白水哩の場合①(VR)
白水哩の身には客観的に見ればおかしなことが起きていた。
その一つは知らないうちにインストールされていたアプリ。そして一目惚れに近い感覚で『京太郎』に惹かれどんどんと増していく執着心。
さらにはR指定版が発表されれば勝手にアップデートされていたり、勝手に課金されていた真VRモードの存在。
しかし一番おかしいのは哩その人である。
ハッキングを疑って買い替えたり警察に駆け込むべきこれらのことに対して全く対処も取らず、むしろ当然のこととして受け入れ、満足すらしていた。
起きているときも夢の中でも『京太郎』と睦みあい思慕を重ねる。
以前の凛とした哩の姿を見たことがある人間であれば目を疑うほど、年下の少年に傾倒していた。
だがその事実は表に出ない。哩に注がれる学校内の視線には変わらず憧れが宿っている。
勘のいい数人も(ちょっと雰囲気が柔らかくなったかな)と感じるのがせいぜい。
もし姫子が哩の傍にいれば察することもできたかもしれないが、現状哩は姫子に部長としての自覚を持たせようと距離を置いている。
結果的に水面下での大きな変化を知るのは当人だけだった。
ガチャガチャと哩の両手に嵌った腕輪の鎖が音を立てる。鎖はベッドの支柱に繋がれ、哩がどれだけ暴れても緩む気配すらない。
「こがんことして許される思っとーと!?」
視界もタオルで覆われ哩は完全に囚われてる図式。毅然とした態度で臨んでも今の状態ではただの悪あがき、虚勢に過ぎない。
『思ってますよ。だって全部終わったら哩さんは訴える気なんてなくしてるんですから』
冷笑を口の端の浮かべる犯人の姿は哩には見えず、ただカチャカチャと鎖を弄ぶ音だけが響く。
「こげん男やったなんてっ!」
許せないと息巻いても拘束され逃げるどころか助けも呼べない状態に焦りに歪める哩。
『思わなかった? 見る目ないですね哩さんは。だから簡単に隙を見せる』
「なんばしても無駄ばい! 私は負けん!」
意志の通った言葉に返されるのは楽しそうな笑い声。
信頼していた、思慕を寄せるまでに至った男の裏切りと余裕に、哩は気炎を吐く裏で悲しみと困惑が混ぜ込まれる。
優しく受け止めてくれる優しい人、自分が可愛らしいなんて言葉を送ってくれた人。
好きだった。いや今も好きで、これは何かの間違いなのだと信じたい。そんな縋る気持ちも届かないのかと。
『負けるも何も、もう勝負はついているんですよ。ほら』
ぷつりと制服が音を立て引き裂かれる。肌は掠めないがナイフの冷気が背筋に送られぞわぞわと肌が泡立つ。
危険を感じて鋭敏になった肌につっとなぞられる感覚が踊り、くるくると脇から体の中心に向かって円を描きながら指が肌に押し込むように這う。
「ああ♡……っ」
哩は予期せぬ指使いに一瞬快楽の声を上げ、次の瞬間には唇を噛んで耐える。
だが一度自覚してしまえば無理だった。目を塞がれていればどこから来るかなんてわからない。
気を張ればより肌の感覚が鮮明になり、10本もある指が擦り押され掠る。
「は♡んあ♡はう♡あひゅ♡」
気持ちいいと哩は自覚してしまう、体が目の前の男を求めているのだと屈服してしまえばきっともっとしてくれると悟る。
「負けん♡負けんばい♡」
拒否の声も甘く男を誘う音域になっている。
元々哩自身自分の体が感じやすいとは知ってはいたが、一方的にされる側になってさらにその数倍気持ちよくなってしまっていた。
目を隠されどこからどれぐらいの力で來るのか分からない刺激に勝手に備えようとして、与えられる刺激は快感の波になる。
裏切られた男にされていながら感じてしまっている。
その屈辱とまだ底に残る情がせめぎ合い、心に波立てる。
「負けん♡負けんと♡はう♡ひ♡」
必死に哩は鼓舞する。そうしなければあっさり流されてしまいそうだと本能が言っている。
しかし鼓舞の声の間に明らかな喘ぎ声が入り込み追い詰められていく。
こんな形じゃなく普通に求められれば哩は応えるつもりだった。それなのに男は自由を奪って無理矢理にしようとしてくる。
卑怯な手で抵抗の芽を摘んで、哩を犯そうとしているのだ。
「ひぅ♡ああ♡そんなに♡しても♡私はぁ♡」
ここで一瞬、通常であればありえないと切って捨てる考えが頭をよぎった。
(もしかしたら拒絶されるのが怖かったのではないか? こんな手を使うほどに求めているんじゃないか?)
そんなありえない妄想が一度浮かぶと消えない。
手と目は封じていても痛いことは何もせずただ快感を与えてくる、その事実が妄想を手助けする。
一度は想いを寄せた身、未練で楽観的な幻想に縋りたくなる。
『だって自分はこんなにも愛してるのだから』
人間一人が持つには大きすぎる感情が哩を曲げようとする。その思いがどこから来たかなんて考えもしない。
『ほら、そんな硬くならないで』
唇がふさがれ入り込んでくる舌。体を敏感にされてから口内を優しくかき回し歯茎まで丁寧に舐められくちゅくちゅと音を立てながら哩の舌をからめとって心ごと翻弄する。
(あ♡優しいキス♡気持ちいーと♡)
男性経験どころか濃密なキスの経験もない哩は脳内が桃色に染まっていく。
都合のいい考えに傾き本能のままに自分からちゅうちゅうと舌を吸い、酸欠で頭がぼうっとなる。
無意識に体を開いて肌の上を跳ねる指の演奏に委ねてチリチリとした痺れがたまっていく。
「いけん♡いけんとに♡」
気が付けば哩は抵抗するどころか離れ際の指を追って体をくねらせ、色っぽい吐息をあげながら浸っていく。
自分がなぜ拘束されているのか、合意のない無理矢理だったなんてことはもう思い出すことも難しい。
それより心地いい体の声を聞きたくなり、言葉面だけが体裁を保つのみ。
鎖を鳴らす音と共に哩の肢体はくねり太腿の間が広がり手の侵入を許す。
「こげんこと♡ああ♡あう♡ぅあっ♡」
太腿の付け根をなぞられ大陰唇を爪で掠られれば哩の声は高くなり力が弱まる。それをいいことに『京太郎』は潤いの滴る秘所に唇をつけ舌で浅くかき回しながらいやらしい水音を哩に聞かせようと意図的に啜る。
「んああ♡ひ♡ひん♡あああ♡」
いつもきりっとしたモデル体型で同性からは格好いい美人とみられる哩が完全に女としての一面を表に出し快楽に屈する。
太腿で『京太郎』の顔を挟むも、それは拒否ではなく受け入れる柔らかさを伴っている。
『哩さん』
耳元で名前を呼びながら取り出した男性器の先端が濡れる哩の女性器にあてがわれる。
今までの言葉をなぞらえれば抵抗してしかるべきなのに、哩は言い訳を探す。
(腕縛られて逃げれんし優しゅうしてくるーなら)
どうせ結果は変わらないんだと言い聞かせることで、哩は自分を騙す。
それは目が塞がれ『京太郎』のサイズを知らない影響もある。もし知っていれば恐怖と本能的な期待で少し及び腰になったかもしれない。
だがそんな仮定は意味がなく、受け入れたという結果が残る。
そして『京太郎』は不意打ち気味に哩の奥底まで一息で刺し貫きそのまま腰を振って自分の味を教え込む。
「んひあ♡ひ♡あああ♡知らん♡知らんとー♡ああん♡」
ただの一突きで哩の脳髄が痺れる。男根の大きさにはち切れそうな膣も痛みはまるでなくとにかく気持ちよすぎる。
痛みには耐えられても快感には人は耐えられない。抵抗する気持ち自体が溶け去り求める気持ちしか湧き出ない。
『もういりませんよね、こんなの』
かちゃんと哩の両手を拘束していた鎖が外れ、目隠しも取られる。
完全に自由の身。もう大人しくしている必要などない。ないのに、哩の両手は京太郎の首の後ろに回され自分からキスをねだりに行く。
鏡張りにされた室内でいやらしく哩が犯されている姿が嫌でも目に入る。
鏡に映る哩の表情はどう見ても無理やりされた人間のそれではない。犯されることを悦ぶ一匹の雌としての本性。
「嘘♡嘘やろ♡こげん顔♡満たしゃれとー♡おかしか♡私ぃ♡」
必死で否定しても鏡に映る真実は変わらない。
犯されて感じ、卑猥に男値を締め付けながら腰を揺すって快楽を貪る姿。
白水哩に幻想を抱く輩を悉く粉砕し、現実を突きつける。
自分から男に縋りついて一突きごとに喘ぎ完全に溺れてしまっている。
そして哩の内側からどろどろとした執着心と愛情が流れ込んでいく。
一突きごとに感情は高まり急速に哩の心は堕ちる。
「勝てなか♡チン負けしとーと♡私ば京太郎んのばい♡やけん好きにして♡私ん全部捧げる♡」
トロ顔で宣言する哩に凛とした空気などひとかけらもない。たった一度の性交で自尊心すら投げ出してしまい、何かの薬でも使ったように変心する。
「すごか♡よかよ♡もうと早くにしとけばよかと♡幸せぇ♡」
ほんの少し前に負けないと息巻いていた女性はあまりにもあっけなく虜になり、自分から舌を絡めたキスをしながら抱きつき体の内側から昇ってくるマグマのような熱に焼かれる。
「あ゛あ゛ああ♡」
