ーー美鈴が選んだ選択肢。
それは陰猫と共に外の世界で暮らすと云う選択だった。
そんなの赦される訳がない。
仮に赦されたとしても、惚れた男の為に全てを捨てて、一時の愛の為に美鈴が外の世界に取り残される事が私には赦せなかった。
だから、美鈴に私が代わりに陰猫と話すと誤魔化し、陰猫にクビを宣告して出禁扱いにさせた。
これで良い。美鈴には悪いけれども、これで目的を失った陰猫は独りで外の世界に帰るしかない。
今頃は紫の奴が上手くやっている筈だ。
そう思いながら部屋から出て、しばらく歩くと誰かとすれ違う。
誰だか解らなかったが、この私の眼が追い付かない程のかなりのスピードであったと思う。
そんな事を思っていた瞬間、陰猫のいる部屋から悪寒を感じて振り返る。
そして、先程、すれ違った人妖が誰かにも、そこで気付いた。
考えるまでもない。美鈴だ。
「美鈴!?」
私が叫ぶが、彼女の耳には主の声が届いてない。
美鈴の目には恐らく、愛しい陰猫の姿しか見えてないだろう。
だから、私も慌てて美鈴を追い掛けて部屋へと入った。
部屋に入ると巨大なスキマが存在していた。
そして、陰猫の姿も美鈴の姿もない。
現状からして紫のスキマに取り込まれたと云う事以外に考えられない。
「紫!これはどう言う事!?」
姿の見えない紫に向かって叫ぶと「聞こえているわよ?」と別の空間からスキマが生まれ、そこから紫が上半身だけ出して現れる。
「美鈴をどうしたの!?
返答次第では容赦しないわよ!!」
「私だって誤算なのよ、レミリア・スカーレット。
また、そちらの門番に一本取られてしまったわ」
紫はそう告げると巨大なスキマを一瞥する。
「この先は無縁塚に繋がっている。陰猫さんに本当の幻想郷を見せる為にね?」
「陰猫の事なんて、どうだって良いのよ!
それよりも早く美鈴を返して!」
私がそう叫ぶと紫は首を左右に振る。
「運命を司る貴女なら解るでしょう?
それを決めるのは紅魔館の門番である紅美鈴自身よ、レミリア・スカーレット?」
「ーーくっ!?」
私はそれを聞いて咲夜の名を大声で叫ぶ。
ーーー
ーー
ー
・・・暗い。
一切の光が見えない完全な闇に覆われている。
そして、ここは空気がとても冷たい。
外なのもあるのだろうが、それにしては異常に寒い。
例えるのなら、立ち入ってはならないところで霊的なものを感じた時みたく、ゾワゾワする。
「大丈夫ですか、陰猫さん?」
「美鈴さん?何処ですか?」
そう言った瞬間、目には見えぬが美鈴さんの手の温もりを頬に感じた。
「・・・陰猫さん・・・まさか、目が見えないんですか?」
ああ。この闇は暗いからなのではなく、私の目が見えないからか・・・。
「どうやら、そう見たいです。
いまはちょっと混乱しているからか、特に気にはならないですが」
「・・・そう、ですか」
目が見えないせいか、美鈴さんの声に静かな怒気が含まれているのが解った。
「あっと、紫さんを責めないで下さいね、美鈴さん。
きっと、紫さんも私の目が見えなくなるのは誤算でしょうから」
「陰猫さん、本気で言ってます?
こんな所に飛ばされたんですよ?
あのスキマ妖怪のいまの行いを知れば、陰猫さんでも怒りますよ?」
美鈴さんは私にそう告げるとしばし、沈黙する。
私も耳を澄ませるが、虫の声や鳥の声に混じって何かの歌声が聞こえる。
「・・・そうか。陰猫さんの目が見えなくなっているのはそう言う事か」
美鈴さんは何か気付いたのかポツリと呟くと私の右手を握る。
「陰猫さん。夜雀に心当たりは?」
「え?夜雀?・・・えっと、確か、ミスティア・ローレライでしたっけ?」
「そうです。あの子についてはご存知ですか?」
「外の世界での知識でならですが、一応は知ってます。
確か、視界を奪う事がーーあっ!」
そう言う事か。だから、私の目が見えないのか。
「陰猫さんも気付いたようですね。
彼女の能力は人を惑わす程度の能力。陰猫さんは知らず知らず、その影響を受けているんですよ」
成る程。それでか・・・。
「しかし、困りましたね。まさか、こんな所で発声練習中だなんて」
なにやら、美鈴さんから焦りのようなものを感じて次第に私も不安になって来る。
「あの、美鈴さん?こんな所って、どんな場所ですか?」
「え?う~ん、と・・・そうですね?
とりあえず、聞かない方が良い場所ではありますよ?」
「え?まさか、地獄街道とかですか?」
「あ、近いですね。まあ、それ位、危険な場所です」
美鈴さんは私が不安になったのを察したのか、いつもの調子で受け答えすると私の手を握っていた手を軽く引く。
「大体の位置は掴めましたし、早く此処から出ましょう!
お嬢様達に叱られてしまいますから!」
「・・・あっと、すみません。
私、紅魔館をクビになったばかりでして」
「え?何があったんですか?」
「詳しくは教えて貰えませんでしたが、お嬢様の機嫌を悪くさせてしまったようで。
紅魔館の出禁まで喰らってしまいました」
「そんな・・・私にはそんな事、一言も・・・」
「美鈴さん?」
目が見えない故に彼女の表情は見えないが、美鈴さんの声には明らかな動揺があった。
私の声に気付いたのか、美鈴さんは「なんでもありません」と返すが、その困惑は隠せていない。
「あの、陰猫さん?」
「なんですか?」
「もしも、なんですが、私が紅魔館よりも陰猫さんを取ったら、陰猫さんはどうします?」
「え?」
まさか、そんな質問をされるとは思っていなかった。
美鈴さんが紅魔館を離れて私と一緒に外の世界でも過ごす、か・・・想像した事もなかったし、発想もなかったな。
「あの、そう言ってくれるのは嬉しいのですが、私にはもったいないですよ」
「そんな事はないですよ!」
「本当の事ですから。それに私の傍よりも紅魔館の方が美鈴さんの本当の居場所だと思うんです。
私の傍にいても美鈴さんを幸せに出来る自信がありませんし、美鈴さんは幸せにはなれないでしょう。
私は自分が不幸であったとしても、大切な人には幸福であって欲しいですから」
そう言い終えた瞬間、しばらくの沈黙の後、額にコツンと何かが当たる。
「あたっ!」
「陰猫さんって馬鹿ですか?」
頬をつつかれるのを感じながら、美鈴さんの呆れた声に思わず、「すみません」と返してしまう。
「自分の事もままならない人が他人の幸福を祈ったって、それは違うでしょう?
そりゃあ、私だって幸福になりたいし、陰猫さんにも幸福であって欲しいです。
祈るのなら、自他共に幸福である事を祈らないと」
「ぐうの音も出ません」
「全く。どうして、陰猫さんみたいな人間って、そんなに背負いたがるんですか?
もう少し気楽に考えれば、気持ちだって楽になるでしょうに」
私が空いている手で頭を掻くといつもの調子の美鈴さんの声がする。
よくは解らないが、美鈴さんは何かが吹っ切れたらしい。
「よし!そうと決まれば、行きましょう!目指すは紅魔館です!」
「え?でも、私はーー」
「私も謝りますよ。一緒に謝れば、お嬢様も解ってくれる筈です」
美鈴さんは優しく、そして、明るい声で私にそう告げると私の手を引いて歩き出す。
この言葉だけでも、どれだけ救われたか解らない。
本当に美鈴さんには敵わないな。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
-
見たい
-
見たくない