目が覚めるとまだ夜中だった。
相変わらず、睡眠の質がまちまちだが、今に始まった事ではないので仕方がない。
私は美鈴さんを起こさぬようにベッドから抜け出すと喉が渇いたので食堂の厨房へと向かう。
「あら?陰猫じゃない?」
食堂へと向かう途中、レミリアお嬢様と遭遇して呼び止められた。
「これはお嬢様、如何されましたか?」
「ええ。ちょっと喉が渇いてしまって食堂へ行こうとしていたところよ?」
私の問いにレミリアお嬢様はそう言って返すと深紅の瞳でジッと此方を見詰める。
吸い込まれそうなその瞳を見詰め返しながら、私は次の言葉を待つ。
「貴方の方こそ、こんな時間に起きていて、どうしたのかしら?」
「自分も同じです。喉が渇いたので食堂へ向かうところです」
「それなら丁度良いわ。私が眠くなるまで少し話し相手になって頂戴」
「かしこまりました」
私はレミリアお嬢様に一礼すると彼女と共に食堂へと向かった。
「貴方もワインは如何かしら?」
道中、レミリアお嬢様にそんな誘いを受けたが、私は首を左右に振った。
「申し訳ありませんが、私はお酒には滅法、弱いので飲めませんのでして・・・」
「ええ。知っているわ。おまけに薬の副作用が強くなるから余計に飲めないんだったかしら?」
知っていながらも聞いて来る辺り、お嬢様なりの冗談なのだろうか?
私は「そうです」とだけ返し、レミリアお嬢様と食堂へと歩いて行く。
食堂へと到着するとレミリアお嬢様は私に指示を出し、厨房からワインと予め炒ったピーナッツを用意させる。
コンビニが多い為、流石に調理までは出来ないが、その程度の用意ならば私でも出来る。
私はお嬢様に「少々、お待ちを」と言ってピーナッツとワインを探す。
ワインの知識には疎いが、年数を重ねたワインの方が熟成していると云う知識はある。
流石に10年以上寝かせた物は高価なのだろうから、4年から5年寝かせているだろうワインを選ぶ。
ピーナッツに関しては乾物系の食材のある倉庫から円柱の缶に入っているのを見付けたので、それを小皿に盛ってワインと共にレミリアお嬢様の前に出す。
「遅いわよ、陰猫」
「申し訳ありません、お嬢様」
怒るでも叱咤でもなく、時間を注意され、私はレミリアお嬢様に頭を下げる。
レミリアお嬢様は瓶の年数を見ると椅子に座ったまま、此方を見据えた。
「ワインに関しては素人だし、大目に見て上げるわ。
これからは10年以上の物を持って来なさい」
「かしこまりました」
私は頭を下げたまま、彼女の言葉を心に刻む。
後でメモって置かねばな。
「それで貴方の分はどうしたの?」
「あ」
その言葉で自分に関しての事をすっかり忘れていた。
レミリアお嬢様は苦笑すると「ちょっと待ってなさい」と言って席から立ち上がって厨房へと入って行く。
しばらくするとレミリアお嬢様は陶器のポットとカップを持って来る。
「私直々に作ったのよ。感謝して飲みなさいね?」
「お嬢様自らですか?」
「ええ。貴方は客人であり、使用人でもある特殊な立ち位置にいるのだもの。
今は客人として、このレミリア・スカーレット自らがもてなそうと言うのよ」
レミリアお嬢様は「文句はないわよね?」と付け足すとゆっくりと席に座り直す。
まさか、レミリアお嬢様自らが私の為に飲み物を用意して下さるとは思っていなかった。
私は「ありがとうございます」と再び一礼してからレミリアお嬢様に向かい合うように座る。
お嬢様が用意してくれたのは黒い液体だった。
コーヒーかと思ったが、飲んで見たところ、温かい麦茶のような風味が口に広がる。
これはコーヒーはコーヒーでも麦で代用したコーヒーだ。
確か、コーヒー豆が入手し辛い時に代わりに飲まれていたのが、この麦の代用コーヒーだったか・・・。
私はレミリアお嬢様と共にささやかな一時を過ごす。
「陰猫」
2杯目を飲もうとしたところで不意にお嬢様に声を掛けられ、私は「なんでしょう?」と尋ねる。
「今回は何故、貴方にあのスペルカード擬きを渡さないか理解出来るかしら?」
それについてか・・・。
確かに聞いて置きたい事ではある。
私の中ではやはり、過去の出来事が関係しているのではと考えている。
