※この作品はR-18です。

蟲の王   作:ふくふくろう

1 / 62
上京1

 

 

 

 この東京という場所は、どこもかしこも似たような道に、同じような建物ばかり。

 人里離れた山奥で何年も過ごしていた僕は、地図を眺めながらだというのに、どうにか迷わないよう歩みを進めるだけで精一杯だ。

 

 特にこの、新宿という街は酷い。

 

「えーっと、こっから駅を出てー。この、花園神社ってのはさっき通り過ぎたよね。んでこの道を渡って、現在地はこの通りのはず。……あ、1階に牛丼チェーン店。2階がDVDやゲームのリサイクルショップ。3階が、ニコニコローン? うん。じゃあ、たぶんここかな」

 

 4階建ての古い雑居ビル。

 この街なら、ありふれていると言っていいのだろう。

 爪楊枝を咥えたお客さんが出てきた拍子にいい匂いが漂ってきた牛丼屋さんの自動ドアではなく、そこから少し離れた場所にあるガラスのドアを押す。

 

 錆びの目立つ集合ポストの横に、枯れかけた観葉植物の鉢植え。

 その緑に茶色がだいぶ混ざった大きな葉っぱをなんとなく見ながら、所々に錆の浮いたエレベーターの呼び出しボタンを押した。

 

 チーンッ。

 

 そんな間抜けな音と共に、エレベーターのドアが開く。

 中に入って4階のボタンを押すとドアが閉まり、昨日から何度乗っても慣れない、エレベーター独特の浮遊感が僕を包む。

 

 自慢じゃないけれど僕は、エレベーターなんて年に1度くらいしか乗らないような生活をずうっと続けていたんだ。

 こんなのに、そう簡単に慣れてしまえるはずがない。

 

「やっぱ、エレベーターって気持ち悪い。見えない大きな手に持ち上げられる感じで、吐き気がする。と、ここか。着いちゃったや……」

 

 エレベーターが開く。

 4階には、僕の目的地である事務所しかないらしい。

 その目的地、『藤村探偵事務所』のドアを恐る恐る押した。

 

「お、おじゃましまーす」

 

 いかにも事務所といった風情の室内に人影はない。

 ただ、気配だけは感じ取れた。

 それと微かではあるけれどたしかに匂う、嗅ぎ慣れた香りも鼻に届く。

 思わず緩んでしまいそうな表情筋を引き締めながら、その他に何か気になるものはないかザッと確認。

 

 ……うん、特に脅威になるような気配はなさそうだ。

 

「ヒロキ?」

 

 だだっ広い部屋の左奥にある大きなデスク。

 そこのパソコンモニター向こうから、小さな頭がにゅうっと現れてそう問う。

 

「は、はい。僕がヒロキです。あなたが桃さん、ですか?」

「うん」

「これからお世話になります、…あ、まだそうじゃないや。できたらお世話になりたいと思ってます」

「ん。そこ座って」

「あ、はい」

 

 大きなデスクと、古臭いソファーセット。

 そのデスクの周りにだけ、空のペットボトルやお菓子の空き袋が散乱している。

 

 だだっ広いフロアにはその他にも冷蔵庫や、グラスの並んだ棚、他の部屋へと続くドアなんかもあった。

 そしてフロアの3分の1ほどはカーテンで仕切られて、向こう側は覗けない。

 僕が年代物らしい黒い革張りのソファーに腰を下ろしても桃さんは何も言わないので、かなり手持無沙汰だ。

 

「……少しだけ待ってて。この情報を分析したら、テストの内容を説明する」

「了解です」

 

 テスト。

 それは僕が高校在学中、この探偵事務所でアルバイトをさせてもらえるかどうかを決める、とんでもなく重要な雇用試験の事だろう。

 

 テストに合格すれば僕の雇い主になある桃さんは、大きなデスクの上にある、これまた大きなパソコンの、4つほど並んでいるモニター画面を睨みつつ、物凄い速さでキーボードを打っている。

 

 小豆色のジャージ。

 華奢な肩にかかるか、ギリギリかからないかくらいの、ボサボサで荒れ放題な黒髪。

 マンガでしかお目にかかれないような、分厚いレンズの黒縁メガネ。

 15歳の僕よりずうっと小柄な桃さんは、実際に会うのは初めてだけれど、師匠達から聞いていた通りの人らしい。

 

 曰く、残念を極めた女。

 

 たしかに、服と髪とメガネの取り合わせは残念な感じだ。

 元々の顔立ちがこれほどかわいらしく整っていなかったら、僕は3年間もここでアルバイトをする事に絶望していたかもしれない。

 

「……ん。終わった」

「お疲れさまです」

「じゃ、テスト」

「わかりました。内容は」

「簡単。そのカーテンの向こうに、依頼主がいる。方法は任せるから、祓って」

「……えっと、説明とかは?」

「いいから早く。嫌なら出て行って、どうぞ」

「や、やりますやります。ここでバイトさせてもらえなかったら、3年間ずっと新宿支店で下働きですもん」

「なら早くする。報酬は10万。税金と手数料になる2割を引いて、8万がヒロキの取り分」

「おおっ。すぐに取り掛かりますっ!」

 

 上京2日目。

 桃さんとの初顔合わせから数分で、いきなりの祓い仕事。

 

 室内での祓い仕事ならバイトの内容は想像していたよりマイルドな感じだけれど、この調子で日に何度も仕事を振られたりするようだと、それはそれで大変そうだ。

 でも財布の中の全財産、その10倍もの報酬が出るなら、やらないという選択肢なんてあるはずがないだろう。

 

 立ち上がる。

 カーテンで仕切られて個室のようになっている方へ僕が足を向けても、桃さんは何も言わない。

 それどころかまた軽快な音を立てて、キーボードを打ち始めた。

 

「分厚い生地だけどカーテンじゃノックはできないか。えーっと、失礼していいですか?」

「え、ええ」

 

 聞こえたのは女の人の声。

 桃さんよりだいぶ年上な感じの、落ち着いた声だ。まあ、今聞こえたそれはだいぶ上擦っていたけれど。

 

 シャッと音を立ててカーテンを引く。

 

「……わぁを」

 

 わかっていたというのに、そんな間抜けな声が出てしまう。

 

「キミが、そうなのね」

「ええっと」

「あたしを治療してくれるんでしょう?」

「治療と言えば治療なんでしょうね。その症状は、いつからですか?」

 

 女の人が哀しそうに微笑む。

 

「止まらなくなったのは、今朝ね」

「なるほど。間違いないだろうとは思いますけど、一応は症状を診させてもらいますね」

「え、ええ。……見て。初めて会うキミみたいな若い男の子の前でも、オナニーを止められないあたしを。んっ、隅から隅まで。あんっ!」

「ここまで症状が進んでたら、仕方ないですって。ああ、オナニーは続けてていいですよ。せめて自分で弄ってないと、気が狂ってしまいそうでしょうから」

「あはぁっ。そ、そうよ。こうして指でオマンコをズボズボしてないと、おかしくなっちゃいそうなのっ! ああっ、お話が終わるまでガマンしてたから指が止められないわっ!」

「でしょうねえ……」

 

 キングサイズと言うのかな。

 大きなベッドの上に全裸で横たわっているのは、30歳になるかならないかくらいの、バッチリ化粧をした美人さんだ。

 

 おっぱいもお尻も大きいけれど、なにより魅力的なのはその上品そうな顔立ち。

 もしこんな症状が出ていなかったら、この人がオナニーをしているところなんて想像もできない、清楚な感じの美人さん。

 そんな人が豊満な肢体を惜しげもなく晒し、身を捩らせ股間から絶えず淫らな水音を立てながら情欲に濡れ切った瞳で僕を見上げているんだから、正直たまんない。

 今すぐベッドにダイブしちゃいたいくらいだ。

 

「ねえ。治せるのよね? ん、うっ……」

「大丈夫ですよ。えっと、桃さーん。祓いに時間をかけても平気なんですかー?」

「依頼主は家庭持ち。即祓いを希望。日帰りコースで」

「……マジですか。せめて明日まで時間をもらえたら、指も触れずに祓えるんだけどなあ」

「しかも夕方までには家に帰りたいらしい。だから早く祓って」

「それはいいんですけど、祓い方の説明は」

「してある。依頼主も納得済み」

「……なるほど」

 

 夕方までにコレを何とかしようと思ったら、方法は1つしかない。

 この奥さんも納得してるって言うし、ならまあいいか。

 

「それじゃあ」

「ま、待って!」

 

 ここでアルバイトをするのなら制服の代わりだと言われて和歌山で買った、細身の真っ黒いスーツのスラックス。それを固定しているベルトに手を伸ばした僕に、制止の声がかけられる。

 これは、あれかな。

 

 やっぱり待って、私には愛する夫が!

 

 とかそういう。

 祓い方が祓い方だけに、時間をかけてくれと言うなら否はない。

 昨日の夜はこれから3年間暮らすマンションの板張りの床で大の字になって寝たから射精していなくって、ちょっとだけ惜しい気はするけれど。

 

「はい。やっぱり時間をかけますか?」

「そうじゃないわ。そうじゃないの」

「と言いますと?」

「こっちに来て。あたしが、この手で脱がせたいのよ。服は汚さないから、お願い」

「……なるほどです。でも服とか汚れるのは気にしなくっていいですよ」

「そうなの?」

「ええ。こういった祓いは、対象の欲望をなるべく叶えながらが良いんで。さあ、お好きにどうぞ」

「うれし、んっ。お、男の子のニオイがするわ。それも若くって、とびっきり青臭い男の子のニオイが……」

 

 僕がベッドの横に立つと、オナニーをしながら奥さんが器用に身を寄せてくる。

 そうしながらもアソコを指で掻き混ぜていやらしい音を立てているのだから、やっぱりこの『淫気詰まり』は普通の術者なら祓いに数日かかるほど進行しているみたいだ。

 

 人の全身に血が流れているように、普通の人の目には見えない『気』という物も流れている。

 普通ならそれが多少詰まったところで問題はないのだけれど、その『詰まり』の原因が『淫』の『気』で、その『詰まり』がここまで酷くなると、こういった症状が現れてしまう事もあるんだ。

 

 才能のある人間ならば、なおさら。

 この奥さんはきっと、能力者の家系の血でも引いているのだろう。

 

 過去の大戦で何の罪もない人間達が、何千何万、何十万と、本当なら国際条約で禁止されている一般市民への無差別攻撃の爆撃で焼かれ、苦しみ抜きながら死んでいった日本。

 ただでさえ国土が狭く、都市となるのに適している土地は昔から多く人が死んでいたのに。

 

 なのに、この国の都市部が幽霊で溢れているだなんて言う霊能力者はいない。

 お盆にはご先祖様が帰ってくるというけれど、狭い敷地の古い家から霊が溢れていたなんて話も。

 

 その理由は死んだ人間が幽霊や怨霊になるにも、ある種の才能が必要だからだ。その才能をこの上品そうな奥さんは、ほぼ間違いなく持って生まれている。

 

 まあ、淫気詰まりでこうまで淫らになってしまう体質を才能と呼んでいいのかは疑問だけれど。

 

「この様子じゃ、だいぶ淫夢にも悩まされたでしょうね」

「そ、そうよ。毎晩毎晩、キミみたいな男の子の股間に顔を埋める夢を観るの。ああっ、ズボンの上からなのに、とっても素敵なニオイ。オマンコをズボズボする指が止まらないわ……」

「好きなだけ嗅いでください。ガマンが出来なくなったら舐め回して、咥え込んで。その後はコレで直接、子宮にこびりついた淫気を内側から落としていきますんで」

「こ、こんなのを受け入れたら……」

「大丈夫ですよ。何も心配しないでください。妊娠もしませんし、祓いの記憶なんて今夜には薄れてしまいます。明日の朝になれば、あれは夢だったんだと思い込めるくらいまでに。それからも徐々に記憶は薄れて、数日もすれば僕の顔も思い出せなくなりますから」

