佳枝:「先ずは昨日来た女の事を教えて下さい、」
一貴:「どう言う事?」……森雅の件はプライバシーの事も考慮すれば、そんなに気安く他人に話して良い事とは思えないが、
理夜:「何を言われたか知りませんが、アイツの言う事を鵜呑みにするのは危険です、」
一貴:「アイツって、楓明とか言う巫女の事?」
佳枝:「渋谷に店を出している有名な占い師ですね、カリスマJK占い師とか呼ばれている。」
理夜:「大体、陰陽師の巫女が有名人やってる時点で怪しすぎるのです、訳が判らないのです。」
佳枝:「楓明は組合の巫女としては登録されていない様です、照会禁止の巫女が全くいない訳ではありませんが、それは国家安全保障規模の秘匿案件に携わる者に限られます、」……富士本はネットで楓明のホームページを検索し「陰陽師組合」のホームページの登録巫女リストと照合する、
理夜:「それで、見せて下さい藤塚先輩の写真、」
一貴:「な、なんでそんな事を? もしかして加茂も僕の事を監視してるの?」
理夜:「当然です。 そんな事よりもお兄ちゃんは其れの所為で昨日から一睡もしないで泣いていたのでしょう? そんなの十中八九合成写真に決まってるのです。 私が鑑定してあげるのです。」
一貴:「合成写真?」……そう言えばそんな簡単な事も僕は思いつかなかった、
其れ位僕は切羽詰まっていたと言う事だろうか、一縷の望みを掛けて、僕は携帯を開いて送られて来た写真を加茂に見せる、
理夜:「ああこれは、……ご愁傷様ですね、しっぽりですね、」
佳枝:「画像を加工した痕跡は見当たりませんね、」……富士本は、携帯画面をスマホでスキャンして画像処理の痕跡をチェックする、
一貴:「なんだよやっぱり本物なのかよ、」……で、結果轟沈する、
理夜:「そんなに落ち込まない方が良いです、お兄ちゃんは完全初物でないと許せないタイプですか? お兄ちゃんと出会う前の恋愛事情は一切認めない恋愛潔癖症ですか?」……へたり込んだ僕の頭を加茂がヨシヨシと撫でてくれる、
佳枝:「一応藤塚先輩も巫女ですから、絶対におちんちんをおまんこの穴に挿入してはいないと思います、恐らく割れ目におちんちんを擦り付けているか、お尻の穴に入れているかのどちらかじゃないでしょうか、」……おちんちんおちんちんって、そんな説明聞きたくも無い、
理夜:「人間の皮膚は結構頻繁に新陳代謝するですから、早乙女に触られり唾液とか精液とかを塗り付けられたりした部分も既に剥がれ落ちて新しくなっているかと思われるのです、」……だからそんな講釈要らなくって、
一貴:「そういう事じゃ無くって、もしも藤塚が早乙女の事が好きなんだとしたら、藤塚は早乙女と一緒になった方が幸せなんじゃないかって、そういう事だよ、」
理夜:「つまり藤塚先輩の事はきっぱり諦めると言う事ですか?」
一貴:「僕は、」
理夜:「お兄ちゃんが富士本で手を打っておいてくれるならウチとしてはこんな有難いことは無いですけど、どうしますか?」
一貴:「でもさ、富士本さんだって本当は他に好きな人がいるんじゃないの?」
佳枝:「はい、でも私の想い人は私なんかと結ばれる事が絶対に有り得無い人なんです。 私的にはお兄さんは嫌いじゃないと言うか妥協点としては申し分ないので大歓迎ですよ、」
理夜:「とりあえず不公平にならない様にお兄ちゃんも富士本とエッチしてみては如何ですか? それからどちらにするか選んでも遅くないと思います。」
一貴:「取り敢えずその件はおいといて、何が一体藤塚がピンチなのさ?」
理夜:「三日月が動き出しました。」
理夜:「阿部の三日月が組合の「掟」を期限付きて改訂する事を提案し、本日午後正式に組合執行役員会にて可決される予定です、可決後は、巫女と式王子の定期的な自白剤を使った潔白証明が実施される事になります。」
