※この作品はR-18です。

マスタースレイブ・リストリクテッド   作:ランプライト

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004「赤いラブレター」

一貴:「はぁ、」……気がつくと溜息ばかり吐いていた。

 

GWを週末に控えて本当ならば気も晴れやかな筈なのに、僕には到底そんな気分になれそうにも無い。 藤塚はあの日以降も全く変わった様子を見せず、誰にでも優しく明るく親切で、僕にだけは一言も口を利いてくれない。 解決の糸口が見つけられない事が際限なく苦悩をスパイラルさせた、と言う事はつまり僕は未だに未練たらしく藤塚と良好な関係に成りたいと思っているのだろうか? それとも只単に自分だけが藤塚に認めてもらえない事に劣等感を抱いているのだろうか? 僕はそんな自問自答を頭の中で何度も繰り返しながら、時折溜まった蒸気を調圧するかの如くに溜息を吐く。

 

新庄:「あのう、」

 

そんな風にショボクレて一人下足室で靴を履き替えていると、一人の一年生の女子が声を掛けて来た。

 

新庄:「すみません、一寸良いですか?」……ツインテールの結構可愛らしい女の子だ、

 

手を引かれて付いて行ってみると、彼女の下駄箱に噂に聞いた赤いラブレターが入れられてあった。

 

新庄:「他にお願いできる人が居なくって、スミマセンがそれを取って開封してもらえませんでしょうか?」……と、彼女は何だか顔を真っ赤にしながら上目遣いにお願いする。

 

有る筋の情報によれば、男子が開封すれば赤いラブレターの呪いは解けるとの事らしい、

 

一貴:「良いよ、」……と、手に取って見ると、それは何処にでもありそうな普通の赤い封筒で、宛名も差出人も書かれていない。 開封すると中には薄いオレンジ色の可愛らしい便箋が一枚畳まれている。 もしかして本当のラブレターじゃないのか?と恐る恐る開いてみると、便箋には「夜の26時に旧校舎の旧図書室まで来るように」と書かれて有った。 何処をどう透かして見ても普通の紙に普通のペンで書かれている、しかも結構綺麗な字だ。 でも誰かの悪戯で有る事には間違いないだろう、幾らなんでも真夜中に学校に呼び出すなんて事は非常識だ。

 

一貴:「これは僕が処分しておくよ。」

新庄:「ありがとうございます、あの、2年C組の北条先輩ですよね、」……と、モジモジ照れ臭そうな後輩女子、

一貴:「うん、そうだけど、」

新庄:「このお礼は、きっとしますから、」……そう言って彼女は走り去る。

 

 

 

ーーー

僕はふと気になって旧校舎へと足を向ける、今は部室棟か物置に成っている旧校舎の一階の隅に旧図書室があった。 聞いた話によると先の世界大戦以前からの貴重な書物を保管しているらしいが、当時この旧校舎は重症者の避難場所になっていた事も有って、古い書物には血の跡が付いたものが有るとか言う噂だ。 二つあるドアの一つの鍵が開いていたので試しに中に入ってみると、窓の外が裏山の影になっていて室内は更に薄暗い。 主電源が切られているのかスイッチを入れても電灯は点かず、耳がつんとなりそうな静寂の中で、カビ臭い古紙の匂いに混じって何だかお寺のお香ミタイナ匂いが漂って来る。 女子を怖がらせるのが目的だとしたらまさに打って付けの場所だと言えそうだ。 

 

と、突然準備室の扉が開いた。

 

高野:「びっくりしたぁ!」……と、中から現れたのは高野だった、

一貴:「それはこっちのセリフだよ、どうして高野サンがこんな所に?」

 

 

 

ーーー

実は旧図書室の隣の準備室は、文芸部の部室として使われているらしかった。

 

高野:「今は部員私一人だけどね、」……と、高野が気を利かせてお茶を淹れてくれる。

 

見ると辺りには、湯のみに紅茶セットに電気ポットにトースター、コーヒーテーブル、電気ストーブ、横になって寝っ転がれそうな長ソファー、古い小型テレビにノートパソコンに、書き散らかした原稿用紙が机の此処其処に散らばっている。

 

一貴:「もしかして此処に住んでるの?」

高野:「そんな訳無いって、でも半分アタリかな、」……と、高野は散らばった原稿用紙をかき集める。

高野:「同人誌向けのオカルト小説書いてるの、読んでみる?」

一貴:「よくこんな所で一人で怖い小説書いていられるね、」……と、受け取った原稿をチラリと流し読みして、僕は無言のままそれを高野に返す。 内容が結構エロい、

高野:「恐怖と言うモノは求めれば求める程色あせてしまうモノなのですよ、良かったら入部しない? 北条クンなら大歓迎だよ、」

一貴:「遠慮しておくよ、そう言えば朋生は一緒じゃなかったの?」

高野:「ああー、それがね、」……と行成り語り出す高野、

 

高野はOBが主催するサークルの同人誌にオカルト小説を載せてもらおうと原稿を書いていたのだが、サークルの趣旨的にエッチなシーンを入れないとイケナイ(強制)、処が高野には全く経験がなく、それで数日前たまたま部室に遊びに来ていた朋生とじゃれ合っているうちにキスしてみようかと言う事になって、だんだんそれだけじゃ済まなくなって、結局お互いに相手のモノを口を使って慰め合う所までやっちゃった、……って?

 

高野:「男の人のアレがあんなに青臭いなんて知らなかったわ、」……当然、僕は開いた口が塞がらない、

一貴:「ちょっと待って、……そんな事を僕に喋っちゃっても良いの?」

高野:「だって北条クンって、朋生の親友でしょ、」

一貴:「そうだけど、二人のプライベートの事に余り踏み込むのは、……良いのかなぁ?」

 

途端に俯いて、見た目に分り易く落ち込む高野、

 

高野:「本当の事言うと誰かに相談したかったのよね、朋生はどんどんエスカレートして求めて来るし、私本当に朋生の事が好きなのか分んなくなっちゃって、それでさっきも喧嘩になっちゃってさ、でもこんな話出来る友達居なくって、」

一貴:「そうなんだ、何か僕が力になれる事があるかな?」……いや無理だろう、僕には未知の領域です、

 

高野:「それじゃ、一つお願いしても良いかな、」……それで高野は何だか今にも蕩けそうな眼差しで僕を見詰めて、

高野:「私とキスしてくれる?」……唐突にお願いする、

一貴:「それはちょっと不味いよね、親友の彼女とキスとか駄目じゃない、」……当然、僕は焦りまくる、

高野:「違うの、そうじゃなくてちょっと確かめるだけ、もしも北条クンとキスして、そう言う気分に成らなかったら、きっと朋生は私にとっての特別なんだって分ると思うんだよね。 でももし、やっぱりそう言う気分になって、北条クンともそう言う事になったら私って、」……と、じわりじわりと躙り寄って来る高野、

一貴:「ちょっと落ち着こうよ、高野さん、なんか可笑しいよね、」……と、タジタジになりながらも何故だか振りほどけない、

高野:「駄目かな?」……で、小さな高野の身体がゆっくりと伸し掛って来る、

 

押し退けようとした僕の掌に柔らかな高野の胸の膨らみが食い込んで、

 

高野:「あん、」……急に子犬の様な鳴き声を上げる高野?

高野:「行成り先っぽは、駄目、」

一貴:「ごめん!」

 

それでとうとう大人に成り切らない少女の匂いが僕のリビドーにまで纏わり付いて来て、

 

一貴:「……キス、だけ?」……もはや次第に僕の抵抗力は戸惑いと躊躇いに揺らぎ、

高野:「うん、キスだけ、」……と、高野の濡れた唇が、僕の……

 

「「バタン!」」……その時、隣の旧図書室で大きな物音が!

当然、この世が終ったかの様な温い衝撃が二人の背筋を走り抜ける!

 

 

 

ーーー

駆けつけてみると、誰もいないのに書棚が一つ倒れて、大量の本が床に散らばっている。

 

高野:「ポルターガイスト!」……途端に!嬉々とする高野、

高野:「初めて見たわ! 此の旧図書室って昔から霊現象が起こるって噂があったのよね、でも実際に体験したのはこれが初めてよ、」

 

それで、僕は床に散らばった本の間に、一通の赤い封筒を見つける。 さっきの赤いラブレターか? いや、それなら未だポケットの中に、

 

高野:「見て、赤いラブレター、」……で、高野は何の躊躇も無くそれを拾い上げた。

一貴:「高野サン、不味いんじゃ無いの? 僕が開封しようか?」

高野:「それって、流れ的に私は北条クンとセックスしないといけなくなるのかな?」……高野はそう言って悪戯そうに微笑んでみせる、

高野:「まあ、それも有りかもだけど、」……で、あっと言う間に封筒を開封してしまった。

 

中に入っていたのは一枚の白いカード、隅っこに小さな文字が印刷されている。

 

高野:「指定日時は今晩の深夜2時、場所は此の学校の旧美術室だってさ、」

一貴:「怖いもの知らずだなぁ、」

 

高野:「あら、北条クンって意外にロマンチストなのね、」

 

で、高野は行き成り僕の傍に寄り添って来て、ほっぺたにキスをする、

 

高野:「心配してくれて有難うね、でも大丈夫、オカルトはあくまでも人が作った創作物だもの、現実とは次元が異なるのだから、実際に超常的な事件が起こる事なんて有り得ないわよ。」

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