白符と呼ばれる名前もないスペルカードで呼び出した私の奥の手ーーそれが恐らく、私にスペルカードを与えられない理由だろう。
「私はーーいえ、私達と云うべきかしら?ーー私達は知ってしまったのよ。
人間の想像力が私達、不変なる妖怪の想像力を超える事に」
「だから、今回、あのスペルカードを私に与えなかったと?」
「半分正解よ」
レミリアお嬢様はそう言って、うっすらと笑うとワインの入ったグラスを此方に軽く掲げた。
「あのスペルカードの使い方は貴方のような人間には手に余る。
約束の時が来るまで、あれはしばらく、封印させて貰うわ」
「約束の時・・・魂猫が成人してからですか?」
「ええ。そうよ。人間から人里の指導者は生み出せない。
生み出せば、人間は今までの妖怪との関係に疑問を持つでしょうーーかと言って妖怪から指導者を生み出せもしない。
理由は貴方も知っているでしょう?」
その言葉に私は静かに頷く。
幻想郷の妖怪が人里に手を出さない事は暗黙の了解になっている。
理由はその影響力にある。
妖怪が里を支配しようと手を出したとあれば、その妖怪は周囲の妖怪の一派に狙われ、最悪、抹殺されるだろう。
だが、私の描く魂猫の物語は違う。
魂猫は人間と妖怪の子として中立を保ち、その能力が開花する事で妖怪の存在理由その物を味方につける。
「きっかけは些細な事かも知れないわ。けれど、これもある種の運命なのかも知れないわね」
レミリアお嬢様は楽しげに笑うとクイッとワインを飲む。
私はそれを黙って見詰めつつ、我ながら我が子に辛い選択をさせるなと少し罪悪感を感じる。
「いずれ、貴方は幻想郷を忘れて、交わる運命から完全に離れるでしょう。
運命を読まなくても解るわ。
いまは心にあっても、時が進めば、進む程、人間の心は変わって行く。
それが人間と云う生物の性でしょうからね?」
「そうかも知れませんね。人間は時間が進めば、心変わりします。
私もいずれ、幻想郷の夢から醒めるでしょう。
でも、形として残す事は出来ます」
私の言葉にレミリアお嬢様は「そう」と呟くとピーナッツを一つまみしてポリポリと食べる。
「それが貴方の答えなのね、陰猫?」
「はい。私は美鈴さんに愛を貰いました。
その愛が冷めてしまったとしても、彼女にして貰った事に私は感謝出来るでしょう」
「それが自分を苦しめる事でも?」
レミリアお嬢様の言葉に私は「はい」と答え、もう一度、頷いた。
「美鈴さんが言ってました。
私は私です。陰猫(改)と云うペンネームの作家は自らの中に自分の物語を作り、思いを残します。
それが例え、人には理解されない物語であったとしても」
私がそう答えるとレミリアお嬢様は可笑しそうに微笑む。
「これだから人間の成長は面白いのよ。見ていて愉快になるわ」
お嬢様はそう言うとワインを飲み干し、時計に視線を移す。
時刻は深夜0時。
体内時計が狂っているのか、私の中では深夜3時のつもりでいたが、薬の影響でまた眠りが浅かったらしい。
「長話をしてしまったわね。貴方はもう部屋に戻りなさい」
「いえ、自分もまだ眠気が・・・」
「貴方の為に言っているんじゃないわ。美鈴の為よ」
そう言われたら、私も何も言えない。
私は少し考えてから「かしこまりました」と言ってポットとカップを片付け、食堂を後にしようとする。
「陰猫」
そんな私の後ろからレミリアお嬢様が声を掛ける。
「貴方には貴方の能力がある。
いえ、既に開花していると言っても過言ではない。
この事を忘れないようになさい」
なにやら、意味深な言葉を貰ったな。
レミリアお嬢様の口調だと、私にも既に何らかの能力があるみたいな言い方だ。
だが、ご都合主義の苦手な私にそんな能力などあるのだろうか?
例え、あったとしても私がこうやって拒絶している内はあるとは思えないのだが・・・しかし、そうなると既に開花していると云うのはどう云った意味なんだろうか?
「まあ、私の言葉は精々、頭の隅にでも置いて、貴方を待っている想い人の元へと戻りなさい」
「あ、はい。お先に失礼します」
レミリアお嬢様の言葉に私は考えるのを中断すると食堂を後にした。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない