今日は土曜日。
奥多摩の状況が状況だけに今日はそちらに向かうつもりだったんだけど、学園の校門を出たと同時に棗さんから電話がかかってきた。
今の奥多摩は賽の河原みたいなものだから、幸田と煉上の依頼を優先しなさい。
それと日曜日は夕方からあの2人の部屋に行って泊まる事。
自分の家畜が淫気を溜めてるなんて、ご主人様失格よ?
そう言って棗さんは笑っていた。
ホムラさんとアヤメさんとの関係なんて、僕から話した事ないのに。
「おひさしぶりです、六道様」
「あ、佐伯さん。今日もお世話になります」
「こちらこそ。お車はイチハがそこのガレージに入れておきますので、お嬢様の訓練室へご案内します」
「あ、はい。イチハさんもおひさしぶりです。雑用なんかさせてごめんなさい」
「またお会いできて光栄です、六道様。雑用どころか、どんなご命令にでも嬉々として従いますので、どうかそのような事はおっしゃられないでください」
「……ありがとうございます。夜、楽しみにしてますね」
「え、ええ」
瞬時に顔を真っ赤にしたイチハさんに小さく頭を下げ、この間と同じ部屋に案内される。
まずはお昼ゴハン、それから休憩がてら今日の予定を決める話し合いだそうだ。
「ろ、六道さん。わざわざごめんなさい」
「いえいえ。それにしても2回目なのに、やっぱさん付けなんだねえ」
「は、はい。どうしてもこうじゃないと、その、怖くって。ごめんなさい」
「責めてないから。まずはゴハン食べよ。ほら見て、セイとフウカが待ち切れなくってヤバイ」
「あはっ。はい」
やっと笑ってくれたか。
今日の委員長ちゃんは、なんかモコモコした生地の白い上下。
爆乳もいいんだけど、膝より上から見えている足も肉付きがよくってたまらない。
胸に挟んで、ふとももに挟んで、大きなお尻に挟んでと、プレイの幅が広がりそう。
「ごちそうさまでした」
「佐伯、今日も美味しかった。ごちそうさまでした」
「お粗末さまです。隣のリビングに食後のお茶をご用意してありますので」
「クッキーなのっ♪」
「コーラもあるよなっ?」
「ええ。ございますよ」
「ゴハンいただいたばかりなんだから、飲み食べしすぎないでよ? セイもフウカも」
「はぁい」
「へーい」
今日も微妙な距離を保って委員長ちゃんの隣に座り、缶コーヒーとは香りも味もかなり違うコーヒーをいただく。
セイとフウカは対面のソファー。
佐伯さんは、僕達4人を等分に見れる位置に立ったまま話をするらしい。
「六道様、おタバコもご自由にどうぞ」
「いや、最近ちょっと吸いすぎで。今はいいかな」
「六道さん、タバコって」
「高校生だけど能力者だからね。保護者が許可すれば吸っていいの。20歳以上になってる免許証とかもあるし」
「そ、そうなんですね」
「うん」
話が途切れる。
それどころか横目でチラッと見た委員長ちゃんは、そのかわいらしいお顔を思いきり伏せてしまっていた。
さて、どうしたものか……
「六道様」
おお。
さすが佐伯さん。
すかさず助け舟ですか。
「はいはい」
「今日のプランがないのでしたら、お嬢様にテーブルを使って角オナでも命じますか?」
「…………はい?」
「ですからお嬢様に角オナを。特にお考えもなさそうですので」
「あります! めっちゃありますっ!」
「そうですか。では、それをお教えください」
ヤバイ。
そんなのある訳ないじゃん。
考えろ、考えろ僕ー!
「……ええっと、今日はですね」
「はい。今日はどうなさいます?」
「今日は、……今日は委員長ちゃんが、……お、男のどういうところが怖いか聞いて、それをまずなるべく打ち消した状態なら、どうなるのかをたしかめようかと」
「なるほど。名案でございます、六道様」
「いやあ、ま、まあこんなもんですよ。ずっと考えてましたから。あ、あはは」
「とーちゃんって、ほんっとウソが下手だよなあ」
「まわりに名人しかいないから余計に目立つのっ♪」
「はいそこ黙って。それじゃ委員長ちゃん、男のどこが怖いか教えてくれる?」
「あ、はい。たくさんあるんですけどやっぱり、その……」
言いにくくて当然か。
って委員長ちゃん。どうして恥ずかしそうにお胸を隠すのかな?
「なるほど。お嬢様は六道様のようにその神乳をねっとりじっくり、常に視姦している視線が苦手なのですね」
「言い方っ、あんまりですよそれっ!」
「ですが事実です」
「ううっ。そ、そんな事ないし。じゃ、じゃあ委員長ちゃん。他には?」
「あとはやっぱり声、というか言葉が怖いです」
「言葉が怖い、かあ。不思議な感じだけど、わかった。あとは?」
「一番怖いのは、その2つです。その、2つなのに一番でごめんなさい」
「いや謝んなくても」
「では、準備をしてまいります」
「はい?」
佐伯さんはいい笑顔を浮かべ、昼ゴハンを食べていた部屋とは逆のドアに消える。
準備ってなんだろう。
まあ佐伯さんは委員長ちゃんの気持ちなんか最初からわかってるんだろうから、こういう時の準備もしてあったんだろうな。
さすがだ。
「準備ができました。まずは六道様から」
「僕が?」
「ええ。六道様の準備がありますので、それを終えたらお嬢様となります」
「はあ」
よくわからないけど立ち上がり、佐伯さんが先導して隣の部屋に。
その部屋の異様さに僕が思わず足を止めると、背中をドンッと押されてつんのめり、ドアが閉じた音が聞こえた。
「六道様」
「あ、はい。いきなりどうしたんですか? それに、この部屋。まるでグローリー・ホールのプレイルームみたいな……」
大きな、僕の部屋くらいある大きなベッド。
それが寄せられている横の壁は大きな鏡で、その上にはスポットライトまで。
他の壁にはどう見てもSMプレイ用の拘束具が鎖で繋がれて、部屋の隅には三角木馬や産婦人科の診療椅子まである。
そしてこれまた大きな棚には、笑えるくらいの種類のアダルトグッズ。
「乱暴なのはお好きですか?」
「はい? 意味が、ってちょっ!?」
いきなり距離を詰められて、思わず跳び退る。
「……甘い」
打撃。
3日くらい前にテレビで見た世界チャンピオンのジャブより速いそれは、迷わず僕のスーツの袖を掴んだ。
指先を曲げた程度の力の変化で、僕の態勢が微妙に変化。
これじゃ投げられる。合気、それも達人級かっ!