理夜:「本件は以前からも何度か提案されていましたが決め手になったのは先日影山に憑りついた「裏」の一件です。 自爆した式王子の遺骸のDNA鑑定が完了し、早乙女の面通しの通り「西園寺家」の次女「ニ九四ツクシ」で有る事が確定しました。 念の為に富士本が独自に回収しておいた小指のDNAをウチで検査した結果とも整合しており、誰かが検査結果を捏造・工作した可能性は無いと思われます。 西園寺家は今回の事件への関与を完全否定しており、その後の追加調査の結果からニ九四が何者かによって洗脳されていた可能性が示唆されました。 この一件を利用して三日月は巫女と式王子に定期的な「洗脳チェック」を行う事の必要性を提議し、今回の「掟」改定案に織り込みました。 更にどさくさに紛れて巫女に対しては処女性の証明も合わせて義務付けられる事になったのです。」
理夜:「これ迄も巫女は処女であるべきと言う「掟」は有りましたが、具体的な証明方法については特に規定されていませんでした。 処女膜の有無が巫女の能力に一切関係しない事は誰もが知る所なので昔程重要視され無くなってきたと言うのが理由ですが、今回「裏」が膣内に埋め込むタイプの洗脳装置を使用している事にこじつけられて今回の処女検査の義務化に繋がっています、処女検査は自白剤による処女性の自白証明によって行われるため、誤魔化しや虚偽申告は不可能です。 それで処女を失った巫女は正式に巫女の資格をはく奪される事になります。」
一貴:「何だか大変そうだけど、それが藤塚とどう関係するの?」
理夜:「阿部の三日月と藤塚先輩が交わした契約は「お兄ちゃんと恋仲になって味方につけ、お兄ちゃん合意の下に阿部と専属契約させる」と言うモノです。 期限は30年で、30年の間に勧誘に失敗した場合は成功報酬を得られないだけで済みますが、問題は失敗でなく藤塚先輩が三日月を裏切った場合です、故意に契約に反する行為を行ったり契約不履行に陥った場合は損害賠償として凡そ130億円の支払いが命じられます、合わせて今後15年の藤塚家と阿部家の契約停止等が含まれています。」
一貴:「130億って、」
理夜:「それで此処が大事なところなのですが、お兄ちゃん藤塚先輩とセックスしましたよね。」
一貴:「してない、」
理夜:「嘘言っても駄目ですよ、理夜は先輩みたいに怒ったりしないから正直に白状してください。」
一貴:「本当にしてないよ、そう言う感じになりかけた事は有ったけど、結局しなかった。 本当だってば、」
理夜:「そうですか、なら少し安心です、もしもやっていたとしたら、お兄ちゃんは藤塚先輩の処女を奪った事になる訳で、結果藤塚先輩は巫女としての資格を剥奪される訳です。 勿論、お兄ちゃんが阿部と契約を結べば任務終了でお咎めなしですが、お兄ちゃんが合意しなかった場合は、任務失敗かつ資格剥奪による巫女解任で任務不履行に問われる訳です。 その場合三日月は藤塚先輩に損害賠償を求める可能性が大有りです。」
理夜:「もともと藤塚先輩はお兄ちゃんが式神になる事を嫌っていましたから、エッチだけして失敗した事に決め込むつもりだったのでしょうが、今後はそういう訳にもいかなくなります。 お兄ちゃんが藤塚先輩とエッチした時点で、損害賠償を求められるか、お兄ちゃんが阿部の式神として契約するか、もう一つはお兄ちゃんが去勢するかの3択になります。」
一貴:「何で去勢?」
理夜:「藤塚先輩の契約にはお兄ちゃんの家督相続権の喪失までは含まれていません、お兄ちゃんが死ぬか子種が無くなって三船家の家督相続権を失えば自動的に契約は無効となり藤塚先輩は晴れて自由の身となる訳です。」
一貴:「もしも此の侭僕が藤塚と別れたらどうなるの?」
