そんな訳でまた咲夜さんに部屋を案内される。
正直、同じ扉ばかりでどれが自分の部屋か解り辛くなりそうだ。
「此処が陰猫(改)様……いえ、同僚になる訳ですから陰猫と呼び捨てにすべきでしょうか?」
「咲夜さんの好きな様に呼んで下さい」
「では、私も陰猫さんと呼びましょう。それで此処が貴方の部屋になります」
そう言われて扉を開けるとそこはベッドに小さな机と椅子があるだけの簡素な部屋だった。
「では、私はこれで」
「あ。待って下さい、咲夜さん」
「なんでしょう?」
「大した事ではないのですが、扉に掛ける名札か何か頂けませんか?
このままじゃ、迷いそうで……」
そう言うと咲夜さんは不思議そうな顔をして私を見る。
? 何か変な事言ったかな?
「……名札、ですか?」
「え?そうですけど、こんなに広いと標識がないと困りませんか?」
「いえ、そんな事、考えた事もありませんでした」
「あれ?そうなんですか?」
咲夜さんがそこに考えが至らないとかないと思うんだが……。
まさか、部屋ごとに全て把握しているのかな?
「そう言えば、この舘自体、咲夜さんの力で拡張しているんですよね?」
「え?ええ。あまりにも無駄に広くし過ぎて時を止めていないと掃除とかやってられませんが……」
「なら、縮小しちゃいましょう」
「え?」
咲夜さんは私の言葉に目を丸くする。
「? 何か変な事言いましたか?
時を止めてないといけない位に拡張し過ぎて大変なら、逆に縮小しちゃいましょう?」
「で、ですが、そんな事をしたら……」
「何か困る事でもあるんですか?」
「……いえ、ありませんね」
私の言葉に咲夜さんは何故か落ち込むが、何かを思い出して微笑む。
「あ、待って下さい!
そうだ!図書館!図書館も拡張して本を収納しているから、拡張し続けないといけないんです!」
「じゃあ、図書館に案内して下さい。咲夜さんの負担になっているから止めさせましょう」
「ふ、負担だなんて一言もーー」
「私の役目は紅魔館の負担を軽減する事です。ですから、無理をしなくても良いんですよ?」
私がそう言うと咲夜さんは沈んだ顔をして踵を返して消える。
なんとなく、咲夜さんが落ち込む理由は解る。
完璧なメイドとして今まで積み上げた物が一気に崩れてしまうかも知れないのだから。
だから、私は考える。
どうやったら、咲夜さんの力になれるかを……。
そう考えていると咲夜さんが不意に眼前に現れる。
思わず、ビクッと肩を震わせるが、悲鳴は上げなかったーーいや、驚き過ぎて声を上げられなかったと言うべきか。
咲夜さんは無言のまま俯くと私に名札を差し出す。
「…………さまに……」
「え?」
「お嬢様にパチュリー様の許可があれば、縮小しても良いと許可を頂きました」
「そう、ですか……仕事が早いんですね?」
私は咲夜さんにそう言うと静かに呟く。
「でも、無茶をするのと頑張るのは違いますよ。もっと他の人を頼って下さいね?」
「……解ってます」
咲夜さんはあからさまに落ち込んでいる。
まあ、気持ちは解らなくもない。
それにしても、統合失調症って基本的に二十代後半から三十代前半で掛かり易い精神疾患なんだけど、咲夜さんの年齢は確か、まだ十代後半だった筈だ。
一体、どれだけ無理をして来たんだろうか?
「……私はまだ、頑張れます」
「そうですか」
「本当です!私、まだ頑張れますから!だからーー」
「不安な内はキチンと薬を飲みましょう。永遠亭から薬は貰った筈ですよね?」
「……はい」
私の言葉に咲夜さんはシュンとして頷く。
「今日はもう遅いですし、明日、キチンとお話しましょう?」
「……解りました」
咲夜さんは項垂れながら再度頷くと私の前から姿を消す。
「なかなか、大変そうね?」
「うおっ!?」
背後から不意を突く様に紫さんがスキマの中から現れ、私を驚かせる。
今度は思わず、声が出た。
「驚かさないで下さい、紫さん」
「ごめんなさい。ちょっと場を和ませて上げようと思ってね?」
紫さんはそう言うとクスクスと笑いながら、スキマの中から私の替えの衣服と普段飲んでいる薬を差し出してくれる。
「ありがとうございます」
「気にしなくて良いわ。私もそれなりに楽しめたし」
「え?ガサ入れはしないって言ってませんでした?」
「ガサ入れはしてないわよ?ただ、陰猫さんの部屋にあんなのやこんなのがあったんだと思ってね?
楽しかったわよ。特にセ○ンスド○ゴンって言うゲームが」
「いや、それ、もうガサ入れじゃないですか!
