鬱陶しいぐらいに天気が良い。
俺はこんなにも頭を悩ませていて、対照的に空は何一つ憂いが無さそうで、それが何故か気にくわない。
澄み渡った青い空を睨みつけてはみるも、当然ながら一向に心が晴れることはなかった。
「………眠い…」
イニシャルがラのホテルから場所が変わって今は学校の屋上。人がいないのをいいことに、寝そべりながら思っいきりあくびをする。
ちなみにあの後、遅刻した一花と俺は他の姉妹に問い詰められた。当然だ、二人仲良く一緒に遅刻したのだからな。何かあったのかと心配する声と、抜け駆けしてないかの心配をする声(主にニ乃と三玖)と二つが上がったが、そのどちらも嘘を並べまくってなんとか誤魔化した。
それから授業を受け、昼休み。なのだが、お金が無いのでただ今断食中…。何故お金がないのかというと、今朝のホテル代を払ったからだ。料金を払うとき一花に「お姉さんが奢ってあげる」と言われたが、それだとただのヒモ野郎になってしまうので全力でやめさせ、料金はきっちり等分した。そんな経緯で思わぬ出費をしてしまい、節約のために焼き肉抜き定食ですら食べていなかった。ただでさえ普段からあまり食べていないのに、これでは飢え死にしてしまうかもしれないという警告なのか、先程から腹の虫が暴れまくっている。要は死ぬ程腹が減っていた。
その上、先程の一花との行為で相当体力を消耗したせいか今は抗い難い睡魔が襲いかかっていたので、やることも食べるものもなかった俺は屋上に来て少し昼寝をしようと寝そべっていた。
だが、寝る前にまた物思いに耽ってしまう。内容はもちろんあいつらの告白のことだ。
あいつらのことを大切に思うなら早々に白黒つけないといけないのだが、大切だからこそあいつらとのことはすぐに答えがでるものではないのも事実で。特に一花との関係はこのままズルズル引きずって良いものではない。
「…くそっ、なんでこんな悩まなきゃならないんだ…。」
しかしながら、今ここで焦っても仕方がない。少しの間ぐらいはこのモヤモヤを忘れてしまおう。そう思い、俺は瞼を閉じて眠りに落ちた。
・
・
・
ガチャっ!ギィィ…バタン!
「…?」
昼休みももう半分ぐらいだろうか、俺は屋上の扉が開閉する音で半分ほど意識が覚醒してしまう。
(せっかく人が気持ちよく寝てたのに、安眠を妨害しやがって…)
内心悪態をつくが、それ以上気にしても仕方がないので、とりあえずもう一眠りしようとするが、
「…あれ?上杉さん…?」
…なんでこうもタイミングが悪いのか。この声、呼び方、見なくても分かった。四葉だ。
こんな時でなかったら、まぁ渋々構ってやるのだが…今は猛烈に眠たいし力も出ないので、四葉のことを無視して俺は再び夢の世界に旅立とうとする。
が、
「……寝てる?」
「………」
「上杉さーん、寝てるんですか〜?起きないとイタズラしちゃいますよ〜?」
本当にいたずらしてきたら許さないが、四葉のことだ、そこまで本気で言ってるわけではないのだろう。寝ている人間にいたずらするような奴じゃない……………はず。
四葉に構うのも起きるのも非常に面倒なので狸寝入りを決め込むことにする。
「……」
「…本当に寝てるようですね。」
帰ってくれるか?と思ったが、四葉の足音は遠ざかるどころかむしろ近づいて来ていて、それはつまり俺の方に来ているということを示していた。
しばらく足音が続き、そして止む。次に、少し上履きが擦れる音と、ペタンッと柔らかい音がする。
四葉が寝てる俺の隣まで来て座ったことが、目を閉じていても分かった。こいつは本当にいたずらするつもりで来たのだろうか、できることならやめて欲しい。いっそやられる前に阻止しようか。
…やめておこう、こっちから仕掛けても色々面倒になるだけだ。眠いし、力は出ないしで、正直動きたくなかった。
「…………」
(……?)
何もしてこない。いや、何もしないで欲しいんだが、俺の側まで来るということは何か目的があるわけで…何もしないというのも不自然な話だ。俺の隣に座ること自体が目的、なんてことはあるわけがないだろうし。
そう思っていた矢先に四葉が
「…少し、お邪魔しますね。」
と言う。次の瞬間、俺の胸に何かが置かれる感触がした。なんだ?と疑問に思い、薄目を開いて見ると、そこには四葉が俺の胸に顔を埋めている姿があった。
(?!、どういうつもりだ?!)
狸寝入りを決めこんだ手前、今更「起きてた」なんて言うのも気まずい。だが、だからといって四葉をこのまま放置しておけば俺が変な気を起こしてしまいそうだ。そのせいで一花とやってしまったという前例もある。そうなる前に何とかしなければならないのだが、何とかするといっても具体的にはどうしたらいいかわからない。もう普通に起きてたことを話すか?
…ここまで滅茶苦茶早い速度で自問自答を繰り返す。が、一向にこの状況を切り抜ける良い策が浮かばないでいた。
そして、どうやら時間切れになってしまったらしい。この状況をなんとかする前に、四葉はさらに俺に密着してきた。徐々に俺と四葉が触れ合う面積が増え、制服越しに伝わってくる心地よい人肌の温もりに溶かされそうになる。
ついに、四葉は全身を使って俺に抱きついてきた。身長差があるので、四葉の顔が俺の胸の位置にあっても二つの体は隙間なく密着する。
引き締まった体は非力な俺でも軽いと感じてしまうが、その柔らかい重みは何とも言えない心地よさがある。そして、五つ子の共通点である程よく平均以上に育った二つの柔らかな膨らみが、四葉の体重を使って押し付けられる感触と、ほんのりと甘い特有の良い香りは俺の忍耐力を削り取っていく。
もはや四葉のことしか感じることができない。目を閉じてる分、他の感覚が鋭敏になっているから尚更感じてしまう。
俺はどこで選択肢を間違えたのか答え合わせを始める。あそこで素直に起きてることを言えば良かったのか、そもそも屋上に来なければ、あるいはもっと前の一花の誘惑に耐えていれば。
そんなことを考えても仕方ないのだが、悩殺された俺はまともに思考できるはずもなく、少しでもブツが反応しないように別のことを考えてそのままじっと耐えてやり過ごすしかなかった。
だが、そんな俺の唯一残された行動でさえ嘲笑うかのように四葉は抱きつくのをやめない。
「…ここまでやっても起きないんですね。」
「…………っ」
これが四葉の言うイタズラなのだろうか。ここまでされてしまっては変な気を起こす前に起きている趣旨を伝える方が賢明な気がする。そもそもいたずらした四葉が悪い気もするが、ここは心の広い俺が「無視して悪かった」と素直に謝ればことは丸く収まるだろうか。
耐久しようと頑張ってはみたがどうやら時間切れくさい。はっきり言って気まずいが、やむを得ない。俺は四葉に謝ろうと上半身を起こして口を開ける。
「…おい四葉、俺は起きてるぞ。寝たふりをしたのは謝るからそろそろ離してくれないか。」
「………」
「おい。」
「……………」
「おい。…こいつ、もしかして寝た?」
「…ぐがーーーっスピーーー。」
「…お前起きてるだろ。」
「バレましたか。」
「当たり前だ…。」
というか騙す気がないだろ。いくら嘘が超絶下手な四葉でもグガーはないだろ、流石に。とんだ茶番をやらされたものだが、まあいい。とりあえず退いてもらおう。
「そろそろ退いてくれ。」
「…もう少しこのままがいいです。」
そう言って四葉は俺の背中に腕を回す。
「おい…なんでこんなことする。」
「なんででしょうね?」
「質問してるのは俺なんだが…。」
「当ててみて下さい。見事正解すればもっとハグしてあげますよ。」
「そこはどいてくれよ。」
なぜ俺はこんな茶番に付き合わされているのだろうか。力ずくで………無理か。俺の筋力の無さを忘れていた。まぁ、たとえ俺に筋力があったとしても力ずくではやらないだろう。そこまで拒絶するのは流石に気の毒だ。
正解ならそのまま、ということは間違えれば解放してくれるのだろうか。ぱっと思いつく限りありえなさそうな理由は…
「…お前俺のこと好きなの?」
「……ぶー、外れです。」
とりあえずありえなさそうな理由を答えてみたが、無事に間違えたようだ。当然だな、こいつが俺を好きになるわけがない。一度、四葉と俺が付き合ってるという噂が流れたこともあるが、その時に俺が言った「あり得ないだろ」という言葉に対してこいつも肯定していた。たかが抱擁だ、これはきっと…あれだ、最近流行のスキンシップか何かだ。勘違いするな、俺。
「外れたので罰としてこのままですね。」
「いやどっちにしろ解放されないのかよ。」
「…そんなに私とくっつくのは嫌ですか?」
「……いや、別に。」
なぜ肝心なところで本当のことを言ってしまうのか。嘘でもいいから嫌というべきだった。
「…なら、いいですよね。」
「もうすぐ昼休み終わるんだが。」
「知りません。」
「知ってくれ…。」
「せめて昼休みが終わるまではこのままで。」
「人が来たらどうする。」
「鍵をかけたので安心してください。」
「用意周到だなおい。」
俺の言葉を最後に、しばらく沈黙が続く。
…なんだこの甘酸っぱい空気は。
何かに気をそらしてないと四葉のいろいろ柔らかいところを意識してしまいそうになるので、俺は会話を続けることで気を紛らわそうと試みる。が…
「…それで、一体どういうつもりなんだ。四葉」
「…もう一度解答権をあげます。当ててみて下さい。」
「当ててみろって言われてもな。」
「…じゃあ、少しヒントをあげますね。」
「ヒント?」
四葉の顔が近づく。
「はむっ。」
「……」
「……ちゅっ。」
「………………………………………!?!?!?!」
理解するまでにタイムラグが生じる。
口を開けた次の瞬間、四葉は俺の顔に手を添え、顔を近づけて唇をはむっと食み始めた。
今回の正しい選択はどうやら口を開けずにそのままやり過ごす方だったようだ。それならばまだ舌が入るようなことにはならないし、まだマシな方だっただろう。一度侵入してしまえば本人の意思以外で外に出すことはもう不可能だ。
戸惑っている俺をよそに、四葉は夢中になって接吻を堪能する。
「んっ…ちゅ…ちゅる…はぁ…」
状況をやっと把握したと同時にキスは中断され、四葉の顔は離れていく。
「んっ…ぷはっ…。」
「ぁ………っ!ぉ………っ!」
四葉は涙目で俺を見つめる。それに対して俺は四葉の行動に驚きすぎて言葉を発しようとするも喉から上に出てこず、魚のように口をパクパクさせてしまうだけだった。一花とあれだけやったのだからそろそろ俺もいい加減慣れてもいいのはずなのに。
最近の女子高生は付き合ってもいない男に対してキスをするのが流行しているのだろうか。普通は恋人同士になってからやるものだという俺の中での常識と順序が逆転している。それとも俺がおかしいのか。
加えて、どうやら姉妹というのはキスが上手いという点も似るようだ。キスの技術がもはや初めてのそれではない。俺の知っている普段の四葉は天真爛漫なおかつ精神的にも少し幼さが残る奴だったはずで、今みたいにこんな性的魅力があるような奴では断じてない。まるで、いつもの四葉に魔性が付与されたような、流石に言い過ぎかもしれないがそんな感じさえする。
いや、そんなことはひとまず置いておこう。脳の情報処理が終わり、落ち着きを取り戻した俺はようやく言葉を発せるようになる。
「私の気持ち、理解してくれましたか…?」
「気持ちって……お、お前…俺のこと好きじゃないって………」
「そうですよ、上杉さんのことは好きなんかじゃありません。」
「じゃあなんで…」
「なんででしょうね。見事正解したらもう一回キスしてあげますよ。」
「またそれかよ…」
腕で拘束されてない今なら四葉のことをどかそうと思えばどかすことはできる。だが、なぜかは分からないが四葉を前に動けなくなってしまっていた。何か超常的な力で金縛りにあったかのように体が言うことを聞いてくれない。
「分かりましたか?」
「…分からん。まるで分からん。」
「…そうですか、なら罰ゲームですね。」
「は?んぐっ、」
「ちゅっ…んっ。…キスってこんなに良いものなんですね…。」
「…っ」
今度のキスは唇が触れ合うだけだった。
こんな中途半端なキスじゃ歯痒いだけで、もっとしっかりとしたやつをやりたいと思ってしまう。せっかく取り戻した僅かばかりの冷静さも一瞬で消え去り、そして消え去った冷静さの穴を埋めるかのように頭は情欲で満たされていく。
「……っ、好きじゃないなら何でこんなことするんだ。」
「少しでも上杉さんに意識して欲しいなって。」
「矛盾してないか…?」
「してません。好きじゃないからと言って意識して欲しくないわけじゃありませんよ。」
「…じゃあ意識してやるから解放してくれないか。」
「嫌です。」
「そろそろどいてくれないと色々困ったことになるんだが。」
「……」
「頼む…」
「…分かりました。ですが上杉さん、その前に一つ聞いても良いですか。」
「…なんだ。」
「…上杉さんは、一花と…男女の秘め事をしたんですよね…?」
「!」
いきなりの発言に少し驚くも、いずれ言われるだろうと覚悟をしていたことなので、そこまで取り乱すことはなかった。
「…あの時脱衣所にいたのはお前だったのか。」
「はい。会話を盗み聞きしてしまったことは謝ります。ですが、これだけは知りたいです。上杉さんは誰と付き合うのか、もう決めたんですか?」
「…いや、まだだ。それ以前に、あいつらの誰かと付き合うかどうかさえ怪しい…。」
「そうですか…。」
「なんでそんなこと聞く。」
「それは…私も、上杉さんの彼女になりたいからに決まってるじゃないですか。」
「……………えっ?」
俺の彼女になりたい??
どーゆーことだ…。好きじゃないのに付き合いたい、矛盾してないか。頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
「…嫌ですか?ただでさえ3人に告白されて困っているのに、私にまで告白されて。」
「………別に嫌ってことは無い。だが、非常に困る。」
「あはは、ですよね…。それを承知の上で言ってるんです、許してください。」
「また随分とたちの悪い…。」
「…上杉さんと一花のせいですからね?私が告白しようと思ったのは。」
「…………」
「あのやりとりを聞いている時、どうしようもなく辛かったです。だから、途中で一花と上杉さんがまた事に及ぼうとした時、つい逃げ出してしまいました。」
「…………」
「本当は、辛い気持ちを押し殺して、上杉さんと付き合える誰かを素直に祝福するべきなんだと思います。でも、あの時こう思ってしまったんです。なぜ、あそこに居るのは私じゃないんだろう、なぜ私は告白すらしてないのに諦めているのだろう、って。…やっぱり、この想いは消せませんでした…。」
「……」
まさか、四葉からも告白されるとは思ってもみなかった。いつの日だったか、四葉は俺の恋を応援するとか言っていたが、もしかしてその時からか、あるいはもっと前から隠していたのかもしれない…いずれにせよ、自分より姉妹を優先してしまうようなやつだ、押し留めていたことは確かなのだろう。
正直なところ、四葉に告白されること自体は滅茶苦茶嬉しい。嬉しくないわけがない。だが、これで泣かせてしまう人数がもう一人増えたと思うと、胃に穴が開きそうになる。
「なので上杉さん。」
「…なんだ。」
「私にも、一花にしたように…わたしにも同じことをしてくれませんか…?」
その一言がどんなに危険か、もうここ最近で痛いほど知った。現にドス黒い何かが俺の中から湧き上がってきていた。だが、惚れた弱みに付け込んで肉体関係になるなんてことはしたくなかった。
「…お前の気持ちは分かったが、それに関しては容認出来ないな。」
「なんでですか?」
「なんでって…どう考えても不純だろ。」
「一花とは良くて、私とは嫌と。」
「そうじゃなくてだな…それについては反省してる。それに、やらかしたから尚更これ以上は駄目なんだよ。」
「どうしても駄目ですか?私だって、上杉さんとそういうことしたいって思うんですよ…?」
「…っ、だとしてもだ。」
「むぅっ」
「そんな顔しても無駄だ。」
「………ここまで言ったのに駄目ですか。…なら仕方ないですね。」
四葉は顔を膨らませて不満げにしながら、ベストを脱いでワイシャツのボタンを外し始める。
……………は?なんで外してる?
「お、おい!何してんだ!」
四葉はそんな俺の問いかけを無視し、ボタンを外し続ける。
やめさせないといけないのに、頭でわかっていても体が中々動かない。もう少し意思通りに動いてくれないのか、この体は。
「…どうですか?」
「いやどうですかって…」
「す、スタイルには少し自信があります…」
「…っ」
先程まで俺に押し付けていた大きな双丘がワイシャツの開いた所から見えており、ブラもずらしたため薄いピンク色の突起も含めて全部が見えてしまっている。その行為を恥じらっているのか、それとも早く愛してほしくて発情しているのか、どちらとも取れるような顔をしていて、その表情と淫靡な果実にどうしても目が吸い寄せられてしまう。心臓はドクドクとうるさいぐらい脈打ち、全身の血液の温度が上昇するのを感じた。
こんなところで胸を露出するなんて正気か。そう四葉に言うべきなのだろうが、性行為をしたいと思っている俺もすでに正気というものはどこか置き去りにしてしまったらしい。
「ちょっとは、その気になりましたか……?」
顔を真っ赤にして、少し上目遣いで聞いてくる四葉に少しくらっとしてしまう。
四葉は更に追い討ちをかけるようにスカートを少しめくり、ショーツに手をかけてゆっくりと下におろす。脚を少し曲げ、ショーツを脱ぐ。そして、顔の前でそれを軽く広げて見せてくる。
「おい…ほんとによせ…。」
「私は…上杉さんといつ秘め事をしても良いように、あの日から大人な下着を着るようにしてたんですよ…?」
「!!」
徐々に視界が狭まっていき、ついには四葉以外何も見えなくなる。ドロドロで黒い何かが内側から溢れてきてしまい、踠いても、足掻いても、理性が沈んでいくような、そんな感じで俺の視線は四葉の胸部と下着に釘付けになる。
「これ以上は本当によせって…」
「本当に嫌なら拒んでください、上杉さん…。でも、もし嫌じゃなければ……私を抱いてくれませんか…?」
余程恥ずかしいのだろう、顔が真っ赤に染まっているが、それでも耐えて懇願してくる姿は俺の心臓を掴み取ってしまう。
「〜〜〜〜〜っ!嫌じゃないから厄介なんだよ……!」
「あっ…!」
寝不足と空腹で正常な判断ができなかったのだろう。直後、本能に支配されてしまい、自分でも何をしようとしているのか分からなかった。
気づいたら、四葉を抱き寄せ、膝立ちで口付けをしている自分が居た。
「んっ…ちゅる…ちゅっ…ちゅぱっ……はぁっ…」
舌を舌で愛撫し、四葉を蹂躙する。もっと強く吸うために、四葉の後頭部を手で寄せ、細い腰をもう一方の腕で抱き寄せる。
満たしても満たしてもまだ足りない、征服欲が後からとめどなく溢れてくる。お前は俺のものだと、そう示そうとさらに抱きしめる力を強め、それに応えるように四葉も俺を強く抱きしめ返す。
その後はただひたすら、お互いに甘い蜜を与え合え、求め合う。背筋がゾクゾクしてしまうその快感をずっと味わいたくて、一体何分もの間キスをしたのだろうか。
酸素が切れてしまったので、お互いの口が離れる。その際に、一筋の唾液の橋が、つぅっと走って途切れてなくなる。
濃厚なキスをして欲が満たされるどころか、もっと欲しくなってしまうが、
「あっ…」
「!」
いきなり四葉が力なく地面にへたりこむ。どうやら先程のキスで腰が抜けてしまったようだ。
「だ……大丈夫…か……」
「は、はい……少し、力が抜けただけで……大丈夫…です…。」
お互いにまだ息が整ってない状態で話そうとしたからか、うまく言葉を言えない。
「はぁ…はぁ…はっ…」
頭が酷くボーッとする。キスだけでこんなになるとは。今朝も一回ことに及んだはずだが、どうやら俺の性欲は全く満たされていなかったらしい。
俺も座り込み、必死で脳の回復を図っていると、先に回復したらしい四葉が俺のスラックスに手をかけ始める。既にスイッチが入ってしまっていたため、抵抗する気なんてなく、むしろこれからするであろう行為に期待までしてしまう。
四葉はカチャカチャとベルトを外し、ファスナーを開ける。痛いほどに勃起していた俺のものが狭い空間からようやく解放されると、四葉は舐めるでもなく、いきなりそれを咥え始めた。
「んっ…じゅぽっ…」
「〜〜〜〜っ!!」
声を出さないように必死に歯をくいしばるぐらいしか対抗手段がなかった。
ねっとりとして暖かい感覚が俺のものを包み込む。
四葉は顔を動かして陰茎を愛撫しながら、我慢できなかったのか自分の手で秘部を弄りはじめた。じゅぽじゅぽという音と、四葉の秘部から聞こえてくるクチャクチュという水音が合わさって聞こえてくる。
四葉の口だと俺のものは少し大きいのか、少し苦しそうにしながらも一生懸命になって気持ち良くしようとする。四葉が俺のを舐めながら自慰をする光景は破壊力があり、そのせいで射精まで秒読みだった。
「そろそろ出るから…口を離してくれ…!」
だが、聞こえたはずなのに、止めるどころか四葉の口淫は更に激しさを増す。
「〜〜〜〜っ!!」
我慢できるはずもなく、俺は四葉の口の中に精液を注いでしまった。射精中も四葉はずっと口淫を続け、射精が終わっても四葉はまだ吸い続け、尿道の中に残ってしまった精液までも絞り出す。
その過程がどれだけ気持ち良かっただろう、下手したら刺激的という面では本番行為を超えているかもしれない。
「んっ…もぐっ…ごくっ。」
「!!」
見てみると、四葉は一生懸命になって精液を咀嚼して飲み込もうとしていた。
「んっ…けほっ、けほっ…」
「おい、大丈夫か?」
どうやら飲み込むのは失敗してしまったらしい。
余韻に浸りたかったがそうも言っていられなかった。俺は慌ててポケットティッシュを2枚ほど取り出し、四葉の背中をさすりながらそれを渡す。ティッシュを受け取った四葉は口内の精液をそれに出す。
残った微量の精液が口元から伝っているその様で、射精した事で少し落ち着いていたブツがまた興奮しだす。
「…案外飲みきれないものですね…すみません。」
「いや、謝ることじゃないだろ…。」
「んー…やっぱり少し勿体無いです…。でも、飲み切れない程出したってことはそれだけ気持ちよかったってことですよね?」
「……まぁ。」
「なら、良かったです。」
「……っ。」
そう言って四葉は嬉しそうに微笑む。その笑顔はとても愛くるしくて、胸が締め付けられてしまう。
先程からただでさえ四葉のことを自分のものにしたくて堪らないのに、こんな笑顔であんな台詞を言われてしまっては、たがが外れてしまうというもの。四葉を心配することで取り戻したはずの少ない理性ですら、俺に間違えを犯させようと必死だった。
「お前がこんなエロい奴だとは思わなかったぞ…。いきなり咥え始めるし。」
「上杉さんが望むならもっとエッチな子になっても良いんですよ。」
「……」
「少しは私を抱く気になりましたか?」
「……本当にタチが悪いなお前は。」
こんな事までされてしまったら、もう最後まで抱く他ない。
俺は片腕で四葉のことを抱きしめ、もう片方の手を秘部にあてがう。
「う、上杉さん?!」
「してもいいんだよな?」
「そ、そうですけど、い、いきなり来るとは思ってなくて…」
「安心しろ、準備はちゃんとする。」
「準備って…」
「しなくていいのか?」
「……お願いします。」
秘部の入り口を触ると、そこは既に大洪水だった。ここまで濡れているなら準備も無しに挿れても大丈夫な気もするが、念には念を入れることにした。
愛液で濡らした中指を使って豆をゆっくりと撫でる。焦らすように、弱く、ゆっくりと。
「あっ…ん…うえっ…すぎ、さんっ……ンンッ…。」
「これぐらいがいいのか。」
「は…い、きもちぃ…で…す。」
今にも消え入りそうな声で言う。
抱きしめるだけでは物足りなかったので、四葉の腰に回していた腕を一周させ、そのまま双丘の片方に手をかける。それはずっしりと重く、それでいて指が埋もれそうなほど柔らかく、少しでも乱暴にすれば壊れてしまうような、そんな繊細さがあった。勝手が分からなかったため、とりあえずフェザータッチで優しく攻め立てる。それと同時に、四葉の秘部に2本目の指を挿入し、少し膣壁を押し上げる。指を動かさなくても、曲げているだけで体の痙攣によって自然と擦れてしまう。秘部と胸部の2点からくる快感に、四葉の声も甘さを増していく。
「あっ…んっ…」
「…お前、さっき自分で慰めてたよな。普段も一人でしてたりするのか?」
「あっ…そんなこと…んっ…なんで聞くんですかぁ……。」
「いや、お前でもそんなこと知ってるんだって思うと…な。」
「な…じゃないですよ…あっ…」
そこからしばらくの沈黙が訪れる。俺は四葉を気持ち良くするために指を動かし続け、四葉は送られてくる快楽をその小柄な体で一身に受け止め続けた。
「あっ…ダメです…きちゃいますっ…上杉さん…っ!
あっ、〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
しばらく行為を続けていると、突然、四葉は俺を痛いぐらいに抱きしめてきた。体を震わせながら、秘部は俺の指を飲み込もうとするように脈打ち締め付ける。どうやら無事に絶頂を迎えられたようだ。絶頂が過ぎると彼女はくたっと脱力して俺に体を預けてくる。
「はぁ…はぁ…」
四葉の顔の位置的に、荒い息遣いが俺の耳元を撫でる。その呼吸音はそれだけ四葉を淫れさせた証拠であり、謎の高揚感と愛おしさを感じてしまう。
「………四葉、休んでるとこ悪いが、そろそろこっちも限界だ…。」
「ふぇ…?」
俺は四葉の脇の下から腕を通し、抱きかかえるように持ち上げ、壁に寄りかからせる。
「掴まれ。」
四葉の腕を俺の首に回させ、片脚を手で持ち上げてから俺のブツを秘部に軽く当てる。挿れようと思ったが、四葉の体が少し震えて強張っていることに気づいた。
「…怖いか?」
「…少し怖いです。ですが、言い出したのは私なので、好きにして良いですよ…?」
心なしか声も少し震えている。流石の俺でも、怖がっているのに無理矢理ねじ込むような真似だけはしたくなかったので、とりあえず緊張を和らげるために、四葉の頭を撫でながら軽くキスをする。そのおかげか、四葉の少し強張っていた表情が恍惚とした表情に変わる。
「もう平気か…?」
「平気です…」
「…痛かったら言えよ、すぐ止める。」
「…!はい。」
我ながら最低な手法だと思う。俺が欲望を抑えられないせいで我慢の強要をしているのに、四葉を気遣うことで優しさとすり替えてしまっている。四葉も合意の上なのだが、本来ならここは俺が率先して止まるべきなのだろう。だが、四葉から誘ってきたこともあり、もう止まれなかった。何より止まるつもりもなかった。
そそり立ったものを少しずつ挿入していく。痛いからか、それとも快感からなのか分からないが、我慢しきれずに漏れ出る四葉の喘ぎは俺をさらに狂わせにかかってくる。しかし、そこは最後の良心がかろうじて挿入する力を必死に抑えていた。
「痛くないか、四葉。」
「はい…不思議なことに全く痛くないんですよね、処女なのに…。激しい運動で擦り切れてしまったのかもしれません…。」
「……なら一気に行くぞ。」
「いいですよ、来てください…!」
俺は腰に力を入れ、残り半分ほどだったそれを一気に入れる。棒全体が暖かいものに包まれる感覚はなんとも形容し難い気持ち良さで、思わず声を上げてしまういそうになる。そして、それは四葉も同じだったらしい。
「あっ…!奥まで…っ入ってます…!」
「わざわざ言わなくていいから……」
「……上杉さんと一つになれて…とっても幸せです。」
「だからやめろ。」
「大好きです、上杉さん。」
「さっきと言ってることが違うぞお前…」
「好きじゃなくて、大好きなんです…」
「どーゆー理屈だよ…!」
「好き、なんかじゃ足りないってことですよ…。」
「……お前少し黙れ。」
「あっ……!」
俺はさっきまでこんな小学生レベルのひっかけであんなに戸惑っていたのか、と内心呆れる。もっと言えばその台詞は少しくさすぎる。が、今のこの状況では十分俺に突き刺さってくるわけで…。
これ以上好き勝手言わせていると主導権を奪われてしまいそうなので、少し腰を動かして四葉を黙らせる。
「ず、ずるいです…!」
「うるせえ。」
「んっ…!」
キスで口を塞いで強引に黙らせる。それに対して四葉も対抗するように舌を甘噛みしてくる。
隙あらば言葉責めをしてくるのは本当にやめて欲しい。ただでさえいっぱいいっぱいなのに、これ以上余裕を奪われると何をしでかすか自分でも分かったもんじゃない。
実際、今すぐにでも四葉のことをめちゃくちゃにしてしまいたかったが、そこは気遣って少しずつ馴染ませるように腰を動かす。ゆっくりと、本当にゆっくりとだが、二人の呼吸が同調していく。
「あっ…上杉さん…は…気持ちいい…ですか…?」
「……まぁ。」
「よか…った、私も…いい…です。」
「……っ」
「んっ…上杉さんの…好きに…自由に動いて良いですよ…?」
「……少し激しくなるが、いいのか?」
「はい…上杉さんが気持ちよくなってくれれば…私も嬉しいので。」
「…っ!」
四葉も大分慣れた頃合いで少しピストンを早めてやると、中は絞るようびくつき、絡みついてくる。徐々に出し入れする速度が上がり、それに比例して四葉の声も甘さが増していく。
「んっ…これ、凄い…ですね、全身で…上杉さんを感じられます…」
正面から挿入しているので、必然的に密着度が高くなる。ほぼゼロ距離で喘ぎを聞かされ、なおかつ四葉は胸を露出しているため、胸板に二つの豊かな果実が押し付けられる感覚が先程よりも凄まじいせいでより一層興奮してしまう。
「…しっかり掴まってろ。」
「…?わっ…!」
快楽量がある一定に達し、射精感が押し寄せてくる。ここで俺は四葉の地面についている方の脚を持ち上げ、宙に浮かせる。四葉は少し怖がったものの、壁があったこともあり直ぐに慣れたようだ。
さっきの体勢のまま出しても良かったのだが、四葉のもっと深くに出したかったので、最奥に挿さるような体勢をとった。
「あっ、あっ、深っ……!〜〜〜〜〜っ!」
「ぐっ!」
この選択は正しかったようで、先ほどよりも深いところに達したことで根元まで余すことなく締め付けられる。奥に当たる感覚で射精感がより高まる。
「風太郎君……大好き…!」
「〜〜〜〜〜っ!!」
ゾクゾクっと背筋に何かが走る。
既に限界近くまで来ており、更には四葉の言葉を耳元で聞かされてしまっては我慢できるはずもなく、四葉の奥に容赦なく精液を送り込む。避妊してないことなど一切忘れ、射精している間も何度か腰を打ち付けて一滴残さず四葉に受け取ってもらおうと必死になる。
ようやく長かった射精が終わり、俺は脚をそっとおろすと、四葉は力尽きたのか俺にもたれかかる。正直こちらも相当体力を消耗していて、これ以上は立つことすら出来なかったので、四葉を抱きかかえたまま地面に寝っころがる。
頭は酸欠でぼーっとしているが、四葉の無垢な体を自分色に染め上げた事に対する、普段じゃ絶対に得られない類の満足感で心が満たされていた。
「はぁ、はぁ、…なぁ、四葉…。」
「はぁ、はぁ、はぁ、…な、なんですか…。」
「先に謝っとく…すまん。」
「えっ…?」
心は満たされても、ブツはまだ硬いままで。四葉の上に覆い被さり、精液でぐちょぐちょになったあそこに再び挿入する。
「だ、駄目…!まだっ…んっ…イッてるからぁ…!」
「知るか…。誘ってきたのはそっちだろ…!」
「そうだけどぉ…!んんっ…!」
駄目、とは言っていても、膣内は出て行って欲しくないのかきゅうっと締め付けている。
体位が違うとまた違った快感が襲ってくる。四葉をぎゅっと抱きしめながら、パンッパンッと小気味良い音とともに腰を打ち付ける。目線が合うと、お互いにキスをしたい意思を読み取ったのか、顔を近づけて再び唇を重ねる。
「ん…ちゅるっ…ちゅっ…ぷはっ…あっ…またきちゃう…!」
「…リボン取るぞ。」
衝動的にリボンをとる。何故かは分からないが、うさ耳リボンがない四葉を見たくなってしまった。あまりその姿は見たことがなかったため、新鮮な感じがする。
いつもと雰囲気が違い、さらには性に淫れたその姿を自分だけが独占していると思うと、急に愛おしさが増してしまい、ついつい頭を撫でてしまう。
「ふぁぁ…。」
「おまっ…耳元でそんな声出すなよ…。」
四葉の甘すぎる声に脳みそが溶かされそうになってしまった。
「だ、だってぇ…」
よほど頭を撫でられるのが良かったのか、四葉はもっとと言わんばかりに俺を強く抱きしめる。
相変わらずの密着度で、最初から二つの体は一つだけだったかのような錯覚に陥ってしまう。
それからは無言で四葉の体を貪った。途中で、駄目、きちゃう、という言葉が聞こえてきたが、止まることはなかった。そして、波のように押し寄せてくる射精感に耐えきれず、既に2回も、いや、今朝の分も含めると3回目にも拘らず、全く衰えない勢いで射精する。再び四葉の無垢な体に精液を刻みつけるように注ぎ、四葉はそれを一滴も溢さずに受け止める。
「はぁ、はぁ、はぁ、……もうこれ以上は…」
「はぁ、はぁ、…」
行為中は興奮していてあまり感じなかったが、蓄積した疲労感がどっと押し寄せてくる。それに耐えかねた俺は、四葉を抱きかかえたまま体をごろんっと半回転させ、四葉が上に来るように寝そべる。
「……すまん、このまま寝かせてくれ。」
「え、で、でも、まだ入ったままですよ…?」
「すまん、もう…力が出ない…。」
了承したのか、四葉は俺の手の上にそっと手を重ねる。
四葉を心地よい抱き枕の代わりにして、そのまま俺は寝てしまった。
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しばらく寝て、そのあと色々な液体やら汗やらを拭き、乱れた衣服を整え、現在は2人して壁にもたれかかって黄昏ていた。
昼休みどころか午後の授業も全て終わっていて、気づいたら放課後になっていたという。時間の流れが尋常じゃなく速い。
俺はともかく、ただでさえ成績の悪いこいつが授業をサボるなんて致命傷である。
「あーあ、午後の授業が…。」
「過ぎたことを悔やんでも仕方ないですよ。」
「誰のせいだと思ってやがる。俺はまだしも、お前はただでさえ赤点すれすれだってのに…」
「なら、遅れを取り戻すために二人っきりの勉強会をしてもいいんですよ?寧ろやりましょう!」
「何する気だお前。」
「その時になってからのお楽しみです。」
「………それはひとまず置いておこう……そろそろ離れてくれないか…」
先程から四葉が俺の腕に抱きついてきて離れない。それどころか頬ずりまでする始末である。
「ししし、いいじゃないですか、イチャイチャしましょうよ。」
「……ったく。」
四葉のいつもの無邪気な笑顔で毒気を抜かれてしまう。最近、こいつらの笑顔にめっぽう弱くなっている気がする。どうしたものか。
「…なぁ、四葉。」
「なんですか?」
「さっき俺のこと下の名前で呼んでたよな。」
「…………気に触りましたか?」
「いや、そんなんじゃなくてだな…なんか、懐かしいというかなんというか…」
「………」
「どっかで聞いたことあるような。」
「……上杉さんって本当に鈍ちんですね。」
「は?なぜそうなる。」
「そ、そんなことより上杉さんって、エッチも凄いんですね。ますます惚れ直しました。」
「嬉しくねぇ。というかお前は初めてだから比べようがないだろ。」
「とっても気持ち良かったので、またしたいです。」
「二度とすることは無いと思ってくれ。」
「…ちょっと誘惑しただけであんなに求めてきたのにですか?」
「うぐっ…」
あんなもの見せつけられて耐えられるやつなんてはたしてこの世にいるのか?…もうこんな言い訳してる時点で誘惑に耐えることは不可能と言ってるようなものなのだが…。未来の俺が成長していることを願うばかりだ。
「頼むから二度と誘惑なんてしないでくれ。」
「それは無理な相談ですね。私はもう我慢しないと決めたので。」
「そこは我慢してくれ。」
「なかなか酷いこと言いますね。大変なんですよ?大好きって気持ちを抑えつけるのって。」
「はぁ…、だとしてもだ、自分を安売りするような真似だけはしてほしくないんだよ。」
「……」
「なんか言ってくれ、こっちまで恥ずかしくなるだろ。」
「上杉さんが私の心配をしてくれていると思うとちょっと嬉しくて…」
「やっぱり言わなくていい。」
そろそろ頭が冷えてきた頃合いで、俺は五つ子の中の4人に告白されてしまったという驚愕の事実を思い出す。…多分、もう二度と来ないんじゃないかってぐらいのモテ期だ。ははっ、いっそコンプリート目指すか。……死ね俺。
「なんで俺なんかを好きになっちまうんだか…お前らどうかしてる。」
「…上杉さんって本当に自己評価低いですよね。」
「いや、これで高いなんてことは無いだろ。」
「そうですか?勉強出来ますし、高身長、髪を整えさえすればそこそこ顔もいいですし、何より私たちの世話を焼いてくれますし。」
「……」
「たしかに、たまに人としてどうかと思うほどデリカシーが無かったりとか、私たちの気持ちに全く気づかないほど鈍感だったりとか、運動能力が高校最弱級だったりと欠点なんていくつもありますけど。」
「泣いていい?」
「でも、上杉さんは、人の気持ちに寄り添えたり、人のために行動できたりする、そんな優しい人です。他にも欠点を上回るほどの長所が、上杉さんにはあるんですよ。もっと自信持ってください。」
「……そうか。」
「何より、私達が好きになったほどですから、ね?」
そう言って四葉は俺に笑いかけてくる。
俺なんかがこいつらの誰かと付き合うなんて、釣り合わないにもほどがある、いっそ全員振った方がいいんじゃないのか、と思うぐらいには自己評価は低かった。だが、四葉の言葉で少し救われた気がする。思っていたよりも、俺という人間は、少しはマシだったらしい。
「…ありがとな四葉。少し気が楽になった気がする。」
「ししし、お役に立てて何よりです。お礼に撫で撫でしてくれてもいいんですよ?」
「…へいへい。」
「えへへ…なんだか安心します。」
「…そろそろ帰るか。あいつらが心配するぞ。」
「そうですね。」
「……帰るから、そろそろ離してくれない?」
「…このまま帰りましょう!」
「え、ちょっ!」
力で四葉に勝てるわけもなく、走る四葉にずるずると引きずられ、俺は強制的に四葉と腕を組んだまま下校することになった。
それが原因か不明だが、四葉と俺が付き合っているという噂がクラスにいる女子の間で再燃してしまったことはまた別のお話。