※この作品はR-18です。

マスタースレイブ・リストリクテッド   作:ランプライト

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042「失恋」

此の屋敷に着いた時に僕を棍で止めた厳つい男が僕の兄弟子になった。

 

宅間:「これから1年の間に基礎体力を付けて行く、高校卒業までは今迄通りの生活を続ければ良い、毎朝夜と週末の鍛錬には私が付き添う、高校卒業後は2年間イギリスの専門訓練校で専門技術の習得に努める、」

一貴:「イギリスですか?」

宅間:「そうだ、早乙女光が通っていた学校だ、藤塚家の当主が理事をしている。 この3年間の間に6回、見習いとして斥候任務に参加する、三日月様はお前のパートナーとして度会万絢 (ワタライマアヤ)を指名した、当面は度会とペアで実地訓練に望む、」

一貴:「度会さん?」

 

渡された写真には、パッと見の「華」は無いが綺麗な顔立ちで、ちょっとセンスの良い優等生的出立ちの少女が写っていた。 全身から「皆が幸せなら私の事は良いから」オーラを発散しまくっている。 優しく健気な「少女漫画の主人公」的雰囲気の持ち主。

 

宅間:「一貴より3つ年下だが、巫女として既に4年の経験を積んでいる先輩だ。 組合の技能検定ではランク2を取得済だ。」

一貴:「そのランクって言うのは何なんですか?」……以前に早乙女にも聞いた事が有る。

宅間:「陰陽師と契約を結ぶ時の契約単価の基準にする技能ランクだ、年に2回、夏冬に組合主催の公式検定試験を受ける事が出来る。 一貴の場合は既に三日月様と40年契約を結んでいる訳だから、受けなくても良いと言えば受けなくても良いが、まあ自分の実力を測る為に受けてみたらどうだ、」

一貴:「何だか40年ローンミタイだな、」……満期返済終了は58歳って事になるのか、

 

 

 

ーーー

で、やる事はと言ったら、只只管身体を解す事だった。 専門のトレーナーがもう一人付いて、この夏休み中に全身の筋肉の癒着を剥がすのだと言う。 要するにストレッチでしかも結構キツい、痛い、容赦してくれない。 僕の全身を好き勝手に弄くり回すトレーナーが胸の大きなお姉さんである事が唯一の救い、

 

一貴:「痛たたっ、もう、無理です!これ以上は無理、どっか折れる、」

能勢:「心配しなくてもストレッチで死ぬ人は余りいない、喋れるうちは全然平気だから、」

 

ワンセット90分只管伸ばされる、自分では到底伸ばせないので、無理矢理巨乳で伸し掛って、

 

一貴:「裂けるぅ!」

能勢:「裂けない、チンコまで硬くしない!」

 

それで15分休憩して又90分、これを朝の8時から夜の22時迄繰り返す。 それから勉強、24時に消灯で、5時起床、

 

想ってたよりキツい。 時計は23時、何故だか加茂が僕の布団に潜り込んでいる、

 

理夜:「なんなら理夜が介抱してあげるのです、癒してあげるのです、」

一貴:「加茂はどうして未だ僕にくっ付いてるの? 三日月と契約しちゃったからもう、僕を誘惑しても仕方ないんじゃないの?」

理夜:「理夜はシンプルにお兄ちゃんが気に入ってるのです、前にも言いませんでしたか? なんなら今直ぐセックスしても良いくらいです。」

一貴:「破瓜しちゃイケナイんじゃなかったのか?」

理夜:「それは巫女だけです、私は陰陽師ですから関係ありません、寧ろヤレ、です、」

一貴:「ねえ、藤塚どうしてるか、知ってる?」

理夜:「どうしてそんな事を知りたがるのですか? それに知っててもお兄ちゃんには教えないのです。 未練を残すな、です。」

一貴:「それはそうなんだけど、無事でいるのか、ちょっと心配、」

理夜:「お兄ちゃんが心配してもどうにもならないのです。……それより理夜とキスの練習するのです、今後何かと必要になる技術です、」

一貴:「夏休みの宿題終ったらね、」

 

 

 

ーーー

二週間が過ぎて、漸く楽に足の指が掴める様になった。

 

能勢:「漸く人並みって所だね、」

一貴:「中国雑技団かヨガみたい、」

宅間:「もっとだ、兎に角最も重要なのは可動範囲を展げる事だ、全ての技は筋肉によって発せられ、地面と敵と自分の身体の中をどの様に繋げて威力を通すかで使える技が増えて来る、」

一貴:「具体的にはどんな技が有るんですか?」……僕は、海住の不思議な体術の事を思い出していた、

宅間:「一貴が技の事を考えるのは未だ早い、残りの一週間はストレッチに加えて、立ち方と歩き方を練習する。 人間の身体がどう動くべきかを覚えて、神奈川に帰ってからも日々の生活の中で繰り返し反復練習し続けるんだ。 半年位すれば、もう少し具体的な筋肉の使い方と呼吸を学ぶ、それがマトモに出来る様になったら、それから少しずつ技の練習に入って行く。」

 

 

 

ーーー

女中が三つ指、……

 

