加茂理夜が手配した部隊が到着して、重傷を負った富士本とスーツ女をギルフォード訓練校の診療施設に運び、掃除屋が翠川の死体を片付ける、幸いな事に富士本の命に別状は無かった、
僕と文華は堀の見渡せる別の部屋で床に凭れ掛かって、月明かりに揺れるオーブの群れを眺めながらぼおっと二台目の救急車が到着するのを待っていた、
一貴:「いつ僕だって判ったの?」……暫くの重い沈黙の後、僕は漸く言葉を漏らす、
文華:「最初から判ってたわよ、ばれないとでも思ったの?」……結構、物言いが冷たい、やっぱり怒ってるんだろうな、
一貴:「もしかして僕が生きてる事も知ってたの?」
文華:「一貴が死んだなんて信じられる訳無いでしょう、」
文華:「それに加茂達の動きが怪しかったから、姿を眩ましてからあいつの家に忍び込んで置きっぱなしになってたPC覗いたら大体の事は判ったわ、……あの子変な処間抜けよね、自分が調べられる事を何にも考えていなかったみたい、」……まるでウエディングの様な純白のドレスに包まれた文華は、世界中の全ての事物の中で最も美しいに違いなかった、
一貴:「翠川に何されたの?」……僕は、恐る恐る文華の指に触れてみる、
文華:「何もされてないわよ、」……なのに文華は全然無反応で、
一貴:「でも、どうやって薬盛ったのさ、」
文華:「内緒、」
一貴:「やり返すんだから、教えてよ、」……僕は、文華の二の腕をこしょこしょと擽る、
文華:「一貴、なんか一寸調子に乗ってない?」
一貴:「すみません、」……僕はすごすごと引き下がる
文華:「言っとくけど私、怒ってるんだよ、半年くらいは赦さないからね、」
一貴:「その後は赦してくれるんだ、」
僕は分り易く安堵して、僕は分り易く落ち込んで、それで何時もみたいに文華はしょうがないな、って顔して僕を睨んで、
文華:「其れ迄の間、一歩も部屋から出さないで監禁してあげる、」……そう言って文華が行成り僕の腕に抱きついてくる、こんなにも待ち焦がれた文華の体温がじわじわと乾ききった僕の体内に染み込んで来て、
文華:「首輪で繋いで、手足の自由も奪って、食事もトイレも全部私が面倒見てあげるわ、」……文華はそう言って僕に凭れ掛かる、
一貴:「楽しそうだな、」
ーーー
一週間後、……
僕はロンドンの文華の両親の家で目を覚ます、隣で眠っていた文華は既に街へ出掛けて行ったらしい、何でも万絢の合格記念に取って置きの料理を作る為の材料を調達しに行ったらしいが、
一貴:「大丈夫なのかな?」……まあ、ネコ(注、スーツ女)と一緒だから大丈夫か、
其処へ、朱莉さんと関目医師が訪ねて来た、何故だか加茂理夜も一緒だ、
それで僕は体内に埋め込まれていた諸々身体に悪そうな物を全部取り出してもらって、何だかデカいニキビみたいに違和感の有った顔の詰め物も取ってもらい、漸く元のハンサム顔に、
一貴:「富士本は元気になったの?」……室戸の掌底突きは歴とした殺人技なのである、それをマトモに喰らったのだから心配だ、
理夜:「お陰様で略回復なのです、やっぱりおっぱいのお陰でしょうか?」
一貴:「処でこれから僕達はどうなるのかな?」
理夜:「それを伝えに来たのです、」
朱莉:「残念ながらどうにもならないわね、一貴クンが社会復帰する事で危険が及ぶ人が居る状況が改善されない限り、此の侭死んだ事にして置く方が良いんじゃない? 勿論、今の状態でも組合の式神として仕事をする事は出来るわ、」
朱莉:「それで勝手だとは思ったんだけど、一貴クンと藤塚さんを加茂理夜さん付きの式神とアシスタントとして登録させてもらったわ、一貴くんの名前はその侭で良いけど戸籍と住民登録上はこれ迄とは全く別の人間にさせてもらった、苗字は加解由、出身地は山口県、誕生日は4月7日って事で宜しくね、」
