新子憧の場合(リアル)
男性恐怖症とまではいかないまでも、異性に対して苦手意識というものを憧は持っていた。
元々は中学の頃、急激に花開くようにきれいになっていきお洒落にも目覚め始めた時期に同級生の男からちょっかいをかけられたことが原因だった。
まだ中一という子供感覚が抜けない男子はいたずらや嫌がらせのような行為でしか恋愛感情を示さなかった。
そして当然ではあるがそんなものは女性の心を傷つけるだけで響くことはない。
ましてや当時の憧は親友たちと離れ一人知り合いのいない中学へと進学した矢先だった。
庇われることなく、気を引こうと方向性の間違った求愛行動を当然のように拒否した憧に待っていたのは逆切れと暴言だった。
そんなものを受けて苦手意識でとどまったのは憧の善性ではあるが、同時にこのまま苦手のままでいるのが問題という認識は憧自身正確に理解していた。
それゆえに取ったのが仮想彼氏という、電子上の男の子で慣れるという手段。
これなら罪悪感もなく練習として割り切って運べると、最初は思ったのだが。
龍門渕財閥による異常なまでに力を入れた技術によるリアルさと、妙に人の心の中に入るのが得意な『須賀京太郎』という仮想の相手に徐々にハマっていく感覚に陥っていた。
そしてそれを社会不適合につながりかねないと判断して、手遅れにならないうちに手を打つ賢さが憧にはあった。
そして同時に、異性が絡むことで憧が頼れそうなのは初瀬と和くらい。
さらに田舎ゆえに本気で惚れられると面倒だというリスク管理から古くの幼馴染を頼ったのが分岐点だった。
あるいは、二人を引き合わせた和こそが最大の失着を成したともいえる。
学園のアイドルとして人気はあるものの男性からは遠巻きにされ、いやらしい目線も向けられる彼女にとって信用できる同世代の異性となれば一択にならざるを得ないという事情があるにせよ。
また、清澄の人間は一貫して恋愛アプリとしての『彼』よりも現実の方を優先し、その世間での評判にも関心を向けなかった点で事態を甘く考えていた。
手を伸ばせば当の本人がいる状況でわざわざ電子上の存在に頼る状況なんて、振られた先に依存する場合ぐらいしかなかったという言い訳もできるが。
「須賀くん、こちらが私の古い友人の憧。憧、こちらが同じ部活仲間の須賀京太郎くんです」
「よろしく、新子さん。一方的だけど画面越しや和から君のことは知ってたんだけど、初めまして」
「え、あ、その、うん」
電子上にしか存在しないと思っていた存在が現実世界に見わけもつかないレベルで実在している。
さらに言えばその相手は恋心に育ちつつある気持ちを無理矢理捨てた先に現れたのだから困惑しかない。
その困惑を和は初対面の男への戸惑いだと取るあたり、和は人の機微を感じ取れない部分がある。
「須賀くんは見た目より紳士的ですから、そういう意味では憧と似てるかもしれませんね」
「見た目よりってひどいな」
「接すればすぐに誤解だと分かるところも似てますよ。だから、おいたはダメですよ」
和にしてみれば珍しい茶目っ気を出してみたのだが、返ってくるのは苦笑である。
京太郎からすれば初対面である友人の古なじみに変なことなどできないし、憧は完全に状況についてこれずガチガチになっている。
潜在的に憧が転ぶ可能性が高いことなど分かるわけもなく、和はそんな固まってる憧の様子からそういう心配はないかなと勝手に誤解をして釘を刺すだけで場を離れる。
京太郎からすれば憧の存在はテレビ越しに見ただけの相手、同世代の有名人という感覚。
一方で憧からすればあわや電子上で恋に傾きかけた相手が現実世界に現れたのと変わらない。
感覚としてはガチ恋している推しとばったりデートする状況になったのに近い。
手を伸ばせば触れられる、しかもその当の本人はその辺の自覚も警戒心もなく距離感が近い。
手をつないでないとすぐ迷子になる幼馴染や肉体的コミュニケーション過多なタコス娘の影響でバグった部分もあるが、そんなことを知らない憧にとってはひたすら心臓に悪い。
悪い意味でではなく、どうしてもドキドキして意識してしまうという方向性。
ふとした仕草や指先に視線が行き、聞こえる息遣いに身をすくめる。
それを警戒されていると取った京太郎は軽く頬をかきながら若干困った様子で落ち着いた場所を提案する。
「あー、なんか軽く食事でも取るか? ケーキのうまい店そこにあるんだけどさ」
さらっと女性趣味のお洒落なカフェを進められる辺り、女所帯で日々を過ごしている経験が出ている。
本人自身別に甘いものが嫌いなわけではないので特に違和感すら持っていないところが完全に侵食されていた。
そんな誘いにいまだに衝撃から立ち直れていない憧は指を袖に引っ掛けて無言で頷く。
その顔色が恥じらいを含んで少しばかり紅潮していることに気づかれないのは幸か不幸か。
「その、今日はよろしく」
やっと口に乗せられたのはつっけんどうに取られそうな言葉で、言った瞬間に当人は後悔したものの言われた側はもっと切れ味の鋭い言葉に慣れているため一切気にしていないというすれ違いがここでもあった。
女子やカップル向けのカフェに何の疑問も抱かず堂々と入るあたり京太郎は毒されているとも見えるが、実際のところ彼は甘党であり何らかの言い訳を作ってこういった時間を過ごすのは好きだった。
普段からしてレディースランチを幼馴染を盾にしてねだるわけであるし。
そういう面では憧の緊張をほぐすための店選びとしてはWIN-WINであるともいえる。
「俺はガトーショコラとアールグレイにしようかな。新子さんは?」
「あ、あたしはこの『ふわふわパンケーキ』と、飲み物は何が合うの?」
「パンケーキがベリー系ソースだからホットチョコレートとかがいいんじゃないか? 長野はちょっと冷えるしな」
さらっと、住み場所との気候の違いや女性の体の冷えにまで配慮するあたりが本当に女所帯に慣れている。
完全に無自覚に、女に自分のことを見てくれていると勘違いさせるタイプの習慣が叩き込まれていた。
そして見た目こそ遊んでいる風に見えるがその実男性経験など一切ない憧からすればこういったさりげない思いやりが一番来るものだったりする。
特に女の都合を考えずにぐいぐい来て、それで拒否されたら悪態をつくような中学生男子に軽いトラウマを抱いているタイプにはこういう余裕ありげで優しげな所作にときめいてしまう。
ぶっちゃけそんなものは経験でいくらでもとりつくろえるものだと知らないから、浅い経験で『この人は他の人と違う』なんて思い込んでしまうのである。
実際にどうかよりも自分で考えて出した答えを優先してしまうのは人の性。
「あ、ありがと。あたしの出身、知ってるんだ」
「そりゃ決勝で当たってるし、新子さんくらいきれいなら忘れないって」
「ふ、ふきゅっ。あちゅっ」
京太郎側からすればいつもの軽口なのだが、憧からすれば気になってる相手に口説かれているようなもの。
焦ってごまかすために口につけたホットチョコレートが思った以上に熱くて舌先を火傷してしまう。
「平気か? ほら氷咥えとけ。意外とおっちょこちょいなんだな」
「ん、にゅ」
指につまんだ氷を舌に押し当て、男の筋張った女の子とは違う指を不意にちろりと舐めてしまって憧の頭は茹る。
カフェなんて場でエッチな考えが頭によぎってしまって、一度意識したらいけないことだけに離れなくなる。
ぐずぐずに頭がピンク色に侵されて普段の明晰な思考が鈍ってしまう。
「火傷ひどくないか? 舌出してみ」
間近で心配そうに顔を覗き込まれ、頬に手を添えられて何を勘違いしたのか憧は顔自体を突き出して唇を重ね、火傷してヒリヒリしする舌を冷ますために男の唾液を塗りたくっていく。
「ちゅる、じゅ、ちゅ、ん、ん、ふは、んちゅ」
初対面のはずの男と長い長いキスの末に、発情した潤みきった瞳で男を請う。
「おかしいの、あたし……こんなのあんたが初めてで、自分でもなにがなんだか」
茹であがった顔を見せないようにとうつむかせながらも自分を痴女のように見られてないか気にかかって、上目遣いでちらちら見ながら、服を軽く引っ張って構ってほしいと無意識にアピールしている。
もう男に慣れるだとか、そういう最初の目的はどこかに消えている。
本気でいいなとハマりかけている画面の向こうの存在がこんなに自分だけに特別に優しくしてくれているような実感を得てしまえば、それがただの先走りだとしても沼に落ちる。
しかも次に会えるのはいつか分からない、憧の方から会いたいだなんて和に告げれば、流石に警戒されて取り持ってくれないことは女の勘でうっすらと理解しているからなおさら。
そして男側からすればこんな外見遊んでそうな女の子がその実経験ゼロのくせに滅茶苦茶にされたがってるところを見せれば、鋼の意志があってもホテルにくらい連れ込む。
お互いが望んでしまえば急展開でも若さに任せて繋がってしまうことも仕方ない。
「あ♡これすご♡京太郎で突かれるの、好きになる♡」
どうやってホテルに来たのか、そして会って数時間の男に処女を散らして貪られているのか、ろくに記憶がない。
ただ甘い疼きに導かれるままに媚びてお願いをして、服が乱れるのも汚れるのも貫かれながらキスしてもらうことに比べればどうでもいい。
「初めてでこんなぬるぬるとか、根が淫乱なんじゃないか? エッチに誘ってきつく咥えこんで」
小柄でありながら出るところは出ている、ここ最近で男好きのする肉付きの良くなった体は京太郎の手で捏ねられるたびに敏感に跳ねる。
尖った乳首を爪でひっかき擦られるのと腰がビクビク連動して、キュンキュンと初めての男根を味わおうと締め付ける。
「貴方だけ♡あんたの前だけこんななっちゃう♡気持ちいいの♡初体験で感じて♡嵌まってダメになるぅ♡」
今まで男を敬遠してたのが今自分を犯してくれる雄に出会うまでの伏線のような勝手に自分に都合のいい理由付けをして、憧は今この瞬間に与えられる快感に溺れるために頭の中を少しずつ作り替えていっている。
一突き奥をぐりぐりと張り出したえらで押し込み削られるたびに、誰にも触られたことのないピンク色の乳首を嚙まれて背筋に走る電流に甘い嬌声をあげるたびに、こうなることが運命だったかのように感じだしていく。
「あんたにされるのよすぎて♡あんたも、あんたのペニスも♡大しゅき♡他無理になるぅ♡」
かき回されて涎を口の端からこぼしながら、何度もキスを重ねて舌を激しく絡めて憧はこれから先もこの関係を続けたくて、自分から服従しそうになっている。
ごつごつとした突起に責め立てられるごとに頭に白い光が散って、まともに思考がまとまらない。
初めての強烈な快楽に目がくらんで、抵抗も思いつかないままずぶずぶにに沼に沈んでいく。
押し寄せる快楽の波にへこへこと腰を振って蕩けた発情顔でツインテールを振る乱れ姿は、男が苦手だなんて言ってもきっと誰も信じてくれない。
「和ごめん♡あたしこの人のモノになりたい♡マッチングしちゃって♡忘れられにゃい♡おまんこ悦んでるからぁ♡」
子宮がペニスの打ち付けに孕まされたがって迎え入れてガツガツに侵略されることで嬌声をあげながら身をよじり、バック寝姿で杭打ちのように最奥に望みながら胸を揉みしだかれ何度も意識が飛ぶ。
ベッドに押し付けられながら突起をくりくり弄られて愛液がシーツに染みを作りながらやらしい声を抑えられずに鳴いてしまう。
ガンガンに打ち付けられるのが嬉しくて気持ちよくて、犯されることがたまらなく好きになる。
貪られることが、雌として扱われることが、男の棒でかき乱されてぐちゃぐちゃにされるのが癖になって前の自分に戻るのが無理になってくる。
ここ数ヶ月で急成長して女の子らしくなった肉体はこうやって食べられる運命だったんだと感じればさらに溺れる。
肉のぶつかる音と濁った水音が混ざって淫らな香りが正常な判断を奪って交尾に傾倒する度合いがどんどん増していく。
「好きぃ♡頭壊される♡おチンポで狂っちゃう♡またイク♡止まんない♡こんにゃのぉ♡ぉぉおあ♡んひぃい♡」
処女だったのに絶頂を味合わされ続け、ドロドロに溶けた頭に顔を近づけて舌の濃厚に絡むベロチュー。
触覚、聴覚、嗅覚、視覚、味覚。五感のすべてを使って新子憧という存在がセックスに勝てないと覚えこまされていく。
この男に犯される日々の甘美さに脳が蕩け、勝手に膣が締まって孕みたがる。
毎日毎日毎日、こうやって抱かれる日々を想像して憧は期待してしまう。
初セックスの虜になって、何のために今日を迎えたのかまで上書きされていく。
「憧、可愛いぞ。もっと俺でおかしくなってくれ。たくさんいろいろな顔見せて」
「なりゅっ♡おかしくなってゆ♡もう京太郎なしはやだ♡ハメまくって♡好きにされるのいい♡乳首もおまんこの奥もビリビリぃ♡イグ♡何回も♡くあぁぁ♡壊れ、イグぅぅう♡あ”ああ”♡はひゅ♡」
呼吸すら怪しくなるほどの絶頂の嵐の中で体の奥に濃厚な種付け汁でマーキングされては、意識ごと漂白されて本能レベルで刻まれてしまう。
ドロドロに溶けあう感覚が忘れられずに体が疼くように開発されていく。
「ごめん、なさい。初対面なのにこんな淫乱に。あなただけなの、説得力ないけど、信じて」
自分が男の立場でも遊んでる女判定すると分かっているから憧は縋りつくしかできない。