 

 股間に顔を寄せて鼻を鳴らすだけだった奥さんが、生唾を飲み込んで喉を鳴らす。

 でも、そこからの動きは速かった。

 

 ファスナーを下ろす音が事務所に響く。

 

 たった一晩射精していないだけなのにオナニーを見せつけられながらアソコの臭いを嗅がれ、僕が勃起しかけてしまっているのを察知したからだろう。

 

「軽く撫でただけでわかるわ。すっごい大きさ。それに、太さも。こんなの、初めて……」

「コレが欲しかったんでしょう、奥さん?」

「……そうよ。ああ、もうガマン出来ないわ。3年ぶりの生チンポを、お口で感じたい」

「どうぞ。僕は丈夫なんで、どれだけ激しくしてもいいですよ。奥さんのお好きなように」

 

 カチャカチャと音を立て、ベルトが外されてゆく。

 

 少し悩んだけれど、ジャケットと長袖の白いYシャツは脱がないでおく事にした。

 ネクタイは最初からしていないので脱げと言われればすぐ全裸になれるし、相手がこれだけ美人な奥さんでも、残念ながら心ゆくまでセックスを愉しむほどの時間はない。

 

 それにこれはあくまでも祓い仕事なのだから、汗なんて掻きはしないだろう。

 挿入したらカリで子宮口を擦り上げる事を繰り返して淫気を散らし、最後の仕上げに奥さんの最も大きな絶頂に合わせてザーメンを注ぎ込めばいい。

 射精のタイミングなんて、今じゃ息をするのと同じくらい簡単に調節が可能だ。

 

「凄いわ。脱がせるとニオイが濃くなって本当に素敵」

「味もたしかめてくださいよ、奥さん」

「え、ええ。もちろんよ。……んっ」

 

 アソコの表面を舐められながら、足首に引っかかっている状態のボクサーパンツとスラックス、それに履き慣れない革靴を足で蹴るようにして自分で脱ぐ。

 

「……わあ。奥さん、上手ですね」

「そ、そう?」

「はい。こんなに上手なフェラ、初めてですよ。奥まで咥えながら、舌が踊ってましたもん。これはたまんないです」

 

 これはお世辞じゃなく、本音だ。

 フル勃起はしていないから奥まで咥え込みやすいとはいえ、この大きさをあそこまで迎え入れながら見事な舌技を披露するなんて。

 

「んふ、うれし。じゃあ、もっと悦ばせてあげなくっちゃね」

 

 仰向けでオナニーをしながら僕のアソコを口に含んでいた奥さんが動く。

 オナニーを中止して、四つん這いに。

 

「ああ、ねっとりした玉舐めも上手なんですね。しかもそうされながら、こんな美人さんに見上げられてるなんて。見てるだけで射精しちゃいそうです」

「お上手ね。生チンポのゴツゴツ、おばさんのベロがオマンコになったみたいに感じちゃう。これだけでイッちゃいそうよ。……ん、タマタマの裏も素敵な味」

(ととさま~っ)

 

 いかにも愉しそうな、幼い声。

 

(はいはい。どしたの、セイ?)

(このおばさん、結婚前はかなり遊んでたのっ。だから祓いも楽そうなのっ♪)

(ふうん。にしても、東京に出て来て最初の仕事が色事系。それも、こんな簡単な淫気祓いかぁ……)

 

 いいのか悪いのか。

 師匠達は桃さんに実力を認めさせれば、それなりに難易度の高い仕事も回してもらえるはずだと言っていた。

 だから回された仕事は最初っから手を抜かず、僕の秘密もなるべく早いうちに見せておけと。

 

 なら、こういうのはサクッと終わらせた方がいいか。

 

 そう思いながら、軽く腰を突き出す。

 

「んぶぅっ!?」

「しゃぶりながらおっぱいを捏ね回して欲しかったら、限界まで咥えてください。そうしないと僕の手が届きませんよ?」

「……ん、んんっ」

「そうそう。さすが、人妻さんですね。喉奥の使い方も上手です」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。