初めての休み明けの出勤。
とは言っても祓い仕事すらなくって、ほんのちょっとの家事を終えるともうする事がない。
幼児向けのテレビ番組を見ながら踊ったりするセイと、朝に寄ったコンビニで買ったチュッパチャプスを舐めながら飽きもせずゲームをしているフウカを眺めたり、ユウチューブとかいうのを見たり、影の中に仕舞ってある本を読んだりして1日が終わる。
そして帰宅。
この数日ですっかり気に入って、もう愛車と呼べるほどになったRZ350を駐輪場に置いた。
(とーちゃん、今日の晩メシはなんだっ?)
(今から商店街で買い物。安売りの肉か魚がメインになるから、まだメニューはわからないねえ)
(じゃあさ!)
(カツカレーなら金曜日にしか作んないよ?)
(……ぶー)
(ととさまっ♪)
(言っとくけど、フィッシュ・アンド・チップスも土曜日だけだから)
(むーっ)
どんなにむくれられても、毎日毎日揚げ物ばかりでは栄養が偏ってしまう。
使役蟲という存在は僕が能力に目覚めて初めて世に現れたので、まだまだわからない事だらけ。
お酒を飲んだり、セックスに交ざったりするのが平気だというのは本社の解析系能力者さんに太鼓判を押されたけれど、さすがに食べ物の事は何も言っていなかった。
15万円のヘルメットを担ぐようにして、商店街へ向かおうと振り返る。
するとそこには、見覚えのある車があった。
小豆色のランドクルーザー。
箱根からの帰り、後部座席に乗せてもらったあの車だ。
クラクション。
ピッとそれが鳴らされて運転席と助手席から降りてきたのは、これまた見覚えのある顔。
それも、当たり前のように2つ。
「こんばんは。約24時間ぶりですね。ホムラさん、アヤメさん」
「あたしらは今日の朝、会議中に書類でその澄まし顔を見たんだが? そして2人で冷や汗を垂らしながら、たっぷり1分は固まってたんだが?」
「まだ春休み中なのに、そんな会議なんてしてるんですね。教師って大変そう。そして、やっぱり同じ学校でしたか」
いつか僕がなにをどうしてか、まかり間違って普通の仕事をする時が来ても、教師だけは絶対にやめておこう。
なんなの、春休みに会議って。
会議するなら休みじゃないじゃん。
「そうなるねえ。しかも、住んでるマンションまで同じと来てる。駐車場と駐輪場も、真ん前だ」
「……それはまた。偶然って怖いですね」
「うふふ。ところで時間はある、ヒロキくん。もとい、六堂くん?」
「えーっと、出来れば晩ゴハンの買い物をしておきたいかなって」
「ご飯ならうちで食べればいいわ。学校が始まる前に、ちょっと話し合いがしておきたいのよ」
「担任と副担任と新入生って立場でな」
「……うっあー、よりによって担任と副担任ですか。わかりました」
まさかまさかの偶然。
でも棗さんの事だから、こうなるのを知ってたんじゃないかな。
現地で解散するのを簡単に認めて、別れ際には微笑んでたし。イタズラ好きだから、あの人。
「それじゃ行こうか」
「はい。あっ、アヤメさん。買い物袋を持ちますよ」
「あら、紳士なのね。ありがとう」
「英国紳士、ねえ。角将にはそんな事まで仕込まれてるのか」
「そして剣の腕は飛車仕込み。なら、あの吉喰流の使い手なんでしょう? 強いはずよねえ」
「学校って、そんな事まで知ってるんですか。ヤダなあ……」
2人に案内されたのは、部屋と部屋のドアの間隔が僕の所より広い最上階だった。
「どうぞ」
「おじゃまします。……あれ、玄関が広い。それに、僕の部屋にはない廊下もありますね」
「このマンションは上から見たら、ひらがなの『く』の字みたいになってるだろ。横に長い方が2LDKで、そうじゃない方はワンルームタイプなんだ」
「はぁ」
2LDKってなんだろう。
それを訊ねる前に清潔な、几帳面に整頓されたキッチンに案内される。
どうやらホムラさんとアヤメさんは師匠達と違って、掃除や整理整頓なんかがちゃんとできる能力者みたいだ。
「アヤメが料理をするから、そこのダイニングテーブルでまずビールでもやろう」
「独立した台所、いいなあ」
「本社に特例で認められて学校に通いながら依頼を受けて稼ぐなら、もっといい部屋にだって住めるわよ」
「だな。だが、その特例で支社の依頼を受けているってのは学校じゃ秘密にしておけよ?」
「なるほど。了解です」
危なかった。
棗さんは依頼を秘密にしろなんて言ってなかったし。
「素直でよろしい。あ、荷物はテーブルに置いちゃって」
「わかりました。ヘルメットは床に置かせてくださいね」
「ああ。それよりセイ、フウカ。いるんだろ? ビールで乾杯するぞ」
「はぁい♪」
「さっすがセンセ。話がわかるなあ」
待ってましたとばかりに、僕の影から2人が飛び出す。
「ははっ。椅子が2つしかないから、1人ずつヒロキとあたしがだっこだけどな」
「セイはせんせーの膝がいいのっ!」
「そうかそうか。んじゃ、ビールを出すから待っとけ」
「はぁい♪」
冷蔵庫から、全員分の缶ビールがテーブルに出されてゆく。
アヤメさんも料理をしながら飲むようで、笑顔でプルタブを引いている。
「そんじゃ、予期せぬ再会に。乾杯」
「カンパーイ」
「乾杯なのっ♪」
缶ビールは僕の好きなキリン・ラガー。
よく冷えているので、当たり前に美味しい。
「んでヒロキ、あたしらとはどうする?」
「……どうって言われても。ホムラさんとアヤメさん次第ですよ」
「へぇ。隠れてこの部屋に通って、その度に相手をしろって言われたらどうすんだよ?」
「ラッキーって言いながらズボンを脱いで、2人一緒に押し倒しますねえ」
ホントは今すぐでもそうしたい。
それが本音だ。
「好きだなあ、オマエも」
「まあ否定はしません」
「ほんじゃ、ヒロキの卒業まではこのまんまでいいか」
「それはいいんですけど、お2人の方は?」
「なにがだよ?」
「あれほどの腕を持つ2人が、高校の教師なんてしてる意味」
立ったまま缶ビールを手にしているアヤメさんの瞳が細められる。
対照的に椅子に座ってセイをだっこしているホムラさんは、僕の目を見ながらニヤッと笑った。
「とぼけるのは得策じゃなさそうね」
「だろうなあ。でもまあ、一応は聞いておこうか。まずヒロキの考えを話してみろ」
「はい。……反乱、は言い過ぎかな。学生の暴動や、計画的ではないにしてもあり得る能力者の暴走に備えての配置なんですよね? 学校に通うのは関東中の能力者、それも成長の途次にある若者で、バカもそれなりにいるでしょうし」
そうなったら、僕も加勢しないと。
「まあな。でも、それだけじゃない」
「と言うと?」
「本州は本社が握ってる。だが北海道には旧幕軍の家系が流れて、独自の能力者組織を運営しているんだ」
「なるほど。そういえばそうでした。それに四国は、あまり本社と仲のよろしくない八十八家が押さえてる。沖縄の有名な家は沖縄返還時に本社に願い出て帰属したんでしたっけ?」
「ああ。だから沖縄は、九州を守る征西府の管轄だ。言っとくけど、あそこも油断はできないよ」
「征西府は本社の下部組織なんじゃ?」
棗さんの授業でそう聞いた気がする。
なんか大昔にそれを率いてた人がけっこうな能力者で、九州の人はその名前に誇りを持っているとか。
「建前上はな。だが、九州は大陸に近い」
「革命だの内戦だので国そのものがなくなったり新しくなったりすると、能力者として生まれる人間の数はメチャクチャ減るんでしょう? 新興国だらけの大陸のなにが怖いんです?」
「どれだけ減っても、0にはならないさ」
なるほど。
僕はてっきり能力者の若者が暴走したりした時、それを鎮圧なりなんなりするために、ホムラさんとアヤメさんが先生なんてしてるんだと思ってた。
でも将来の戦力である能力者の若者が集まって学ぶ、いかにも守りの薄そうな学校という場所を、外敵の襲撃から守る事も2人の役目なのか。
「理解しました。なら万が一のその時、僕が手を貸すのは可能ですか?」