理夜:「藤塚先輩は40歳になるまで処女を守り通す事になります、まあ、40歳でも童貞処女はざらに居ますからそれも有りかと思いますが、」
一体どれが藤塚にとって最も幸せな道なのだろう? 藤塚が本当は早乙女の事が好きなのだとしたら、僕が阿部の式神になって藤塚を契約から解放するしかない様に思える、……のだが、
一貴:「どうしよう、プロポーズしちゃった、」
理夜:「え、それは不味いですね、」
一貴:「うん、出来るだけ早い内に命令を解除するよ、」
理夜:「主隷の契約の元に婚姻を命令したとなると、三日月が「それは巫女としての処女性の喪失と同意義」だとしてお兄ちゃんに阿部家との契約を強要してくる可能性が有ります、」
一貴:「命令を解除しても駄目なの?」
理夜:「主隷の契約みたいな非常識なモノは最も厳しい契約の一つに数えられているのでその命令を破棄する事は国が転覆する位の滅多な事が起きない限りは有り得ませんから、三日月がごねる可能性は有りますね、でないと命令される度に脅せば命令がキャンセル出来る事になって、絶対服従と言う主隷契約自体が形骸化してしまいますから、」
三日月:「その通りであるノヨ、」
声に振り返ると、部屋の隅に一人の男?が立っていた。 中肉中背の中年男?が、派手な化粧をしている。 僕は、いや加茂や富士本ですら、その男が声を発する迄全く気づかなかった。 さっきからずっと其処そこに立っていた筈なのに……
佳枝:「3D投影映像です、実体では有りません、」
理夜:「三日月様がこんな所にお出ましとは、どういう風の吹き回しですか?」
三日月:「これはこれは加茂の跳ねっ返り娘、ご機嫌麗しゅう、」……その不思議な男?の映像は、全く無表情な侭僕の方を見つめて、
三日月:「文華の主殿よ、主隷の契約は最高級の最厳格な契約であるが故、基本的に一度命令された内容が覆る事は有り得ない、従って藤塚文華は北条一貴の伴侶として将来を決定づけられたのと著しく等しいノヨ、」
三日月:「最前より加茂の跳ねっ返り娘が講釈してくれた通り、藤塚文華の身柄共債務の一切を主殿に引き渡す代わりに、主殿には阿部との40年専属契約を結んでもらえる事を期待するノヨ。 もしも拒むのであれば藤塚文華には契約不履行の損害賠償として136億円の支払いと藤塚家との契約破棄及び将来15年における契約凍結を申し渡す事になるノヨ。 支払期限は今より3日、支払い出来ない場合は自動的に適正な利率を設定した金銭消費賃借契約を取り交わす事になるノヨ。 当然藤塚文華の所有者である北条一貴には同契約を保証する責任が生じるノヨ。 但し北条一貴が一切の生殖能力を失い、三船家の正統家督継承権を失った場合はこの限りでは無いモノとするノヨ、一応念の為。」
三日月:「それでは愛おしい妻を返してやろう、最早お前の所有物だ好きにするが良いノヨ。」
そう言ってから三日月が何か小さな手鞠の様なモノを僕に向ってぽーんと軽く放り投げた。 僕は条件反射的に其れを受け取って、受け取った瞬間に誰かが僕の左手首をキツく握りしめる! 見ると何時の間にどうやったのか、僕の手首にはガラス製の太い鎖が巻き付けられていて、その鎖の反対側の先は……三日月の3D映像が消え失せたその場所には藤塚文華が力なく項垂れていて、その藤塚の細い首に鎖の反対側がキツく巻き付いていた。 藤塚は白装束に身を包み、意識は朦朧として、その顔は何度も繰り返し気を遣り続けたかの如くに蕩けきっている、
一貴:「藤塚!」……僕は急いで藤塚に駆け寄って、抱き起こそうとしたその瞬間、藤塚の白装束の襟元が開けて素肌の乳房が丸出しになる、
一貴:「何なんだ?これは?」……其処には、
禍々しい金属の蔦がまるで嬲り弄ぶかの様に藤塚の身体に蜷局を巻いて取り憑いていた。