いや、完全に予想外だ。
藪をつついたら蛇に加えてこんなものが出るとは、誰が予想できるか。
「驚いて声も出ぬか。しかし、この姿を見て恐怖せぬその心意気には関心でござる。」
ぱっと見可愛いハムスターだが、何せ大きさが大きさだ。
オレより高く、オレよりも太い。下手したら二倍くらいある。
うーん、やっぱり可愛いとは言えないな…
「ブラッド!コイツ、面白い見た目っすね。」
「そうか?面白いというか、うーん…」
オレは、もっとカッコ良いいきものを想像していたんだが…
例えば、オオカミとか。トラとか。
「何をコソコソ言っているでござるか。そろそろ命の奪い合いをするでござる!」
いや、もうそんなテンションじゃないんだって。
オレは、強くてかっこ良い魔獣と戦えるかもってワクワクしてたんだよ。
それがお前…ハムスターって…
「某の支配する領地へ侵入せし者よ。某の糧となるでござる!」
「…はあ。戦うのはやめだ。こんな姿の相手に剣は向けられねえ。」
こんな見た目の動物へ剣を向けたり、あまつさえ傷つけてしまいでもしたら、動物愛護の団体から猛烈な講義が来てしまう。
「何を言っているのでござるか。まさか、未だ勝敗の分からぬうちに降伏とはありえんでござろう。」
「…もういい。喋るな。」
オレは面倒になり、絶望のオーラを発動させる。
レベルは最小の1。
低位のものへ恐怖を与え、敵の戦意を削ぐスキル。
ルプーは、戦うつもりだったオレが絶望のオーラを発したせいか不思議そうな顔だ。
「いひゃああ!まけ!某の負けでござる!」
「あー、はいはい。わかったわかった。」
ぐでん!と転がり、腹を見せる賢王。
ハムスターも服従のポーズやるんだなあ、なんて妙なことを考えてしまう。
「コイツつまんないっすねー。もっと必死になれないんすか?」
「言うな。」
こんな所でドSを出すな。
というか、ルプーの
「おい、賢王とやら。」
「殺さないで欲しいでござるよ〜」
先の上からの態度とは一変、媚びを売るような可愛い声を上げる。
「殺さねえから。追い返すだけっていう依頼だから。」
「そうでござったか…先程の殿への態度、謝罪するでござる…」
殿って呼ぶな。
「いや、そういうのもいいから。とりあえず、巣穴に戻ってくれるかな。それで全ての問題は解決する。」
「そうでござるか…」
賢王はがっくりと肩(ハムスターにも肩はあるのか?)を落とした。
あからさまに落ち込んでいる。
ま、俺たちにはどうでもいいことだ。
「ルプー。報告に戻るぞ。もう安全だってな。」
「待って欲しいでござる!」
「あん?」
まだ何か?とオレはハムスターを見やる。
「某は、殿の見事な気迫に見惚れたのでござる!どうか殿に仕えさせて欲しい所存。」
「いや、結構です。」
「なんと!?」
いやいや。ハムスターを連れて歩きたくないし。
ペットとしてはデカすぎるし。
「…いや、待て。うちのトップに聞いてみる。良ければ連れて帰ってやる。」
「本当でござるか!」
「え、この魔獣飼うんすか?」
「モモンガさんさえ良ければな。」
確かシズはもふもふ好きという可愛らしい設定があった。
地球でもハムスターはかなりメジャーな愛玩動物。
持って帰ったら、シズが喜んだりはしないだろうか。
オレの目からも、サイズが小さければ可愛いと思う。小さければだが…
「
オレは、今度はモモンガさんへとメッセージを飛ばす。
ナザリックで、ペットを飼っていいかの確認だ。
モモンガさんはオレのお母さんかよ…
「ブラッドさん。何か問題でもありましたか?」
「あー、問題というか、相談というか。とある森でハムスターを見つけた。飼ってもいい?」
「え?え?なんですか?」
「だから、ハムスターを飼ってもいいかって話です。サイズはモモンガさんより大きいです。」
「…それ、本当にハムスターですか?」
