※この作品はR-18です。

マスタースレイブ・リストリクテッド   作:ランプライト

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041「土蜘蛛の王」

早乙女のワゴン車を富士本が駆って僕達は東名高速を西へと向かう。 後部シートで僕は眠る藤塚を抱いて未明の高速道路に溢れかえるトラックの群れをぼおっと眺め続け、やがて空が白み始めた岡崎辺りで乾ききった藤塚が目を覚ます。 藤塚は僕の胸に顔を押し付けた侭寝たふりを続け、僕は何も言わないまま庇う様に藤塚の手をじっとキツク握り締めて、……

 

加茂:「お兄ちゃん、着きましたです、」

 

何時の間にか本当に眠ってしまっていたらしい。 竹林の奥深くにあるその古い屋敷に辿り着いたのは正午ちょっと過ぎだった。

 

文華:「ここ、どこ?」……不安に藤塚が僕の手を握り締める、

一貴:「どこでも大丈夫、僕が付いてるから、」

 

車から降りると着物姿の女性が二人、丁寧なお辞儀で出迎えてくれる。

 

女中1:「お疲れ様でした、お嬢様方は此方へどうぞ、」

 

それで、付いて行こうとした僕のすぐ隣に何時の間に其処に居たのか道着姿の厳つい男が棍で僕の首根っこを抑えて行く手を阻む、

 

宅間:「お前は駄目だ、」

 

加茂が心配そうに振り返るが、問答無用で女中達が三人を取り囲んで、そのまま屋敷の中へと連れ去ってしまう、

 

宅間:「付いて来い、」

 

富士本もいるし、これ以上最悪の事態になる事はないだろうと信じて、僕は道着の男に着いて、離れの建物へと辿り着く、

 

宅間:「其処に座れ、」

 

命令される侭に土間のタタキに座ると、二人の女中が現れて僕の靴を脱がせて、持ってきたタライに水を張って僕の両足を洗い始める。 それから今度はタタキに上がらされて、あっと言う間に服を脱がされて、其の侭引き摺られて?行った先は風呂場?

 

檜作りの結構広い風呂場に押し込められて、結局問答無用でパンツもひっぺがされる。

 

一貴:「あの! ちょっと、」

 

それどころか女中さん達に全身を海綿スポンジで垢擦りみたいに擦られる、

 

一貴:「ちょ、痛いです、」

女中B:「あらぁ、若様、良えもん持ってはんなぁ、」

女中A:「これ、」……歳上の女中が若い方を叱る、

一貴:「其処は自分でやります、」

女中A:「黙りなさい、じっとして!」

 

それで結局先っぽまで余す処なく擦られて、

 

一貴:「わ、…やぁ、それ、…ああぁ……」

女中B:「出さはっても良えんよ、」……何だか明らかに別の意味合いのハンドアクション、

女中A:「これ、」……歳上の女中が若い方を叱る、

一貴:「あちぃ!」

 

それで40℃以上ありそうな熱湯を頭から浴びせられて、広い湯船へ、

その間も女中達は僕の背後に控えていて、もしかして見張っているのだろうか? 敵意は無いように感じられるのだけれども、

 

湯に濡れた檜の匂いを嗅ぐ内に、少しずつ緊張が解けて来る、

 

 

 

ーーー

風呂からあがると、僕は袴と道着に着替えさせられて、別の建物の広い和室へと通される。 竹林の木陰に埋もれた静かな屋敷、縁側の長い廊下、枝垂れた庭の梅の古木、何だかいつか見た事が有る様な風景、天井の太い梁はもっと高い所にあった様な気がする。 僕は一人縁側に立って、遠くにジャワジャワと忙しない蝉の声に耳を傾ける、風に戦ぐ葉擦れの音が波のように揺らいで、何だかとても久しぶりに自分が人間だった事を思い出した気がする。

 

やがて女中が三つ指をついて盆に載せた食事を運んで来た。 変わり種の豆腐に山菜の天ぷら、岩魚の塩焼き、みそ汁と白いご飯。 藤塚はどうしただろうか?

 

放置プレイの様に小一時間が過ぎ、毒を食らわば皿までと僕は丸二日ぶりの食事に手を付けて、流石に盆を下げに来た女中に聞いてみる、

 

一貴:「あの、何時まで此処でこうして居れば良いのでしょうか?」

女中B:「お好きなだけどうぞ、トイレやったら廊下を出て右の突き当りです、」……和装の綺麗な若い方の女中さんが京都イントネーションで答える、

一貴:「えと、出来れば祖父に会いたいんですけど、」

 

それで僕は女中さんに連れられて、カクカクト曲がりくねったダンジョンの様な廊下を進み、渡り廊下を行った先の大きな広間に辿り着く、

 

 

 

ーーー

中ではエロ爺が藤塚と酒を飲んでいた。

 

女中はぺこりと頭を下げて襖を閉めて、僕はがらんと100畳位は有りそうな大広間に取り残される。 何処かで確かに見た事の有りそうな年寄りが、膝の上に和装の藤塚文華を乗せてニヤニヤコッチを見て笑っている。

 

爺:「一貴遅かったな、マスでもかいとったか?」

一貴:「じ、じいちゃん?」

 

文華が、恥ずかしそうにぺこりと頭を下げる、

 

一貴:「文華、身体は大丈夫なの?」

爺:「ほんま文華ちゃんは大人しい娘やな、」……エロ爺の掌が、それとなく藤塚の乳房を触ってる!

