ブレザーの制服を着た少年が高級外車の後部座席に乗り込む。
するとそのドアを閉めた若い女は運転席に戻り、ハイヒールで器用にアクセルを踏んで、車を滑るように発進させた。
ブレザーの制服を着た少年と、ビジネススーツを着た20代の女。
奇妙な組み合わせの2人。
その片方、鳴神浩二が後部座席で口を開く。
「今日の予定は?」
「はい。午前中は宮前家、午後は高畑家となっています」
「やっぱ2件もぶっこんだか。ゴールデンウイークだから」
「それと休みの間、夜は浩二様が望むなら箱根の別邸で温泉に浸かって疲れを癒すようにと」
「……褒美のつもりか。あの女狐らしい、いかにも底の浅いやり口だ」
浩二は本音を漏らす。
だが、今夜の事を考えると沈んだ気持ちが浮上するのもちゃんと理解していた。
箱根の別邸には通いの管理人しかおらず、2件の仕事を終えてそこへ向かえば管理人はすでに帰っている。
となれば裕子と、今ハンドルを握っている好きな女と朝まで過ごせるからだ。
「母上様、ご当主様もお辛いのでしょう。察して差し上げなくては」
「5人も子供を産んで、全員が男。鳴神の家を継ぐ雷使いの女はついに生まれなかった。そうなれば当然、鳴神の家の発言力は弱まる。……だけどよ。だからって、自分の息子に春を売らせて他家のご機嫌を取るか? 普通」
「浩二様もお兄様のように、ご当主様のお選びになった女性と結婚をすれば。そうすればこういった事は」
「嫌だね。俺は好きな女としか結婚しねえ」
そのために毎日、好きでもない、しかもほとんど自分より年上の女を抱く。
裕子にはそんな浩二の生き方が酷く不器用に思えてならない。
当主である母親は浩二が結婚さえすれば、他に女を作ったって文句を言わないだろう。いや、それどころか愛人の子供が雷使いとして生まれてくる可能性を考え、むしろ推奨するはず。
そんなに私を妾にしたくないのですか?
裕子は何度目になるのかもわからない問いを発しかけたが、黙って車を走らせる。
答えは、いつも決まっているから。
「当り前だ。妾じゃなく妻にしたい。そのためになら俺は……」そう言って浩二はまた唇を噛み締めるのだろう。
「まっすぐと言うべきか、融通が利かないと言うべきか。裕子は判断が付きません」
「俺はワガママなだけだよ」
「なるほど。的確な表現です」
「冗談だっての」
車は進む。
目的地に、容易く到着してしまう。
「着きました。こちらが今日の分になります」
「サンキュ」
小さなスキットル。
映画などでは酒好きのキャラクターがアルコール度数の高い酒をそれに満たして持ち歩いているシーンをよく見るが、裕子が渡したそれには避妊や性病予防、それに精力剤の役割を果たす、水使い謹製の『避妊水』が詰められている。
5つも年下の、それも身分違いの男に惚れた罰。
裕子はこうやって浩二の運転手をするように命じられた時から、自分にそう言い聞かせてきた。
好きな男を欲求不満の女の家まで送る。
自身の能力で作った水を渡す。
裕子が車の中で待つ間、好きな男はその水を何度か口に運んで、それと同じ数だけ女の体に射精する。
そして「お疲れさまでした」と言って男をねぎらい、また違う女の家へと男を運ぶ。
こんな生活を続けるくらいならば、自分は愛人でも妾でもいいから、浩二には普通の生活を送ってほしい。
そう泣きながら訴えたのは2年前だった。
だが浩二は決して頷かず、ただ「待っててくれ」と言っていた。
「いってらっしゃいませ」
「ああ。できるだけ早く戻る」
遠ざかってゆく背中を見送り、裕子は運転席に戻って深く長く息を吐く。
正解がわからない。
わからないまま、自分達は慣れてきている。
それがいい事なのか悪い事なのかすら、裕子にはわからなかった。
「いらっしゃい。高等部の制服も似合うわね」
「おひさしぶりです、宮前様」
休日だってのに朝っぱらから制服なんか着せやがって、変態女。
そんな本音を巧妙に隠しながら笑顔を浮かべ、浩二は豪奢なソファーに腰を下ろす。
もちろん、女に密着するようにして。
そして内ポケットからスキットルを出し、琥珀色の酒が揺れるブランデーグラスに1滴の水を垂らした。
「他人行儀な。さやかって呼んでよ」
「わかりました、さやかさん」
「うふふ」
ねっとりとした視線で至近距離にある高校生の顔を眺めまわし、さやかはブランデーを口に運ぶ。
直後にアルコールとは違う熱が口腔内を心地よく熱くして、それを飲み下す頃にはすっかり発情していた。
キス。
それに浩二は情熱的に応えるフリをする。
慣れた動きだ。
だが、人払いされているこの豪邸の母屋に歩く途中で口にした『避妊水』の力で肉棒を硬くさせられる感覚には慣れない。
雷使いの家系に生まれた情報系。
それも銀将級である浩二は、精通が来たと同時に淫気祓いの師を付けられて修行をさせられた。
師匠が裕子の母で、相手役はその娘である裕子。
雷使いの本家に生まれた情報系と、見鬼系の分家に生まれた水使い。
それが裕子に惚れた理由だなどと浩二は思っていない。
ただ、惚れたからには幸せにしなければと、それだけを考えて日々を生きている。
「くっ。いきなりですか」
「ええ。だって、おしゃぶりしたいんだもの。今日もイイ香りよ、浩二くんのオチンポ……」
ズボンのチャックを下ろして無造作に取り出された肉棒の、それもカリ首で鼻が鳴る。
