※この作品はR-18です。

モモンガさん!それをㅤ殺すなんてㅤもったいない!   作:朝潮

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    -第9話 ㅤ漆黒の剣士
第32話


 

 

 

エ・ランテルの冒険者組合。

そこではとある2人組の冒険者の話題で持ちきりだった。

 

かのラナー王女にも引けを取らない程に美しい、ルプスという神官(クレリック)

そんなルプスの隣に並ぶに相応しい、見たものを惹きつける端正な顔立ちの戦士、ブラッド。

数日前にエ・ランテルへ来たばかりで情報が少ないながら、様々な噂が飛び交っていた。

その見た目から、まるで御伽噺から出て来たのではないかと例える者すらいたくらいだ。

そんなただでさえ目立つ2人が、更に話題を持って帰ってきた。

 

「お前見たか?あの魔獣の姿。」

「見た見た!かなりデカかったな。」

「でかいだけじゃねえ。ありゃかなりの強さだろうよ。」

 

バレアレの息子の指名依頼を受けていたのは、両者が有名であるが故に多くの人間が知る事だった。

帰還した際には噂の人物を一目見ようと押しかけた者たちが見たのは、叡智に溢れた大きな魔獣。

しかもその魔獣はトブの大深林に住まう「森の賢王」だというのだ。

2人が去った後、その事を話題にしない者はいなかった。

 

「あの2人、一体何者なんだろうな。」

「あんな美人見た事ねえぜ。」

「男の方も負けてなかったな。」

「俺は他国の王族と言われても信じるぞ。」

「その上実力もあるたぁ、神様ってのは意地悪だねえ。」

「あんな魔獣を下しちまうくらいだ。また何か大きな偉業を成すのは間違いないだろうよ。」

 

冒険者組合がまるで酒場のような喧騒に包まれた頃。

賑やかな雰囲気は、1人の飛び込んできた兵士によって壊された。

 

「スケリトルドラゴンだ!!墓地の方からスケリトルドラゴンが来てるぞ!!」

 

 

 

ォォォォオオオオオ!!!

 

共同墓地から現れた、巨大な龍の形をした人骨の塊。

スケリトルドラゴンと呼ばれる強力なアンデットモンスター。

ミスリル級以上の実力がなければ相手取るのは難しい相手だ。

更には魔法への絶対耐性を持っているため、魔法職とは相性最悪の敵。

 

「命が惜しいものは下がれ!!」

 

相対するは、銅級(カッパー)のプレートを下げた冒険者、ブラッド。

数日前に冒険者登録をしたばかりのはずが、エ・ランテルでかなりの噂になっている人物だった。

 

「戦える自信のない者や魔法詠唱者は住民の避難を手伝ってやれ!戦える奴は手を貸してくれ!ここで食い止めるぞ!」

 

冒険者組合に連絡が入った頃には、スケリトルドラゴンは既に門を越え、街中へと侵入していた。

それもそのはず、スケリトルドラゴンは空を飛ぶことができるのだ。

 

「俺は残るぞ!(ゴールド)の維持を見せてやる!」

「おいアンデット!こっちへ来い!俺たちが相手だ!」

「住民たちはやらせない!」

 

殆どの者が背を向けて走る中、十数人が残った。

スケリトルドラゴンは強力なモンスターの中でも、ミスリルの冒険者でも相手取る事の出来る比較的倒しやすいモンスターだ。

とは言え、魔法への完全耐性を持つ特性は厄介極まりない。

 

ルルルゥゥゥゥウウ…

 

スケリトルドラゴンは、足元で叫ぶ小さな人間に目をつけた。

その4つの目で男に狙いを定めると、片足を振り上げた。

 

「避けろ!」

 

誰が叫んだのか、スケリトルドラゴンの標的になっているブラッドを心配しての言だった。

しかしブラッドは、虫を踏み潰さんと振り下ろされた巨大な足を漆黒の魔剣で受け止めようとしていた。

スケリトルドラゴンと剣とが衝突する瞬間、誰もが彼が吹き飛ばされる情景を想像した。

が、その想像は裏切られることとなった。ブラッドは、しっかりとその足を受け止めていたのだ。

 

「何!?」

「馬鹿な!?」

 

スケリトルドラゴンは3、4メートルほどの大きな体をしている。

尻尾も合わせれば全長5メートルは超えるだろう。

そんな巨体を剣一本で支えているのだ。並大抵の身体能力ではない。

 

「私の事も忘れないで欲しいっすよ!」

 

そこに現れたのは話題のもう1人の冒険者。ルプスだ。

まともな聖職者は使わないであろういかつい殴打武器をぶん回し、体を支えていた反対側の足を撥ね飛ばす。

足を形成していた人骨がバラバラと飛び散り、殴打した部分が破壊された。

スケリトルドラゴンは体勢を大きく崩し、そのタイミングでブラッドも剣を振り抜く。

小気味良い音と共に、スケリトルドラゴンの前足が呆気なく切り離された。

 

「嘘だろ…」

「スケリトルドラゴンをこうも簡単に沈めるのかよ…」

「こりゃオリハルコン以上の実力だぜ。」

 

残った冒険者たちも、2人のその圧倒的な実力に呆気にとられてしまった。

まだ戦いは終わっていないが、この2人がいたら負けるはずがない。

そんな確信が生まれ始めたのだ。

 

「何だ、この程度か。心配して損したぜ。」

 

