※この作品はR-18です。

マスタースレイブ・リストリクテッド   作:ランプライト

30 / 85
029「憑依現象」

食後に早乙女が自家製のアップルパイを切り分けてくれる、紅茶はイギリスから送ってきたイングリッシュ・ブレックファーストのティーバック、

 

一貴:「ところで藤塚さんってさ、」……僕はさっきから心此処に有らずで世界が三回位滅んでも平気な気分だったのだが、

文華:「後5回、」……藤塚は紅茶を飲みながら静かな声で、

一貴:「えと、何かな、そのカウントダウン、」

文華:「名前を呼び間違えて良い残り回数、0になったら相応の罰を与えるから覚悟しておきなさい、」

早乙女:「ご褒美の間違いだろ、」

文華:「それで、何よ!」……何だか真っ赤になって怒る藤塚、

一貴:「フミカ、って、延山先輩から告白されたんじゃなかったの?」……なんか下の名前で呼ぶのって改めて照れ臭い、

文華:「私が誰から告白されようが、カズキには関係ないじゃない。」

一貴:「なんか不公平な気が、」

文華:「私は別にいいわよ、カズキが私に冷たくしても、私の事無視しても、全然気にならないから。」……藤塚は済ました顔でパイを頬張る、

文華:「それとも無理矢理私に破廉恥な罰を命令したいのかしら?」

一貴:「いや、そういう訳じゃ、」……思わず、僕赤面、

文華:「フン!意気地なし、」

文華:「それに、いちいち告白してきた男子の名前なんか覚えてないわよ、」

一貴:「そうなんだ。」……僕は少しほっとする、

 

一貴:「一寸気になる事があって、延山先輩が藤塚さんに告白する様になったのは 影山さんがやった「首堂さん」の「お告げ」の所為だって聞いたんだけど、今日の放課後その影山さんが何かに取り憑かれたみたいにおかしくなっちゃったんだ、まるで何かの祟りみたいに、」

一貴:「「首堂さん」は「お告げ」を実行しなかったカップルに祟るとか言われてるんだけど、藤塚さんは…、」

文華:「後3回、」

一貴:「文華は「お告げ」に従わなくっても大丈夫なの?」……一体どんな罰なんだ?

文華:「アンタって、本当に馬鹿なのね、あんなの自分に振り向いてくれない相手を無理やり振り向かせる為の幼稚な脅迫に決まってるじゃない。」……藤塚、呆れたように小さく溜息をつく、

一貴:「そうなの?」

文華:「大体、「首堂」だか「クピド」だか知らないけれど、仮にそんな低級霊が実在したとしても、私がそんなのにどうにかされる訳無いじゃない。」……藤塚、まるで可哀想な人を憐れむ様な眼差しで僕を見て、

一貴:「でも、影山さんは実際に気がフレタみたいになって入院しちゃったんだよ。」

文華:「いいじゃない、本人が望んだんでしょ、祟りを、」……藤塚、詰まらなさそうに目を逸らす、

一貴:「文華って巫女なんだろ、助けられないの?」

文華:「無理ね、私には出来ないわ、」

早乙女:「つまり文華が呪いを掛けたって、そう言う事か?」……早乙女の表情が、真剣に怒ってる?

 

一貴:「え?」

 

文華:「だってあの女が「首堂」がどうだとか私に向かって生意気に説教するからよ。よっぽど祟りが好きみたいだったから、望みを叶えてあげたのよ。」

早乙女:「全くいつの間に何やってんだか、こんな事「組合」に知られたら只じゃ済まないぞ、北条、もう少し詳しく事情を説明してくれ、」

 

 

 

ーーー

僕は事の顛末を搔い摘んで説明し、藤塚は段々神妙な顔付きになる、

 

早乙女:「呪いの道具だって無料じゃないんだからな、目的外の用途に使えば減点を喰らう、仮に経費の架空請求が出来たとしても、無関係の一般人を精神疾患にした件に関しては裏陰陽師の誹りは免れんかも知れんぞ、」

文華:「だって、カズキが悪いんだよ、元はと言えば、」……藤塚は唇をつんと尖らせて、早乙女は苦虫を噛み潰して頭を抱える、

一貴:「元に戻せないの?」

早乙女:「それはルール上NGなんだ、呪術を掛けた人間が呪術を祓うのは最も堅く禁じられた禁止事項の一つだ、」

一貴:「どうして?」

早乙女:「それは特効ワクチンを持っている医者が新型ウイルスでパンデミックテロを起こすのと同じ事だからな、それで金儲けしようと言うのは倫理上有り得ないだろう、」

一貴:「どうにもならないの?」

早乙女:「通常どんな呪術も慢性疾患に移行しない限り数日から長くても数週間で効果が薄れるモノだから此の侭放って置くのも一つの手だが、動物霊憑依症状まで発症しているとすると放置しておくのは不味いかもしれんな、」