「くそっ、って。……はぁ?」
「さあ、六道様。次はその純白のワイシャツを脱ぎましょうね」
「いや脱がすだけかーい!?」
跳んで距離を取った僕。
その距離さえ刹那の間で詰めて放たれた、まるで龍王のような打撃、そして合気術の達人のような『崩し』、からの投げ。
なのにそれをした佐伯さんの目的が、僕のジャケットを脱がす事だったとは。
僕はまるで社交ダンスの女の人のようにくるんとその場で1回転させられ、ジャケットを脱がされただけで普通に立っている。
それにもし僕が一般人でも、痛みなんて毛ほども感じなかっただろう。
呆れてものも言えない。
やっぱり、この人もイカレてる。
「お嬢様のためですので」
「興奮度メーターをドックンドックン上げ下げしながら言われても。それとジャケットの、腋の下をクンクンされながら言われても」
「あら、レジストに失敗しましたか。セイ姫様ったら、たった1週間でここまで腕を上げられるとは。ご褒美を考えなくてはなりませんね」
「さっきまでは表示されてませんでしたからねえ。それで、どこまで脱がされるんですか? 僕は」
「下はそのままで結構です。お嬢様ですから」
なら、まあいいか。
ちょっと刺激が強いだろうけど、佐伯さんはそれを承知で脱がすんだろうし。
「自分で脱ぎます? それとも佐伯さんが?」
「悩むところですが、時間を無駄にはできません。佐伯がお脱がしして、シャツもお預かりしましょう」
「ニオイなら直に嗅げばいいのに、って。ボタン引き千切る普通っ!?」
「お嬢様のためですので。決して佐伯の趣味ではありません。それと、このかわいらしい腋に鼻を挿し込む想像をしながらシャツを嗅ぐからよいのです」
「SなんだかMなんだかわかりませんねえ」
「わからなくていいし、わかりたいとも思っていませんので。さあ、脱げましたので次はそこの椅子に」
まさか産婦人科の。
いや、この人なら三角木馬を椅子とか言いそう。
「あ、普通の、それもパソコンデスクの椅子。じゃあ、失礼しますね」
「こちらも失礼いたしま……」
佐伯さんの動きも意外だったけど、もっと意外だったのが途中で動きと一緒に言葉まで止めた事だ。
「ど、どうしました?」
「六道様。もしや、このお召し物は……」
「靴下ですか? ……あ、そういや最近セイが頑張ってるんで、魔法で清潔にしてもらってなかったです」
「ちなみに何日履きで?」
「たぶん3日は」
「佐伯がお預かりしましょう」
ノータイムで言い切りますか。
気が合いそうな性癖だなあ。
「しかもそのうち2日は体育の授業が合計4コマあって、朝にランニングまでしちゃってたり」
「わかりました。家宝にいたしましょう」
僕でもそれはしない。
上級者にもほどがあるでしょ。
「っていうか、この体勢って」
「はい。肘掛けに手首と膝、そして肘掛けの下部に足首を固定します」
「わぁい、開脚イス縛りだあ。って、いくらなんでも刺激が強すぎでしょうっ!?」
「お嬢様のためですので。決して佐伯の趣味ではございません。ええ、ございませんとも」
「鼻血、また鼻血が出てますって佐伯さん!」
そう言ってはみたけれど、師匠達のようにイカレている佐伯さんが動きを止めるはずもない。
僕は見事な手際で、あっという間に椅子に縛り付けられてしまった。
そしてそれを見下ろしてほうっと色っぽい息を吐いた佐伯さんは、アダルトグッズの並ぶ棚の引き出しを開け、2つの道具を手に戻ってくる。
「さあ、六道様。これで完成ですよ」
「アイマスクはまだいいけど、その口に入れるのはちょっと……」
「明瞭な言葉を発せなくなるだけでなく、ヨダレが垂れ流しになってしまうギャグボール。白と黒を選びましたので、きっと六道様に似合いますわ」
「いやさすがにそれは」
Mっぽいのとかも好きだけど、本気で痛めつけたり、尊厳を奪おうとまでするようなプレイはちょっと。
「あら。よろしいのですか?」
「はい?」
「この後ですが。お嬢様の事ですからほとんどなにもできず時間が来て、きっと六道様は物足りなさを覚えるでしょう」
「まあ、当り前にそうなるでしょうね」
「ですから終わったら、佐伯が六道様をこのまま犯して差し上げようと考えていたのですが……」
マジで!?
「……しょ、しょうがないなあ。委員長ちゃんのためですもんねえ」
「ええ。では、失礼いたします」