美鈴さんが守る門を通ると紅魔館の入り口の前で咲夜さんが佇んでいた。
「お久し振りです、咲夜さん」
「ええ。本当にお久し振りです、陰猫さん。
あの時は御世話になりました」
咲夜さんはペコリと頭を下げて一礼すると此方に微笑む。
「あれから2年経ちましたが、陰猫さんも少し変化があった様ですね?」
「解りますか?」
「そうでなければ、操作されている記憶が呼び起こされると云う事はありませんからね」
咲夜さんはそう言って悪戯っぽく口に手を当てて笑う。
咲夜さんの言う事は間違いではない。
私は紅魔館で短期間バイトしていた時の記憶がなかった。
それが最近になって甦ったのだ。
紫さんの言う通り、それが私の願望だったからだろう。
忘れ去られた陰猫(改)と云う作家は幻想郷に舞い戻り、再び紅魔館で仕事をする事を望んだ。
だから、私は記憶を取り戻し、紫さんとコンタクトを取った。
「まずはお嬢様の元へ参りましょう。その後にでも彼方での話を聞かせて下さい・・・もっとも、そんな余裕はないかも知れませんが」
「それだけ忙しいって事ですか?」
私がそう尋ねると咲夜さんは「間違いではありません」と返す。
現在、就活真っ只中の私には良いウォーミングアップだ。
そんな事を考えていると咲夜さんがジッと私を見てから溜め息を吐く。
「美鈴も大変ね。亭主がこうも鈍感だと夜伽をするのも大変ね」
「え?亭主?」
「・・・本当に覚えてらっしゃいませんか?」
咲夜さんにそう尋ねられ、私は自分の息子の事を思い出すーーいや、忘れた素振りをして事実から目を背けたかったのかも知れない。
外の世界では女性との浮わついた話一つなく、仕事一筋で来て未だに独り身な私が幻想郷では紅美鈴と云う女性と男女の関係になり、子供を授かっていると云うのだから現実味と云うものに少し欠けている。
そして、私自身、そんな子供にーー魂猫に名付けたあの子にどんな風に接すれば良いかとかも解らない。
「忘れていると云うよりは迷ってらっしゃるようですね?
何を迷ってらっしゃるのですか?」
「私は魂猫についての将来についても書きました。
あの子はいずれ、幻想郷に無くてはならない存在となります。
なのに、また私の我が儘で幻想郷にやって来て良かったのかなと思いまして」
「それは貴方次第でしょう、陰猫?」
そんな風に悩んでいるとレミリアお嬢様が扉を開け、私と対峙する。
咲夜さんはいつの間にか、レミリアお嬢様の隣に立ち、日傘を手にしている。
そして、そんなレミリアお嬢様の腕の中には此方をジッと見る我が子の姿があった。
「・・・魂猫」
私は自分の子どもに触れるか悩んでいるとレミリアお嬢様が此方に近付き、私に魂猫を押し付ける。
「存在を消すのは簡単よ。でも、貴方がそうする事はしない。
何故なら命の重みが解るからでしょう。産み出された子どもの存在をなかった事になんて貴方には出来ない・・・そうでしょう、陰猫?」
その言葉に私は何も返せず、レミリアお嬢様から受け取った魂猫の重みをしっかりと感じた。
そして、魂猫の温かさと存在感を心に刻んだ。
そうだ。この子は生きている。
重みを実感してからか、私は改めて確信する。
例え、世界が異なり、忘れてしまうとしてもこの子は私と美鈴さんとの子だ。
それについて否定しようとするなど、私は何を考えているのだ。
いや、本当に私の子どもだからこそ、悩むのかも知れない。
これは私みたいに空想と現実の狭間にある人間ならではの悩みなのかも知れないが、共感して貰える人間は果たして、何人いるだろうか?
例えるのが難しいが、異世界転移した先でそう言った行為をした後に元の世界に戻って、何もかもを忘れた後にもう一度、召喚されて子どもが出来たと自分の子を見せられるのに近い。
ーーと云うよりも、そんな現状である。
・・・駄目だな。色々と思考し過ぎて何を言いたいのか解らない。
確かなのは、この子が私の子どもと云う事だ。世界は違えども、空想の中の産物だろうと育まれた命なのだ。
ーーならば、私は親として責任を取らねばならない。
私は瞼を閉じ、魂猫を優しく抱き、その背中をポンポン叩く。
泣くかな?とも思ったが、魂猫は美鈴さんに似たのか、おとなしく感じた。
我が子を抱くのはこれが初めてだし、なんと云うべきか悩む。
本当にいかんな。仕事をしに来ただけなのにアレコレと余計な事や雑念が飛んでいる。
それでいて、どこか他人事だ。
これでは美鈴さんにも申し訳ないし、運命を賜った魂猫に顔向け出来ない。
私はそう思いながらレミリアお嬢様に魂猫を返す。
「魂猫をお願いします」
「言われなくても解っているわよ」
レミリアお嬢様は私から魂猫を受け取るとうっすらと微笑む。
「魂猫の事は此方に任せて、貴方は仕事に集中なさい。
その為に再び幻想郷の紅魔館に来たのでしょう?」
「はい。宜しくお願いします」
「ーーとは言え、貴方の立ち位置も以前と異なるし、内容も変わっているわ。
それでも貴方がまた、この紅魔館で働いてくれると助かるわ」
レミリアお嬢様はそう言うと魂猫を抱き抱え、私から咲夜さんに視線を移す。
「陰猫を頼むわよ、咲夜」
「かしこまりました、お嬢様」
お嬢様の言葉に咲夜さんは恭しく一礼すると彼女が館の中に入ってから私を見据える。
「色々と思う事があるかも知れませんが、お嬢様の言う通り、仕事に集中しましょう」
「・・・そう、ですね。解りました」
内心、複雑な私を察するかのように咲夜さんの言葉に私は頷くと作業の内容を確認する。
内容自体は以前とあまり変わらないように聞こえるが、外の世界での再雇用に至らなかった職場の事もある。
これは1からまた習うつもりで頑張らなければな。
魂猫の事ばかりを気にしている場合ではない。
ファイトだ、私!
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない