※この作品はR-18です。

マスタースレイブ・リストリクテッド   作:ランプライト

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005「旧世紀の亡霊」

時計の針は24時30分を指している。 高野は心配要らないとは言っていたが、万が一と言う事も無性に気になる訳で、心配性の僕はさっきから15分置きに高野にLINEを送り続けていた。

 

一貴LINE:「起きてる?」

高野LINE:「起きてるじょ」

高野LINE:「でもそろそろ寝るし」

一貴LINE:「せめて1時45分迄起きてない?」

高野LINE:「無理眠い」

高野LINE:「夜更かしは美容と健康の敵し」

一貴LINE:「何か楽しい話しない」

高野LINE:「北条クンがエッチな写真送ってくれたら起きる」

一貴LINE:「高野さんって結構エロだよね」

高野LINE:「zzzzz……」

一貴LINE:「って、これ寝てたら送れない筈だよね!」

 

と、ツッコミを入れるも、最早返信は来なかった。

 

僕の気にし過ぎだろうか?そうに決まっているとは思うのだけれど、心配性は質だからどうしようもない。 何ともなければそれで良い、何か合って後悔する事だけは何としても避けたい。

 

 

 

ーーー

僕は家を抜け出して、真夜中の学校に向っていた。

 

当然この時間では電車も動いていない、ママチャリに跨がって国道1号線を東へ。 1時間掛からないで学校の裏門に到着し、暫し息を整えつつ静まり返った夜の校舎をグラウンドの隅から観察する。

 

外から見る限り特に妖しい動きは無さそうだ。 時計の針は25時45分を指していた。 どうせ此処迄来たのだと、僕は意を決して旧校舎に近づいてみる事にする。 当然校舎の鍵は掛かっているから中には入れない。

 

と、思いきや、裏山側の教室の窓が一つ開いている?

 

どうやら倉庫になっている旧技術科教室の窓らしい、でもどうしてこんな所の窓が? まさか、と思いながらも近づいて中の様子を伺ってみると。 廊下を挟んだ反対側の教室にゆらりと微かな灯りが見える。 非常灯だろうか? いや違う、何やら人が動き回っている気配がする。 聞き耳を立てると、……

 

声:「ひん……、あぁ……、」……人の声? それも、泣き声?

 

まさか本当に? 僕は念の為にもう一度高野にLINEを送ってみるが、やはり返事は無い。 兎に角、誰かが旧校舎に居て何かをしている事は確からしい。 ならば僕のすべき事は、警備員の人に一刻も早く此の事を伝える事だが、

 

声:「……ぃやぁ、……、やめて、いやぁ、……」

 

泣き声は叫び声に? 人を呼んで事情を説明している余裕は無い様な気がする、

僕は、開いた窓から旧技術科教室に潜り込み、内側からネジ式の窓の鍵を開けて廊下へ出る。 灯りが着いているのは、やはり旧美術室の様だった。

 

声:「お願いもう、……、赦して……、いやああぁ……、そんなモノ、中に、挿れないでぇ……」

声:「クスリが切れた様だ、早く注射しろ、」

 

到底学校で行われるべきでない事が行われつつ有ることは確かだった、僕は、旧美術室の扉の前に隠れて、そっとほんの少しだけ扉を開けて、鍵が掛かっていない事を確かめてから、一度深呼吸する。 そして空いた隙間からそっと中を覗いて見た、……

 

そこに見えたのは、到底信じられない光景だった。

 

軍服を着た兵士達が取り囲む教室の真ん中で、薄暗いランプの光の下で、女の人が手術台の様な物に載せられて、何か如何わしい事をされている? 産婦人科の検査台の様に両脚を固定されて無理矢理開かされ、生々しい性器には外科手術で使う鉗子や注射器やチューブが何本もねじ込まれている。 その女の隣には、胸から下腹迄を開腹されて内臓を剥き出しにした死体が横たわっていて、メスで切開された死体の睾丸から注射器で吸い上げられたザーメンが、鉗子で無理矢理こじ開けられた女の膣の奥の子宮口の中へと注射されている、

 

女:「いや、いやぁ、……もう入れないでぇ、……」

軍人:「貴様、閣下の子供を孕めるのだぞ、これ以上何の不満が有ると言うのか!」

 

そう言えば、戦争時代この旧校舎は医療施設として使われていたと聞いた事がある。 まさか僕は、その当時の亡霊の姿を見ているとでも言うのだろうか?

 

兵隊:「誰だ!其処に居るのは!」

 

軍服を着た男が僕に気づいた! 僕は咄嗟に逃げようとするのだが、身体が金縛りに遭って動かない。 そして行成り扉が開いて! 兵隊が僕の真っ正面に姿を見せる。

 

兵士:「可笑しいな、誰も居らんぞ、」

 

僕の姿が見えていないのか? 一体コイツらは何なんだ? と、次の瞬間!誰かが僕の腕を凄い力で掴んだ。

 

将校:「よく見ろ此処に居るではないか、新たな臓器提供者だ、これで閣下は助かるかも知れんぞ。」

 

ギリギリと腕を締め付ける力はとても人間技とは思えない。 僕の身体は痺れたまま微動だにせず、助けを求めようにも声も出せない。

 

将校:「この男の肝臓と腎臓を使うんだ、右の眼球と脳の前頭葉も交換しろ、」

 

それで白衣の男が血糊の着いた金属製の巨大な注射器を僕の胸に突き立てた。

 

一貴:「うぅあぁ、」……何か滑り気のある冷たい液体が、僕の筋肉から毛細血管を通ってジワジワと全身に拡がって行くのが分る。

 

引き摺り込まれた教室の中には、様々な大きさの広口ガラス瓶に詰められた内臓や、手足、性器、眼球、解剖された人間の頭部が所狭しと並べられている。 臓器を抜き取られて床に転がされた包帯だらけの負傷者は呻き声を上げ、生肉のおこぼれに預かろうと部屋の隅を何匹もの鼠達が走り回る音がする。

 

こんな光景が現実である筈が無い、今は21世紀で此処は高校の校舎なのだ、兵隊も、負傷兵も、瓶詰めの人体部品も、夢か幻覚に間違いないのだ。 でもどうして? 僕はこんな所で夢を見ているんだ? 教室に忍び込む時に頭を強打して気を失ったのだろうか? それともそもそも学校に来たこと自体が夢なで、僕はベッドの中で眠ってしまったのだろうか?

 

女:「もう、……やめて、……」

 

こんな異常な夢の光景にも関わらず、何故だろうか僕はその拘束された女性がとても美しいと思ってしまった。 別に僕に特殊な性癖が有るとかではなく、埃と泥と血に塗れた何十年も昔のカーキー色の風景の中で、確かにその女には見覚えが有ったのだ。 その女性は、紛れも無く森雅生徒会長だった。

 

一貴:「森、先輩!」……何で、生徒会長がこんな所に?僕の夢に?

 

次の瞬間、僕の腕時計のアラームが鳴動した! ワザワザ26時を確認する為にセットしたのだ。 シンプルなビープ音が旧校舎に鳴り響く。 これで目が覚めれば全てがハッキリする筈だ、……ところが、兵士が僕の腕時計を奪ってアラームを停止させてしまった。 何かおかしくないか。 昭和10年台の兵士の亡霊が何でデジタル時計のアラームの事を知っているんだ?

 

森:「そこに、誰か居るの?……お願い助けて、下さい、」

 

僕はこれが現実なのか夢なのかを一瞬の内に見極める必要が有った。 今まさに巨大な鋏の汚く錆びた刃が虚ろに開いた涙塗れの目で僕の事を見詰める森雅の性器に挿し込まれ様としていたからだ。

 

一貴:「や、めろ、」……、絞り出す様な声が、本当に言葉になっているのかが分らない。 相変わらず身体の自由は利かず、思考も定まらない。 それでも僕は必死に考える。 夢から覚める為には? 金縛りを解くにはどうすれば良い?

 

指先の何処でも良い、どこか動かせる部分を探り出す、……それで僕は、右の小指から、右拳を力一杯握り込む! それで僅かに感覚の戻った右拳を、柔道の受け身の要領で叩き付けて、その反動で身体を浮かして! 

 

僕はそのまま手術台の下へと、転がり落ちた!

 

 

 

ーーー

一貴:「痛っ!」

 

痛みが更に現実を引き戻してくれる、しかし依然身体も頭も思う様に働かない、でも一つ確実に取り戻した事が有る。 これは夢じゃない現実だ、森雅を助けなければならない。

 

女:「ほほぅ、見上げた精神力だな、しかし残念だ、」

 

頭蓋骨の境界が分らなくなる様な頭痛とぼやけた視界の中で女の声がする、

 

女:「あのまま夢を見ておれば、生きて帰れたものを、」

 

こいつは何処から出て来た?……一体何を言っている?

 

女:「綺麗な顔をした男だな、殺す前に慰み者にしてやろうか、」

 

次の瞬間! 辺り一面が真っ白な閃光に包まれた!

 

そして何かが、重い金属がぶつかり合う轟音を立てて目に見えない何かが狭い教室の中を飛び回っている? それも一つではなく二体、高速で交錯し弾き合い、その度に天井が、床が、壁が、黒板が、ガラスが、引き裂かれて砕け散る!

 

何かが、戦っているのか?

 

そして気付く、誰かが、僕の背中を支えている? 柔らかくてしなやかな指が、僕の唇に触れて、…

 

一貴:「苦っ!」

文華:「文句言わないで、ちゃんと飲みなさい。」

 

僕の唇に潜り込んだ指に塗られた、とてつもなく苦い何かが、温かな解れを全身に巡らせて、途端に身体の痺れが消えて、感覚が戻って来る。

 

僕の身体を抱き支えていたのは、…

 

一貴:「藤塚さん?」

文華:「立てる? 逃げるわよ、」

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