「エンリ。お前は休んでいても良いんだぞ。」
「いいえ、大丈夫です。それに…折角の一緒にお仕事ができる機会を逃したくないので。」
「物好きな奴だな。」
オレとエンリ、そしてマリーは、新しい畑の開拓をしていた。クワで土を掘り返し、ある程度柔らかくほぐす。
なかなか力の必要な作業だが、この中で1番力の弱いエンリですら吸血鬼なのだ。この程度の畑作業に音を上げるはずもない。
ちなみに、アンデットだからと言って、日差しを受けて燃えたりダメージを受けたりはしない。
しかし、オレ達吸血鬼は夜にその真価を発揮する。相対的に見て、昼間の方が力が出ないのは事実だ。
加えて、一晩中まぐわっていたエンリは一睡もしていない。まあヴァンパイアは睡眠を必ずしも必要としないが、家族と暮らしているエンリは毎晩睡眠を取っている。
そんな中、殊勝にもエンリは休みを固辞して働いているのだ。
ルプーは木陰で何やらネムと草花を摘んで遊んでいる。
楽しそうに見えるが何をしているんだろうか。
「後はスキルで土に太陽の光と栄養を一日馴染ませると、良い畑の完成です。」
「そのスキルで育てた土にはどんな効果があるんだ?」
「含めた栄養によりますが、一日程度だと収穫量や成長速度、味がおおよそ倍になります。」
「スキルって凄いんですね…」
「いや…緑の手はその程度の能力だったか?」
「いいえ。しかしこれ以上の品質を作ってしまうと、村の自立ができなくなってしまいます。それに、税の問題もありますから。」
「これから、村で家族を失った子達のお家を回って、お洗濯やお掃除のお手伝いをして、お昼になったら炊き出しの準備、午後からは他の予定がなければ、村の畑を見て回って、虫を退治したり間引きしたり、元気がないものにはスキルを使ったり…」
一応護衛兼連絡役として配置していたはずだが。馴染みすぎではないだろうか。
それから一日、マリーについて回った。
暫く村を見て回ったが。足りないものは多いが、村人は現時点での生活にかなり満足していた。
というかマリーが色々手を回して村人達の不満を全て解消していた。有能か。
マリーは村の全員と友好な関係を築けているようで、彼女が村の中核となっていることは間違いないようだ。
村を直接的に守った本人であるオレよりも、信頼が厚い気がするのは気のせいだろうか。
マリーらの仕事がひと段落ついて、ここで一日連れ回す事になったルプー以外とは解散する事となった。
オレ達は
そこから徒歩で街の中へと帰還し、チームの根城にしている宿屋へと戻ってきていた。
「ルプー。いや、ルプスレギナ。ここに座れ。」
「こ、この椅子にでしょうか…」
「そうだ。」
結局、一日遊んでいたルプー。オレが名前を呼ぶと、びくりと身を固まらせていた。怒られるとでも思っているのだろうか。
ネムの気を引いて遊んでくれていた事に感謝することはあっても怒ることはない。
そもそも、今日一日は休暇扱いだったのだから何をしていても良いのだ。
オレはルプスレギナの三つ編みを持ち上げ、先に留めてある髪飾りを見つける。
「これを解いてしまっても良いか?」
「は、はい。私の髪の一本に至るまで、至高なる御方のお望みのままに…」
留め具である髪飾りを外し、二つに別れた編み込みを解く。
解放された後ろ髪がふわりと広がる。艶のある綺麗な赤毛だ。
「
スキルを使い、ブラッシング用のヘアブラシを作り出す。
風呂上がりのエンリが、櫛で髪を梳かしているのを見て思いついた。これは配下の褒美に使えるかもしれない、と。
勿論思いついてすぐに、エンリの髪もくまなく梳かしあげた。
邪魔な帽子もとり外し、ルプスレギナの髪を邪魔するものは無くなった。
左右に尖り突き出した赤毛がある。これは…髪?耳?
ケモミミだった場合痛めてしまうといけないためこの部分には手を出さないようにしよう。
首元に手を差し入れ、髪を一房掬う。
ブラシの毛が地肌に当たらないよう、髪を浮かせてブラシを滑らせる。
すー、と引っ掛かりなく毛先まで梳く。
先ほどまで結っていたのが嘘のように、一切の癖がない。
「ブラシの通りが良い。しっかりと手入れされているな。」
「あっ…あの…きるゆー様、これは一体…」
「褒美だ。」
ルプスレギナの髪がサラサラすぎて、ブラッシングの意味が全くない。
しかしNPC達にはこの行為自体が何物にも変え難い褒美になるはずだ。
髪を持ち上げて、丹念にブラシを通す。正直雰囲気でやっていて、これで合っているのかわからないが。
「これまで、黒の鮮血の片割れとして良く仕えてくれた。これは心ばかりの返礼だ。足りないと言うのなら望むものを用意しよう。」
「そのような事があろうはずが御座いません!御方に仕えるのは、我らナザリックに席を置く者全ての望み。お傍にいさせていただける事自体が至上の喜びです。」
そうは言うものの、耳なのか髪なのか、左右に尖る毛の塊がへにょっと垂れ下がった。
言動が一致していないため不思議に思っていると、ルプーは杞憂を告げる。
「それよりも、褒美を頂けるということは…きるゆー様をお支え出来るのもこれまでということでしょうか…」
「ああ、いや。勘違いをさせてしまったようだな。側仕えを交代するというわけではない。これからも頼む。」
「はい!」
人狼であるからか、ぶんぶんと振られる尻尾を幻視した。
こうして髪を梳いていると、本当に犬猫の毛繕いをしているようだ。
「突然こんなことを言い出して悪かったな。モモンガさんと話し合っていたんだ。お前達の忠義への返礼はどのようにして行えば良いのか。」
「御方々がそのような事を……しかし、先程も申し上げた通り、我々の至上の喜びは御方々に仕える事。ご命令していただける事こそが褒美です。」
「はは、ありがとう。ルプスレギナ。…しかしだな。オレ達にも、お前達の労をねぎらう機会を与えてはくれないか。」
ついでにとばかりに、オレはルプスレギナの頭の上に手を置いた。
髪の流れに沿うように、何度か髪を上から撫で付ける。
「ひあっ…あ、えっ…あの…っ…あ、ぁ、ィく……ッ」
ルプスレギナはふるふると身を震わせていた。
感動に身を震わせているのなら良いのだが。
これの評価が良ければ、モモンガさんからもアルベドかシャルティアなんかにやってあげれば手放しで喜ぶだろう。
彼女達はこと
「きるゆー様。作戦の準備が完了致しました。いつでも開始できます。」
「そうか…それでは今夜より、計画の第一段階を開始する。」
そしてついに、アルベドより待ち侘びたメッセージが届いた。
その日、王国を支配するその第一歩が踏み出される。
1番期待しているのは誰?(別に出すとは言ってない)
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エンリ(正妻)
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ルプスレギナ
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マリー
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その他プレイアデス
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ヒルマ(麻薬部門長)
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踊るシミターちゃん(六腕)
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ツアレ・ニニャ
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ラナー
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青薔薇
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クレマンティーヌ再登場