朋生:「トランプ? 徹夜でポーカー大会?」……三人、目を丸くして見合わせる、
一貴:「いやぁ、…泊りってアリなの?」
朋生:「そうだよ、優等生の黒沢がクラスメートと泊まりで遊ぶなんて考えられないぜ、」
三枝:「だから、遊びじゃなくするのよ。」
朋生:「意味判んないんだけど…。」
三枝は、作戦を話し始めた…
三枝:「ポーカーの勝負って、多分一勝負5分くらいでしょ、1時間やって大体10回、夕方に集合してご飯食べて、8時位から開始して、朝の6時まで10時間、途中休憩挟んだとしても100回は勝負できる計算よ。100回の勝負の内、どんな役が何回出来上がったか記録を取って、発生確率を分析するのよ。 言って見れば統計学の自由研究よ。 自由研究に協力してって言えば、黒沢クンも乗ってきてくれるんじゃないかな…。」……語尾が、ちょっと元気無い、
朋生:「なんかよく解らんが、何でそこまで体育会系なんだ?」
三枝:「勿論、皆にはお礼するわよ。アルバイトだと思って協力してくれない?」
高野:「私は良いわよ。トモクンと一晩中一緒にいられるって言うのも悪くないしね。」
朋生:「俺も良いよ。」
三枝:「カズキは、問答無用で良いわよね。」……僕は苦笑い、
朋生:「ちょっと、さっきから気になってんだけどさ、三枝って何時からカズっちの事を名前で呼び捨てにする様になったんだ?」
三枝:「先週の金曜日からよ。 先に言っとくけど何にも無いわよ。」
高野:「でも何で19日なの?」
三枝:「20日から、夏期講習が始まるのよ、」
朋生:「はぁ、勉強ですか。 しかも徹夜明けで…勉強の鬼だな、」
三枝:「知らないの? 受験には体力も必要なのよ、」
一貴:「そもそも、どうして徹夜なの?」
三枝:「普通じゃない…極限状態の経験を共有したいのよ、」
朋生:「お前なんか悪どい事考えてるだろ。マインドコントロール的な…」
高野:「まあ、良いんじゃない。恋する乙女は形振り構わないものよ。」
高野:「でも、何処でやるの? 一晩中5、6人が集まって騒げる場所ってどこか心当たりある?」
三枝がにっこりと微笑む。
ーーー
一貴:「黒沢クン、ちょっと良いかな。」
黒沢:「どうしたの?」
一貴:「実は、僕と金平で、夏休みの自由研究にある実験をしたいと考えてるんだ。」
黒沢:「へえ、どんな実験するの?」
一貴:「トランプのポーカー勝負でどの役がどれ位の確率で出るのか実際に試してみようかと思って、」……何だか棒読み、
黒沢:「面白そうだね、」
一貴:「それでさ、黒沢クンの家って旅館やってるんだろ? 一晩部屋を借りたいんだけど良いかな? …勿論料金は支払うよ、」
黒沢:「旅館って言う程格式高いモノじゃ無いけど、空いてれば無料で使わせてもらえると思うよ。ちなみに何時やるの?」……思いのほか反応がローテンション。
一貴:「今週の金曜日、夕方集合して、次の日の朝までぶっ続け10時間。」
黒沢:「なんだか凄いね。 解った、空いている部屋があるか聞いてみるよ。」
黒沢:「多分、うちの親に言えば料理とかも出してくれると思うよ。」
一貴:「それは良いよ、自分達で用意するから。というか料理をして皆に食べさせたいってメンバが居てさ、」
黒沢:「メンバって、何人でやるの?」
一貴:「4人か5人。 僕と、金平と高野さんと三枝さん、後、もう一人…二人。」
黒沢:「フーン、」……余り興味無さそう、
一貴:「それでさ、もう一つのお願いなんだけど、もし良かったら黒沢クンにも手伝ってもらえないかな。 出来るだけちゃんとした実験になるようにしたいんだけど、こういう時に頭の良い人が居てくると助かるんだよね。」……三枝曰く、「君だけが頼り…」と言うのがポイントらしい、
黒沢:「三枝さんが居れば大丈夫じゃない?」
一貴:「いや、三枝さんから黒沢君にも参加してもらいたいって意見が出たんだ。」
黒沢:「フーン、」……ちょっと悩んでいる。 でも余り食指は動かないみたいだ、普通こんな面倒臭そうなイベントにそう易々と乗っかってくる奴は居ないぞ! 三枝!
しかし僕には、最終兵器があった。 問題は副作用が計り知れない事だ。 言うか、言うか、やめるべきか、……黒沢が拒否の判断を下したら、全ては元も子もなくなってしまう。 僕はギリギリのタイミングで決断する!
