「本当に良いのか?」
修復中の寺子屋で慧音先生に聞かれ、私はいつもの様に明るく頷いた。
「はい!陰猫さんと十六夜境夜の歴史を食べて下さい!」
「お前の恋人との記憶だぞ?もう一度聞くが、本当に良いのか、紅美鈴?」
「はい!お願いします!」
慧音先生の言葉に私は元気よく返事をする。
陰猫さんにーーあの人に会う事はもう出来ないだろう。
紅魔館も妖精メイドが戻って来たし、咲夜さんも鈴仙の言う事をキチンと聞いて回復の兆しが見えて来た。
だからこそ、私も元に戻る必要がある。
そう。平和を堪能しながら日がな一日中寝てばかりいたあの頃に……。
じゃないと最愛の人がいなくて潰れてしまいそうだから。
「レミリアも良いのか?本当にこれで?」
「ええ。十六夜境夜は幻想郷でもイレギュラーの存在だわ。異変の再来なんて記録するまでもない。
それに誰かが陰猫と同じく、あの白いスペルカードで凶悪なものを呼び出すかも知れないしね。
だから、二人の存在は幻想郷から消した方が良いのよ」
「本当か?本当にそれが本音か?」
慧音先生のその言葉にお嬢様は少し考え込む。
「本音か……本音は……そうね。陰猫と言う人物に飽きてしまったからかしら?」
「ーーっ!?お嬢様!!」
「冗談よ。そんなに睨まないで、美鈴」
お嬢様はそう言うと真剣な表情になり、静かに呟く。
「まあ、人間の想像力があれ程、危険だとも解ったのも事実だしね?
紫から聞いたけど、一方的な殲滅ーーいえ、蹂躙だったらしいわよ?」
「そんなに凄い物だったのか?」
「まあ、紫も最初から見ていた訳ではないし、具体的にどれだけ凄いかは聞かなかったけどね?」
「ふむ。興味深いな」
慧音先生はお嬢様の言葉に呟くと隣に佇む紫様を見る。
「紫も良いんだな?」
「ええ。陰猫さんの運命はまた操作し直されて、幻想郷から離れてしまった。
ファンとしては残念だけど、それがただの人間である陰猫(改)と言う人物と幻想郷の今後の為よ」
紫様がそう言うと慧音先生は溜め息を洩らして私に向き直る。
「それじゃあ、その歴史とやらを食わせて貰うぞ?
言っておくが、後で後悔しても遅いからな?
まあ、万が一、思い出す事があればだが……」
「はい!」
私は返事をすると瞼を閉じ、記憶の中のあの人に呟く。
「さようなら、陰猫さん」
本当は忘れたくない。
でも、忘れなくちゃ、駄目だ。
私は紅魔館の門番ーー紅美鈴なのだから。
やがて、徐々に陰猫さんとの思い出が消え、私は以前の私に戻る。
ただ、私は密かに陰猫さんとの記憶を残す方法を取っている。
それは妖怪の賢者様にも解らないものだ。
それが芽吹いた時、私はまた彼を思い出すだろう。
けれど、その時にはその思いを大切に出来る筈だ。
何故ならーー
ーーー
ーー
ー
「……ん」
布団に寝そべっていた私は上体を起こす。
なんだか、随分と長い夢を見ていた気がする。
充電していたスマホで時間を見れば、深夜三時だ。
長いと感じたたけで、あまり寝てない方かな?
「あれ?」
私は寝巻きに着替えて布団に改めて寝転がりながら、スマホで小説家になろうのサイトにログインして見るとお気に入りしてくれたユーザーの数が減っていた事に気付いて頭を掻く。
「やっぱり、マイナー過ぎるからかな?
でも、誰がいなくなったんだっけ?」
私は思考を巡らせるが、結局、解らず終いだ。
まあ、クヨクヨしてても仕方がない。
次はもっと良い縁が来ます様に……。
そんな事を祈りながら、私は小説家になろうの二次創作である東方projectの話に目を通す。
なんだか、私も書きたくなって来たな。
今度、何か書いてみよう。
「あれ?」
私は新規で小説を書こうとして自分が書いたろう"短期バイトの報酬"と書かれた表示を目にする。
こんなのいつ書いたんだろう?
覚えがない。
しかもこれ、私がこれから書こうとしていた東方projectの二次創作だ。
でも、内容を読むと何処か懐かしさを覚える。
そして、大事な物を失った様な切なさも……。
私は一人頷く。
これを投稿しよう、と……。
私は早速、いつもの要領で投稿の準備を始めた。
"短期バイト"なんて寂しいタイトルだけじゃ、読者には何の事か伝わらないだろう。
だから、こんなタイトルにしたら、どうかな?
ーー"陰猫、紅魔館へ短期バイトをします"とか言うの。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない