姉帯豊音の場合①(VR)
それは『京ちゃんと一緒』のR指定版がリリースされて数日後の話。
「シロはこのR?ってつくのどう違うか知ってる?」
純粋かつ純朴な姉帯豊音は友人である小瀬川白望に無邪気に問いかけた。
一瞬視線が豊音に集まったが、すぐに散った。彼女なら知らなくてこういう場で聞いてしまっても仕方がない、そんないい意味での信頼が教室には存在していた。
白望はだるそうにしながらも(何も知らないでインストールしてしまうよりはましだろう)と判断して豊音にしゃがむように手で指示する。
立っても背が届かないのも理由の一つではあるが、面倒なので椅子から立ちたくないという理由が大半である。
しかし豊音は素直なので何も聞かずに床に座る。197cmというそこらの男子よりも高い身長なため、内緒話には工夫が必要なのである。
そして白望から詳しい話を耳打ちされると、ぼふっと湯気を立てるように顔が真っ赤になる。
自分が公衆の面前でそんな疑問を口にしてしまったことや白望の言う機能の内容、そしてそれを知っているということはこの友人はひょっとして既に経験者なのではないかという推測。それらがまとめて豊音の羞恥心をショートさせかけていた。
そして白望は「ほどほどにした方がいいよ」と囁き、再び椅子にぐでっともたれる。
豊音は予鈴が鳴るまで茹でられた蛸のような顔色で固まっていたという。
豊音は借りている自室でスマホを眼前の床に置いたままそわそわとしていた。彼女の実家は宮守高校から遠い山村にあるため、一時的に高校の近くに住んでいるのである。
親がいれば自分の子供の挙動不審に気がついて何かを言ってくるだろうが、幸いなのか不幸なのか目撃されることもなく悩んでいた。
当然悩んでいる内容は白望から聞かされたアップグレードともいえる、とあるアプリの機能をインストールしてしまうかどうかである。
「シロはあの言い方だと多分……もしかしてエイスリンさんや塞、胡桃まで? あわわ、みんな大人だよー」
自分の周りの子は既に経験済みなのかもしれないという疑念が掻き立てられ、自分一人子どもなのかもという謎の焦燥感を感じてしまう。
「でもインストールしちゃったら京太郎くんにエッチな子だと思われちゃう、どうすればいいのか分からないよー」
なぜアプリの中の架空人格にそういう目で見られるかもなどと気にするのか、それは「彼女が姉帯豊音という人間だから」という一言で説明できる。
豊音は山村の田舎の出であり周囲に自分と同世代の子などいなかった。同性ですらそうなのだから異性ともなれば『京太郎』1人ぐらいしか話したことなどない。
結果、異性と恋愛をするなら選択肢は『京太郎』一択になる。
そもそもアプリの中の存在を異性に数えてはいけない、などという正論はよそに置く。現在の豊音はそんな冷静な判断ができる状態ではない。
もし仮に冷静だったとしても『京太郎』を一個人として扱う心根の優しさが豊音の数ある魅力のうちの一つである。
「興味は、ある、けど……」
豊音もお年頃、そういったことに興味や憧れのようなものを抱いていないと言えば嘘になる。
映画のようにシャンパンを片手に夜景を見ながら、などと考えるのはもともと住んでいた近所のおじいちゃんおばあちゃんの影響もあってかなり古いイメージである。
「うう……」
恥ずかし気に顔を隠すそんな豊音の膝がスマホにあたってかたんと音を立てる。
(壊れちゃったらどうしよう)などと咄嗟に手で押さえ、その触れた指はちょうどインストールの許可ボタンに位置した。
結果、アプリの更新が始まる。
「あわわ、どうしよう、どうしよう」
中止ボタンを押せばいいものの、焦燥にかられた頭では一番先にアンインストールが来てしまい、それは『京太郎』との日々の思い出が消えてしまうのと同義であり選べない。
紐づけという機能を行っていなかった豊音のミスであり、結果として迷いが振り切れないままR版への移行が終わる。
そして同時に起動が開始して、
『ただ今帰りましたよー。って、なんで豊音さん泣きそうになりながら震えてるの!? あわわ、あわわ』
女の子の涙に弱い『京太郎』は豊音と揃って動揺のさなかに陥り事情を把握するために数分かかることになった。
