第46話
「殿〜!そっちに行ったで御座るよ!」
尻尾を鞭のようにしならせ、巨大なトカゲを追いかける、こちらも巨大なハムスター。
この間テイムというか、勝手に配下になった森の賢王。今はハムスケと名乗っているが。
オレは乗り気ではなかったのだが、何せモモンガさんが自ら名付けをしたり、武技を覚えさせようとしていたりとノリノリなのだ。
モモンガさんは分からないだろうが、こいつを連れていると何だか気が抜けるのだ。
オレとモモンガさん以外には何故か威厳があると見えているのがせめてもの救いか。
「ルプー。少し離れてくれ。」
オレは剣を振りかぶった状態で止め、トカゲがこちらまで迫るのを待つ。
ハムスケから逃げているということはそれ以下のレベルなのだろうが、その先で構えているのはそのハムスケをオーラだけで屈服させる吸血鬼だ。
とは言え、オレとルプーは指輪で気配を遮断しているので、逃げ出すことはないのだが。
「
光の軌跡を残しながら、中心から真っ二つに切り裂いた。
どさりと崩れ落ちて、内蔵をぶちまける。…うげ。しまったな。これでは買取価値が下がってしまう。
オレたちは今、昇進と報酬狙いでギガントバジリスクとかいう魔物討伐の依頼を受けていた。
ギガントバジリスクとは名前通り巨大な蛇蜥蜴だ。
その体液は猛毒で、近寄ると視線で石化させられる厄介なモンスター。
勿論、オレとルプーなら余裕でレジストできる程度のものだ。
「おー。派手にやったっすねえ。」
「やらかしたな。これでは持って帰るのも一苦労だ。」
精神が変化していなければ、一発で吐いてしまうようなグロさ。
カッコつけてスキルなんて使わなければ良かった。素材も定価の半分で売れるかどうか。
「こいつは配下の素材にして、もう一匹探しても良いが…まあ探すのも手間か。」
「出来れば早く帰りたいっすねー。この辺り、暑くて暑くて……」
「そうだな。ハムスケ、ついて来い。報告に行くぞ。ルプーは先に帰っても良いがどうする?」
「まさか。どこへでもお供するっすよ。」
それにしても、バジリスクの依頼は金策も兼ねていたのだが、一時の感情でもったいないことをしたな。
エ・ランテルのギルドへ報告を行なった後。
メンバーを吸血鬼にしてから初めて、ニニャへと会いに行った。
近況報告と、それからシャルティアの離反騒動があり、結局お流れになっていたニニャへの吸血をするためだ。
当然だが、エンリの事もあり吸血はしても手を出す気はない。そもそも好みではない。
「なかなか時間が取れなくてすまないな。」
「いいえ、お忙しい所ありがとうございます。」
「ところで、その後どうだ。良くやっているか。」
「はい。実は、あれからもうひとつランクが上がりまして…」
吸血鬼になってからもエ・ランテルで活動している漆黒の剣。あれから少しずつ実力を見せているらしい。
種族的に人間を超えたのだから、当然でもあるが。
種族のことはできる限り頑張って隠して欲しいものだ。
「それでは本題だが。今日は血を少し分けてもらいたいと思っている。その血の質によっては、今後も定期的に吸いたいと考えている。」
「そうでしたか…実は、
メンバーに頼まれて何度か血を吸わせたことがあるのですが…大丈夫でしたか?」
「…まあ、大きな問題はないだろう。」
悪いことと言えば、オレが男に血を吸われる記憶を読み取ってしまうだけだ。
嫌と言えば嫌だが、飲みたくなくなる程の事ではないな。
しかし、そうか。吸血対象を用意していない吸血鬼を野放しにしておくのは良くなかったか。
他人の血は無闇に吸わないようにとルプーから説明はされているはずだが、食欲や性欲と繋がっている吸血を禁止することはできないからな。
その血に、特に光るものがなければ、ニニャを漆黒の剣の吸血対象にするか。
「ところで、吸血の前に何個か質問がある。大事なことだから偽りなく答えてくれ。」
「はい、わかりました。」
「まずは、性的経験があるのか。そして異性同性に関わらず、憧憬を覚えたことがあるのか。」
オレの吸血には、血を吸った相手の記憶を追体験する強制効果がついている。
シャルティアとの戦闘の件もあり、改めて説明文やスキル詳細を色々と調べてみた結果。
吸血時の記憶の共有は、スキルではなくきるゆーというプレイヤーのフレーバーテキストに書き込んだ効果だった。
つまり、意図せずエンリに使って吸血鬼にしてしまった「眷属化」とは違い、自分で効果をオフにできないのだ。
ご存知の通りこの効果はまた厄介なもので、吸血相手が女性の場合オーマの時のようなとても悲しいことが起きてしまう可能性があるのだ。
かと言って、男相手に吸血するのは勘弁願いたい。そもそも吸血欲求すら湧かない。
個人的には、吸血に1番抵抗がないのはンフィーレア。それでもギリギリアウトだが。
「け、経験はありません。姉を奪われてからすぐに男として生きてきましたから。好きな相手も、そうですね。生まれてから1番魅力的に思ったのはブラッドさんですが。それでも、恋愛感情とは違うと思います。」
「そうか、ありがとう。最後に、人生で1番怖かった記憶は何だ。」
「そうですね……仲間が殺され、拷問された時でしょうか。私は殺される前に助けて頂けましたが。」
「そうか…それは、遅くなってすまなかったな。」
「いいえ、いいえ!ブラッドさんにはとても感謝しています。私が今ここにいるのは、ブラッドさんのおかげですから。」
確かに、クレマンティーヌに遊ばれた記憶は見たくはない。
しかし、それはオレが間に合わなかったから起きた事。
全てを知るため、そして自分への戒めのため。
オレはニニャの記憶を見る事に決めた。
「それでは、血を吸わせてもらう。覚悟はできているか?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「うむ。」
前のボタンを外し、肩口をはだけさせる。意外と白いな。
肩に口を付け、そのまま歯を立てる。
「んっ……」
意外と可愛らしい声を上げる。
まあ女だったのだから、意外と、ということはないか。
アルベドとオーマ、エンリに続いて、4人目の吸血対象だ。
じわりと溢れた血を舌の上で少し馴染ませ、味わってから嚥下した。
そして、ニニャの人生の記憶が流れ込んでくる。
「……そうか。……そうか。」
「あの?」
「ニニャは…姉を取り戻すために冒険者になったんだな。」
「どうして、それを…」
「そういうスキルだ。」
実際は違うのだが、面倒なのでスキルで通した。
「はい。実は、姉が貴族によって攫われた事がありまして。それが1番辛い過去です。姉を奪われた日のことは、未だ心に忌まわしき記憶として残っています。」
「そうだったか…」
クレマンティーヌの件は劣ったようだが、その時と変わらないほどの激情が、ニニャの心の中で静かに燃えていた。
「
そしてその記憶は、見せてはいけない人物へと受け継がれたのだった。
1番期待しているのは誰?(別に出すとは言ってない)
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エンリ(正妻)
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ルプスレギナ
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マリー
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その他プレイアデス
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ヒルマ(麻薬部門長)
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踊るシミターちゃん(六腕)
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ツアレ・ニニャ
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ラナー
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青薔薇
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クレマンティーヌ再登場