それからしばらく歩く事になる。
歩いている内に徐々にではあるが、ぼんやりと美鈴さんが見えるようになって来た。
背景は未だにピンボケしたように薄暗く私にはほとんど、何も見えないが、美鈴さんが握り締めてくれてる温かい手の温もりの感触でそう云った不安はほとんど感じない。寧ろ、落ち着く。
「もう少しで抜け出せますよ」
美鈴さんの声に少し安心した直後、不意に彼女が足を止める。
「こんなところで何しているのだー?」
その声は聞いた事がないが、幼い少女のものなのは解る。
そして、美鈴さんが警戒している事にも。
「そっちの人間は食べても良い人間さん?」
「陰猫さんを食べたら駄目ですよ、ルーミアちゃん」
「そーなのかー。でも、私もお腹ペコペコで何か食べたいのだー」
「・・・弾幕ですか」
美鈴さんはルーミアと呼ぶ少女に呟くと彼女は「そうなのだ!」と答える。
美鈴さんはしばらく黙っていると少し移動し、私を何か硬い物の影に隠れさせる。
輪郭からするに恐らくは木だろう。
「陰猫さん。ここで待ってて下さい」
「・・・美鈴さん」
「大丈夫です。必ず勝ちますから」
美鈴さんはそう言って私の唇にキスをすると私から離れて行く。
未だに目は見えないが、音でルーミアと美鈴さんが戦っているのが解る。
私はただ美鈴さんが無事な事を祈った。
そんな風に祈りながら耳を澄ませていると音が聞こえなくなり、次第に周囲が静寂に包まれる。
・・・終わったのだろうか?
ーーと不意に肩に誰かが触れた。
「美鈴さん?」
「なんだよ。男か・・・」
美鈴さんかと思ったら、野太い男の声であった。
しかも、うっすらと見えるが、体格は人間の数倍はある。
「まあ、この際、なんでも良いか。不味そうだが、贅沢は言えないしな」
ヤバい!こいつ、人喰い妖怪か!
「陰猫さん!?」
人喰い妖怪に食べられそうになった瞬間、美鈴さんの声が聞こえた。
恐らく、異変に気付いたのか、ルーミアに勝ったのかしたのだろう。
「陰猫さんから手を放しなさい」
「な、なんだ、お前!?こいつは先に俺が見付けた獲物だぞ!?」
人喰い妖怪は美鈴さんの放つ気に怯むが、私を放そうとしないーーと不意に肩に触れていた人喰い妖怪の爪が私の肌を引っ掻く。
「ーー痛っ!?」
「陰猫さん!?」
「・・・ああ。成る程な。そう言う事かよ?」
人喰い妖怪は動揺する美鈴さんに何か気付いたのか、私の喉に鋭利な爪を突き付ける。
「動くなよ?動いたら、こいつの命はないぞ?」
「・・・くっ」
美鈴さんは静かに圧迫していた気を抑えると人喰い妖怪と対峙する。
「・・・どうすれば、陰猫さんを返してくれますか?」
「ケヘヘ。素直になったな?
そうだな、俺を満足させられたら、こいつは返してやっても良いぞ?」
「・・・っ!?だ、駄目だ!美鈴さん!
そいつの言う事を聞いちゃ駄目です!!」
私がそう叫ぶと頬が浅く裂けた。
人喰い妖怪が私の頬を引っ掻いたのだろう。
「ーーっ!?陰猫さん!?」
「さあ、どうする?愛しいこの男を見殺しにするか?
それとも、俺に奉仕するか?」
「・・・本当に貴方を満足させられたら陰猫さんを解放してくれますか?」
「そいつはお前次第だな?」
人喰い妖怪の言葉に美鈴さんはしばし、黙っていたが、やがて、意を決したようにシュルシュルと衣服を脱ぎ始める。
このままでは取り返しの付かない事になる。
私に出来る事は何もないのか?
どうして、前回みたいにスペルカードを貰えなかったのだろうか?
そこで私は、ふと、焦っていた気持ちが消失して冷静になる。
ここは私の描く幻想郷と言っても良い。
ならば、"いる"筈だ。
私は静かにあの言葉を呟く。
「例え、世の人が科学に盲信しようと忘れる事なかれ」
『心せよ。そこに真実はない』
私の呟きに闇が答える。
人喰い妖怪も下着姿の美鈴さんも何事かと周囲を見渡す。
私は更に続けた。
「例え、世の人が常識や道徳に縛られようと忘れる事なかれ」
『心せよ。赦されぬ事はない』
そうだ。ここが私の思い描く幻想郷の在り方の一つなら、彼等がいる。
幻想郷を影から支え、密かに監視する彼等が・・・。
「お、お前、なんなんだ!?何をした!?」
「私は何もしてないよ。ただーー」
「お前は幻想郷の禁忌に触れた」
私の代わりに彼がそう告げた瞬間、人喰い妖怪が左右真っ二つに裂ける。
その背後からボロボロの赤い着物に身を包む深紅の髪と瞳を持つ刀の付喪神の男が現れる。
そう。私は彼を知っている。
何故なら、彼もまた私が生み出した登場人物なのだから。
彼は妖刀ムラマサ。
幻想郷を影から支える守護者の一人である。
気が付けば、私の視界はクリアになり、ムラマサと美鈴さんの姿がはっきりと見えるようになっていた。
そして、紫さんやお嬢様達の姿も。
「美鈴!」
「お嬢様?」
美鈴さんはまだ事態が飲み込めてない様子だったが、「ごめんなさい!」と泣き叫びながら抱き着いて来るレミリアお嬢様の背中を優しく叩く。
そんなお嬢様と美鈴さんを見てから、私は紫さんに視線を移す。
「紫さんが意図した事はこう云う事だったんですね?」
「ようやく、理解してくれたようね、陰猫さん。
そう。これが貴方の描く幻想郷よ。
博麗霊夢を中心に幻想郷と云う世界が守られ、貴方が描く幻想郷の守護者達が彼女達を支えると云う貴方ならではのシステムが機能している」
「それを描いている私に自覚させる為にわざわざ、こんなところに送り込んだ、と?」
その言葉に紫さんは妖しい笑みを浮かべて頷く。
成る程。私に能力が与えられなかった謎が解けた。
私には培い、描いて来たモノがあるのだ。
紫さんはそれを私に認識させる事でこの幻想郷にも守護者を持ち込んだ。
つまりはそう云う事なのだろう。
紫さんはひとしきり説明を終えると私に頭を下げる。
「危険な目に合わせて、ごめんなさい、陰猫さん」
「そんな・・・顔を上げて下さい、紫さん」
私が謝る紫さんにそう言うとーー
ーーパシンと美鈴さんが着替え直す事もせずに紫さんの頬を叩く。
叩かれた紫さんは何が起こったのか解らないような顔をしていたが、やがて、私の代わりに美鈴さんにひっぱたかれたのだと理解すると彼女に微笑む。
「気は済んだかしら、紅美鈴?」
「済む訳ないでしょう、妖怪の賢者ーーいえ、八雲紫。私は貴女を赦さない」
「・・・そう」
紫さんは静かに呟くとスキマを作って去って行く。
気が付けば、ムラマサの姿も消え失せていた。
ささやかな時間は終わりを告げ、未来へと再び時が動き出す。
こうして、また未来に繋がる歴史が動くのであった。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
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見たい
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見たくない