"真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢だ"
とある有名なフランスの作家が言った言葉を思い出す。昔の俺ならばこの言葉の意味がさっぱり分からなかっただろう。なぜなら家族以外はどうでもいいと考えるほどに他人に無関心だったからだ。
でも今なら少しは理解できる。高校生活の後半にして、俺は友人という関係を得ることができた。多分それは、冒頭に述べた真の贅沢に違いない。
ここで疑問なのたが、なぜ人間関係とは贅沢なのか?その答えは、簡単な話、人は孤独には勝てないよう設計されている。だからこそ、こんなにも人と触れ合うことに快楽を覚え、求めてしまうのだろうか。
だが、ここ最近の出来事を考えるとその設計は非常に邪魔でしかない。その快楽に狂わされ、求めてしまうせで理性を働かせるべきところで機能せず、本能を発揮すべきでないところで暴走させてしまった。
それは今回も例外じゃなかった。
☆
「大丈夫?お兄ちゃん。」
「あ、ああ、大丈夫だ、そこまで心配しなくていい。」
一花と四葉との一件の後、俺は何故かは分からないが、あれだけ一睡もできなかった状況が今日は少しだけ眠れるようになっていた。初めは性行為という衝撃的なものに対して慣れてなかったのであろう、思い出して悶々としてしまうことは仕方がない。だが、三回経験すると流石に夜も眠れなくなるほど、なんてことにはならなくなるらしい。(理由があれだが…そこは目を瞑る。)
とはいえ、眠りが浅いことには変わらない。睡眠不足というのは蓄積していくもので、例えば七時間の睡眠が必要な人が一日六時間しか寝てないとしよう、これを二週間続けると二日間徹夜した状態とほぼ同じらしい。例に挙げた一時間の差ならまだしも、俺は何時間も不足しているわけで…。ここでガタが来てしまったのか学校に行こうと立ち上がった瞬間、ふらっとして思わず膝をついてしまった。
慣れない運動、蓄積していく睡眠不足、壊滅的な食事量。体が悲鳴を上げてもなんら不思議ではない。
「おいおい風太郎、お前貧血気味なのか?」
「そうかもしれない…まぁ、少し立ちくらみがしただけだ、何も問題はない。」
「俺の牛乳飲むか?」
「嫌がらせか?」
親父がいつも飲む消費期限切れの牛乳のせいで腹痛のまま模試を受ける羽目になったあの日から、飲料物を飲むときには必ず日付を確認するようになったほどにはトラウマになっていた。
何故親父は平気で、俺は駄目なのか。成績にしろ、身体つきにしろ、胃袋の毒耐性にしろ……本当に親子か疑ってしまう程に正反対だ。
「とにかく、そんな大したことじゃないから。俺の貧弱さはよく知ってるだろ。」
「四葉ちゃんに力負けしたほどだもんな。」
「何故知ってる。」
今に始まったことではないが何故か親父には隠し事がすぐにバレる。
……待てよ、俺がこっそり買って読んでるあの本もバレたりしないだろうな。もし仮にバレてみろ、
『ガハハハ、風太郎もようやく色恋に興味を持ち始めたか!いやぁ、一安心一安心!』
『お兄ちゃん、相手は誰!?中野さんの誰かだよね?!』
………あまりにも地獄、想像するだけで吐き気がしてくる。しかもだ、他にも俺は爆弾を抱えてるわけで…。これ以上は精神衛生上良くないので、ここで俺は思考を停止する。
「ちっ、朝の勉強時間を5分無駄にしたぜ…そろそろ学校に行ってくる。」
夏休みまでそれほど日はないが、だからと言って休んでいる場合ではない。今年からは俺も受験生、一日の遅れは未来永劫取り戻せない、そんな意識でやっていかなければならない時期。なにより、こんなことで休んでたら家庭教師としてあいつらに示しがつかない。
そう思い、俺は学校に向かおうともう一度立ち上がったが…
「……あら?」
またふらっとしてしまい、今度は尻餅をついてしまう。いくら線が細いといっても大柄な男はそれなりに重量があるらしく、ボロい部屋が衝撃によって揺れる。
「わっ!お、お兄ちゃん本当に大丈夫?!」
俺が倒れてしまったことに驚きながらも、らいははよほど心配だったのか慌てて俺に駆け寄ってくる。