一貴:「出来れば、母親には僕が生きている事を伝えてもらえないでしょうか?」
朱莉:「分った、折りをみて私から話しておくわ、」
一貴:「処で、室戸はどうして僕達を殺さなかったんでしょう?」……僕は、どうしても引っ掛かっている事を聞いてみる事にした、
朱莉:「これは私の推測だけど、彼は藤塚さんに自分の境遇を重ねたのかもしれないわね、」
一貴:「どう言う事ですか?」
朱莉:「彼は芦谷家の使用人の家に生まれたの、言ったっけ此の話? それで歳の近い芦谷家の小百合姫に兄の様に慕われながら幼少期を過ごした。 彼は子供の頃から人並みはずれた才能を示していたから、周囲からは変人奇人鬼悪魔とやっかまれ恐れられて、彼に対する痛がらせは相当なモノだったミタイね、そんな中で唯一小百合姫だけが彼の理解者だった。 彼は14歳になった時に一生を姫の僕として生きる事を芦谷家に誓って小百合姫と主隷の誓いを立てているの。 その後、彼の能力に目をつけたと或る陰陽師が小百合姫を人質として嫁に娶ったんだけど、彼は小百合姫を守る為に色んな汚い仕事や無茶な仕事をヤラされていたみたいね、それで、その事を知った小百合姫が彼を自由にする為に自害してしまったのよ、」
朱莉:「その時に彼が口にした言葉が、「こんな世界なんかもう無くて良い、」」
ーーー
そして午後、……
体験入学後の編入試験を終えて、万絢が訪ねて来た、
万絢:「わあ、お兄様だぁ、お帰りなさい!顔が元通りになってる!」……やっぱり化粧してない方が万絢らしい、
一貴:「もしかして僕が西加茂に変装してた事、知ってたの?」
万絢:「勿論知ってましたよ、最初に見た時に直ぐ分りました、気付いてない振りするの結構大変だったんですよ、何度も笑いそうになっちゃった、」
一貴:「色々気を遣わせたみたいでありがとう、」
万絢:「いいえ、でもお兄様が休んじゃったから、私、最終日の実習で他の人とキスしちゃいましたよ、どうします?」
一貴:「さあ、どうしようか?……処で誰としたの?」
万絢:「秘密です、」……一寸見ない内に、結構、小悪魔化してる??
ーーー
文華主催の万絢合格記念パーティが済んで、……
万絢はその侭藤塚家にお泊り、僕と文華はベッドで並んで横になる、しっかりと手は繋いだ侭だ、
一貴:「…それで、今回の件はお咎め無しだってさ、結局「裏」の情報は何も得られなかったから、調査も事件も無かった事にするみたい、」
文華:「そう、良かった、……アイツのアシスタントとか言う変な条件が無ければだけどね、」
一貴:「だって文華は放っておいても又何かやらかすから、何時組合の仕事に関わっても良い様にって、朱莉さんが気を回してくれたんだよ、」
文華:「何であの妖怪ばばあが私に気を回したりする訳? 何か匂うんだけど、…」
一貴:「考え過ぎだよ、」……当然アレは無かった事にしよう、
文華:「それはそうと私誕生日プレゼント貰ってないんだけど、」
一貴:「ごめん、僕、急に死んじゃったから、」
文華:「いいわよ、今からでも、」
一貴:「何が欲しいの?」
文華は僕の上に馬乗りになって、舌がフヤケてしまいそうな位長いキスをした。 それからうっとりと蕩けた瞳で僕を見つめて、
文華:「赤ちゃん、」……こっそりと耳元で囁く、
文華:「良いこと、一貴はじっとしてて、絶対に動いちゃ駄目だからね、」
一貴:「そんなの無理、」
文華:「駄目、これは私へのプレゼントなんだから、ちゃんと言う事聞いて!」……そういって文華は僕の上に跨って、ネグリジェの下からごそごそとパンティを脱ぎ取って、
一貴:「あぅ、」……そんな行成り、
文華:「いい? 私が良いって言うまで我慢するんですよ、」……そうして文華はしなやかにエーテルの海を泳ぎ出し、
僕達はゆっくりと融け合って、此の世界に只一つきりの塊へと姿を変えて行く、