このお気に入りと評価の数はどういうことよ…
第2話
「ちょ…やばいやばい…!全然アップデートが終わらないんだが…?」
オレはなかなか進まないアップデートにやきもきしていた。
読み込みが遅すぎてイライラと足がガタガタ震える。
突然だがこのユグドラシルというゲームなのだが、今日をもってサービスを終了する。
「くっそ…早く終わってくれねえかな…こんな事なら前々からアプデしとくんだったぜ、くそが…」
アインズ・ウールゴウンのギルド長、モモンガさんからメッセが来たのはつい最近。
要約して、ユグドラシルが終わる前に、集まりませんかという内容だった。
引退していくギルメンたちを見て、少しずつイン率が下がっていた。
ここ1年、いや、2年はログインしていなかったかな。
だから、最後に自分で作ったNPCだけでも愛でていこうと考えていた。
…が、アップデートの内容がこんなに重いとは…
チクタクと、いくら急いでいても止まってくれない電子時計を見やる。
時よ止まれ!ヘブンズタイム!!ザ・ワールド!!!タイムスト〜ップ!!!!
…なんてね。全然止まんねえや。
「100%キター!やっとか、待ちわびたぜ…」
アップデートだけでユグドラシルのサービス終了までかかるかも、と覚悟していた頃、アップデートが終了した。
オレはやっとアプデの終わったユグドラシルを起動する。
さぁて、モモンガさんの招集にメンバーは何人くらい集まってるのかな?
アインズ・ウールゴウン
それは、ユグドラシルの中でもかなり有名な「異形種」、そして「社会人」限定のギルド。
オレはそのメンバーのうちの一人で、昔はそのことにちょっとした優越感に浸っていた。
最近は全くログインしていなかったし…やっぱモモンガさん怒ってんのかなあ…
アプデすらしてなかったのは、ギルメンに会うのが気まずいからだったりするしな。
開始直後オレがログインしたのは、ナザリック地下大墳墓内にあるオレの自室だ。
…あ、ナザリックなんたらっていうのは、ギルド「アインズ・ウールゴウン」の拠点の名前ね。
オレ含めたギルメンたちで作った、最高の城だ。
「うーん、あと10分か…本当にギリギリだったな…」
懐かしい、本当に懐かしいBGMと共に、オレはユグドラシルにログインが完了した。
オレが最後に見た時と情報ウィンドウの感じが少し変わってるな。
こんなとこアップデートすんなよ…
「っとと、こんな事してる暇ねぇな…」
オレは慌てて現在ログインしているギルドメンバーの情報を探る。
こんな時間だし、もう誰もいなくなっていてもおかしくはない、が…
「おーっ!!モモンガギルド長居る!やったぜ!」
半分諦めていたオレは、喜びの舞を舞う。
さて、モモンガさんがいるのはどこだろうか。
そしてギルドメンバー装備のリングオブアインズウールゴウンを使用した。
この装備は、ナザリック地下大墳墓内ならば転移し放題というショートカットアイテムだ。
「とりあえず最初は玉座の間で〜…って居たわ!見つけたぜ、モモンガギルド長!」
「きるゆーさん!」
ノリノリで小躍りしながら転移したら、そこに目的の人物はいた。
3mは超えるかというほどの大きな巨体。が、その内部は骨のみで肉体は無い。
手っ取り早くいうとでかいスケルトンって感じ。
スケルトンとオーバーロードとじゃ天と地もの差があるが…
その性格のお人好しとオッサンなのだろうが可愛い言動により、ギルド内で癒しキャラと言わしめたモモンガさん。
彼は、このアインズウールゴウンのギルド長だ。
「お久しぶりです、きるゆーさん。」
モモンガさんが、昔の通り敬語のままオレに話しかける。
なぜかギルド長なのにみんなに敬語なんだよな、この人…
そういう所も、どこか茶目っ気があって親しみやすいんだよな。
「久しぶり、モモンガさん。遅くなってごめんな。アプデがクソ長くて…」
「いえいえそんな!来てもらえただけで嬉しいです!」
「あー…そういう感じ。」
メンバーのログイン表示がないことから、なんとなく予想していたが…
あんまり集まらなかった、あるいは誰も来なかったみたいだな。
「おーおー、プレアデスが勢揃いで、こりゃまた。」
そこにいたのはプレアデスとセバスチャン、そしてアルベド。
オレは一年ほど会っていなかったモモンガさんに、昨日会ったばかりの友達のように接する。
オレはモモンガさん達ギルメンの前ではこんな感じだったし、モモンガも今更よそよそしい態度になって欲しくもないだろう。
辺りを見回して、玉座の間にアインズウールゴウンへ所属するNPCが勢揃いしていた。
ただ、メイドのNPCはいないな。どうせなら、オレの作った子に会いたかったのだが…
もうそんな時間はなさそうだ。その数に圧巻されたが、オレはモモンガさんの隣に出ているコンソールに気がついた。
「ん…?これ、アルベドの?」
「ああ、それですね…最後に、設定だけでも見ておこうと思ってたんですよ。」
「あ〜。タブラくんの設定長いからなあ…よく見ようと思ったなあ、モモンガさん。」
「いや…全部見るつもりは…」
モモンガさんがもごもご言いあぐねているのを聞きながら、設定が編集されている最中なことにオレは気がついた。
よく見れば、モモンガさんの手にしているのはスタッフ・オブ・アインズ・ウールゴウンだ。
このアイテムはゴッズアーティファクトを七個も使っている。l
ゲームの理を変えるほどのアイテム、ワールドアイテムにも引けを取らない超絶レア装備だ。
これを使えば、作成者でなくとも強制的に設定を書き換えることもできる。
「あれ?もしかして何か書き換えた?」
「いやいや!そんなんじゃ!」
「最後だからっていけないんだ〜!タブラさんに言っちゃおうかな〜?w」
「ちょちょ!やめてくださいよきるゆーさん…!」
あわあわ慌てるモモンガさん。やっぱ、いじり甲斐があるのも変わんないな。
設定を確認しても元々の設定を知らないため、何が変わっているのかはよくわからない。
ただ、設定好きのタブラさんが設定分の文字数を余らせるはずないため何かを消した、あるいは書き換えたのだと思われる。
(実はビッチである、との表記を消したということはモモンガさんが墓まで持っていった)
「フーン…じゃ、オレが書き換えちゃおっかな?」
「えっ!?ちょ、きるゆーさん?」
残りの文字数は11文字。さて、何を入れるか…
オレはカタカタキーボードを弾いて一文を追加させた。
ーモモンガさんを愛していー
「ちょっ!?きるゆーさん!?何を…!」
「ははははっ!良かったな、モモンガさん!ナザリック1の美人に愛されてるぞお!」
「ダメですよ、こんなことしたら…」
オレは自分の行動にツボってしまい、お腹を抱えて笑いまくる。
特に、最後の1文字を書けなかったこともそれに拍車をかけた。
ああ、深夜テンションって怖い。
するとモモンガさんもキーボードに指を重ねてカタカタ文字を追加し始めた。
「うん?なになに?」
新たに追加されたのはこうだ。
ーきるゆーさんを愛していー
「ちょおおおいいいっ!オレを巻き込むなよ!」
「お互い様ですよ!」
そしてモモンガさんは、前文の文字を消してまでしっかりとした文へと書き換えた。
ああ、タブラさんの設定文が…
ーまさに外見だけであれば完璧なきるゆーとモモンガを愛しているー
でも、これだとオレとモモンガさんが外面だけ完璧なように見えるな…
こんなくだらない、中学生同士のやりとりにオレとモモンガは笑い合った。
オレ達はひとしきり笑い合った後、アルベド本人の目の前で行なっていたことに気が付き少し気まずくなってしまった。
相手はNPCなんだけどな…
ちなみに、原文はこうだ。
ーまさに外見だけであれば完璧な美女だ。ちなみにビッチである。ー
こんな事、普段なら絶対に冗談でもやることはない。
引退したとは言えギルメンたちが作った子供達を、不用意に玩具にはできない。
ただ、今日はユグドラシル最後の日だからな。
こんな戯れでも、タブラさんはきっと許してくれる。