濁った絶頂の声と一緒にしなやかな肢体を痙攣させ、不覚にも気を失いかけながら男の精を受け取る。
「しゅごかぁ♡なかと無理、生きていけん♡」
完全に一人の男に堕ちた心と感覚は煮詰まり、蓄えられていく。
「あげなことばせんと普通に言うて欲しかとに」
自分の醜態に自己嫌悪しながら哩は八つ当たり気味に『京太郎』の脇腹をつつく。
『そこを責められても……ここ、哩さんの夢ですよ』
「??」
言葉の意味を理解できない哩はわずかに悩むように指を唇の下に。
『この鏡張りの部屋も鎖だって哩さんが用意したものですし、単にこういうシチュが哩さんの願望として顕われただけで。
夢の中に俺が来た時には勝手に縛られてたので、ノリに乗っかっただけですよ』
その言葉に哩は真っ赤に茹で上がる。
「そ、そげんことばなか! 知らんとよ!」
抗議する怒り方が珍しく『京太郎』は苦笑しながらあいまいに笑う。
『じゃあもうやらない方がいいですか?』
「……ずるかよ」
そんな返事をする時点で本心は分かりやすい。
「そげなこと好きやなかばってん、せんのはもっと辛か」
一度知ってしまえば抵抗する心の方が折れる。
恋というには強すぎる想いが満たされる幸福感。拒絶できる方がおかしい。
『じゃあ仲直りのエッチしますか?』
その言葉に頷くのは恥ずかしく、哩は指を絡めながらのキスで答える。
お返しに京太郎が腰を引き寄せ情熱的にお互いの触れ合う面積を広げる。
言葉にせずともくちゅりと哩の秘部は濡れ、再び男を受け入れる準備が整う。
潤滑油がいらないほど混ざり合った体液が凹凸を合わせる。
「ん♡ん♡ひどかよ♡こげなこと教えて♡」
ぐちゅぐちゅに内部をかき乱す男性器の逞しさに哩の思考がだんだんと削がれていく。
『気持ちいい事これからもたくさんしましょうね』
M疑惑のある哩に肉をぶつけ合う音と濁った水音が押し寄せ、どんどん脳髄を痺れさせて獣のようにセックスの虜になっていく。
喘ぎ声がさらに漏れ、一突きされればビクンと軽く体を震わせて唇が綻ぶ。
どう見ても和姦。お互いに舌を吸い合って性感を高め合いお互いの弱い部分を探し出す。
『哩さん、ここ好きですね?』
「ん゛あ♡あ゛う♡あ゛あ゛♡」
ぐりぐりと亀頭を押し付けるだけではなくカリで引っ掛けこそぎ、ねじりながらの突き入れ、哩自身の体を掌で押してこすれ合わせる。
そんなふうに敏感な部分を責められ開発されていけば哩の正気は一気に削られ気持ちいいことしか考えられない獣へと確実に堕ちていく。
一番たちが悪いのはそうやって性欲に従うほど確実に気持ちよくされ溺れていかされること。
幸福なら他がどうでもいいという考えが付きまとい、哩は手の中の幸せと目の前の雄への屈服心が培われる。
いくらでも深く堕ち、快楽のために全てを捨ててもいいとすら思いこみ、邪魔するものを全て敵だと感じる。
朦朧とした意識にどこからか流入してくる感情が刻み込まれていく。
自分を慕ってくれた部員、同期、後輩、相方と呼べる相手。相対的にこの雄の方が大切だと快感の中で刷り込まれる。
目の前の快楽、愛情、幸せ。これが自分にとっての一番だと感じずにはいられない。
獣のような声をあげながら哩は自分の魂自体を痺れさせ漂白されて『本当に大事なもの』を中心に再構成されていく。
人一人分にはあまりにも多い情欲と執着に哩という存在は流され、与えられる気持ちよさに浸って酔う。
だから気づかなかった。哩だけではないとすれば、その願望や感情がどこから来たかなんて、今はまだ。
繰り返せば繰り返すほど取り返しがつかないレベルで心が侵されていくなんて、普通の男女関係では見られないから。
だからまた哩は『間違える』。
哩姫の縛られる方担当、白水哩さんの出番でした。
この話では哩姫の関係は少し拗れてしまっているので、仲良く共有できるかはまだ分岐してません。
つまりは次が姫子回なわけです。
姫子の依存度は次回明らかに。
哩さんがちょっとおかしくなってるように見えてもまだ重くない、たぶん。
よりエロエロを哩にすべきか姫子にすべきかは割と悩みました。
しゃんとしたかっこいいお姉さま系女子は恋をするとダメダメになるか、表には出ないけど内心で恥じらってるとかが可愛いと思ったりします。
哩姫は本体と出会ってもその後の選択次第で地雷が怖い
次回更新は?
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