ブラッドが魔剣を振るうと、人骨が吹き飛び、骸流が下がる。

他の冒険者たちは自分たちの出番はないと悟った。

決着はもうすぐだろう。

 

負の光線(レイ・オブ・ネガティブエナジー)!」

 

負のエネルギーを受けたスケリトルドラゴンが、受けた傷を回復させた。

そこにいた者は思ってもみない状況に驚愕した。このドラゴンが何者かに使役されていると悟ったからだ。

スケリトルドラゴンを操る程の魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。こちらもかなりの実力があると予測できる。

冒険者たちは腕の経つ仲間の魔法詠唱者(マジックキャスター)達を住民の非難に向かわせたことを後悔した。

 

「強力な冒険者がいない日を狙ったというのに、まだ貴様のような冒険者がまだこの街にいたとはな。」

 

嗄れた声を出しながら、フードを被った男が現れた。

この男がスケリトルドラゴンを使役していたと見て間違いないだろう。

 

「お前がこのモンスターを街へ仕向けたのか?」

「如何にもそうだが?」

「何故このようなことをする。」

「フン。お主等に言ってもわかるまい。」

 

襲撃者の男は、一貫して完全にブラッドを見下したような態度を取った。

その横で、ルプスがこれでもかと言った風に殺気を撒き散らす。

 

鎧強化(リーンフォース・アーマー)下級筋力増大(レッサー・ストレングス)下級敏捷力増大(レッサー・デクスタリティ)死者の炎(アンデッド・フレイム)盾壁(シールド・ウォール)!」

 

それによってかよらずか、男は一度に様々な支援魔術が重ねがけた。

次々にスケリトルドラゴンの体が光り輝く。

 

「お主等は少し強いようだからな。これで力の差を埋めさせてもらったよ。」

「それはどうかな?強化魔法程度で埋まる差じゃないと思うんだがな。」

「生意気な口を…死の宝珠よ!!」

 

男が、なにやら手に持っていたどす黒いオーラを纏う宝珠を天に向かって捧げた。

瞬間、宝珠が闇のオーラを深め、召喚魔法を行使させた。

 

───ォォォオオオゥウ!!

 

墓地の方から遠吠えが聞こえる。

そこにいる者達には、それが何によるものなのかすぐに理解った。

墓地の方から2体目のスケリトルドラゴンが飛来してきた。

家屋を押し潰し、男を守るようにして舞い降りる。

 

「如何に優秀な戦士でも、2匹を相手取るのは厳しかろう。」

 

男は愉快そうに同じように強化魔法を唱え、2匹目のスケリトルドラゴンの強化も終わらせた。

その間、ブラッドとルプスは強化が終わるのを黙って見ていた。

 

「攻撃して来ぬとは、怖気ずいたか。」

「…それで終わりか?」

「何?」

「下がっていろ、ルプー。格の違いを思い知らせてやる。」

「後は任せたっすよ、ブラッド。」

「戯言を!行け!スケリトルドラゴン!」

 

ニコニコと戦線から下がるルプスに、男が雄叫びをあげる。

指示に従った2匹のスケリトルドラゴンがブラッドへと同時に迫る。

そして、まるで鏡写しのように先ほどと同じく前足で踏み潰した。

 

「おお!」

 

…かのように見えたが、ブラッドは剣を収め、両手で1匹ずつのスケリトルドラゴンの足を支えていた。

それだけで、スケリトルドラゴンは足を動かすことができなくなってしまった。

 

「何だと!?」

「やはり、この程度か。」

「お、お主は何者だ!その肉体能力は何だ!武技を使っているのか!?」

 

ブラッドは、それぞれのスケリトルドラゴンの足を己の身体能力だけで押し返した。

スケリトルドラゴンは面白いように蹌踉めき、背後へと後ずさる。

 

「さて。そろそろお前の演説にも飽き飽きしてきたところだ。この魔剣の力を以ってして、そのスケリトルドラゴンを葬り去ってやろう。…いや、アンデットに葬るは不適切だったかな?」

「こ、こんな短時間で、儂の夢が…有り得ん!有り得るかぁ!」

 

再び魔剣を手に取り、体を横に逸らして上段へ構える。

隙の多い構え方だったが、それを見たローブの男は何やら不気味なものを感じとった。

なにか大きな攻撃が飛んでくるのではないのかという予感だ。

 

「スケリトルドラゴン!あの者を殺せ!」

 

スケリトルドラゴンへの命令より早く、ブラッドは魔剣を振り下ろした。

魔剣を振り抜くと同時。白く、神々しい光がエ・ランテルの天に延びた。

その光の中心にいた片方のスケリトルドラゴンが、中心から真っ二つに切断される。

 

「何だ!何なのだその武器は!」

「今回は2連撃の大サービスだ。食らえ。」

 

振り下ろした魔剣をそのまま振り上げるようにして斬撃を放つ。

白い大きな光と共に、魔剣は男を巻き込んで、斜めからもう一匹のスケリトルドラゴンの体を斬り裂いた。

 

閃光流星(フォトン・ミーティア)

 

2匹の骸龍と1人の男を巻き込んだ天に昇る2つの白い柱は、ゆっくりと消え始めていた。

 

 

 




仮想敵Aさま。生死郎さま。
評価のほどありがとうございます!


こんな所詳しく書くんじゃなかった…
次から不要なシーンはニグン戦みたいに3行で簡潔にまとめる。

※ミスリルをゴールドに変更しました。
ミスリルだとスケリトルドラゴンを倒せるみたいですね…
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