文華:「そんなキツイ薬は盛ってない筈、二三日幻覚見る位のレベルの筈、」……藤塚、両手の人差し指をツンツン付き合わせて上目遣い、

 

早乙女:「まあ、こういう時の貸しが無い訳ではないがな、」……早乙女、頬杖突いて深く溜息、

文華:「嫌!あの女に頼るのだけは絶対に嫌だからね!」

 

 

 

ーーー

影山が入院してる病院の職員用駐車場、深夜26時……

 

理夜:「お兄ちゃん!」……行成り加茂が暗がりから出現して僕に抱き付いてくる、

佳枝:「こんばんは、」……富士本、丁寧にお辞儀する、

 

藤塚は外方を向いてぶつぶつ何か言っている、

 

一貴:「御免ね、余計な事を頼んじゃって、」

佳枝:「お兄さんの依頼なら何時だって最優先ですよ、遠慮しないで下さい、」

 

駐車場に止めたワゴン車の中から早乙女登場、スキューバダイビングに使う様な頭の天辺から爪先迄すっぽりの全身スーツに身を包み、上からグレーのパーカーを羽織っている、

 

早乙女:「監視カメラの類はこっちで全部誤魔化すから、巡回にだけ気を付けてくれ、今なら病室までオールクリアだ、」

 

 

 

ーーー

影山の病室は特別棟の4階の奥に在った。 一般病棟と隔離する扉も外部からの操作で既に開錠されていて、特に何の障害もなく病室に迄辿り着くが、部屋の中からはまるで動物の様な薄気味悪い低い唸り声が聞こえてきて一瞬ドアを開くのを躊躇する。 息を潜ませながら部屋に入ると、まさか僕達に気付いたのかの様に影山の目がギロリとこちらを睨んだ、

 

一貴:「もしかして起きてるのかな?」

佳枝:「いえ、目を開けた侭、眠っているようですね、」

 

影山は暴れない様に手足と胴体を皮のベルトでベッドに固定されて、ベッドの脇に置かれた点滴から管が手首に繋がっている。それでイビキとも呻き声ともつかない寝息を漏らし、時折発作の様にびくっびくっと痙攣する。

 

佳枝:「先輩が仕掛けたドラッグデリバリー・システムを解除します、」

 

富士本はそう言うと、影山の首のベルトを外して横を向かせ、耳の後ろの吹き出物かほくろの様な小さな膨らみに極細ドライバーの様な器具を突刺した。 ぷつりを表皮が裂けて体液が零れ出し、まるでニキビを潰したみたいに中から出てきた白い脂肪の塊のような芯を、今度は器具の先端に付いたピンセットで摘んでシャーレに回収する、

 

一貴:「それは何なの?」

佳枝:「此れは一種の幻覚剤です、少しずつ溶けて毛細血管から薬品を吸収させて一定期間幻覚を見せる効果を及ぼします、でもこの薬にはこれ程の精神障害を発症する効果は無い筈なのですが、先輩が仕掛けたのは一つだけですか?」

文華:「うん、」……何だか藤塚が部屋の隅っこでシオラシイ、

 

富士本は銀色の万年筆の様な棒を取り出すと、今度はそれで影山の身体の表面を擦る様に検査していく。 影山の下腹部、臍の下辺りに差し掛かった処で棒の先端が黄緑の光を灯した、

 

一貴:「なに?……」……口を開きかけた僕を富士本が制する、唇に人差し指を当てて「御静かに」のジェスチャー、

 

富士本は影山の脚の枷を解くと、寝間着のズボンを降ろして成人用オムツを脱がせた。 影山は薬が効いているのか何をされても眠った侭で、次に富士本は影山の両脚を開いて膝を立たせると、両脚の間に入り込んで小型のペンライトで影山の股間を照らす。 それから陰唇を開いてクスコを膣に差し込んで、きりきりとその内側を曝け出した。 ライトの光で丸見えになった膣の奥の子宮口にはほんの少し生理の血が滲んでいて、富士本はその子宮頸部を先ほどの極細ドライバーで弄って、小さな「しこり」の様な塊を見つけ出す、そこへ器具の先端のピンセット状のメスを挿し込んで、慎重にその肉の内側に埋め込まれた「仁丹」程の大きさの白いビーズを摘み出した。 加茂がすかさずスマホのカメラでその小さな玉を撮影する。……と、10秒も経たない内にそれは、「ぴしゅ!」っと弾けて、跡形もなく塵に砕け散った!

 

次の瞬間、マグネシウムフラッシュの様な閃光と煙が病室を包み込む!

 

そして部屋の四隅から発生する、まるで精神を圧縮する様な威圧感、何かに意識が持っていかれる!

