渋ちんに呼び出されて職員室への道すがら、
渋谷:「まあ、個人的にはお前達の事応援してやりたいんだが、今回はそうも行かないみたいでな、面倒臭いんだが校長が直々に話を聞く事になっている。 と言うのも延山さんって今年の父兄会役員やってる町の顔役が今回の件で何だか普通じゃない位に怒ってるんだ、他の生徒への示しを付ける為にもどうしても二人を厳罰に処するべきだって言って聞かないんだ、」
渋谷:「少し前に流行った「廃人さん」とか言う都市伝説で数人の生徒がメンタルで長期休学になっててな、それ以来学校の裏サイトが問題になっているんだ、其処へ来て今回の不純異性交遊の投稿写真だろう、延山さんは今回の投稿は北条が藤塚と付き合ってる事を見せびらかす為に自分でやった事じゃないかって考えてるらしい。 こういう事を放置しておくといずれエスカレートして如何わしい写真の投稿が始まって風紀が乱れるってな、」……延山って、以前藤塚にフラれた七光りのボンボンの母親か、
渋谷:「それで延山さんがどうしても親を呼び出せって言ってるんだ、直接会って話がしたいとか言ってな、」
一貴:「なんだそれ?」
渋谷:「藤塚のご両親はイギリスだっけ、流石に呼び出しは無理なんで、北条のお母さんにだけは連絡を入れさせてもらった、急で申し訳なかったんだがな、この後学校に来てもらう事になってる、」
なに、この面倒臭い展開?
ーーー
それで僕達は校長室の隣の応接室へ、
延山母:「貴方達、学生の本分は勉強だって理解してるのかしら、皆が一生懸命受験勉強に取り組んでるって言う時に、こんな浮かれた事してて良いと思ってるの? 他の学校の事は知りませんが伝統ある北申高校ではこう言う不純異性交遊は絶対に見過ごすわけにはいかない、断固厳重処分に処すべきです、」……僕と文華は低いソファーに腰を埋めて、何だか全身ピンク色のスーツに身を包んだパーマのおばさんの唾を浴びていた、
校長:「まあ、彼らも十分に反省していると思いますし、二人とも普段の勉学はきちんと励んでいるし成績も優秀だ、北条は最近特に成績が上がってきている。 折角頑張ってきている生徒を、一回の過ちで将来の芽を摘んでしまうのは如何なものかと思いますよ、」
延山母:「少なくとも、卒業するまでは交際しない事を誓わせるべきです、それと修学旅行には参加させないで自宅謹慎させるべきね、色ボケした頭で同じ宿屋に寝泊まりしたりしたら、一体どんな過ちを犯すやら計り知れないわ、」……まあ、既に同じ部屋で寝起きしているのですが、
校長:「延山さん、幾らなんでもそれは厳し過ぎます、それに修学旅行はれっきとした修業カリキュラムの一環です、単なるレクリエーションでは無いのですから、懲罰の目的で参加機会を取り上げるべきではないかと、」
延山母:「この子、ちょっと可愛いからって皆からちやほやされていい気になって浮かれているんじゃないの? そんな事じゃ社会じゃ通用しないって事を教えてやるのが、教育じゃないんですか?」
校長:「延山さん、幾らなんでもそれは言い過ぎではないですか?」
文華:「先生、もう面倒臭いから停学でも何でも良いですよ、私、別に内申とか進学とか興味ないですし、修学旅行だってそんなに行きたい訳でもないですから、」
延山母:「まあ、あなた、一体何のつもりで学校に通っているの?」
文華:「私は、一貴さんの傍に居たいから学校に通っているんです、それだけですが何か問題でも?」……流石に此の発言には一同、目が点、
延山母:「大有りよ、全く反省の色が無いじゃないの、男の為に学校に通うだなんて前代未聞だわ、ほらね、こういう子が居るから風紀が乱れるんです、まともに学校で勉強に励んでいる生徒に害悪を与えるんです、校長もよく解ったでしょう、貴方もこの子に誑かされたのよね?」