一貴:「あ、後、…藤塚さんにも一応、声かけてんだけど。彼女も結構数学とか 得意そうだし、」……言っちまった~、
黒沢:「へえ…、」
黒沢:「統計の実験ね、面白そうだね。 ちょっとスケジュールを見てみるよ。 まあ、夏休みの前日だし特に問題ないと思うけど。」
釣れた… あっさり、
僕は 改めて 藤塚の人気を再認識する。
あの黒沢クンまでが、藤塚と同じ部屋で一晩過ごすと言うインセンティブの前には全ての事情を後回しにしてしまうのだ……しかし、これって本当に三枝の為に良かったのだろうか…
ーーー
同日、夜、藤塚宅……
そうして、僕は再び土下座していた。
文華:「嫌よ、何でクラスメイトとツルンデ徹夜でトランプなんかしないといけない訳?」
一貴:「そこをなんとか…」
文華:「命令なの?」
一貴:「お願い!」
文華:「じゃあ、お断り。」
一貴:「文華ぁ、」
文華:「甘えた声出せば何時でも言う事聞くと思ったら大間違いよ、」……だんだん藤塚の扱いにも慣れて来た自分が、怖い、
一貴:「何でも言う事聞きますから!」
文華:「なんか変ね、なんでそこまで三枝の為にしてやる訳?もしかして弱みでも握られているの?」……やばい、このまま下手に転ぶと三枝が「呪い」を受けて一年間休学って事にもなりかねない、
僕は、意を決して藤塚に全てを打ち明ける。 藤塚から冷たくされて途方にくれていた時に、三枝が藤塚の気持ちを考えろと叱ってくれたお陰で僕は自分の過ちに気がついた……的な事を多少美化しつつ、
藤塚は、困った顔で僕を見つめる、この展開はちょっと意外だった、
文華:「しょうがないわね、全く、…ヒカルが入院中は出来るだけルーティンから逸れた行動は避けた方が良いんだけどな、……夏休み中にどこかデートに連れて行く事、それが条件よ。」
一貴:「解りました。」……僕は、再度深く深く平伏する、
文華:「大体、黒沢を三枝に惚れさせる位なら、こんな手の込んだ事しなくても簡単なのに。」……藤塚、何やら思いついた様子でにやりと微笑む、
文華:「いいわ、ただポーカーやるだけなんてつまらないから、私とカズキで賭けをしましょう。」
一貴:「もしかして、文華さん、勝ち負けを操作しようとしてません?」
文華:「別に、本気で統計実験する訳じゃないんでしょ? 要するに三枝が黒沢に告白するきっかけを作れればいいんだから、」
文華:「それに私だって手品師じゃないんだから物理的な確率を操作する事はできないわ。もしかしてカズキが私に勝つかも知れないわよ。」
一貴:「何を賭けるの?」……どうせロクな物じゃ無い事は解っているが、
文華:「そうね、勝ち数が多かった人が、勝ち数が少なかった人からなんでも好きなモノをプレゼントしてもらうってのはどう。」
一貴:「なんでも?」
文華:「心配しなくても甲斐性も無いくせにプロポーズして来るダメンズにお金の掛かる事を頼んだりしないわよ、」
一貴:「返す言葉も御座いません、」
文華:「そうね、カズキに目隠しと手足を拘束して一時間好き放題悪戯する権利とか、」……いい加減健康な男子を人畜無害だと勘違いしている様だから、たまには懲らしめてやらねばならないとは思うのだが、
文華:「カズキが勝ったらどうする?」
一貴:「じゃあ良いよ、僕だって、目隠しと手足拘束で文華を一時間好きに悪戯する権利を要求する。」……で、一寸得意げに藤塚を見る。 少しは困った顔をみせるが良い…
文華:「いいわよ、それじゃ「契約」しましょう。」
一貴:「えっ? 本気なの?」
文華:「また? 北条クンはお口ばっかりなのかな??」
一貴:「解った! 契約でも何でもしてやる!」……今更、取り下げるなんてしたら男が廃る、
一貴:「その代わり、呪術を使うのは無しだぞ、」
文華:「いいわよ、」……藤塚、何故だか満面の笑み
二人は互いに唾液で濡らした人差し指を差し出して、触れ合わせる、
文華:「藤塚二三七、」
一貴:「北条一貴、」
文華&一貴:「今、二人の名の下に契約を結ぶ、」
文華:「今度はズルしないでよ。」
そうして僕達は、ゆっくりと契約の指先をお互いの唇へと滑り込ませる、