「……風太郎、お前今日は休め。」
「はぁ?いや、だから大丈夫だってーー」
「休め。」
「!」
親父は少し声のトーンを低くして、真面目な顔で言う。普段はあまり見せないその厳格な雰囲気に思わず閉口してしまう。
「はぁ…あのなぁ、そんな状態なのに無理しても仕方ないだろ、大人しく寝てろ。」
「そうだよお兄ちゃん、今日ぐらいは休も?」
実際、歩くことすら辛く感じるぐらいにはガタが来ていたのは事実な上に、親父にここまで言われては学校を休む他ない。それに、家でも勉強自体は出来るので、ここは大人しく従うことにした。
「…あーはいはい、分かったよ休めばいいんだろ。」
だが、俺のそんな考えさえ見破っていたかのように親父は無慈悲に言い放つ。
「あと今日一日勉強禁止な。もし破ったら一週間禁止に延長する。」
「えっ」
「つってもお前破りそうだよな…。そうだな、お前の勉強道具は俺の職場に持ってくことにするか。じゃ、俺は先に家出るからな。らいは、学校遅刻しないようにな。風太郎、看病してやれなくてすまん、だが寝ろ。」
「はーい。」
「お、おい、親父!頼むから一冊ぐらいは置いて行ってくれ!」
「あーー聞こえなーーい。」
「子供か!」
このまま親父を逃してしまったら無駄な一日を過ごしてしまう。俺は最後の力を振り絞って親父を捕まえるべく飛びかかる。が、抵抗虚しくヒョイッと躱され、そのままダッシュで俺のリュックを担いで仕事へと行ってしまった。進めている途中の教材や参考書、問題集は全てリュックの中にしまっていたため、現在家の中にはまだ覚え切っていない物なんて一切ない。残された道は脳内参考書で勉強するぐらいか。無理だけど。
「お父さんいってらっしゃーい。というわけで、お兄ちゃんは今日はお休みということで。あ、お布団敷いてあげるね。」
「くそ…親父の奴め…。俺と食べてる量はそんなに変わらないのに、何故あんなに筋肉があってなおかつ俊敏に動けるんだ…。」
片手で俺を軽々と持ち上げるその筋肉、何故俺にはその片鱗すら無いのか、甚だ疑問だ。
「そんなの今に始まったことじゃないでしょ?ほら、病人は大人しく寝る!」
「…はぁ。分かったよ。悪いな、手間かけさせちまって。」
「これぐらいはね。いつも風邪ひいたときはお兄ちゃんが看病してくれてるし。お互い様だよ。」
親父が仕事でいつも居ないので、らいはが体調を崩したときは必然的に俺が面倒を見る。いつもは家事やらなんやらで苦労かけてるから、風邪をひいた時ぐらいはって事で兄貴らしくいつもは看病していたが、まさかここでお礼のお礼をされるとは思わなかった。
「あ、お昼ご飯はどうする?今から何か作り置きしてあげよっか?」
「いや別に食欲ないから作らなくて良いぞ何も問題はないははははは。」
「なんでそんな早口なの?」
俺の不徳のなす所、それなのに甘えるわけにはいかない。ただでさえ借金を返済しきれてないのに、食費で家計を圧迫するなんてことになれば罪悪感で死にそうになってしまう。たかが数百円、されど数百円。
きっと、親父やらいはは俺が大事だからという理由でそんなことは気にしないのだろうが、そんな優しい家族だからこそこれ以上迷惑はかけたくなかった。それに、俺は空腹とはお友達なので、我慢できないほどでもない。今日はたまたま疲れが溜まっているだけだ。
「別に何も出来ないってほど重症じゃないから、昼は自分でどうにかする。それより早く学校に行ってこい、遅刻するぞ。」
「そう?何かあったら電話してね。あとしっかり寝るんだよ?じゃ、行ってきまーす。」
「おう、車に気をつけろよ。」
平日に行ってらっしゃい、なんて言ったのはいつぶりだろうか。言い慣れない言葉に少しむずっとする、なんてことを考えながら俺は大人しく布団へと潜り込む。
布団の中で学校に連絡して休む趣旨を伝えた後、俺は目を閉じる。家には暇を潰せる様な物なんて一切ないので、とりあえず寝る他ない。よほど疲れが溜まっているのか、意外にもすんなりと意識が薄れていき、俺は夢の世界に旅立った。
・
・
・
ピンポーン
「………………んあっ?」
インターホンの音で目がさめる。平日の午前中、誰も居ないような時間帯に訪れるなんて一体どこのどいつだろう。基本的に家に訪問してくるのは借金取りぐらいなのだが、別の人間であることを祈る。
まぁ、無視すればそんなこと関係ないのだが。体調も優れないし、面倒臭いし、眠いし…。言い訳三種の神器を発動させ、無視を決め込むことにする。
が…
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
「………」
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
「………っ」
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンp
「うるせんだよこの野郎!!こっちは病人だぞ!?」
余りにもうるさ過ぎたため、無視出来なかった。人が寝てる時にピンポンラッシュしてくるのは何処のどいつだ、文句言ってやる。
寝て回復したのか、だるさはまだ完璧には抜けてないものの壁伝いなら歩けるぐらいまでにはなっていたので、俺はそう意気込んで玄関まで行く。
ガチャリとドアを開ける。
「こっちは寝てるんですよ静かにしてもらえませ……ん……か……」
予想外の人物がそこには居た。特筆すべきは左右の髪飾り、綺麗に揃えられた前髪、そう、彼女である。
「あら、案外元気そうじゃない。」
「………なんでお前がここに居るんだよ。二乃。」
「学校のHRであんたが休みだって聞いたから、家に行って看病してあげようと思って。」
「お前に家の場所教えたことあったか?」
「林間学校の時迎えに来てあげたじゃない。」
「なるほどあの時か…」
つまりこいつは学校の授業をサボってまで俺の看病をしに来てると。なるほど許さん。
「今すぐ学校戻ーー」
俺がそう言った次の瞬間、暴走機関車二乃が俺の胸めがけて飛び込み、そのまま抱きついてくる。
「てい。」
「ゴフッ!」
「♪」
「………いてーなおい、いきなり抱きつくな、離せ。あと学校に戻れ。」
「お断りよ。」
「それはどっちに対してだ。」
「どっちも。」
「どっちもじゃねえ、せめて学校には戻れ。留年したいのかお前は?」
「学校に戻ったらフー君に抱きつけないじゃない。」
「優先順位がおかしいぞ。」
「細かいことはいいじゃない。」
「細かくねぇ。」
「こっちはフー君が心配で来たのよ?」
「…………」
心配してきた。その言葉を言われて嬉しくない者などいるのか。いつもながら、二乃は俺を困らせるのには最適な制球具合の直球を投げ込んでくる。
「…はぁ……、その気持ちは有難いが、本来成績を上げる役目の俺が理由でお前の成績下げるわけにはいかないだろ。」
「その点に関してはフー君の家庭教師の腕前に任せるわ。頼りにしてるわよ?」
そしてその心配が原因で巡り巡って俺の元へと厄介ごとがやってくるんだから嫌なんだよ。ただでさえ四葉の遅れをこれから取り戻さないといけない時に、こいつまで遅れてしまっては非常に骨が折れる。
こいつの頑固さを嫌という程知っているため、これ以上説得を続けても無駄だという結論に至り、説得を早々に諦める。というかいい加減離れろ。でないと色々と大変なことになってしまう。
「そういえば、もうお昼は食べた?」
「……いや。」
「そう、良かった。」
そう言って二乃は、くる途中でわざわざ買ってきたであろう、色々な食材が入ったスーパーのレジ袋を目の前に掲げてくる。どうやら料理を振舞ってくれるようだ。
ここまで尽くしてくれるのに、追い返すのは流石に申し訳ないので、ここは素直に好意を受け取った方が良いのだろう。二度目のため息をつきながら俺は言う。
「はぁ…、入れ。」
「お邪魔しまーす♪」
何故看病する側が嬉しそうにしているのだろうか。まぁ、理由は明白だが…、自惚れても良いことなどないので、その理由だけは搔き消しておく。
消したはずなのだが、玄関から部屋に戻る際に、少しだけ微笑んでしまっていたことにこの時の俺は気づいていなかった。
・
・
・
「へぇ、ここがフー君の部屋ねぇ。」
「俺だけの部屋じゃないけどな。想像以上にボロくてガッカリしたか?」
「そんなことないわよ。私たちのアパートも似たようなものだし。」
確かに似たようなものだ。だが、こいつらの場合、あの広さで5人も住んでいるのだから、俺の家よりも一人当たりの領域が狭い。そう考えると、今更ながら少し気の毒に感じてしまう。まぁ、本人達から言わせれば住めば都、そんな苦労も楽しさのうちだったりして。
「もうそろそろお昼だから、私はお昼ご飯作るわね。台所借りるわよ。」
「何か手伝うことあるか。」
「体調が悪いんだからフー君は寝てて頂戴。」
「なんか、すまんな…」
「私が好きでやってるんだからいいのよ。あと、そういう時は謝るんじゃなくてお礼を言ってほしいわね。」
「…ありがとな、二乃。」
「どういたしまして♪できあがったら起こすわね。」
「ああ。」
柔らかい笑みを浮かべながら、そう言って二乃は台所へと向かって行った。
よくよく考えてみたら、馬鹿舌な自分でも不味いと思ってしまうぐらいのアップルパイを作る腕前の俺が出る幕はない。雑用もだが、多分二乃の方が手際が良いだろう。体調も悪いしで、足を引っ張るのは明確。なので、お言葉に甘えて俺は大人しく寝ることにする。と言っても目が覚めてしまったので、瞑想に近い感じだが。
・
・
・
「モグモグ」
「……どう?」
「ングッ…うん、すげー美味い。」
「そう、良かった。」
ただ今昼飯中…。馬鹿舌なので食レポみたいに解説などは出来ないが、比べるのは申し訳ない気もするが少なくとも三玖のおはぎ似のコロッケよりかは美味しい。当たり前だが。
家にわざわざ来てこんな美味い飯を作ってくれるなんて、よくよく考えたら俺は相当な幸せ者で。一口一口を感謝しながら味わって食べよう。
そう思いながら食事を進めていると、対面に座っていた二乃が突然俺の隣にやって来た。
「はい、フー君、あーん。」
「そこまでしなくていいから…」
「私がしたいのよ。いいでしょ、これぐらい。」
「……こっぱずかしいんだよ」
「裸を見せ合った仲じゃない、今更あーんぐらいで恥ずかしがらないでよ。」
「………………」
お互いに裸を見せ合ってしまった仲でも恥ずかしいものは恥ずかしい。
まぁ…でも、二乃が来てくれなかったら俺は飯にありつけなかったのも事実で…二乃がやりたいと言っているのだし、それぐらいの要望を叶えてやってもバチは当たらないんじゃないか。
そう考えをまとめたところで意を決してあーんを敢行する。
「……パクっ。モグモグ、」
「わぁ…本当に食べてくれた…ちょっと感動…。」
「ングッ、俺は動物かよ。」
「それに近いかもしれないわね。動物園の餌やりイベントみたいな。はい、あーん。」
「まだやんのかよ…。パクっ。」
「ふふっ。」
なんだろう、スゲー恥ずかしいのに、こいつの楽しそうな笑顔を見ると悪い気がしない。
「ご馳走様でした。」
「お粗末様でした。」
そうこうしているうちに昼食が終り、食後のお茶を飲んでホッと一息つく。
「……なぁ、心配して来てくれたのはすごく感謝してる。だが、午後の授業だけでも戻る気は無いのか。」
「無いわね。」
「ですよねぇ…。」
「せっかくフー君とお家デート出来るのに学校なんて行ってる場合じゃないわ。」
「デートだったのかよ。」
初耳だな、看病しに来たんじゃないのかよ。
隣に居た二乃はそう言って俺の肩に頭を乗せてくる。
「これぐらいはいいわよね…?」
「…………」
「…と見せかけて、えいっ!」
「うおっ!?」
少し寄りかかるぐらいならいいかと油断したが、それを狙っていたと言わんばかりに二乃は機敏な動きで正面から抱きついてくる。
今に始まった事ではないが、先程から理性がガリガリと削り取られている……気がする。
「好きよ。」
「今日はやけに積極的だな…」
「当たり前じゃない、こんな機会滅多に無いもの。活かさない手は無いわ。」
「やめろって言ったらやめてくれるか。」
「無理ね。」
「だろうな。一応言っておくけど体調不良だからお手柔らかに頼む。」
「そうね、死なない程度に色々やるわね。」
「それもうアウトだな。」
さっきから二乃の二つの凶器が当たっていて心臓に悪い。とりあえず引き剝がさないと色々とまずい。
「そろそろ新しい刺激がないと、マンネリ化しちゃうじゃない?」
「何がマンネリ化だよ…」
「だって、私が好きってアピールしても全然なびかないじゃない。」
「……別に意識してないってわけでもないぞ。」
「あら、それで付き合えないってことはまだまだ足りないってことね。」
「ポジティブか?」
「大好きよ、フー君。」
「頼む、もうお腹いっぱいだ…。」
そう言って二乃は俺を抱きしめる力を更に強める。一体これはどんな罰ゲームなのだろうか…抱きしめられながら愛の言葉を言われるなんて、俺は乙女じゃないんだぞ。
そして更に問題なのが今の体勢、俺が長座して、その上に二乃が乗っている。絵面的にもアウトだが、俺のブツが反応してしまったらそれこそ死だ。
だが、あれだけのことを経験してきたんだ、今更抱擁ごときで反応してたまるか。そう思い、意識しないよう心を無にしようと試みる。
「あら、お腹いっぱいになってこっちも元気になっちゃったみたいね。」
「…………………」
結論から言うと無理だった。考えないようにと意識するほどここ数日のことがフラッシュバックしてくる。
しかもだ、俺のモノの存在に気づいた二乃が調子にのって腰を動かし始めた。
「おい、俺の上でそんな変な動きするな。」
「少しはその気になったかしら。」
「どの気だよ。」
「もちろんそういうことに決まってるじゃない。言わせないでよ、恥ずかしいわ。」
「恥ずかしいならとっととどけ。」
「……ねぇフー君。」
「………」
「私たち二人っきりよ」
「だからどうした」
「ちょっとぐらいイケない事したって平気だとは思わない?」
「後の事を考えやがれ。」
「何よ、私とするのは嫌わけ?」
「そうじゃないけど、俺たち付き合ってもないんだぞ。」
「意気地なし、キスするわよ。」
「やめろ。」
どんどん顔が近くなる。もうキスまであと数センチといったところか。
本当に唇がくっつきそうになったため、俺は首を少しだけ後ろに逸らす。
「避けないでよ。」
「そういうわけにいくか。」
「分かってないようだから言うわね。今日ここに来た理由は、確かにフー君が心配だったていうのもあるけど、一番はあんたに分からせるためよ。」
「…………何をだよ。」
「私がどれだけフー君を好きかってことよ」
「もう十分知ってる。」
「体で分からせないと。」
「動物か俺は。」
「……そんなに私とするのは…嫌…?」
いつも思うのだがその質問は本当に狡い。嫌じゃないから拒めない、そのこと自体が問題だと言うのに、あっさり許されてしまうせいで理性が働かない。
「なによ、四葉とはしたくせに。」
「…………は?」
今とんでもない発言が聞こえてきた気がする。
「エッチしたのよね。」
「まて、な、何の話だ。全く心当たりが無いな。」
「もう少し動揺を隠しなさいよ…」
唐突すぎて少し動揺を隠せず、軽く噛んでしまう。直接見ていたならまだしも、誰にも見られていないはずなのに。二乃がそのことを知る要素はどこにも無い………はず。
「じゃあ聞くけど、昨日は昼休みからずっと居なかったけど、四葉と何をしていたのかしら?」
「えっとだな…ふ、二人でサボってました。」
「どこで?なんで?」
「お、屋上で、寝不足だったから昼寝をしようと…。」
一応、嘘はついていない。重要な部分は隠しているが嘘ではない。
「ふーん。四葉も寝てたわけね?」
「あ、ああ、授業に戻れって言ったのにあいつ聞かなくてな…。」
「……ところでフー君。昨日、四葉を問い詰めて分かったこと聞きたかったりする?」
「遠慮しておく。」
「そう、なら話すわね。」
四葉が上手く嘘をつけないやつだという時点でもう死刑宣告されているようなものだ。それに、四葉の発言と俺の発言、多分だが食い違いが発生しているのだろう。二乃はそこをついてくると予想できる。
「フー君と一緒にいたの?って聞いたらなんて答えたと思う?」
「……」
「正解は"い、いい、一緒には、い、居なかった…かな?"よ。」
「…それって忠実に再現してたりするのか?」
「そうよ。」
妙に四葉のモノマネが上手い。さすが五つ子。二乃の一言で、四葉がどれだけ動揺してたか一目瞭然だ。
つまりは四葉が嘘をついていることも明白で…。
「……それだけで決めつけるのは早計じゃないか。」
「そうかしら。まず、寝てただけなのに、なんでわざわざ隠す必要があるのかしらね。それに、後ろめたいにしても、あそこまで動揺する内容じゃない気がするけど。」
「………」
「授業をサボった点も怪しいわ。いくら眠くても、あんたならそんなこと許すはずないのに、なんで四葉と二人揃って午後の授業をまるまる休んだりしたのかしらね。まぁ、よっぽどのことがあったに違いないってことはすぐに分かるわよ。」
「………」
「あと、妙に顔が赤かったのよね、あの子。まぁ、決定的な証拠にはならないでしょうけど。で、何か弁明はある?」
「え、冤罪だ…。」
「素直に認めたら?ちなみに、四葉の尋問、さらに続きがあってね」
ドSかこいつは。後から後からネタをぶちこみやがって。俺のことを追い詰めて楽しんでるんじゃないだろうな。
既に死に体だったが、完璧に絶命させるべく二乃のトドメの一撃が俺を襲う。
「"エッチしたのね"ってカマをかけたら、顔を真っ赤にして沈黙しちゃったわ。」
「なんでそのかまをかけようと思ったんだよ…」
「女の勘ってやつ?」
「妹をいじめてやるなよ……。」
「顔を真っ赤にして恥ずかしがるあの子、姉妹の私でもちょっと可愛いって思ったわね。」
流石女王。
「で、しちゃったんでしょ?」
「………………」
ここまで言われると閉口する他なかった。否定しない時点でもう認めているも同然だが、それでも諦めの悪い俺は黙り続ける。
「ねぇ、フー君は私の気持ちを知ってるはずなのに、私の妹に手を出したなんて、酷いと思わない?」
「……猛省します。」
「謝罪の一つもないのかしら。」
「本当に申し訳ない……。」
「口だけの謝罪は要らないわ。行動で示して頂戴。」
「……何すれば良いんだよ。」
「それを考えるのがあんたの仕事でしょ。」
「そうは言っても何をすれば良いのかさっぱり分からん…二乃にだけ成績を上げるための特製プリントでも作れば良いのか。」
「嬉しいようで嬉しくないわねそれ…。」
「じゃあどうしろってんだ。」
「だから、私ともエッチしなさいよ。」
「………」
「あの子とは付き合ってるの?」
「それは違う。」
「そう、なら私にもまだチャンスはあるわね。」
「………」
そう来たか…。だが、どうしてもそれは出来ない。これ以上心労を増やしたくない。
と思っていたのだが、こいつが今どれくらい勇気を振り絞っているかが分かってしまった。
口では押せ押せでも、体が若干震えていて、抱きしめる力が強かったのは、緊張のため。迫ることで嫌われるリスクを恐れてか、はたまた俺に拒絶されるのが怖いのか、上手くいったとしてその後の本番行為という未知の体験に対する不安か。いずれにせよ、こいつは必死なのだ、好きになって欲しくて、その為ならどんな危険や恐怖にも打ち勝ってやろうと。
それを知って、それでも非情になって突き放してやるほど、俺は出来た人間ではなかった。
「……分かった。」
「…!、んん?!」
出来た人間ではなかったから、二乃の唇を奪ってしまった。
5秒ぐらいだろうか、あんまり長くやるのもどうかと思うので、ひとまず離れるが、二乃はまだ離れたくないのか少し切なそうな表情を浮かべる。
「…キス…した…のね。」
「…これで満足か?」
「うん…嬉しい……!」
よほどキス出来たのが嬉しかったのか、二乃は幸せそうに笑う。
こいつの心底嬉しそうな笑顔に少しくるものがあって、キスして良かったなんて思ってしまう自分はもう取り返しのつかないところまで来てしまっていた。
「もっと…しよ…?」
二乃を片腕で抱きしめ、目元から少しだけ伝っている涙を、親指で軽く拭いながら再び唇を重ねる。ゆっくり、ゆっくりと舌を入れてやると、一花や四葉とは対照的に拙い舌技で応えてくる。キスの技術はこの際気にしない。一生懸命応えようとするその姿勢になんだか可愛らしさを感じてしまう。