文華:「一貴、アンタ何で黙ってんのよ、アンタもびしっと言ってやんなさいよ、」……教師陣、藤塚の豹変に唖然、
一貴:「いや、一寸落ち着こうよ、」
北条母:「何落ち着いてんのよ、バカ息子、」……で、何時の間に現れた母親が僕の頭をげんこつで殴る、
北条母:「全く、男の癖に情けない、ふみちゃんにナニ言わせてんのよ、」
渋谷:「北条さん、このたびはお忙しい所御足労頂きまして済みません、」
延山母:「貴方がこの子の保護者ですか? 一体どう言う教育をなさってるんですか? なんでも女手一つで育てて来られたとかで、どうしても息子さんの好き勝手に甘やかして育てたんじゃないですか?」
北条母:「甘やかして育てる事の何がいけないって言うんですか? 親が厳しかろうが甘やかそうが子供は自分で勝手に育つんです、可愛い息子を可愛がってどこがいけないって言うのよ?」
延山母:「親がそんなだから子供が乱れるのよ、高校生の分際でイチャイチャイチャイチャ、写真に写ってたのはキスしてる所だけど、本当は隠れてもっと不純な行為をしてるんじゃないの?」
北条母:「不純ってどう言う意味ですか? 兎に角、二人が何しようがオタクにとやかく言われる筋合いはないです、二人は許嫁なんだから何しようが問題ないでしょう、」
渋谷:「許嫁?婚約者?」
校長:「それは、藤塚さんのご両親も公認と言うことですか?」
北条母:「勿論です、」
延山母:「そんなの関係ないわ、学校の風紀が乱れるって事が問題なのよ、婚約者だからって高校生が公の場でちゅっちゅちゅっちゅやるのがイケナイ事位判り切ってるじゃないの、」
北条母:「愛し合っている者同士がお互いの気持ちを確かめ合うのにキスする事のどこがいけないんですか?」
延山母:「そんなの校庭に入り込んできて交尾してる野良犬と変わらないじゃないの、」
一貴:「幾らなんでも一寸可笑しいと思わない?」……耳打ち、
文華:「確かに、これはちょっと変だわ、」……耳打ち、
一貴:「それでこの現象はどうも女だけに起きてるミタイだよね、」……耳打ち、
確かに男性教師達は、アタフタしてるだけで怒りモードにはなっていない、むしろテンション下がってる、
文華:「確かに、さっきから妙に苛ついてるのよね、」……耳打ち、
一貴:「文華があんなに感情的になる時点で何か可笑しいよ、」……耳打ち、
文華:「どっかに、なんかの仕掛けがあるって事?」……耳打ち、
一貴:「最初から怒ってたのは誰だ?」……耳打ち、
文華:「延山のばばぁ、」……耳打ち、
で、僕はすっくと立ち上がる、
一貴:「すみません、延山さん、御怒りは御尤もだと思います、反省します。 少しだけ、二人だけでお話ししたいんですけど、場所を変えても良いですか?」
延山母:「今更どんな言い訳しても無駄よ、」
一貴:「先生、会議室使わせてもらっても良いですか?」
渋谷:「ああ、でも二人きりで話しするって、何をするつもりだ?」
一貴:「聞き入れてもらえないかも知れないけれど、僕の考えを聞くだけ聞いてもらって、それからもう一度みんなで話をさせてもらいたいんです、15分だけ、お願いします。」
渋谷:「判った、15分だけだぞ、」……延山女史が手に負えなくなっていた教師陣も状況を打開する為に止む無く僕の提案を受けれる、
ーーー
それで、僕は延山女史を会議室に連れ込んで、ドアを閉める、
延山母:「それで、一体どんな言い訳があるって言うの?」
それで、行き成り延山女史の背後から近づいて妙な薬を首筋に打ち込む富士本、……延山女史、その侭どさっと床に倒れる、
それで、僕は気を失った女史の前で只管適当な言い訳を話し続け、その間に富士本が延山女史の身体を例の器械でスキャンする。 案の定、臍の下辺りで反応して黄緑色に点灯する検出器!……それで、富士本は目配せで僕に合図して、
それから富士本は女史を椅子に座らせて、気付け薬のアンプルを鼻の下で折り割って、女史を眠りから覚ます、
一貴:「…と言う訳で、解っていただいて本当にありがとうございます、延山さんのご指導を心に刻んで此れからは日々の行動に十分気を付けますので許して下さい。」
延山母:「え? なに? そうよ、ちゃんとわかったの?」
一貴:「はい、ケジメを付ける為にもきちんと二人とも停学して反省したいと思います。当然修学旅行も不参加にしたいと思います、」
延山母:「え、そうよ、ちゃんと適正な処分を受けて、良く反省しなさい、」……で、僕達は職員室に戻る、
延山母:「じゃあ、校長、ちゃんとしてよ、二人とも停学処分、内申にもきちんと反映させて、修学旅行も不参加、良いわね、」
校長:「ええ、しかしそれはやり過ぎでは?」
一貴:「校長先生、僕達なら構いませんから、」……それで漸く去って行く嵐の様な延山母、
渋谷:「それにしてもお前達が婚約してたとは知らなかったな、先ずは御目出度うと言うべきかな、」
一貴:「はあ、ありがとうございます、」
校長:「それにしても、学校に居る間は他の生徒には秘密にしておいた方が良いかも知れないな、」
一貴:「僕はどちらでも良いです、」
渋谷:「あと、仲良くするのは良いが、人目に着く場所であまりイチャイチャするのは控えるようにしてくれよ、」
一貴:「判りました、」
文華:「確かに、一貴の言うとおりだった、あの女が居なくなった途端、イラッとした気分が無くなったわ、どうしてわかったの?」……僕は耳に挿し込んでいた小型の通信機を文華に見せる、
一貴:「此処に来る前に富士本さんにもらったんだ、」
文華:「今、別の意味でイラッとしたけどね、」
ーーー
廊下に出た所で加茂理夜達と合流する、
文華:「それで、あの女に呪いを掛けた巫女がいるっていう事なの? 何のために?」
佳枝:「目的が何かはまだ判りませんが、何者かがお兄さんの周りを彷徨いている事は確かな様ですね、」
文華:「アンタ達はどうして一貴に危険が迫ってるって感づいた訳?」
理夜:「逆なのです、先輩はどうしてお兄ちゃんから危機が去ったと思ったのですか?」
文華:「一貴は正式に阿倍の式神になったんだもの、今更阿部に逆らって迄一貴をドウコウしようって輩は出て来ないんじゃないの?」
理夜:「先輩、理夜の目を誤魔化そうとしても駄目なのです、先輩が組合規定に叛いて巫女を止めてからも密かに活動している事はお見通しなのです、」
佳枝:「これからは私達に任せて下さい、先輩が危ない橋を渡る必要は無いんですよ、」
文華:「アンタ達こそ、何のメリットが有って今更一貴に付き纏ってる訳?」
理夜:「それこそ先輩には教えられないのです、」
一貴:「何か未だゴタゴタが終ってないって事なのか?」
理夜:「お兄ちゃん、違いますよ、まだ始まってないと言った方が正解に近いです、」
一貴:「あの人、あの侭怪しい機械をお腹に埋め込んだ侭で大丈夫なのかな?」……影山は、証拠隠滅の為に焼き殺されたのだ、
佳枝:「利用価値が有る間は殺されないと思いますよ、」
母親:「さあ、物騒な話は其れ位にして、今日の晩御飯は一貴の奢りで外食にしましょう、初任給入るまで貸しにしといてあげるわ、 加茂さんも富士本さんも一緒に来なさい、焼肉食べに行きましょう、まあちゃんにも連絡するわよ、」
理夜・佳枝:「ご馳走様です、」