この変態女はこのためだけに浩二がシャワーを浴びる事すら許さず、そしてこんな朝の早い時間から酒と淫臭に酔って悦に入っているのだ。
バカバカしい。
浩二はそうとしか感慨を抱かず、目を閉じて裕子の痴態を瞼の裏に描く。
「カウパーが垂れてきたわ」
「さやかさんが意地悪するから。こんな美人さんに嗅がれてるだけじゃ、息子だって泣きたくもなるでしょう」
「うふふ。じゃあ、おしゃぶりしちゃうわね」
「お願いします。さやかさんが呼んでくれたから、昨日はオナニーしてないんで」
「素敵。なら、最初はお口に吐き出して」
「はい」
熟練の、とまでは言えないが20代の後半という年齢の女らしい、慣れた技巧の口淫。
それを目を閉じて受けながら、浩二は別宅の自室にあるクローゼットの中に思いを巡らす。
セーラー服。
ブルマ。
旧型のスクール水着。
ナース服。
警官風の衣装もいい。
今日は、裕子にどんな服を着せようか。
ぺちゃっ、ちゅくっ。
しおらしい水音が徐々に激しくなってゆく中、浩二の脳裏には様々な衣装を着た裕子の姿がスライドショーのように流れている。
そのスライドを止めて、浩二は裕子にスカートを上げさせた。
車で道を走っていればかなりの確率で見つける、チェーン店の制服。
とは言っても肌の露出などほとんどない、地味な制服だ。
裕子はその制服の帽子までしっかり頭に乗せて、恥ずかしそうにスカートを上げてゆく。
じゅぷっじゅるっちゅぽっぢゅぼっじゅっぷじゅっぷ。
淫音は大きくなり、リズムもかなり上がっている。
夢中で肉棒をしゃぶっているさやかは、もう口腔内に男子高校生の濃い精液を吐き出される事しか考えていない。
この若々しい亀頭がふくらみ、浩二が限界を告げる時、どこでその精液を受けるべきか。
上顎を叩くあのくすぐったい感覚を受けてがら青臭い精液を飲み下そうか、射精の勢いを最も感じやすい舌先を尿道に押し付けようか。
いや、頬の内側に深く強く押し付けて射精させ、精液が舌に届くまでの刹那の時間に身を焦がすのもいい。
「……出る」
宣言の前に『裕子』と口に出さぬよう細心の注意を払いながら、浩二が呟く。
その声音の余裕のなさに、さやかの子宮が疼く。
「らひへ、おくひにっ!」
ラストスパート。
さやかはついに訪れたその瞬間、舌の裏のスペースに亀頭を挿し込み、舌裏で尿道を包むようにしながら肉棒を手でしごき上げた。
舌裏で亀頭をふくらませた若々しい肉棒が跳ね、敏感な場所に熱い迸りがかかる。
それを追った青く生臭い香りが鼻腔にまで上がると同時に、口腔内を若い男の精液で満たされた満足感がさやかの全身を包む。
これだ。
このために自分は昨日まで、東北の山中を8日も駆け回っていたのだ。
体も洗えず、酒も飲めず、食事は現地調達した肉や野草を塩味で調理しただけ。
もちろん単独での狩りではなく、東北の名家と呼ばれる家の家中の者を伴っての狩り。なのでロクに自慰すらしていない。
だがこうやって女の本能を満たす時間があるからこそ、さやかは日々の激務にどうにか耐えられる。
「ふうっ。ありがとうございました」
「こっちのセリフね。それに、まだカチカチ。若いっていいわあ」
「次は俺がしましょうか」
「ダメよ。今すぐにでもオマンコで咥え込まなきゃ、頭がおかしくなるわ。脱ぐわね」
「ええ」
さやかが手早く服を脱ぎ捨てる間に、浩二はスキットルを傾けて舌の上で惚れた女の水を転がす。
別に精力剤の効果を足した避妊水など口にせずとも、若い体は容易く連続で射精するだろう。
だが、それでも浩二は必ずスキットルを傾ける。
「見て、もうドロドロ」
言いながら腰を突き出し、濃い恥毛が汗で張り付く大陰唇を指で割って淫肉を浩二の目に晒す。
浩二は服を脱いでいない。
ブレザーの制服のままだ。
男子高校生に跨り、腰を振りまくって膣を青臭い精液で満たす。
それがさやかの望みだと知っているから。
「すっかりほぐれてますもんね」
「あんっ、指ぃ……」
媚びるような嬌声。
それを不思議なものだと思いながら、浩二は2本の指を熟しかけの膣肉に埋めてゆく。
女は男より強い。
それが能力者の常識であり、それを示すように女能力者は男に金を払って抱きまでするのに。
なのにどうして女は男に媚びるのだろう。
「キュウキュウ締めつけながら、俺の拳にまでマン汁が垂れてくる」
「だってぇ、あんっ! そこダメぇ!?」
ゴールデンウイーク初日、浩二はすっかり陽の暮れた空を見上げながら2つめのハンバーガーにかぶりついた。
隣にはそのハンバーガーチェーン店の制服を着た裕子が座っていて、その手には同じハンバーガーを持っている。
「たまにはいいよな、外でこういうジャンクフードを食うのも」
「はい。このコスプレがなければ、ですが」
「そう言うなって。似合ってるよ」
「似合う似合わないの話ではないのですが」
言ってもムダかと諦め、裕子は浩二が見上げている夜空に視線を移す。
厚く雲が垂れ込めた、晩春の夜空。
星どころか月さえ見えないその夜空が自分達の行く末を暗示しているような気がして、裕子は苛立ちを隠しながら炭酸飲料を口に運ぶ。
「今は星が見えなくてもさ」
「えっ」
「きっといつか、空は晴れるから。だから俺、頑張るからな」
「…………はい。微力ではありますが、裕子はそれを支えたく思います」