※この作品はR-18です。

マスタースレイブ・リストリクテッド   作:ランプライト

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076「秘密のファイル」

2日目の午後一の授業が歴史だった、

始業のベルが鳴って5分ほど過ぎてから、漸く背広姿の翠川正が教室に入ってきた、

 

女子G:「先生、遅刻ですよ、」……女性徒達が囃し立てる、

翠川:「ごめんごめん、一寸職員会議が長引いちゃって、すみませんでした、」……落ち着いたトーンで声量豊かなバス、身長が高くてすらっとスマートな体格に穏やかな顔つき、清潔感のある整えられた髪形、……翠川は背広の上着を脱ぐと、教室の隅の教師用の机の上に畳んで、少しだけネクタイを緩める、

翠川:「それでは始めようか、」……そして昔ながらのスタイルで、黒板に白いチョークでカツカツとキーワードを箇条書きにしていく、

翠川:「今日は、一般的に知られている所謂「正史」と、隠されてきた本当の歴史の関係について、幕末から大正、明治までの大きな流れをざっくり眺めて見ようと思います。 この時に重要になるのはそれぞれの時代の政治を動かしていたのは誰かという事、とりわけ外交の窓口つまりそれぞれの時代の外交相手国と日本の代表者が誰かという事です、……」

 

理夜(通信):「因みに緊急職員会議の議題は、昨日のP.T.の対人戦闘訓練で起きた事故についてなのです、」

一貴:「事故?」……僕は、皆似は聞こえない様に口元を抑えて小声で囁く、

理夜(通信):「未だ生徒達には公表されていませんが、昨日室戸の相手をしていた高校3年生の宮本が試合の後直ぐに学内の病院に入院、今朝になってから意識不明の重体です、原因は打撃による内臓破裂、現在生死の境を彷徨っている状態なのです、」……って、あんなあっけないワンタッチで果たして本当に人が死んだりするなんて事が有り得るのだろうか? それでも今思い出してみても胸がムカムカする様なあの不快感の正体は、つまり無闇に室戸には近づくなと言う動物的な直感が発する危険信号だったのだろうか、

 

 

 

ーーー

90分の授業が終わって、終業のベルと共に生徒達が翠川の元へと殺到する。 見ると銘銘にノートやプリントを持って、熱心に分らない所を質問しているらしい。 余りにも数が多すぎてとても20分の休憩時間では終わらないと思ったのか翠川は両手を万歳して降参の意思表示、

 

翠川:「判りました、では今日の放課後、夕食後20時からこの教室で補習授業を行います、質問のある人はそこでお願いします、」

 

一貴:「「何だか良さそうな先生じゃない、本当に「裏」の工作員なのか?」

理夜(通信):「お兄ちゃん、裏の人間は自分達の事を悪者だなんて思っていませんよ、寧ろ自分達の方が正義だと思っているのです、」

一貴:「ふーん、だとしたらどうして敵対する必要があるんだ?」

理夜(通信):「正義の為には人が悲しむ事をしても構わないと言う処が相容れないのです、お兄ちゃんも「裏」に掴まったら、正義の為に色々人体実験された挙句に解剖されて冷蔵庫に保管される事になるのです、」

一貴:「まあ、確かに真島を使って僕の友達を傷つけるとか、手段を選ばない処は許せないな、」

理夜(通信):「それに見た目で人を判断するのはとても危険なのですよ、」

一貴:「うん、それは知ってる、加茂理夜とか富士本とかな、」

理夜:「お兄ちゃんこそ可愛い顔して結構エロです、」……此の顔、元に戻してくれるのだろうか??

 

佳枝(通信):「其れはそうと、さっき言っていた補習授業は翠川の教授室を調査するには都合が良いかも知れませんね、」……確かに消灯後は職員室棟は厳重に施錠されるのに対して、自習時間に当てられている午後20時から23時は、職員室に質問しに行く生徒達も多くて、教授室の前を歩き回っていてもそれほど怪しまれないかも知れない、

 

 

 

ーーー

夕食後、教頭先生からの一日の締めくくりの連絡事項が有って、代表の「ご馳走様でした」の挨拶と同時に生徒達は一斉にばらけて行く。 それで時間調整の為に寮に戻ろうとした僕の所へ万絢が近づいて来た、

 

万絢:「西加茂さん!」……何だかご機嫌?

一貴:「やあ、」……僕は出来るだけ素っ気なく、

万絢:「この後、体験生の皆で編入試験の傾向と対策をやるんですけど、西加茂さんも参加しませんか? 先輩の過去問が手に入ったんです、」……何だか意気揚々に鼻息荒いのはその所為なのか?

一貴:「ごめん、折角誘ってくれたのに悪いんだけど、俺、多分試験受けないと思うから、勉強は他の皆とやっててよ、」……「俺」って一人称、思ってたより抵抗なくサラッと口から出た、

万絢:「えー、そうなんですかぁ、」……万絢、ちょっと頬っぺたを膨らませて、上目遣いに僕を睨む、

土御門:「万絢!」……あの野郎、いつの間に下の名前を呼び捨て?