ただ一夜の関係でポイ捨てされるのが嫌で、そのために自分を安売りするしかない。
それが愚策だと分かっていても関係を切られないように、本当は普通の恋愛がしたくてもそれをできなくしたのは自分のせい。
「あんたのモノにして。今は都合のいいセフレでも、呼び出したらハメれる穴でも。本気、だから。いつか私の気持ち信じてもらえるまで」
衝動的にやらかしたことに心がバキバキに折れて自己肯定感ゼロの泣きつきに、京太郎は呆れの混じった息を吐いて。
「あのさ、そりゃ順番もめちゃくちゃだし段階色々すっ飛ばしちゃったけどな。いいなと思ってない子に手なんて出さないし、責任とらないほどクズ極まってないつもりなんだけど」
和にあれだけ釘を刺されていて結局このありさまであることは弁解のしようもないし、どの面下げて報告すべきかは頭が痛いのは京太郎としても一緒ではあるが。
行為の合間に交わされる睦言や口づけから伝わる温度で、憧の本気度は疑ってはいなかった。
「だから、な。あー、やっぱ先にしとくべきだったよなあこういう話。その、憧さえよければ正式にお付き合いさせてくれ。遠距離で色々大変なこともあるけど、連絡はマメにするよ」
体から始まる恋なんて、憧からすればレディコミの与太話だと思っていたことがよりにもよって自分発端で身に降りかかって息をのむ。
思考停止の地祇に沸き起こったのはもちろん歓喜の感情。
「……うんっ。あたしこそ、お願いします。連絡先、交換しとこ?」
自分で口にして、憧は本当に順番の無茶苦茶さに笑ってしまう。
疑似デート、キス、エッチ、告白、連絡先の交換。
全てがおかしいし、一歩間違えば大人のお店でありそうな流れだと気づく。
「……ね、おっきいの、当たってるんですけど」
ポチポチとスマホを操作している間に、復活していたブツをお尻でぐにぐにと刺激する。
「う、すまん。シリアスブレイカーで」
普段から、こういう時でなくとも空気を読まずぶち壊すことがあるといわれる男須賀京太郎。
「ま、まあ今日はまだ時間あるし、あたしも長野との往復は毎週はさすがに無理だし……その、もっとここに好きの証、くれる?」
いくら思いが強くても物理的な距離とそれを埋めるための金銭は限界がある。それなら一回の逢瀬で、濃い時間を過ごしたいと思うのは当然だった。
「憧、淫乱じゃないみたいなことを言って、掌返しすごいな」
「あんた限定だもん。それとも、エッチな子は嫌い?」
心が軽くなったことでからかうように微笑む余裕が憧にもできる。そこに淫靡さと色気が混じるのはちょっと前の憧にはできなかっただろう。
「いや、すごく好き」
ラブホの中に再び嬌声と肉の交わる音が響いていく。
妊娠のリスクも考えずに濃厚な白濁汁を子宮深くに受け入れていやらしく腰を振って悦ぶ。
体を余すことなくまさぐられて男のものになっていく充足感に疼きながら何度も締め付けて射精を促す。
二人きりの享楽の宴は、体力と精力の限界を迎えるまで何度も何度も続く。
新幹線を逃すことを確定して慌てて後ろにずらす電話をする間もハメられながら。
結局終電のぎりぎりまで交尾に耽る。
たった一日でパイズリフェラなんかをはじめとする大人の女の技を覚えて、また会う時までに上手くなるように雑誌なんかで勉強を誓って、憧は染まっていく。
他の男が苦手であることなんか、そもそももう他の男に近づかない。
ずっと京太郎と一緒にいれるなら問題もさしてない。
そもそもが多少距離を置いていればどうとでもなるし、相手から来るなら男付きであることを言って、それでもアピって来るなら盛大に拒否ればいい。
唯一不幸があったとすれば、数日和の目があまりの急展開に虚ろになっていたことぐらいである。
それもまあ、いろいろと弁えていることもあってその週のうちにはお祝いと、ちょっとした『男嫌いってなんだったんですか』とちくっと皮肉られるだけで済んだのは、平和と言ってよかっただろう。
なお後日、憧に彼氏を紹介するように部活仲間たちが騒ぐ一幕があったりもしたが、それはまた別の話。
いつ振りか思い出せないほど久々の投稿。
「貞操観念とは?」と書いてて思ったが、この作品では照以外は比較的壊れている事実を思い出す。
色ボケはしてるけどたぶん純愛、メイビー。
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