僕は其の侭眠れない侭朝を迎える、
母親:「本当にどこか具合悪いんじゃないの?」……そう言えば今日は土曜日だから母は会社が休みで家に居たんだ、
一貴:「平気、」……時計の針は既に10時を指していた、
母親:「お友達が来てるけどどうする?帰ってもらう?」
一貴:「友達?」……僕の家を知っている友達なんていないと思ったが、昨日の森雅の件も有るし、
髪の毛の寝癖もその侭に階段を降りていくと、玄関に待っていたのは、
理夜:「お兄ちゃん! 遊びに来ちゃいました。」
佳枝:「こんにちは、」
ーーー
僕はカルピスのグラスを3つ載せたお盆をそっと持ち上げる、
母親:「あんたナカナカやるじゃない。 で、どっちの子が彼女なのよ。」
一貴:「違うって、あいつらはただの後輩だよ。」
母親:「照れるな照れるな、私も可愛がり甲斐のある女の子ができて楽しみよん!」……母親はニヤニヤしながら、僕の背中をドンドン叩く。
一貴:「お待たせ。」……部屋に戻ると、案の定というかお約束の様に加茂と富士本が宝探しに没頭していた。
一貴:「何やってんだよ、富士本さん迄、」……僕は苦虫を噛み潰して溜息、
理夜:「お兄ちゃん、この前の本は何処ですか?」……ああ、誕生日に朋生からもらった無修正同人誌の事か、
一貴:「あれを見にワザワザ家迄来たの? あれ藤塚に没収されちゃったよ。」
理夜:「え〜っ、そうなの?」……加茂、がっくりと肩を落とす。
理夜:「でも、まだ他に何か有る筈です…。」
本棚の中から机の引き出し迄、一心不乱にエロ本の探す女子高生達の構図はどことなく滑稽で、四つん這いになって無防備に突き出したお尻に僕はちょっと癒されてしまう。 さっき迄生きているのが辛い位に落ち込んでいたのが何だか嘘みたいだ、
一貴:「もう其れ位にしてカルピスでも飲めば、外暑かったでしょ、」
佳枝:「ありがとうございます。」……富士本は僕の前にチョコんと正座して、グラスをひとつ取って氷を鳴らしながらカルピスを一口。 加茂は諦めが悪いのか落ち着きの無い子犬の様に手当り次第そこら中を引っ掻き回し続けてる、
佳枝:「お気付きかと思いますが、私達が伺ったのは藤塚先輩達が不在の間お兄さんを出来るだけ近くで護衛する為です。」
一貴:「そうなんだ、」
佳枝:「何だか元気が無いですね、」
一貴:「一寸ね、」……僕の事を心配そうに見つめる富士本に、僕は思わず甘えてしまいそうになる。 こんなにも理不尽な遣る瀬無さを可哀想だねと慰めてもらいたくなってしまう。
佳枝:「それはそうと大丈夫ですか? 加茂理夜を好き勝手させておいて、」……何時の間にか加茂は僕のベッドに潜り込んで、何やってるんだ?
一貴:「そんな、簡単に見つかる様な所には隠してないよ、」
佳枝:「一応、隠してはあるんですね、」……長髪、モデル体型、街で歩いていたら直ぐに声をかけられるに違いない、そんな直感的美少女が僕を見つめてクスリと笑う、
一貴:「富士本さんのドッキリに比べたら全然大した事ない内容だけどね、」……僕は先日風呂場に侵入して来た富士本の裸体を思い出して、一寸照れ臭くなって軽率に軽口を漏らす、
佳枝:「そろそろ私の事も佳枝って下の名前で呼んでくれても良いと思うのですが、それにちょっと傷つきましたよ今の発言、私の存在意義はエッチな本と同レベルなんですか?」……膨れっ面の富士本も可愛い、
一貴:「ごめん、」
理夜:「みーつけた!」……加茂理夜が、ベッドの下から数冊の写真集を引っ張り出して来る。 所謂わざと見つかる所においた「囮」の方だ、何方かと言えばソフトで高校生として差し障りの無い物が仕込んである。
理夜:「なーんだ、女の裸ばっかりです、」……加茂はチラチラと僕の顔を盗み見ながらページを捲る、
理夜:「ふーん、お兄ちゃんはこんなの見て「やって」るんですね。」……加茂は一寸頬を赤くしながら僕を上目遣いして、