一貴:「彼、呼んでるみたいだよ、」

万絢:「彼じゃないし、」……外方向きながら僕だけに聞こえる声でボソッと呟く、

一貴:「大丈夫、度会さんならきっと合格するよ、」

万絢:「ありがと、」……それで、詰まらなさそうに背中を向けて、それから皆の所へ駈けて行く、

 

 

 

ーーー

僕は部屋に戻って幾つか必要になりそうな機材とカモフラージュの為のノートを持って、時計で19時50分になったのを確かめてから教授室のある職員室棟に出かけて行った。 狙い通り、先生達は熱心な生徒達からの質問攻めに遭っていて、どこかの教室で補習を開いたり、職員室に籠って生徒の話を聞いたりと休む間もなく忙しいらしい。 廊下を行き交う生徒の数も結構多くて、僕がふらふら歩いていてもそれほど怪しい感じにはなっていない、

 

一貴:「此処かな、」……と立ち止まったドアが行成り開いて、中から翠川が出てきた、

 

そして何故だか、文華が翠川の教授室の中から顔を見せる、

 

翠川:「やあ、何か用かな?」……平常心平常心平常心、

一貴:「すみません、部屋を間違えたミタイです、」

翠川:「何処に行きたかったの?」

一貴:「今朝の基礎呪術の授業でわからない事があって、」……部屋の中から文華がじっと僕の顔を見つめる、僕は逃げる様に目を逸らす、でも何で文華が此処に居るんだ?

 

翠川:「ああ、それなら河野先生の処だね、残念だけれど河野先生は急用があって今日の午後から出かけておられるよ、」……知っている、これは緊急時用に加茂理夜が用意してくれた言い訳その1なのだ、

一貴:「そうですか、では明日また出直す事にします、」……そう言って僕はノートを捲りながらふと思いついた様に廊下を進んだ先の化粧室に向かってゆっくりと歩き出す、

 

翠川の部屋から文華が出てきた、

 

翠川:「余り気を落とさない様に、私も出来るだけ力になれるようにするよ、」……それで翠川、欧州式のほっぺたにキスの挨拶、

文華:「ありがとうございます、」

翠川:「どうだろう、もしも良かったら明日、気晴らしに食事にでも行かないかい? 少し時間が取れそうなんだ。 色々と積もる話もあるし、その時迄にいくつか伝を頼って何が出来そうか考えてみるよ、」

文華:「先生がよろしければ、是非お願いします、」

 

それ以上の会話は聞き取れなかったが、文華の方から何かを相談しているらしい、

 

理夜(通信):「危なかったのです、昨日の度会と言い、お兄ちゃんは迂闊過ぎなのです、」

一貴:「僕の所為か?」……それにしても一体何を相談しているんだ?

 

僕はトイレの個室で暫くぼうっと時間を潰し、

再び翠川の教授室に接近、辺りに人気の無いのを見計らってさっと中に忍び込む。 予定通り部屋の中は無人だった、

 

佳枝(通信):「翠川は教室で授業中です、」……学校の外から望遠鏡で監視している富士本が、翠川の講義状況をチェックして報告する、

理夜(通信):「監視カメラ、盗聴器の類は検出されないのです、」……僕がポケットに忍ばせた電子機器検出器を加茂理夜が遠隔操作して、室内防犯装置をチェックする、

 

一貴:「「さてと、それじゃあ始めるか、」……それで安心して物色を始めるが、…机周り、書類棚、どこを探しても怪しい書類は見当たらない。 一箇所だけ鍵が掛かっている棚も、簡単なピッキングで中を覗くと、作りかけの編入試験の問題用紙、それと生徒達の成績表が入っているだけ。 これといって怪しいモノは何処にも見当たらず、念の為に棚の奥(注、僕のエロ本の隠し場所)も調べてみるが何も見つからない。 矢張りデータが有るとすればパソコンの中か、

 

机の上に置かれたパソコンを立ち上げてみる、

当然パスワードを聞いてくるが、一体どうやるのか不明の侭、加茂理夜が外部からこのパソコンを特定、ハッキングしてパスワードを入力する。 それから何だか特殊なプログラムを使ってパソコン内のファイルを一斉チェック、「室戸」「むろと」「MUROTO」、そういった検索キーワードに引っかかるデータを片っ端から虱潰しにするが、隠しフォルダーも何もかもひっくり返してみても何処にも何も見当たらない、……もしかして暗号化しているのだろうか?

 

理夜(通信):「暗号化されたファイルネームもチェックしてるのですが、それらしいのは見つからないのです、」

 

僕は目視でフォルダーを捲っていくが、見つかった室戸達也関連のデータは、他の生徒と同じく歴史の教科の成績関係のデータのみ、

 

理夜(通信):「おかしいのです、」

一貴:「何か見つけた?」

理夜(通信):「いえ、見つからないのがおかしいのです、…エロ画像がひとつも入ってないのです、」……ちゃんと仕事してるのか? こいつ?

 

一貴:「別にそれって普通じゃないの?」

理夜(通信):「だって物臭なお兄ちゃんですらパソコンには6850枚以上の無修正画像が保存されていたというのにですよ!」

一貴:「って、もしかして見たの?」

理夜(通信):「見ましたが何か?妹に見られて不味いモノでもあるのですか?」……プライバシーって、何処に行けば売ってるんだろう?

 

佳枝(通信):「お兄さん、翠川が戻るミタイです、」

一貴:「一旦此処迄か!」……僕は急いで机を片付けて、廊下に人の気配がない事を確認して翠川の教授室から退散、何気ない顔で職員室棟を後にした、

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