「それじゃあ、聖さんに魂猫の事は任せられないと?」
「ええ。そう言う事になります」
お互いの話を交えた後に私は美鈴さんにパチュリー様と話し合っていた聖白蓮についての事を喋ると美鈴さんは顎に手を当てて考え込んでしまう。
私も何か良い案が浮かばないか考えるが、特に妙案は浮かばなかった。
「そもそも、これって考える程の事なんですか?」
「え?」
意外な言葉に私は目を丸くして隣に座る美鈴さんに顔を向ける。
「だって、これはあくまでも陰猫さんの描く先の未来の話ですよね?
なら、向かう先も陰猫さん次第なんじゃないですか?」
「えっと、それはどう言う事ですか?」
「そうですねえ・・・なんて説明すべきでしょうか?
確か、十六夜境夜って輩がいたじゃないですか?
アレは本来、陰猫さんの描く物語による登場人物ですよね?
でも、そうはならなかった。それは何故ですか?」
「何故って私が紅魔館に来たからでは?」
「それだけでしょうか?」
美鈴さんは「うむむ」と唸りながら腕を組んで何かを考え込むように目を閉じる。
「そうであるのなら、レミリアお嬢様次第って訳ですし、この話はそれで解決する筈です。
けれども、それなら本来、お嬢様によって幻想郷と運命を引き離された陰猫さんがまた戻って来るなんて事は出来ないんじゃないですか?」
「確かにそうですね。そうなると今回の原因はーー」
「恐らく、陰猫さん自身ですね」
美鈴さんはそう答えると目を再び開け、此方を見据える。
確かに私が関与しなければ、魂猫の話はシナリオ通りに進んでいただろう。
しかし、今回、私は私の意思で幻想郷に来た事でレミリアお嬢様の導き出した筈の運命に歪みを生じさせてしまった。
レミリアお嬢様は過去に十六夜境夜と私をコーヒーで例えたが、今回のコーヒーに溶け込んだシロップは私と云う存在その物なのだろう。
どうも、新しく注がれた二杯目のコーヒーにまた余計なスパイスを入れてしまったようだ。
だから、私はまた味を調節しなくてはならないらしい。
途中からコーヒーに例えたが、簡単に考えるのなら、また書き手として幻想郷を安定化させなければならないのだろう。
そう言えば、今回は紫さんから異変解決について何も聞いていない。
私その物が異変だからなのか、それとも別の解決しなくてはならない異変があるからなのか・・・。
駄目だな。思考が右から左へ言ってしまう。
私はどう動くべきか考えていると美鈴さんが微笑む。
「さっきも言いましたが、そんな難しく考える事はないんじゃないですか?」
「いや、そう言う訳には・・・」
「なら、考え方を変えましょう。
ここは陰猫さんの思念が左右される幻想郷の一部。
だから、将来的な迷いや不安のある陰猫さんの思いが具現化されてしまった。
これなら、説明が出来ると思うのですが、どうですか?」
美鈴さんが言うようにそう考えると確かに納得は出来る。
今の私には将来的な迷いや現実への空虚がある。
過去の栄華にすがりつき、前を向く事に戸惑いすら感じている。
そのマイナスの思いで幻想郷にやって来たせいで魂猫の将来に翳りが生じてしまったのかも知れない。
何よりもこれを記している私にすら何の感情も湧いて来ないのだから、それが何よりもの証拠なのだろう。
仕事らしい仕事をして満足したら、あとは空っぽーーそれ以外を目にしなかったが故のツケとも考えられる。
それが魂猫の将来を危うい物にしてしまった。
つまりはそう言う事なのだろう。
だから、私がまた強く魂猫の将来を念じれば、この話は終わる筈だ。
それが出来ないーー或いは頓挫すればと何処かで思う私がいて、今回の聖白蓮との間に亀裂が生じてしまった可能性もある。
それが今回の問題なのだろう。
課題が見えただけ、少し光明が見えた気がする。
「ありがとうございます、美鈴さん。
話を聞いて貰って、少し落ち着く事が出来た気がします」
「どう致しまして。陰猫さんを支える身として当然の事をしたつもりですから」
その言葉でまた救われた気がする。
それと同時に私はこの空虚の正体が何となく解った気がした。
幻想郷は時の止まった楽園だ。
先に進む事も戻る事もない。
だが、私は先に進まなくてはならない。
私は人間であり、凡人であり、能力者や天才ではない。
ましてや、幻想の中に留まり続けられる身でもない。
人間であり続ける内はーー外との繋がりを断ち切れない内は私はまだ進まなくてはならない。
すべき事や背けていた事が見え、歯車が戻れば、また前進を再開する。
けれどもーーいや、だからこそ、いま繋がりのある美鈴さんとの関係を大事にしたい。
「美鈴さん。本当にありがとうございます。
お蔭でまた前に進めそうな気がします」
「・・・行ってしまうんですね?」
「迷いその物は断ち切れないですが、私が再度、幻想郷にやって来た事ですべき事は見えました。
美鈴さんの為にも、魂猫の将来の為にも、私は進まなくてはならないんです」
私が「そうでしょう?」と微笑むと美鈴さんは微笑み返してくれた。
幻想郷ーーここは確かに失われた楽園だ。
だから、私が望めば、自身の運命さえも不変にさせる事も出来るだろうし、この世界で最強の地位になる事だって可能なのだろう。
そう言う事が一人一人に許されている世界だからこそ、多くの人々に愛され、様々な物語を幻想郷は産むのだ。
私の思い描く幻想郷もそんな人々の思いの具現化の一つに過ぎないのだろう。
それは魂猫の運命も変わらない。
私は私だけの幻想郷を持っている。
その世界を胸に私は新たな道を進むだけ。
そのケジメの為に私は聖白蓮を説得しなくてはいけない。
迷うのも自身の世界に浸るのも良い。
ただ、それでも先に進まなくてはならない。
それが私であり、幻想入りしても、ただの人間を貫く陰猫(改)と云う作家の在り方なのだろう。
そう思ったら、また少し進む勇気を貰った気がする。
「陰猫さん。美鈴はそこにいらっしゃいますか?」
そんな新たな決意を持った時に咲夜さんがやって来る。
美鈴さんは「すぐ行きます」と云うと私に元気になるおまじないをして此方をジッと見詰めて来る。
「また会えますよね、陰猫さん?」
「勿論ですよ、美鈴さん。私はいつだって傍にいます」
私と美鈴さんはもう一度、キスを交わしてから別れた。
私は部屋に残され、意識を集中して来るべき時に備える。
迷いは未だにある。また戻って来れるかも知れない。
ただ、聖白蓮とは話をつけなくてはならない。
未来で待っている魂猫の運命の為にも。
ならば、私はその親として進まなくては・・・。
せめて、魂猫の産みの親として、それくらいはして上げても良い筈だ。
自問自答の末に私は私の中で答えを見出だした。
あとはそれを聖白蓮に伝えるだけだ。
元のレールに戻るか、それとも別の未来を進むかーー全てはここからはじまる。
魂猫の運命も、思い描く幻想郷の運命も、踏み出し切れない私自身の運命も・・・。
私は私を支えてくれる私の中の幻想郷と云う世界に感謝しつつ、レミリアお嬢様が来るまで、ただ静かに祈りを捧げ続けるのだった。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
-
見たい
-
見たくない