一貴:「お兄ちゃんだって健康な男子なんです。」……僕は少し開き直って余裕の態度を見せる、
理夜:「これ肝心な所が見えないですよ、黒く影になってる、」
一貴:「人間、イマジネーションが大事なんだよ、」……富士本、カルピスを一口、
理夜:「どうせならきちんと見えた方が良くないですか。見えるのは無いんですか? 後、男の人のおちんちんが見えてる奴、」
一貴:「有りません、」
理夜:「じゃあ、見せ合いっこしませんか、」……加茂が行成り僕の膝に乗っかって来る、
一貴:「しません、」……僕は確固たる意志で加茂を膝から下ろす、
一貴:「加茂さん、僕に懐いてくれるのは嬉しいんだけどさ、この際きちんとはっきりさせておくと、僕は藤塚の事が好きなんだ。 だからどんなに 加茂さんが積極的にスキンシップしてくれても駄目です、」……言ってて、ズキンと胸が抉られる音が聞こえる。 僕は藤塚の事が好き、でも藤塚は……
理夜:「理夜はお兄ちゃんが藤塚先輩の事好きだって全然構わないんだから、理夜とも遊んでよぉ、」
一貴:「僕は、藤塚が好きなんだ、」……どんなに言葉で心を言いくるめようとしても、一度裂けた傷口はそんなに簡単に塞がったりしない、
理夜:「お兄ちゃん「好き」なんて言うのは一時の気の迷いですよ。 そんな感情に義理を立てて折角の青春を棒に振るのは身体に良く無いよ。」
一貴:「兎に角、僕はお前とは友達以上には成れないよ、お前もちゃんと加茂の事を好きになってくれる彼氏を見つけて本当の恋をした方が良いよ、」……これは何時もの藤塚の台詞その侭だ、
理夜:「理夜はお兄ちゃんが良いの! 大体、理夜の事を好きになってくれる人が見つかって、もしも理夜がその人の事を好きになったとしても、理夜はその人と結ばれる事は出来ないのですから、そっちの方が悲しいです、」
一貴:「どうして?」
佳枝:「加茂理夜は生まれて来た時から誰と結婚して子供を作るのかは既に決められてしまっているのです、」……僕は、再び一体何時の時代の話をしているのやら混乱する、
理夜:「因に私の婚約者は現在35歳のキモデブオヤジでーす。 結婚式は高校卒業した1ヶ月後の4月吉日ですよ、」
一貴:「どうして?」……こんなにも可愛らしい加茂理夜が、どうして好きでも何でもないキモデブオヤジに抱かれなければならないと言うのだ?
佳枝:「お兄さん、加茂家の嫡出子と言う事は、結婚であろうとも「家」の決まりに従わざるを得ないのです、」
一貴:「そんな、」
理夜:「そんなに悲しむ事じゃないですよ、どうせ結婚なんて仕事と同じなんですから、恋愛とごっちゃにすると不幸になるだけですよ、」
一貴:「だからって自分の好きでもない人と一緒に暮らしていくなんて、」……身体を重ねるなんて、
理夜:「だから好きなんて一時の気の迷いです。 迷えば万事塞翁がOKです。 理夜はそんな事よりも今は「恋愛」を楽しみたいのです。」……加茂が目一杯の笑顔で僕を慰めてくれる、
理夜:「可哀想だなんて思わないで可愛いと思って欲しいな、」
理夜:「いつまでもそんな悲しそうな顔してると、これ持って帰っちゃうよ。」……加茂、悪戯な上目遣いで 隠しておいた「藤塚のストッキング」をヒラヒラさせる、
一貴:「あっ、お前、いつの間に!」
理夜:「随分汚れてますね、粉が吹いてます、ああっ!これは…もしかしてお兄ちゃんの精液の匂い!」……加茂、ストッキングを丸めて鼻に押し付ける。
一貴:「こら、止めろ、シャレになってないって!」
理夜:「駄目です、これは没収です、理夜のお土産です、」……と、僕と加茂がストッキングを取り合って組みつ解れつしている間に、
佳枝:「この部屋の監視装置の検出完了、通信妨害装置を起動しました、今から15分は会話可能かと思います。」……富士本が部屋のあちこちに何やら怪しげな小型アンテナを設置して、リモコンボタンをONにする。
理夜:「さて本題です、お兄ちゃん、藤塚先輩がピンチですよ。」