一貴:「じいちゃん、何やってんだよ、」……藤塚、恥ずかしそうにポット頬を染めて、

爺:「文華ちゃんはホンマめんこいなあ、」……僕は藤塚を爺から取り返す、

 

 

 

ーーー

その夜、贅沢な夕食の後……

僕は祖父の前に胡座をかいて座り、

 

爺:「話してみよ、」……此処に来るに至った事情を事細かに説明する、

 

爺:「そうか、130億は大変やな、まあ、頑張れよ、」

一貴:「頑張ってどうにかなる金額じゃないよ、」

爺:「それ位儲けてる奴は他にも居るやろう、なんでお前に出来んのだ?」

一貴:「でも一体なんなの? 式神とか式王子とか、うちの実家が「暗殺請負業者」だったなんて驚天動地も良い処だよ。」

 

爺は盃を振って、僕に手渡す。それでそこへ溢れんばかりに日本酒を注ぐ、

 

爺:「これでも、その道では名の通った由緒ある名家なんだぞ、」

爺:「ほれ、一息に空けろ。」

 

勧められる侭に一気飲みする熱燗は、甘い様な辛い様な、鼻に通る湯気のアルコールがその侭食道に垂れて胃を火照らせる。一瞬で脳みそが柔らかくなった気がする。

 

爺:「般若湯って言うんや、脳味噌が硬い事を言わん様になる薬や。お前も17になったんやったら酒くらいは覚えとけ、」

一貴:「お酒は二十歳から…、」

一貴:「大体、名の通った暗殺業者なんて変だよ…、どうやって友達に紹介すんのさ、」

 

爺は盃を取り返すと手酌で酒を進める。 僕は爺のお膳に残っていた千枚漬をボリボリ齧る。

 

一貴:「僕は、どうすれば良いの?」

爺:「自分で考えろ、」……そういう爺の目は、何処か優しげだ。

爺:「でも、まあ…ワシを頼ってくれたんは嬉しかったぞ、」

爺:「「阿部」の陰陽師にはワシの方から執成して置いてやるから、そんなに心配すんな。」

一貴:「そんな事できんの?」……僕は、多少疑いの眼差しで爺を見る。

爺:「何、彼奴等とワシ等は持ちつ持たれつ、それにこの世界は口よりも歳がモノを言う。」

僕は、改めて大きな溜息を一つ、

一貴:「藤塚は、巫女で居続けなければならないの?」

爺:「お前が決める事だ。」

一貴:「僕、藤塚が好きなんだ。」

爺:「爺を羨ましがらせても 何にも良い事無いぞ。」

 

爺は残っていた酒を一気に飲み干して、僕の目の奥を伺い見る。

 

爺:「一貴よ、お前の名前は貴船さんから一文字頂いたのだ。「三船流」は「貴船流」の呼び替え、お前の諱は「一三、かずみ」だ。 誰だって、なんかしらの期待を背負って生まれてくる、育てられる。 何処の家でも同じ事だ。」

爺:「だからと言って、子がその通りに育つとは限らん、実際に生きて行くのは親ではなく子だからな。 未熟な一時の感情に身を委ねろと言っている訳では無いが、あんまり「家」の期待ばかり考えて悩んでいても詮無い事だよ。」

 

 

 

ーーー

最初に連れて来られた部屋はどうも僕の部屋だったらしい、そこに何故か布団が二つ並んで敷いてある。

 

文華:「お風呂入ってきた、」

 

そして、湯上がりの気怠げな藤塚が其処へ戻って来る。 僕は思わず見蕩れてしまう訳で。

 

文華:「そんなにじっと見ないで、恥ずかしい、」

 

昨日の夜の淫らに狂った藤塚の姿がどうしたってダブってしまう訳で。 ピッタリくっ付けた二人の布団が何だか変に期待してるみたいで僕は無性に恥ずかしくなってしまう、

 

一貴:「ちょっと、話そうか、」

文華:「うん、」…藤塚、頬を染める、

 

僕達は布団の上に座って、妙にお互いを意識してるみたいに辿々しくなって、何だか上手く言葉も出て来なくって、

 