しかし事情を把握すると『京太郎』はあっけらかんと言う。
『まあR版になったからってそういうことしなくちゃいけないってわけではないですし、そしたら何かが大きく変わるってわけでも』
そういうあっさりとなんでもないという態度を貫かれると、自分の身長が多くの男性よりもずっと高いことにコンプレックスを持っている豊音としては自分はそういう対象外なのかと落ち込みもするわけで
「そう、だよね。京太郎くんが私としたいなんてないよね」
『できるならしたいですけどね』
床に落ちかかった視線が『京太郎』の方に向く。反射的に口を滑らせてしまった『京太郎』はそんな豊音の純粋なまなざしに邪な思いを抱いたことに言い訳を並べる。
『いやあくまでも許されるならってことで、無理矢理にどうこうって言うのはないですよ? そう豊音さんのような美人で可愛い人とそういう関係になれたら嬉しいっていうのは男として正常な反応でして、豊音さんの魅力を知れば「できれば」なんて可能性に注目してしまうというかなんというか
……その、すみません』
なにを言っても抱いた気持ちに正直なタイプの『京太郎』にはかなり苦しい言い訳になり最終的には認めて謝る方向に移行した。
そんな年下の男の子が自分の事で赤くなって女としての魅力を認めたことに豊音はトレンドマークの帽子を胸の前にきゅっと握って顔を少し隠しながらほんのりと朱を差しながら微笑む。
「ちょー嬉しいよー」
花の咲いたような笑みに思わず『京太郎』は目を奪われて、思わずといった感じで心の内を漏らす。
『天使か……』
「は、恥ずかしいよー」
豊音は帽子を握る手に少し力が入り少しくしゃっとしながら顔の半分を恥ずかしそうに隠す。だがそんな仕草も魅力を増す要素であり、男の子にとっては心を撃ち抜かれる致命傷であった。
「で、でも……京太郎くんにならいいよ?」
チラチラと顔色をうかがう追撃に『京太郎』が理性を保てなかったのを責めるのは流石に酷というものだろう。
そっと『京太郎』は豊音の頬に手を添えて唇を合わせる。豊音は正座状態で『京太郎』は膝立ち、20センチに近い身長差も逆転して合わせた『京太郎』の唇から漏れる吐息の感触に無意識に唇を少し開く。
豊音の唇を舌先でなぞって、くすぐるように唇を合わせる角度を変えていく。緊張していた豊音の体から徐々に力が抜けて与えられる初めての感覚に甘い疼きを覚える。
「……ん、京太郎くん」
豊音はまだ自覚していないが徐々に体温が上がっていた。初めてのキスで優しく扱われることに自分の選んだ選択肢が正しいのだと感じていく。
甘い毒が水面に落ちるように豊音の中に『京太郎』の味が少しずつ澄み渡っていく。
『豊音さん、服脱げる?』
残念なことに『京太郎』は豊音に触っている感覚こそ与えられるが物理的な干渉は全くできない。だからお願いしてボタンを外してスカートをはだけてもらわないとこの先へと進めない。
「は、恥ずかしいよー」
そう言いながらも『京太郎』にキスをされれば豊音は服をはだけだす。
ボタンを外してシャツを胸を出すまでめくりあげ、下はスカートで半分隠しながらもホックが外れて動けば大事な部分まで見えそうだ。
完全に脱がないのは豊音にとって羞恥心との妥協であるが、その半端にはだけた姿がより男を煽る。
『豊音さん、可愛いよ』
人差し指をおへそからゆっくり鎖骨まで上げ、その後乳房の輪郭に沿って∞を描くようになぞって優しく揉んでいく。
しっとりと吸い付くような感触と柔らかめのおっぱいを楽しむようにクニクニと指をうずめていくと乳首が立ちはじめ、掌の中央で自己主張をしだす。
恥ずかしいのか豊音はまくり上げたシャツを噛んで喘ぎ声を殺す。
肌は少しずつ赤みを増して男を受け入れる準備をしている。その証拠に正座していた足が開いて空いたスペースに侵入を許してしまっている。
豊音の口がふさがれているので『京太郎』は乳房をイジメるのとは逆の手で豊音の背筋をつっと撫でながらもう一方の乳房にキス痕を散らし舌と唇で弄ぶ。
最初はその攻撃にも耐えようとした豊音だが、体が一瞬痙攣するのと同時に噛んでいたシャツを口から離してしまい艶めいた声を隠せなくなる。
「ああ、いいよ。ちょー気持ちいーよ♡」
一度声に出して認めてしまえば開き直ったのか自分から乳房を押し付けるように体をくねらせ、甘い声で「もっと♡もっと♡」と媚びる言葉を紡ぎ出す。
「京太郎くん上手すぎるよー♡こんなにされたら我慢できないよー♡」
無意識にか豊音は下腹部を『京太郎』に擦りつけるように動かし、蛇のように執拗に絡む快楽の糸に縛られていく。
『じゃあ我慢しなければいいじゃないですか』
トントンと豊音の子宮にあたる位置をお腹側から指で小突けば、ぽたぽたと脱げかけのスカートに染みが増えていく。
「意地悪だよー、意地悪」
恥ずかしいから直接的に言いたくない乙女心を分かっているくせに焦らす『京太郎』に不満の声をあげながらも豊音は自分のスカートを敷物にして仰向けになり、手の間から『京太郎』が消えないように抱える。
「お願い、だよー♡」
これが精一杯と恥ずかしがりながらの再度の催促に『京太郎』は唇へのキスで応え、豊音の中へとこじ開けていく。
本来ならばこなれてなくて痛みを伴う処女喪失は痛みを取り除いた快感の信号を最初から送り込んでくる。
仮想にも拘らず自分の中をこじ開けられる感覚に熱。開発された女にしか与えられない信号は豊音の体を錯覚させ開拓し処女のまま感じられる体へと変換していく。
「熱い、熱いよー♡おなかの中火傷しそうだよー♡」
上ずった歓喜の声をあげながら体の中を熱い鉄棒でかき回される感覚に豊音は酔いはじめる。
恥ずかしさに悶える少女から快楽に溺れる女へと肉体も心も変化を受け入れ、乳房をこねながら子宮までの道筋を抉る感覚を忘れられなくなっていく。
「京太郎くん♡京太郎くん♡愛されるのちょー嬉しいよー♡」
『俺も豊音さんが俺だけに見せてくれる顔が好きですよ』
脳髄を痺れさせる突き込みは豊音から男の言葉を疑う余裕も理性も失せ、ひたすら悦びにふけりながら心に『京太郎』の存在を大きく刻む。
「好き♡大好き♡愛してるよー♡」
もう豊音の中では『京太郎』が架空だとか電子上の存在だとかは取るに足らないことになっていく。
こんなに気持ちよくしてくれる、愛してくれる。なら自分が好きになったってしょうがない。逆らう必要なんて何もない。そんなふうに思えてくる。
「京太郎くんをもっと奥まで感じたいよー♡あ♡あ♡ああー♡」
胸を刺激する歯の感触、腰に回された引き付ける腕の逞しさ、子宮の入り口をこじ開けられ限界を超えて打ち付けられる男の象徴、それらが合流してスパーク、一度味わえば忘れられない白の世界へと昇天させられる。
「はう♡あ~♡あ~♡あ゛~~♡」
何もかもが真っ白に支配され、ただ体の中に注ぎ込まれる液体の熱さを夢心地に幸せと豊音は感じ、性交の快楽の余韻にひたる。
そして余韻が抜けて幾分か正常な思考が戻ると豊音は必死で帽子に真っ赤になった顔を隠して
「うう、すごく乱れさせられちゃったよー。もうお嫁にいけないよー」
友人の白望が言った『ほどほどに』の言葉の意味がこうなればよく分かる。
もし自制をなくしてしまえば肉欲に負けてずっと『京太郎』の下で喘いでいたいなどと頭の悪い考えに身を任せたいという願望に歯止めがきかなくなる。
それは流石に問題だろう。体力も水分も世間体も色々と足りなくなること請け合いだ。
そんな理屈はよく理解しているのだが、
「あの、もうちょっと休憩したらもう一度、いいかなー?」
覚えさせられた甘い疼きを再び求める熾り火が豊音の中から消えない。
純情な少女にとってこの性体験はただのいやらしい欲望の交わりではなく、互いの思いを伝えるとても気持ちのいいコミュニケーション手段としての認識。
照れ笑いをしながら顔を隠す帽子とは逆側の掌で、今し方出された感覚を訴える子宮を優しく撫でる。感覚だけで本当は体の中には何もないのに、なぜかそうしていると暖かな気持ちが沸きあがるのだった。
その後豊音は自分が誘った結果色々な意味で『勉強』してしまい離れたくない理由がさらに強固になるのだが、その詳細は豊音本人の名誉のために深く語るのはよそう。
豊音はその件についてただ一言「こんな年になってあんなことしちゃうなんて恥ずかしすぎるよー」と部活の仲間にすら絶対に語りたくない内容であったことをうかがわせる発言をしたという。
豊音も『京太郎』も色にふけ続ける時間だけというわけではない。バッテリーが切れるまでほぼ無尽蔵の『京太郎』はともかく豊音には体力や精神ともに限界がある。
なので近い将来について雑談をしていた。
『豊音さんは国麻出れそうなんですか?』
「エイスリンさんかシロ、私の誰かだとは思うんだけど、一番可能性が高いのはシロかなー。団体戦であまり稼げてなかったし。
もちろん誰が選ばれても私は応援に行くよー」
1人だけを送り出して終わり、となるほど宮守の人間たちは仲間意識が弱くない。特にボッチ歴の長い豊音にとって応援のため上京というのは当然の思考だった。
『卒業後の進路はどうなんです? 推薦組以外はもう絞らないと難しいでしょう?』
推薦組も書類の手配や小論文に面接の対策、色々動かないと時期的に厳しい。
どこかの外面は非常にいい上に役職と実績持ちの元部長のように手放しで余裕というわけではあるまい。
「私は進学でも就職でもいいんだけど、他の県に行こうかなって。ここはすごく居心地がいいけど、私は村から出て世界が広がったから――もっと色々見て回りたいんだ」
そうにっこりと笑った姿は進路などまだ頭の片隅にもない本体と異なり、年相応の大人びた雰囲気を纏った女性のそれだった。
それに『京太郎』は見惚れ、
『でもまあ、俺も許されるならついていきますんで、サポートは任せてください。本棚整理と買い出しと迷子探しと雑用は得意分野ですから!』
一瞬「タコスづくり」と口走りかけてバレ要素を増やしかねないと他を次々と並べてみせた。
「あれ? 京太郎くんの体で買い出しと雑用ってどうやって?」
肉体を与えられてない今の『京太郎』には不可能な例を挙げてしまっていたという二重のミス。
『……そこは、迷子探しとナビに期待ってことで!』
ごり押すことにした『京太郎』。幸いかな、純粋な豊音はそのほころびを突くタイプの人間ではなかった。
「それならご飯が美味しそうなとこ行きたいなー」
『任せてください! 迷子の権化と食欲の権化に鍛えられた俺の真価を発揮します』
無駄に『京太郎』は燃えていた。
『ところで行くのは宮守の全員でですか? それとも俺とのデート用?』
目的が違えば店のチョイスも異なる。そこでさらっと自分とのデートの選択肢を割り込ませるあたりやっと恋愛アプリという実感が出てきたらしい。
「基本的にはみんなで。……でも、一度ぐらいは京太郎くんと二人っきりのデートがしたいな」
帽子をかぶって鍔を下ろして顔色を隠しているが豊音の頬は分かりやすく赤くなっていた。
この時の2人には知る由もなかった。まさか国麻のための上京先で、迷子の魔王とその手を引く幼馴染の少年少女との出会いが待っているなどと。
もし知っていれば『京太郎』は即座に自分の中の選択肢の基準よりグレードや大人っぽさを優先した店を探しただろうが、こうかいとは後にするからこそ後悔なのである。
その意味を痛感するにはまだ少しの時間が必要だった。
姉帯豊音ルートの1作目、豊音は可愛い上に尊い(確信)
姉帯豊音の場合①はシロ・戒能プロのようなぐちょぐちょの退廃的エロよりも、穏乃と同じかそれ以上にリアル京ちゃんの攻略指針を示すものになっております。
当初は豊音のエッチなやらかしも含もうかと思っていたのですが、あえて直接的に表現しないことで豊音の良さを前面に出す方向におさめました。
気づく人は気づくんじゃないですかね。
次回ですが候補としては穏乃②、憧、怜(竜華も出る)、照、淡(修羅場)、はやりん(やばい)、たかみー(やばすぎ)
こんな感じ。人気の霞さんと咏さんなのですが、まだまとまり切っていません。霞は重くてこそ、咏さんはどこまで純情さを醸し出すかがですね。
こんな感じの拙作ですがゆったり更新でもちまちまと頑張っていきます
次回更新は?
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咏たんが幼馴染だったら
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白糸台生活の続き
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男女比世界の続き