※この作品はR-18です。

マスタースレイブ・リストリクテッド   作:ランプライト

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044「言い訳」

屋上からの帰り、僕は廊下で森雅とすれ違う、

 

森:「あの、ちょっと良いですか?」……元生徒会長は僕にぺこりとお辞儀をして、それで僕達は誰も居ない生徒会室に二人きり、

森:「この間は、突然お家にお邪魔して済みませんでした、」

一貴:「いえ、」……一刻も忘れてしまいたい記憶の筈なのに、そんな恐怖ですらそんな恐怖だからこそ、誰にも共感してもらえない事は耐えられない程辛い事なのかも知れない。 「あの事件」の事を知っている僕はそう言う意味で森雅にとっての「止まり木」なのだと言う、見失ってしまいそうな自分の居場所を確認する為の一時の休息所、自分が「事件」から解放された事を証明する為の目印、

 

森は少し照れた風に上目使いで僕を見て、やがて少しずつ話し始める、

 

森:「実は私、最近料理を習っているんです、最初はカウンセリングの先生から勧められたリハビリの一環だったんですけど、だんだん嵌ってきて最近では結構凝った料理も作れる様になってきたんですよ。」

一貴:「森先輩なら何やっても完璧に熟しそうですね、」

森:「そんな事無いです、」……森は年下の僕に向かって、何だか恥ずかしそうに頬を染める、

森:「それで、もしよかったら、お詫びとお礼も兼ねて、一度ランチにご招待したいのですが、如何でしょうか?……もし、ご迷惑でなければ、」……何だか断るといけなさそうな雰囲気に押されて、

一貴:「それじゃあ、御馳走になろうかな、」

森:「良かったぁ、」……途端に不安が解けてパッと明るくなる森雅、

森:「一寸、押し付けがましくって引かれないかなって、心配してたんです、」……森はほっと胸を撫で下ろす仕草をそのまんまに、胸に手を当てて軽く溜息を吐いた、

一貴:「全然、楽しみにしてます、」

森:「うん、腕によりをかけて作りますね、」

 

 

 

ーーー

家に帰ると加茂理夜が家を訪ねて来ていた、藤塚が加茂と富士本にお茶を淹れている、

 

理夜:「お構いなくです、」

文華:「別にお構いするつもりは無いわよ、玄関に箒立てかけといたの見なかった? ぶぶ漬け出そうか?」……富士本、番茶を啜る、

文華:「大体アンタ達なんでまだカズキにくっついてんのよ、カズキが三日月様と契約したの知ってるんでしょ?」

理夜:「理夜も高校生活をエンジョイしたいのです、ついでにお兄ちゃんに構ってもらいたいのです、」……僕は一瞬ドキッと恐怖して藤塚の顔色を伺うが、

文華:「あ、そ、じゃあ好きにすれば、」

理夜:「何ですか其れは、嫁の余裕ですか?」

文華:「別に、どうぞごゆっくり、」……それでさっさと部屋に引っ込んでしまう、

 

理夜:「何だか雰囲気可笑しいのです、今までで一番怖いのです、」

佳枝:「何か有ったんですか?」

一貴:「よく解んないけど、昨日からずっとあんな調子なんだ、どうすれば良いのかな、」

理夜:「理夜はそう言うお兄ちゃんの情けない所嫌いじゃないです、」

一貴:「なんだよそれ、全然慰めになって無いじゃん、」

理夜:「お兄ちゃんは基本的に自分に自信が無いのです、そこがまた可愛いです、」

一貴:「だから全然褒めてないって、」

理夜:「自信が無いくせに考えも無しに突っ込んで行って傷つく処がまたまた愛らしいです、」

一貴:「基本的に僕の事馬鹿にしてるだろ?」

理夜:「愛してますよ、」

 

 

 

ーーー

晩ご飯、

此れまでは母親が作り置きした夕食をレンジで暖めて食べるのが常だったのだが、夏休み明けからは藤塚が用意してくれる様になっていた、

 

文華:「ご飯、」……部屋の外から抑揚のない小声で呼ばれて、

 

ダイニングに行くと食卓にはポツンと僕の分の食事が置いてあるだけ、藤塚はさっさと二階の自分の部屋に引き籠っているらしく顔も見せてくれない。 藤塚に冷たくされるのは嫌いじゃ無かった筈なのに、今では何故だろうかこんなにも辛く感じてしまう。 それとも僕は本当に藤塚の事が好きでは無くなってしまったのだろうか?

 

僕は携帯に保存されていた藤塚が早乙女と抱き合っている写真を削除する。 こんな写真を見たばっかりに僕は藤塚の事が分らなくなってしまったんだ、信じられなくなってしまったんだ。 元々彼女は手に入る筈のない高嶺の花で、僕にだけ特別に接してくれる極度の恥ずかしがり屋で、捻くれているけれどいつも僕の事を心配してくれて居て、でもそれが藤塚流の優しさで、気が付けばそんな理由を積み上げて行く内に僕はすっかり彼女の虜になっていたのだ。

 

でも藤塚は? 本当は早乙女の事が好きだったに違いないのだ。 彼女の人生を狂わせた僕の事なんかを好きになる筈がないのだ。 僕はずっと藤塚を苦しめてきた契約と言う名の呪いから彼女を解放してあげたかった、それがなんの力も無い僕がただ一つ胸を張って藤塚の為に出来る事だと思っていたからだ。 彼女を愛した僕だから何よりも彼女が望んでいる事をしてあげたかったのだ。 それなのに漸く自由になったと思われた籠の鳥は、気が付くとまた僕の元に帰ってきてしまっていて、 彼女が本当は何を望んでいるのかが分からない、彼女が本当は僕の事をどんな風に思っているのかが分からない、

 

一貴:「ちょっとしょっぱい、」……僕はひじきの煮つけで喉の奥を詰まらせながら、どうにもならない遣る瀬無さを一人持て余す、

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