文華:「…ありがとね、」……結局藤塚が最初の言葉を見つけ出した、

一貴:「これ迄、ゴメンね、僕の所為だよね、」

文華:「そんな事無い、契約の事は家と家の事で、カズキには関係ない、それなのに一貴はこんな私を選んでくれた、」……藤塚は、照れ臭そうに俯いたままで、

一貴:「でも、僕の所為で藤塚さんが、文華が人生を狂わされたのは確かだから、文華の契約がご破算になって本当に良かったと思ってるんだ、」

文華:「何を、…言ってるの?」

一貴:「もしも、僕が三日月と契約を結んだ事で負い目を感じているのだとしたら、そんな事は気にしなくても良いよ、僕は僕の意思で阿部の式神になるって決めたんだ、だから文華はもう自由だよ、文華は何にも、僕にも縛られる必要は無いんだ、主隷の契約の事も気にしないで欲しい、何ならそう命令したって良い、君は君が本当に好きな人と結ばれるべきだ、そうする事が僕にとって一番良い事なんだ、」

 

文華:「馬鹿じゃないの、」……僕の無意味な饒舌を藤塚が一瞬で蹴散らした、

 

文華:「何訳わかんない事言ってんのよ、誰の事を言ってんのよ、何格好つけてんのよ、私がいないと一分も我慢できない癖に、」……藤塚の目が、信じられない物を見たかの様に、怯えている?

一貴:「あのさ、文華は本当は、早乙女の事が好きなんでしょう?」……僕は、抑揚の無い声で機械的に言葉を紡ぎ出す、

文華:「なんで此処に光が出てくんのよ、」

一貴:「僕、文華が早乙女と抱き合ってる写真を見たんだ、」

文華:「だき、って何よそれ、変な事言わないでよ、」

 

僕は携帯の写真を藤塚に見せる、

 

文華:「これは、」……口籠る、

 

文華:「そう、見たんだ、それでもう私の事が好きじゃないんだ、」

一貴:「好きだよ、大好きだよ、……だから、文華には幸せになってもらいたいんだ、」

文華:「だから、なんで俺が幸せにしてやるって言えないのよアンタは! 私の幸せを他人任せにするつもりなの?」

一貴:「そんなつもりは、」

文華:「もう良い、分った、」

 

それっきり何も言わないで、藤塚は部屋を出て行った。

 

 

 

ーーー

眠れる訳が無い……

それで縁側の雨戸を開ける音がして、僕は一人きりで朝を迎える。 女中さんが三つ指を付いて朝の挨拶をする。

 

女中B:「若様、朝食は此方で召し上がりますか、それとも御頭首様とご一緒に召し上がりますか?」……時計を見ると朝の5時、

一貴:「早いんですね、」

女中B:「なんせ年寄りですから、」

 

僕は洗濯の済んだ元の洋服に着替えて、昨日と同じ大広間へと案内される、

 

あれから藤塚はどうしたのだろう、

 

広間では祖父が一人で朝ご飯を食べていた、

 

一貴:「お早う、」

爺:「おう、起きたか、」

 

祖父の直ぐ傍にお膳を用意してもらって、僕は其処に座る。 鯵の開きに、卵焼きに漬け物に味噌汁と白いご飯。

 

爺:「三日月には話を付けておいた、」

一貴:「ありがとう、」

爺:「ところで一貴、お前何をした? 文華は夜のうちに屋敷を出て行ったぞ、」

一貴:「そうなんだ、」

爺:「式も挙げんうちに喧嘩か?」

一貴:「そんなんじゃ無いよ、」

 

理夜:「お爺ちゃん!」……で、ドタバタと加茂理夜が飛び込んで来る、

佳枝:「お早う御座います、」……で、富士本も当然一緒だ、

 

爺:「おう、理夜ちゃんか、今日も元気良えのう、」

理夜:「酷いのです、お兄ちゃんと三日月さまの契約を認めるなんて、」

爺:「一貴が決めた事だ、お爺ちゃんは何も悪く無い、」

理夜:「私だってお兄ちゃんと契約したかったのです、130億位ウチが立て替えるのです、」

爺:「そうか、其れは悪い事をしたの、でももう済んでしもうた、これも縁と思って諦めるがよかろう、」

理夜:「うー、厭です、」

理夜:「藤塚先輩は何処です?話が有るのです。」

一貴:「藤塚なら、出て行ったよ、」

理夜:「どう言う事ですか?」

 

僕は昨日の夜のあらましを簡単に説明する、

 

一貴:「藤塚はもう自由だ、これ迄ずっと僕の為に縛り付けられて来たんだから、もう十分だよ、」

理夜:「お兄ちゃん、唐変木ですか?」

一貴:「え?なにそれ?」

理夜:「お爺ちゃん、ナントカ言ってやって下さい。」

爺:「困ったのう、でも一貴が決めたんなら、仕方が無い。」

 

女中が三つ指を付いて……

 

女中A:「梢こずえ様 (一貴の母親)からお電話です、」

 

一貴:「うん、暫くコッチに居るから、心配しないで、」

母親:「絶対に無茶な事はしないでよ、無理なら無理とちゃんと言いなさいよ、」

一貴:「判ってる、かあさん、ごめん、勝手に色々決めて、」

母親:「判っているならそれで良いよ、いずれはこうなるかも知れないとは、覚悟はしていたけどね、でもやっぱり、心配、」……受話器の向こうで母親が泣いているのが判る、

一貴:「ごめん、」

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