女中B:「度会万絢様がいらっしゃいました。」

 

万絢:「初めまして度会万絢です、以後御見知り置きを御願い致します。」

一貴:「こちらこそ宜しく御願いします。 まだ、何をやる事になるのか全然珍紛漢紛で、」

万絢:「私もです、」……照れ臭そうに笑う、そんなに悪い子じゃないみたい、

一貴:「今中学生?だっけ、」

万絢:「ハイ、2学期から北条先輩の居る神奈川の私立中学に転校します。」

一貴:「そうなの、」

万絢:「これから実技訓練が始まりますので、出来るだけ一緒に行動して呼吸を合わせておいた方が良いと三日月様が仰られて、」

一貴:「度会さんはそれで良かったの? 友達と別れちゃって寂しく無い?」

 

また、僕の所為で誰かが犠牲になるのは、もう沢山だ、

 

万絢:「元々あんまり人付き合いの上手な方でなかったので、友達はいませんから、ご心配には及びません。できれば北条先輩にお友達になってもらえたら嬉しいな、とか、」……照れた顔が可愛い。

一貴:「此方こそ宜しく御願いします。」

万絢:「では、友達らしく、一貴さんって呼んでも良いですか?」

一貴:「構わないけど、」

万絢:「では私のことは万絢って、呼び捨てにして下さい。」

一貴:「なんか悪いよ、呼び捨ては、失礼じゃない?」

万絢:「そんな事無いです、その方が仲良しみたいで嬉しいです。本当はちょっとそう言うのに憧れてました、」

一貴:「じゃあ、分った。」

万絢:「連絡先の交換させてもらっても良いですか?」

一貴:「うん、」

 

 

 

ーーー

夏休み最終日、加茂と富士本が僕を神奈川の家に連れて帰ってくれる事になった。 どうやら二人は引き続き僕の護衛も務めてくれるらしい。

 

爺:「宿題持ったか?」

一貴:「ちゃんと持ってるよ、」

爺:「久しぶりに一貴に会えて嬉しかったぞ、大きくなったな。」

一貴:「今更其れを言うの?」

 

車窓が過ぎる度に何だか張り詰めていたモノがジワジワと溶けて、僕は漸く大切なモノを失ってしまった実感を取り戻す。 不意に零れそうになる涙を目蓋の奥に閉じ込めて、淡い初恋を胸の奥にしまい込む。

 

でもこれで良かったんだ、と僕は自分に言い聞かせようとする。 僕の為に苦しんだ女の子がやっと救われたんだ。 僕が大好きだった女の子がやっと救われたんだ。 だから何も後悔する事なんて無いんだ。

 

藤塚は早乙女と上手くやっているだろうか? 早乙女は元気になったのだろうか? 彼女達はもう学校にはきっと戻って来ないに違いない。 きちんと別れの言葉を告げられなかった事だけが何だか心残りだった。

 

何時か、この寂しさを忘れる時がくるのだろうか? でも今は未だこの痛みさえが愛おしくて、もう暫くは手放したく無い。

 

 

 

ーーー

佳枝:「それでは又明日、」……加茂は何時の間にか眠ってしまった様だった。

一貴:「お休み、色々と有難うね、」

 

僕は家の前で降ろしてもらって加茂達と別れる。 チラリと覗き見た隣の、藤塚の家に人の気配は無くて、まあ当然と言えば当然だろう。

 

僕は玄関の戸を開けて、

 

一貴:「只今、」

母親:「お帰り、疲れただろう、ご飯食べるかい?」

一貴:「そんなに疲れてないよ、まだお腹すいてない。」……それで、二階へ上がろうとして、

母親:「あ、一貴!」……母親に呼び止められる、

一貴:「なに?」

母親:「お前、今日から一階の主寝室を使って、荷物も全部そっちへ移してあるから、」

一貴:「どうしてさ?」……あの部屋には、隣の今日姉ちゃんや藤塚が住んでいた部屋が見える二階の部屋には少なからず愛着が有るのに、て言うか、と言う事は諸々お宝グッズも本人不在のうちに発掘されたと言う事なのか??

母親:「アンタもお父さんの跡を継ぐって決めたんなら、お父さんが使う筈だった部屋を使っても良いと思ったのよ、広いし文句無いでしょう?」

母親:「それに、流石に学校卒業する迄は同衾って言う訳にも行かないでしょう。」……同衾?

 

そしてお勝手から、長い髪の一人の美少女が顔を覗かせる。

見慣れない白いエプロン、華奢な身体、瑠璃色がかった濡れ烏の長い髪、神様の贔屓としか思えない妖しい美貌、……

 

文華:「おかえり、」

 

一貴:「なんで、……此処に?」

文華:「アンタが命令したんじゃない、本当に好きな人と結ばれろって、ちゃんと責任とってよね、」

 

母親:「フミちゃん、胡麻味噌上手く作れたかしら?」

文華:「はいお義母様、ちょっと見てもらっても良いですか?」

 

それでパタパタとお勝手に戻って行く女二人、

 

藤塚、振り返り様に僕を睨みつけて、……ベーっと舌を出す、

 

一貴:「え?」

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