とうとう万絢が部屋から出てこなくなってしまった、
文華:「学校休むって、」
一貴:「昨日の実地研修がよほど堪えたのかな、」
文華:「まあ、あんまり気持ちの良いものじゃないわよね、」
一貴:「文華もやったの?」
文華:「ええ、薬品をぶっ掛けられて顔がぐちゃぐちゃになったわ、」
一貴:「因みに二回目はどんななの?」
文華:「見てのお楽しみ、」
ーーー
通学の電車で三枝とかち合わせる、
三枝:「ふーん、停学明け行成り同伴出勤?」
一貴:「そんなに冷やかす事ないだろ、」
三枝:「冗談よ、」……何だか文華はつんと澄まして黙った侭でおとなしい、
三枝:「修学旅行行かないんだって?」
一貴:「うん、」
三枝:「残念だったわね、と心にも無い慰めを言ってあげるわ、どうせ二人でどこか旅行したほうが楽しいものね、」
一貴:「三枝はもう黒沢とどこか旅行行ったりしたの?」
三枝:「もう別れたわよ、」
一貴:「え、そうなの? 何で?」……まだ3ヶ月も経ってないのに?
三枝:「何だか、恋愛ってやってみたら本当にやりたかった事と違ってたって言うか、人間として大切な事だって事は認めるけどね、私にしか出来ない、私にならできるもっと別の可能性を目指したいかなって、そう思ったの、その為には受験に集中しないとね、」
一貴:「ふーん、」……三枝らしいや、
三枝:「藤塚さんはどうしてカズキなんかが良かったの?」
文華:「え?」……いきなり振られて、強か狼狽える文華、
一貴:「そんな事、本人の前で聞くなよ、」
三枝:「いいじゃない、」
文華:「さあ、なんでだろ、特に理由なんて無いかな、子供の時からずっとそうだって思ってたから、」
三枝:「本当に?4月に転校して来てから貴方に告白してきた男子二桁じゃきかないんでしょ? より取り見取りの中でどうしてカズキを選んだのかなってちょっと興味がある、」
文華:「一寸違うかも、私には元から選択権なんて無くって、私が選んでもらいたかったって言うのかな、」
三枝:「ふーん、流石に取り敢えず手っ取り早く恋愛してみたかった私とは違いますな、」
一貴:「その割りに必死だったじゃない、乳首チラ見せ迄したくせに、」
三枝:「別にあれ位大した事ないわよ、カズキだって脱いでたじゃない、」
文華:「三枝さんって、飾らないんだね、」
三枝:「器用じゃないだけ、全然得したこと無いわ、」
ーーー
学校に着くと、何だか周囲の雰囲気は以前とはガラッと変わっていた。 何だか妙に余所余所しいというか、……東郷が文華のところに駆け寄ってきてしきりに謝っている、
文華:「そんなに気にしないでいいよ、」
それで僕の机の中にはビニール袋が入っている、中には何だか汚いぬるぬるした粘液?つんと臭い、
一貴:「何だこれ?」
早乙女:「それは犬の精液だ、その他にも地味な嫌がらせが彼方此方に仕掛けてあるから気をつけた方が良いぞ、」……犬の、って…
ーーー
僕は指で摘んで其れを焼却炉に捨てに行く、
一貴:「全く、子供じみているよなぁ、」……で、教室へ戻る途中、横田とすれ違う、
横田:「メール見たか?」
一貴:「うん、ありがとう、でも復讐ってどう言う事?」
横田:「さあな、虎狼の幹部を動かしてるみたいだから、藤塚をどこかに売るとか、そういう事まで考えていると思った方が良いかも知れない、」
一貴:「売るって?」
横田:「いかがわしいビデオに出させるとか、文字通り身体を売らせるとか、そういう意味だ、あいつなら確かに金になりそうだからな、上の連中も一口噛もうと思うかもしれん、」
一貴:「そうか、」
横田:「相変わらず平常心なんだな、」
一貴:「別にそんなんじゃないけど、文華には手を出させない、」
横田:「やっぱり格好いいな、お前、」
一貴:「何だか地味な嫌がらせが起こってるのって関係有るの?」
横田:「ああ、真島が裏から手を回してやらせてる、何時もの虎狼のやり口でお前の居場所を失くすつもりだろう、家の方にも見張りをやってるみたいだから気をつけた方が良い、」
一貴:「判った、いろいろとありがとうね、」
横田:「正直お前がどうやってこれを凌ぐのかに興味がある、」
一貴:「困ったな、」
ーーー
理夜:「極めて平和じゃないですか、のです、」……なんだよその取って付けた「のです」って、
一貴:「そうかぁ、僕の学園生活が脅かされてる気がする、」
佳枝:「寧ろ今注意すべきは「淫夢魔」の方です、」
一貴:「それってエロい夢を見れる呪いって奴?」
理夜:「怪しげな薬を中高生に流している連中が居るのです、「裏」が絡んでる匂いがするのです、」
一貴:「薬を流すって、何が狙いなんだ?」
佳枝:「おそらく覚醒剤の事故を隠れ蓑にして何らかの呪術を仕掛けて来るかと思われます、」……赤いラブレターの時みたいにか、
一貴:「それってこの間の延山の母親も関係あるの? そういえば加茂、この前「ごたごたはまだ始まっていない」って言ってたけど、あれどういう意味なのさ、」
理夜:「まだちょっと話せないのです、」
一貴:「でも、僕に関係する事なんだろ、だったら予め教えておいてほしいな、」
理夜:「理夜の処女を貰ってくれたら教えてあげてもいいです、」
一貴:「いや、それはちょっと怖いから止めとく、」……富士本のセミヌード写真どころの話では済まなくなってしまう、
佳枝:「心配しなくても今日明日何かがあるという事ではないですよ、」
理夜:「危なくなったらちゃんと教えるのです、」
ーーー
文華:「晩御飯の材料買って帰るから付き合って、」
一貴:「うん、」……近所のスーパーで蟹クリームコロッケの材料とアスパラガスを調達する。 万絢の好物らしい、少しでも元気を出してくれると良いのだが。
文華:「当然一貴が守ってくれるんでしょう?」……道すがら僕は横田から聞いた話を文華に報告する、
一貴:「当然そうしたいけど、四六時中一緒に居る訳にも行かないし、気をつけてね、」
文華:「ありがとう、いざとなったら失神爆弾で撃退するわよ、」……そう言って文華は緑色の液体が封入された掌サイズのアンプルを僕に見せる、
文華:「刺激臭で半径10mの敵の視覚と嗅覚を奪って行動不能に出来るわ、」
一貴:「まだそんなの持ってたんだ、」
一貴:「ただいま、」……当然返事は無い、
文華:「私一寸様子を見てくるね、」
一貴:「うん、」
僕は材料をキッチンに運び、部屋で着替えを済ませて、……それで1時間過ぎても文華は戻って来ない、……流石に気になって二階の万絢の部屋の前で、聞き耳を立ててみる、
泣いている?
僕は居ても立っても居られなくなってドアをノックする、1分待って、……中から文華が顔を出した。
文華:「入って、」……ほとほと困り果てた様子、
ーーー
部屋では、ベッドの脇にパジャマ姿の万絢がアヒル座りしていて、それで僕の顔を見た途端に、わあわあ声を上げて泣き出してしまった、
一貴:「一体どうしたの?」
文華:「ちょっと複雑だけど、これ以上一貴に隠してはおけないと思って、」
文華:「万絢、一貴の事が好きになっちゃったのよ、」
万絢:「御免なさい、」……真っ赤になって俯いた瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる、
文華:「謝らなくって良いわよ、」
万絢:「だって、一貴さんは文華さんの旦那様なのに、……なのにどうしても一貴さんの事が気になって、何だかどんどん好きになっちゃって、いけない事なのに、嫌いになろうと努力したのに、気持ち抑えられなくて、ごめんなさい、……御免なさい、」……って、こういう時に僕は何て言えば良いんだ?
文華:「泣かなくっても良いわよ、……良い?もしかしたら命を落とすかもしれない仕事に一緒に取り組む巫女と式神が、そういう感情になる事は良くある事なの、「吊橋効果」って奴、慣れればなんて事はなくなるけど、最初はそれを恋愛感情だって勘違いしても仕方ないわよ、私は万絢が一貴にそういう気持ちを抱いちゃったとしても恨んだりしないから、」
万絢:「でも、…でも、」
文華:「訓練校のカリキュラムの事でしょ、判ってる、授業なんだから仕方ないよ、私気にしてないから、」
一貴:「カリキュラムって?」
文華:「訓練校のパンフレット、一貴は当然読んでないわよね、巫女は年に2回「セクシャル・エントラップメント」の実習があるのよ、」
一貴:「セクシャル、ってなんなのそれ?」
文華:「諜報活動の為の色仕掛けの実習よ、そういう状況下に陥っても冷静さを保って主導権を取れる様にする為の心構えの実習みたいなもの、」
一貴:「よく分からないけど、難しい実習なんだ、」
文華:「要するに擬似セックスの練習よ、それを一貴と万絢がするの、」
一貴:「セックス?」……僕と万絢がセックス?
文華:「言っとくけど本当にしちゃ駄目だからね、破瓜したら巫女の資格を失うんだから、分かってる? 万絢も学校の授業なんだから割り切りなさい、」
万絢:「でも、文華さんに申し訳なくって、」
文華:「あぁん、もう!…私もそれやったから、ヒカルと擬似セックスやったから、…皆やってるの!」
一貴:「あ、……」
文華:「言っとくけど本番じゃないわよ、すまた! 素股だからね!」……文華が真っ赤になって必死の形相で僕に食らい付いて来る、
一貴:「それってもしかして、例の写真の?」
文華:「そうよ、しょうがないでしょ、……しかも教師の監視の下やるんだから最悪よ、色々指示されるし、めちゃくちゃ恥ずかしいんだから!」
文華:「だから、その授業で万絢が一貴とエッチな事したからって、恨んだりしないわよ、」
万絢:「でも、…」
文華:「ああ、もう!面倒くさいわね、あんなのは慣れよ、慣れ、何なら今から此処でやってみなさい、二三回やっとけば直ぐにどうって事なくなるから!」
万絢:「でも、…」
文華:「一貴の事好きなんでしょ?」……愈々観念したのか、素直にこくりと頷く万絢、
文華:「一貴は万絢の事、別に嫌いじゃないわよね、」
一貴:「そりゃ嫌いじゃないけど、そう言う関係じゃ、…」
文華:「だったら出来るでしょ、お互いに生理的に受け付けないって相手じゃないんだから良かったじゃない、」
一貴:「やるって?」
文華:「ちんこ擦って射精させればいいのよ!」……文華、明らかに自棄糞、、
一貴:「文華は、本当にそれで良いの?」
文華:「良いって言ってるでしょ、とっくに覚悟できてるわよ、」
一貴:「僕は嫌だ、もしも文華が誰かとそんな事になったら、きっと耐えられない、……そいつの事殺しちゃうかも知れない、」
文華:「私だって嫌よ、でも仕方ないじゃない、……セックスなんて握手と同じだと思えば良いのよ、」……そんな簡単に割り切れない事は、此処に居る全員が判ってる、
文華:「その代わり、私の見てる前でやりなさい、私が教官の代わりだからね、……それと、後で、ちゃんと、私と本当のセックスやってよね、……これは嫁の本音、」