 

一貴:「何なんだ、これは、」……僕は全身から力が抜けてへたり込み、まるでレーシングカーか戦闘機の超Gに晒されたミタイに身体が床に押し付けられる。

 

加茂はふらついて膝を付き、かろうじて藤塚と富士本が戦闘姿勢を保つ。 藤塚がドアに辿り着いて開けようとするが、いつの間にか外から施錠されて僕達は閉じ込められている?

 

状況の把握に約5秒、それで富士本は内腿から小型のトンファに似た暗器を取り出すと、それを目星をつけた病室の壁に突刺した!

 

電撃音:「バチっ!」……強化改造されたスタンガンの電撃が、人間の精神に影響を及ぼす電波兵器を狂わせる! 途端に死にたくなる様な不快感は消失するが、直ぐには身体の自由は戻らない。

文華:「ヒカル、何やってんの!」

早乙女:「すまない、こっちも交戦中だ、少し時間をくれ!」……ポケットに入れた侭の藤塚のスマホから早乙女の声、

 

影山:「うぐぁああああ!」……そして、影山が信じられない力で革のベルトを引きちぎった! 人間の脳のリミッタを超えた怪力の所為で、腕に食い込んだ皮ベルトが肉を抉って、ピンク色の筋肉と白い骨が剥き出しになっている。

 

にもかかわらず影山はそんな怪我の痛みを意に介する様子も無く、無表情に焦点の合わない目でぐるりと一同を見渡して、反対側の腕のベルトを外し、ベッドの上に四つん這いになって、枕の下から刃渡り50cmは有ろうかと言うダガーナイフを取り出した。

 

一貴:「……?」……どうやら、最初のターゲットは僕らしい、

 

目があった瞬間に影山が襲い掛かる! 影山は技術もへったくれも無くただ筋力に任せて刃物を振り回し、藤塚が僕に体当たりしてナイフを躱し、富士本が影山の前に立ちはだかった。

 

次の瞬間、富士本の踏込は影山の鳩尾に暗器の電撃針を突き立てる!……「バシッ!」と破裂音を立てて電撃が影山の身体を駆け巡り、其の侭更に富士本は踏み込んで、強力な睡眠薬を影山の体内に注射する! にもかかわらず影山は怯む事無くナイフを振り回して反撃、四つん這いでまるでゴキブリか蜘蛛の様に床の上を駆けずり回る! 次のターゲットは加茂理夜? 影山はとても人間業とは思えないすばしっこさで今度は加茂理夜に接近し、その足首目掛けてナイフを振り払う!

 

その影山の肘の関節を、富士本が一撃で踏み折った!

 

影山:「ギゲっ!」……影山はまるでカエルの様な泣き声を上げて、

 

それでも尚怯まずに体勢を立て直そうとする影山の首に、富士本が暗器の持ち手を分解して展開したカーボンナノチューブ製のワイヤーカッターを巻きつける! そしてグン!と一気に引き切ったワイヤーが影山の首の肉にずるっと深く食い込んで、筋肉もろとも頸動脈を一瞬の内に分断する!

 

心臓の強力な収縮が大量の血液を噴水の如く一気に噴出させた!

 

影山は首を270度捻じ曲げた格好で地べたに転がり、やがて手足の動きを止めて、それっきり沈黙する。

 

一貴:「殺したの?」

文華:「全く、」

佳枝:「仕方ないですよ、だって、」……富士本が、ワイヤーにコビリついた影山の血を舌舐めずりする、

佳枝:「加茂理夜に害なす者は一瞬たりとも活かしておく事は出来ませんから、」……そして真っ赤な血に染まった富士本が、ウットリと蕩けた視線で宙を仰ぐ、

 

佳枝:「見つけた!」……次の瞬間富士本は窓を開けて鉄格子を蹴破った! それで其の侭4階の窓から飛び出して!

一貴:「富士本さん!」

 

下に止めてあった誰かのワゴン車の天井に着地! 其処ではまさに早乙女が、目に見えない「例の何か」と交戦中! 富士本は防戦一方の早乙女の肩を踏み越えて、僅かに歪んで見える正面の空間にカーボンナノチューブのワイヤに繋がれた流星錘を放つ! 敵に絡まったワイヤーがピンと張って、その一瞬を見逃さず早乙女の強力な掌底突きが、その巨体もろとも見えない敵に問答無用の衝撃を透徹する!

 

佳枝:「逃がすか!」……富士本はワイヤーを切断して逃れようとした見えない敵の足元をもう一つの流星錘を放って、絡め取る!

 

足元を掬われて何かが地面に衝突し:「ゴン!」……と鈍い金属音を立て!

早乙女がその上に馬乗りになって、首根っこのカバーを開けて鎧の光学迷彩をキャンセルし、その正体を晒す。……更に頭部のヘルメットを展開して!

 

鎧の中に入っていたのは、女の子?

 

早乙女:「よう、」

女の子:「これでアンタ達もおしまいよ、」……で、辺りを包み込む自爆の轟音と閃光!

 

病院中の火災報知機が一気に鳴動した!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。