間髪容れず間一髪の斬撃!
手首の返しを使ったトリッキーで素早い剣撃、リボン状から変形させたサーベルの成り立ちと言い、恐らく切断力を頼っているのではなく、……次第に身体が怠く、自分でも分る程に動きが鈍くなって来る、矢張りさっき切られた肩、サーベルに毒が塗ってあると見て間違いない、
尚も文華は華麗にサーベルを振り回しながら僕に迫って来る、何気に彼女は戦闘術の嗜みが深い、もしかしたら僕なんかよりも余っ程強い。 しかしまさかコッチから攻撃するなんて事は有り得ない、僕には武器も無い、ましてや刀を相手にどうやって戦えば良いかも分らない、でも逃げ出す訳にはいかない、
一貴:「文華!僕だ、一貴だ、お願いだ、信じて、少しだけでいいから、説明させて、」
今度は一瞬キラリ光って頭上から何かが飛んでくる! 地面に突き刺さる10cm程の針? それも十本以上! コンマ数秒遅れで脇腹に走る激痛! 体幹部を護る防刃インナースーツがかろうじて毒針の貫通を防ぐが、数本が見事に太腿の真皮を貫通している!
一貴:「痛ってぇ!」
理夜(通信):「完全に裏の刺客だと思われてるのです、」……どうやらそのようだが、そんなに雰囲気違ってるか? 仮にも奥さんなら分っても良さそうなもんじゃないのか?!
更に強烈なゴム弾!を強か背中に喰らう! 致命傷には至らないにしても、一体何処からどんな攻撃が跳んで来るか分らないこのダメージは、結構辛い、
理夜(通信):「お兄ちゃん、逃げるのです!」
一貴:「だめだ、」……文華をあんな危ない奴の所に行かせる訳には行かない!
それで今度は、じり貧で後退する僕の足を突然何かが引っ掛ける! 絡め取られて素っ転ぶ足下には何時の間にか張り巡らされたピアノ線!
一貴:「痛!」
文華:「知らなかった? この学校の敷地内には結界実習用に何百もの罠が張り巡らせてあるの、そして私はその全てを自由に使う事が出来る訳、…アンタに勝ち目は無いわ、」……サーベルをちらつかせながら文華が迫る、
一貴:「文華、信じて、僕だよ、北条一貴だ、……もしそれが信じられないとしても、文華がやろうとしている事を北条一貴が望んだりしない事位分るだろう!」
文華:「五月蝿い!黙れ、」
文華:「一貴は、絶対に、私を独ぼっちにしたりしない!」
もう、足に力が入らない、
文華:「お前が北条一貴だと言い張るのなら、喜んで私に殺されなさい、」……僕は地べたに尻餅を付いた格好で鼻先にサーベルを突きつけられながら、思いの侭にならない身体を引き摺って後退する、
一貴:「お前が翠川に触られるのだけは嫌だ!絶対に嫌だ!」
文華:「私は一貴の為にならどんな事だってやるのよ、知らなかったの?」
一貴:「え?」……次の瞬間!
地面が割れて、ポッカリと落とし穴が出現する。 ダストシュートの様な真っ暗いスロープが僕の身体を飲み込んで、僕は、何も見えない闇の底へと、墜落した、
ーーー
佳枝:「お兄さん!」
何だか、途中の記憶が跳んでいる? 気がつくと其処は真っ暗い倉庫の様な部屋の中で、富士本が僕を抱き起こしてマグライトで辺りを照らしながら、何かの薬を嗅がせたらしい、……アンモニアっぽい刺激臭が鼻の下に残っている、
佳枝:「大丈夫です、打ち込まれたのは恐らくただの睡眠薬と思われます、」
一貴:「此処は?」
佳枝:「落とし穴の下です、古典的な罠に引っ掛かりましたね、立てますか?」……身体は、自由に動く様だ、
一貴:「ああ、」
佳枝:「藤塚先輩を追いかけます、」
一貴:「文華は何処に?」
佳枝:「まだ分りません、先輩のドレスに発信器と盗聴器を仕掛けました、それを追って追跡します、恐らく翠川と先輩はこの後「裏」に関する情報交換を行うと思われます、その現場を抑えて翠川を拘束します、」
一貴:「分った、行こう、」
僕と富士本は落とし穴の上から垂らされたワイヤーを手繰って抜けだし、学校の外に止めてあったトライアンフに2ケツして、……夜の道を疾走する!
ーーー
佳枝:「藤塚先輩との距離は約30分、…20分で追いつきます、」……メータの横に装着した富士本のスマホが、地図上の文華の位置をトレースして最短距離をナビゲーションする、バイクは真っ暗な田舎道を東へ、……
1時間程走った後、やがて僕達は広大な畑のど真ん中の大きな堀に囲まれた廃城?に到着した、
佳枝:「エンジン切ります、」……僕達は気取られない様にバイクを乗り捨てて、徒歩で城に近づいて行く。 四つの塔と城壁に囲まれた真っ四角な城、堀を渡る為の桟橋は一カ所だけ、その手前の小屋の前に見覚えの有る文華のE-classが停まっていた、
一貴:「ここは何なの?」
佳枝:「ギルフォード訓練校の新しい研修施設です、今は改装工事中でまだ使っていない筈です、」……富士本は周辺のセキュリティ設備をサーチ、流石に広過ぎて城全体はチェック仕切れない様だが、
佳枝:「幸い、防犯設備は未だ従来の民間仕様です、ジャマーを掛けながら城迄アプローチしましょう、」
一貴:「それでどうする?」
佳枝:「城の中に入られて盗聴器の受信感度が落ちています、何とか中に忍び込んで接近し、二人の会話を録音して証拠を抑えます、」
一貴:「了解、」
富士本が、ボイスレコーダーを僕に手渡した、
翠川(盗聴器):「……良くぞ決心……くれた、君が……を拒絶しない限…、私は君の力に……続ける……を誓おう、……」……音声が途切れ途切れになっているが、最悪の展開なのは一目瞭然だった、
一貴:「くそっ、」
佳枝:「もしも途中で妨害が入った場合は私が食い止めます、お兄さんは出来るだけ二人の近くに行って、会話を録音して下さい、良いですか?」……女の子に喧嘩を任せるのは気が引けるが、僕と富士本の戦闘力から判断すれば確かに妥当な分担だ、
堀を渡る細い桟橋の真ん中に、一人の女の子?が立っていた、……あの、小柄なスーツの女、文華の従者!
スーツ女:「御嬢様から、誰も此処を通すなと言付かっています、」……その両手には二刀流の日本刀? しかもその立ち居振る舞いは凡そ素人とは隔絶して美しい、
佳枝:「それでは計画通り、」……って、お前、疾っくに気付いてたな!
一貴:「待て富士本!」
佳枝:「行きます!」
問答無用で富士本が、日本刀に向って突っ込む!