紅美鈴とくっ付けるつもりなんでしょ!?」
「ーーだとしたら?貴女には関係ないでしょう?」
「関係あるわ!陰猫さんは私の夫となる予定だったのよ!」
「ああ。あの新聞の事ね?あんなの出鱈目でしょう?」
「ええ!出鱈目よ!陰猫さんを妖怪や能力者から守る為のね!」
「なら、その必要がなくなっただけよ。紅魔館は今のメンバーだけで切り盛りさせるわ」
「どう言う事?」
「部下を労うのも当主の仕事と言う事よ」
私はそう言って陰猫の小説に視線を落とす。
今頃、陰猫は美鈴に身を委ねている頃だろう。
そんな陰猫のスマホを眺める私に紫が問う。
「……本来の運命まで断って、貴女は何をしようとしているの?」
「言ったでしょう?部下を労うのも当主の仕事だって?」
「……運命を断ち切るなんて事までして、全く無関係な陰猫さんの運命を操作したのよ?……後で後悔する事になるわ」
「でしょうね?でも、今が幸せなら、それで良いでしょう?」
「部下の一時の幸せの為だけに未来を犠牲にするの?」
「陰猫が私に言ったのよ。少し位、みんなに甘えても良いとね?
なら、一番我慢している人間が甘えたって良いじゃない?」
「……」
紫は私の言葉に溜め息を吐くと手を上げて苦笑する。
「本当、ひねくれたお嬢様ね、貴女?」
紫はそう言うとスキマに戻って行く。
「まあ、良いわ。この紅魔館は貴女の物だもの。貴女の好きにすれば良い。
でも、陰猫さんの運命をこれ以上狂わせるのは止めなさいな」
「ええ。陰猫はいずれ、外に帰る身。今回だけにして置くわ」
「そうしなさい、レミリア・スカーレット。
忘れているかも知れないけれど、私の機嫌を損ねれば、いつでも貴女達から陰猫さんを奪い、元の世界に戻す事が出来るのよ」
「あら?妖怪の賢者様がたかが人間一人取られたからって随分な物言いね?」
「一応、あの人のファンだからね?」
紫はそう言ってスキマに入り、消えて行く。
私は一息吐くと本来の運命に干渉して来るだろう、ある人物ーー十六夜境夜(いざよい きょうや)の運命を見る。
本来の運命で咲夜の代わりになる筈の男だ。
それにとある人物ーー陰猫(改)が描く事で幻想入りして私から十六夜境夜の名を与えられる。
こいつの能力は本の内容を具現化する程度の能力。
何故、そんな男を選ばず、陰猫を選んだか……。
それはこの男が起こす後の異常さ故だ。
境夜はやがて、とある事をきっかけに過去に起きた異変を全て再現するだろう。
その為の陰猫(改)と言う人物だ。
この物語の作者である彼ならきっと、なんとかしてくれるだろう。
そう。例え、彼のただの脇役で良いと言う結末とは望まぬ事になろうとも……。
私はそう思いながら、陰猫のスマホを弄る手を止める。
もし、陰猫がこの話を見たら、どんな表情をするのか楽しみにしながら。
私の運命を変えられた~(; ゚Д゚)アジャパー
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない