そして15分後……
僕は藤塚の家の玄関で土下座していた。
文華:「どうしたの、北条クン、」……土間の地べたに頭を擦り付ける僕の肩に藤塚が心配そうに手を添える、
一貴:「ごめん!」
文華:「何を、…謝っているの?」……藤塚がしゃがみ込んで優しく問いかける、
一貴:「ごめん!」
文華:「一体、貴方が何をしたと言うの…かしら、」
一貴:「僕、藤塚に黙って加茂と会ってました。……あいつ土蜘蛛に襲われて暫く入院してて、それで退院したって言うので、ちょっと様子を見に、」
文華:「お見舞いに行ったのよね、」
一貴:「僕、つい加茂がべたべたしてくるのを、されるが侭になってました。」
文華:「加茂さん可愛いものね、」……藤塚は、ゆっくりと立ち上がる、
一貴:「僕、加茂が言い寄ってくるのを、ずるずる断れないで居ました。」
文華:「北条クンモテモテなんだ、良かったじゃない、」……藤塚はたたきに腰掛けて足を組む、
一貴:「僕、見舞いに行った時、加茂にねだられて、食事を食べさせてあげました。」
文華:「フーン、したんだー、「あーん」って。」
文華:「それで?」……藤塚の口調は、何時の間にか元通り冷酷な藤塚に戻っていた、
文華:「あのチンマイのと乳繰り合った事は分ったわ、それであの乳のデカい雌犬とは、何もなかったのかな?」……まさかあの事を気付かれているのか? いや、あれだけは絶対に「何が何でも無かった事」にしなければならない!
一貴:「全部謝ります! だから機嫌直してください!」
文華:「私は別に機嫌なんか悪くなってないわよ。 北条クンが、誰と何しようが、」……やっぱり、バレてるっぽい、
一貴:「なんでもしますから!」
文華:「へぇ、なんでもするんだ?」……藤塚は、土下座する僕の頭を爪先でツンツン突く、
文華:「それじゃあ取り敢えず、本音で話し合いが出来る様に、裸になってもらおうかな、」……僕は思わず顔を上げて藤塚を見る。 藤塚は気怠そうに膝を抱えながら、じーっと外方を向いている。
ええーっ、本気ですかぁ?
文華:「あら、出来ないのかしら、……北条クンって、いつも口ばっかりね。」……そして藤塚が、女王様の様な妖しい瞳で僕を見下す、
一貴:「ぬ、脱ぎます!」……僕はあっと言う間にパンツ一丁になって、
躊躇する、……これは本当に有りなのか? 一体藤塚はどう言うつもりで僕に裸を見せろと言ってるんだ? 何が正解で何が不正解なのかが分らない、
文華:「どうしたの? 御手てが止まっているわよ、もしかして其処に何か「凶悪な武器」でも隠し持っているのかしら?」……全て終った、
何故だかはこの際おいといて、あの日の出来事が全て筒抜けになっている事は間違いなかった、でもしかし、
一貴:「良いの? 見せても、本当に怒らない?」
文華:「あら、怒って欲しかったんじゃなかったの?」……更に藤塚の眼差しは絶好調!
僕は混乱と混沌の捨て鉢の隅っこで半泣きになりながら、もう何にもかも考えるのを止めて一気にパンツを降ろす!……人を殺しちゃうのってこんな感じかも知れない、
文華:「へー、ふーん、」
僕はとてもじゃないけれど恥ずかしくて目を開けていられない、藤塚に見られていると思うだけで、其処には段々グングン血が溜まって行く訳で、
文華:「手は横!隠さない、男でしょ、」……藤塚んちの玄関で素っ裸になって気を付けの姿勢、
一体僕は此の状況をどう受け止めれば良いのだろう? もう明日の事なんか何も考えられない、
文華:「じゃあ、射精してみて、」
一貴:「えええええ、」……いや、幾らなんでもそれは有り得なくないだろうか!
文華:「ペットの吐精管理は飼い主の役目だものね、また何時何処で発情期の雌犬に盛られても腰を振ったりしない様に、ここでスッキリさせておきなさい、」
一貴:「いや、あ、ほんと、あの、う、」……もはや前頭葉は一切の業務を放棄して、僕は間脳の支配下に目を白黒させて言語を失う、
文華:「あの女には情けないイキ顔を晒したんでしょ? どんな風にやってもらったのか口で説明してごらんなさい、」……藤塚の口調はあくまでも優しい女王様風で、
一貴:「晒してません!やってません!」
文華:「そう、我慢したの、いい子ね、……でも好きな女になら見せられるわよね?」
一貴:「………、」……本気で、本気に、此処で射精しろと、言うのですね?
早乙女:「言っとくけど玄関汚したらちゃんと掃除して行けよ、」……二階から下りて来てダイニングへと向う早乙女が、この得体の知れない掛け合いを軽蔑の眼差しで一瞥して通り過ぎていく、
僕のモノはメルトダウン1秒前で安定冷却状態を取り戻す、ハリウッドの爆弾処理……以下略、
文華:「いいわ、今回だけは許してあげる。……次はもっと恥ずかしい事させるわよ、解った?」……僕は、真っ裸の侭地べたに額を擦り付けて暫し平伏、
こんなに酷い辱めを受けているのに、それでも何だか藤塚が元に戻ってくれた事が嬉しい、見えない尻尾をブンブン振っているのが情けないやら自分でも分る、
文華:「何ニヤケてんのよ、あんたマジマゾ? マジひくんですけど、」……藤塚、本気で厭そうな顔、
一貴:「ごめん、何か止めらんない、」……なのに果てしなくどうしようもなくニヤケてしまう僕、
文華:「いい加減服着なさいよ!しまいに襲うわよ、」……そう言いながら、藤塚が僕のナニをチラミする、
一貴:「うん、」……大丈夫、ちゃんとギンギンになっている、
ーーー
身支度を整えて、漸く冷静さを取り戻して僕は、
一貴:「それじゃあ、」……と、玄関を出て行こうとして、
文華:「言っとくけど私はアンタの事なんか何とも思ってないんだから、私の事なんかさっさと諦めて普通の女の子と友達になった方がアンタの為よ、」……藤塚が僕のシャツの裾を摘まんで引き止める、
文華:「でもあの女は駄目、お願いだから関わらないで、」……藤塚の声が何だかくぐもっている、
一貴:「僕、分かったんだ、」……僕は藤塚に背中を向けた侭で、
一貴:「三日月って人が何を企んでいるのかは分からないけど、もしかしたら僕のこの気持ちはその人の呪いの所為なのかも知れないけど、それでもやっぱり藤塚さんが好きだって事には変わらない、これは僕の気持ちだから、誰になんて言われても無くしたくない気持ちだから、」……僕は決意の言葉で以て、漸くモヤモヤとしていた気持ちに決着を付ける、
文華:「本当にアンタって馬鹿、きっと後悔するに決まってる、それでアンタが傷ついたら、きっと私も後悔するに決まってる、」……藤塚はぼそぼそと独り言の様に呟いて、
それから行き成り僕の背中を抱きしめた、
文華:「それでもカズキと一緒に居たいの、」……藤塚が歯を食いしばって泣いているのは背中越しにでも解った、
僕は振り向いて、ポロポロと涙を零す藤塚の華奢な身体を腕の中にぎゅっと抱きしめる。 藤塚の甘い匂いが僕の全ての後悔を癒していく、藤塚の涙が僕の全てのリミッターを解除していく様な気がする、
一貴:「僕も、一緒に居たい、」
文華:「つまんなかったんだからね、」……まるで飼い主に甘える子猫ミタイな声で、
一貴:「僕も、」……僕は藤塚の頭に頬を寄せて、
早乙女:「北条お前晩飯食っていくのか?」……で、行き成り210cmの巨体がダイニングから顔を覗かせる、
途端に藤塚のおなかが:「くぅ~、」……と鳴って、真っ赤になって照れる藤塚、
早乙女:「まあ、ここ2、3日殆ど何も食ってなかったからな、仕方がない、」
文華:「ヒカルうるしゃい!」
そう言う流れで僕は藤塚家の晩御飯に御呼ばれする事になった。 結構家庭的な和食メニューが食卓に並んで、それから早乙女が大きな手で玄米茶を淹れてくれる。
早乙女:「それで、とうとうフミカは白状した訳か、」
文華:「してない!言っとくけど私は一言も、…キ、とか言ってない!」……藤塚は真っ赤になりながらサヤエンドウを箸でぶっ刺して、
早乙女:「まあ、でもばれちまった事には変わりはないよな、」
文華:「…レてない!」……キーキーガナリタテながら糸こんにゃくをブツ切りの微塵切りにする、
早乙女:「北条、本当にこんな女で良いのか?」
一貴:「あの、もしかしてだけど、本当にもしもだけどさ、藤塚さんも僕の事好きとか、有り得るの?」……僕は宇宙空間に放り出されたアストロノーツの如くに理解不能な会話の海を漂っていた、
早乙女:「うむ、お前もかなりの鈍ちんだな、まあその方が過剰なツンデレで心折られないから丁度良いのか、」
文華:「何訳わかんない事言ってんのよ、私がカズキの事なんか好きな訳ないでしょ、居ないとつまんないって言っただけよ、……ペットだから!」……何時の間にか藤塚の皿には何だか意味不明に混ぜ合わされた全く別の料理が出来上がっていた?
早乙女:「もう面倒くさいから好きだって事にしとけよ、でないと俺だって何時までも諦められないだろ、」
藤塚、真っ赤になって早乙女を睨み、
早乙女、仏頂面で外方を向く、
一貴:「このじゃが芋、美味しいね、」