「……どんなに家格の高い家の子でも、高校在学中に本社や支店から依頼を回してもらうなんてのは不可能なんだ。本来ならね」
「みたいですねえ。さっき学校じゃ口外するなって言われるまで知りませんでしたけど」
「だろうね。だからそんなルールまで曲げて依頼を回し、その支店の情報室長が連れ歩くヒロキなら、もし襲撃を跳ね返すのに助力したって誰も文句は言わないさ」
それだけ聞ければ安心。
「ならよかったです。もしなにがあっても黙って見てろって言われたら、どうしていいかわからなかったし」
「男の子ねえ。じゃ、話し合いはお終い。食事の準備をするわね」
「アヤメのクリームシチューは絶品だからなあ」
「ほとんど既製品のルーで作るんだから、誰が料理しても一緒よ。リビングに移動して飲んでて」
「あいよ」
アヤメさんを残して4人で移動したリビングは、僕の住んでいる部屋と同じ広さだった。
ただし家具なんかのなんというか、統一感のようなものが天と地ほど違う。
同じのは部屋の広さと、テレビの大きさくらいだろう。
「いい部屋ですねえ。ソファーがすんごく低いのは、どうしてなんですか?」
「もうアヤメに片付けられたけど、これならコタツに入れるからな」
「なるほど。胡坐も楽に掻けるし。いいですね、これ」
「だろ。さ、座って飲んでろ」
「あ、はい。ホムラさんはアヤメさんのお手伝いですか?」
「まさか。こんなご馳走が目の前にあるんだから、まずはそれを味わうに決まってるだろって」
「えーっと、アヤメさんがゴハンを作ってくれてるのにですか?」
「こんなのは早い者勝ちなのさ。ほら、腰を上げろって」
「いいのかなあ……」
それでもフェラがしてもらえるなら、僕にホムラさんを止めるという選択肢なんてあるはずがない。
黒いスラックスを脱がされると、すぐにボクサーパンツ越しの吐息を感じた。
深く長く、ホムラさんが鼻で息をする。
「ああ、蒸れてるなあ。昨日とはまるで違う、エロいニオイをさせてやがる」
「お風呂は昨日の夜に入ったっきりですからね。セイ、ホムラさんに性病予防の魔法をお願い」
「はぁい♪」
ボクサーパンツの生地の上から、アソコが舐められた。
そうしているホムラさんの肩まである茶色がかった髪を耳にかけて、顔がよく見えるようにする。
「しゃぶってる顔が見たいってか?」
「はい。僕のアソコを舐めてるホムラさんは、戦闘の時と同じくらいキレイですから」
「お世辞が上手いじゃないか」
「本心ですって」
イノシシの妖異を倒した帰り、僕達は3人でラブホテルに入った。
その夜はもちろん泊りで、翌日も夕方まで滞在。
アソコが乾くヒマもないくらいセックスをして、僕は夕暮れの武蔵境駅で2人に別れを告げる。
そしてその翌日、こうして再会してまたすぐにセックス。
別にそれが悪い事だとは思わない。
先生と生徒という立ち位置は、学校の中や人目がある場所でだけ守ればいいんだ。
「っは、脱がせるとさらに強烈なニオイだ。濡れるっての」
「クサイならお風呂でも借りるのに」
「このくっさいのがいいんだよ。ヒロキだってそうだろ?」
「ですね。うん、今日もいいおっぱいです」
「こら、まだ揉むなって。すぐ欲しくなっちゃうだろうが」
「自分はSだって言い張ってるのに、本当は焦らされるのが好きなホムラさんにはご褒美でしょう。あは、もう乳首もコリコリですね」
「っく、この。ん、っちゅ……」
たった2日。
フェラを覚えてそれしか経っていないホムラさんが仕返しをしようとしたって、それほどの効果は与えられない。
Dカップだという美乳をブラウスの上から揉みながら、僕のアソコに熱心に舌を這わせるホムラさんの整った顔を眺める。
「へへっ。いかにもセンコーって感じの女が、スーツ姿で這いつくばってチンコにむしゃぶりついてるのはエロくていいな。とーちゃん」
「だねえ。もう勃起しちゃったよ」
「……っちゅ。今日こそ咥えて喘がせてやるからな、覚悟しろよ」
「それはそれは。是非ともお願いします、赤岩せんせ?」
「ったく、余裕ぶりやがって。かわいくねえな」