しかも、なんで人のゲームをプレイしているんですか!」
「冗談よ♪うふふっ♪」
私は溜め息を洩らすと紫さんが持ってきてくれた薬を机に並べる。
私が飲んでいるのは五種類、計6錠の薬だ。
「はい。スポーツドリンク」
「あ、ありがとうございます」
紫さんからスポーツドリンクの入ったペットボトルを受け取ると私はキャップを開け、二つの大きめな錠剤を一つずつスポーツドリンクで胃の中に流し込み、小さな三種類の錠剤を一気に飲む。
最後に二粒の睡眠薬を飲み、私は机に眼鏡を置いてベッドに潜り込む。
「お風呂場にある髭反りなんかはどうするの?
持って来た方が良いかしら?」
「……やっぱり、ガサ入れしているんじゃないですか。とりあえず、お願いします」
「はいはい。待っててね♪あ・な・た♪」
なんだか、紫さんが私の奥さんっぽい。
まあ、私は独身だから、多分、それっぽいが正解だろう。
さて、あとは眠くなるのを待つだけだ。
「そう言えば、私以外にも誰か雇うんですよね?」
「ええ。まだ人選は考え中だけど、今週中には決まる筈よ。
まあ、みんな、能力を持った人妖になるとは思うけど……」
「そうですか。それは大変そうだなあ」
私は紫さんの言葉をぼんやりと聞きながら瞼を閉じる。
「そう言えば、貴方のスマートフォンはどうしましょうか?
幻想郷じゃ使えないけど、一応持って来る?」
「……ん。大丈夫です。それに使えないんじゃ仕方ありませんし」
「そう。解ったわ。あ、あとは貴方にも能力を上げるわね?」
「はい。おねがーーえ!?」
私は思わず、瞼を開けて起き上がり、楽しげに笑う紫さんに目を向けた。
「いやいや、こっち来る時に言ったじゃないですか?
私はそう言うご都合主義は書かないって……」
「書かないだけで要らない訳じゃないでしょ?
それにただの一般人の貴方が能力者や妖怪に勝てる訳がないもの。
多少、ご都合主義な展開だったとしても目を瞑りなさい」
「……むう」
「ーーとは言え、本当にただの一般人に過ぎない陰猫さんには異能の才能がないのも事実ね。
霊力だって、その辺の人並みだし、短期間の間に何らかの能力を得るのは実質的に不可能に近いわ」
「そこまで言われると流石にへこみますよ」
「うふふっ。ごめんなさいね。
でも、事実だもの。貴方は本当に職場改善の為だけに呼ばれただけなの。
だから、異変とかを解決しろだなんて無茶な事は言わないし、期待もしてないわ」
「じゃあ、能力者や妖怪に遭遇したら、逃げるか助けを呼ぶかすれば、良いんですね?」
「そうよ。でも、万が一の事もあるかも知れないわ。
だから、これを渡して置くわね」
そう言うと紫さんは数枚の手のひら大の真っ白なカードを机に置く。
「それは?」
「スペルカードよ。名前位は聞いた事あるでしょ?
もっとも、まだ名前も能力もないのだけどね?」
「え?スペルカードって、ただの紙切れなんじゃないですか?
しかも弾幕ごっことか言うので使うんですよね?
私、弾幕ごっことか無理ですよ?」
「勿論、貴方に弾幕勝負で戦えなんて言わないわよ。
これは此処の図書館にいるパチュリー・ノーレッジや人形使いのアリス・マーガトロイド達が開発した一般人の貴方達でも使える特別な術が組み込まれたカードよ。
白符とでも呼べば良いかしら?」
「そんな貴重そうなカードを貰っちゃって良いんですか?」
「ええ。大量生産されて人里に出回ってる物だしね。
それにさっきも言ったけれど、このカード自体には力はあっても、まだ何の能力もないわ。
人里の一般人に使わせても精々、護身用の妖怪避け位にしかならない。能力を持つ私達から見ても、それはただの玩具に過ぎないわ」
「そうなんですか?」
「ええ。でも、物書きの陰猫さんならきっと他の人にはない優れた使い方が出来ると思うわ」
「? それはどう言う意味ですか?」
「まあ、必要な時が来れば、自然と解るわ。
ヒントは"貴方の作品" "キャラクター" "三枚のお札と言う物語"の3つかしらね?」
「???」
薬を飲んで思考がぼんやりとした私の頭では紫さんの言葉に対する答えを導き出す事は出来なかった。
仕方ない。この問題は明日、考えるか……。
「まあ、精々考えなさい。この意味を理解したなら陰猫さんでも異能者や妖怪に対応出来るでしょうからね。
それじゃあ、お休みなさい♪あ・な・た♪」
紫さんがそう言ってスキマに消えると私はもう一度ベッドに身を預け、瞼を閉じて眠りに着く。
紅魔館、短期バイトでR部分をハーメルンだけでも強調するかどうするか悩んでます。私と美鈴さんのエチエチ見たい人っています?
-
見たい
-
見たくない