「さあ…鏡で見れますか?こんなのなんですけど…」
オレはモモンガさんが
その間に、ひっくり返ったままの賢王をツンツン突こうとしていたルプーを止める。
不用意に触るな。野生の動物はどんな病気を持っているかも分からない。
「うわ!完全に、ハムスター…ですね、これは…」
「ただ、降参してオレの傘下へ入りたいと言ってる。どうだ?」
「あ、いや…今ちょっと混乱してるので。ブラッドさんはどう思ってるんですか?」
「オレはいらないと思うんだが…シズが好きそうだと思ってな。」
「ああ、シズですか…確かにシズはハムスター好きそうですね。」
ん?モモンガさんは設定好きのオレと違って、NPCの事をよく知らなかったはずだが…
あれからしっかりと確認したのかな。
モモンガさん真面目だしな。ありそう。
「加えて、このハムスターは森の賢王と呼ばれるこの国では有名な強い魔獣らしい。もし使役できれば知名度が上がると思うんだが…」
「まあ…ブラッドさんが良いなら、私も問題ありません。」
「そうか…おい、良かったな賢王。うちのトップが許すってよ」
「本当でござるか!」
何がそんなに嬉しいのか、賢王は弾んだ声で答えた。
「こ、これが…森の賢王…?」
「…の、ようだな。」
「そうでござる!某は森の賢王。そして今は殿に仕える者でござる。」
結局、連れ帰ることになった。
未だにこれでいいのか迷ってはいるが…
「すごい!なんて立派な魔獣なんだ!」
「これだけの偉業を成し遂げるとは!確かにルプスちゃんを連れまわすだけはあるわ。」
「強大な力と英知を感じるのである!」
「私たちでは皆殺しにされていました。さすがはブラッドさんです!」
「あぁ〜〜〜〜…ま…まあ…な…」
オレは目を逸らしながら答えた。
ええぇ…この世界では、これが強そうに見えるのか…
よく見ると、ルプーもウンウンと頷いていた。
え?っまさか、お前もなのか!?
「あー、すまん、ンフィーレア。オレは追い返すつもりだったんだが、コレにどうしてもと言われてな…」
「あ…いえ…!それは、仕方ないです…ブラッドさんは、とても強いお方なので…」
「あの、ブラッドさん!僕に、ブラッドさんの強さを、かけらでも教えて欲しいんです!僕には薬学の知識に少しは自信もありますし、荷物運びでも、なんでもします!僕を、あなたのチームに入れてもらえませんか…!僕は、カルネ村とエンリを守りたい…!」
チームに、か…
大きくでたな、ンフィーレア。
「…それが、オレのものだとしても?」
「っ!」
ンフィーレアは、エンリからエモット家がブラッドの庇護下に入ったことを告げられていた。
それをオレは、エンリの記憶をのぞいた時に知った。
ンフィーレアの恋心を知る由もないエンリは、それはもう無慈悲にンフィーレアへと惚気た。
流石に吸血や口淫などのことは話していなかったが…
その恋する乙女なエンリに、ンフィーレアは自らの恋が散った事を悟っていた。
「はい。エンリが誰を好きになっても。僕は、僕の好きな人に幸せでいて欲しいんです。」
「…そうか。だが、チームに入れるのは無理だ。実力がない者が不相応な事をすれば、すぐに死ぬ。オレにそこまで迷惑をかけるな。」
「…すみま、せんでした…」
…はあ。
オレは、ンフィーレアにはある程度の情を持っている。
これからどんどん強いモンスターと戦っていく予定のオレについてくれば、待ち受けるのは死のみだ。
特に、全体攻撃を食らえば即死だろう。
「だが。…カルネ村は守ってやる。折角守った村だ。最後まで面倒は見よう。」
「あ、ありがとうございます…!」
末岳産さん。餅つき 兎さん。
評価ありがとうございました!
フラムグラスさん。
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