「ちゅ……ん……はぁ…」
一通りの唾液交換が終わったので唇を離すと、二乃は少し半開きの口をそのままに浅い呼吸を繰り返していて、その恍惚とした顔が妙に色っぽい。何か見てはいけないものを見てしまっている気がするも、背徳感で目を逸らすどころかむしろ吸い寄せられてしまい、お互い見つめあってしまう。
「ねぇ…」
「………」
「もう……しましょ…?」
「……?」
「エッチ…しない…?」
「……っ」
とろんと蕩けた顔でそう言ってくる二乃があまりにも愛おしくて、三度目のキスをする。さきほどよりも少し強引にするが、二乃はそれに対して嫌がるでもなく、寧ろなされるがままに快楽を享受する。少し息が苦しくなって離れるが、蹂躙して欲しくて堪らないのか間髪いれず唇を塞いでくる。
「ちゅ…ちゅるっ…んっ…はっ……」
キスに集中させながらも、その隙にスカートのホックを外す。
夢中で俺の口を吸っていた二乃は、キスが終わってからようやく自分が脱がされたことに気づいたらしく、顔を真っ赤にする。
そんな二乃の心情は無視して二乃のショーツを見る。見たらなんと、前に穴が開いている、相当布の面積が少ないやつで。
「お前…なんてもの身につけてやがる。本当に初めからそのつもりだったのかよ。」
「そ、そうよ…さっきから言ってるじゃない…。」
「………俺が今日休みじゃなかったら、学校でやろうとしたってことか…?」
「………」
無言は肯定。今日が体調不良だったのは不幸中の幸いか。学校でやってしまったら最悪ばれて退学まである。
「にしてもよくこんなの着ける気になったよな…」
「そんなジロジロ見ないでよ…!というか、もう入れても大丈夫なの…?」
「……まだ準備してないだろ。」
「準備って…?」
「……前戯。」
ショーツを脱がさないまま、その穴から俺は指を入れる。緊張のためかまだまだ濡れ具合が足りないので、これでは上手く挿入は出来ないだろう。
「んっ…!待って…!」
「じっとしてろ。」
このまま指でやっても傷つける恐れがあったので口でやることにする。二乃を俺の脚の上から下ろし、側にあった布団に寝かせ、ショーツを脱がして脚を掴んで少し広げる。
「ねぇ、これすっごい恥ずかしいんだけど…」
「裸を見せ合った仲だろ。」
「そうだけど、そうじゃなくて…!今から何するのよ…。」
「口で愛撫。」
「なっ…?!」
「ごちゃごちゃ言うな。リードしてやるから黙って力抜け。」
「…!」
顔を真っ赤にして反抗的な態度を取ってくるが、そんな目で見られても嗜虐心が掻き立てられるだけだから不思議だ。
根が性悪なのか、もっと困らせてやろうと指ではなく顔を二乃の秘部に近づける。
「ひゃっ!?」
想像以上に生々しい匂いがするし、舐めてみると味もお世辞にも良いとは言えない。が、普段から漂うあの女の子特有の良い香りからは全く想像できないその匂いに、そのギャップに一層興奮してしまうため不思議と嫌ではない。
慣れない感覚に驚いたのか二乃は体をびくっと震わせ、手で俺の頭をグイッと押してくる。
「おい。」
「で、でもぉ…」
「でもじゃねぇ。ちゃんと気持ちよくしてやるから。」
「〜〜〜〜〜っ。」
「………………」
「…………………ん。」
しばらくの悶絶の後、悩み始めたと思ったら二乃は顔を真っ赤にしながら何か言いたそうにしているが、溜飲を下げてそっぽを向き、力を抜いて股を開く。照れてしおらしくしている二乃に少し胸がキュンとしてしまうが、俺はすぐさま二乃の脚をお腹あたりで折りたたむように持ち、再び割れ目に顔を埋める。
「ん……」
舌なら指と違って傷つけてしまう心配はあまり無いので、そこは容赦なく豆の部分を舌で刺激し、指で膣を押し上げる。
「あっ…ダメ…ほんとに…おかしくなっちゃう…」
制服の裾を少し噛んで声を我慢しようとするも完全に抑えることは出来ず、二乃の気持ち良さそうな甘い喘ぎがしばらく響き渡る。同じ場所を一定に刺激を与え続けると、奥から愛液がとめどなく溢れてくる。それを余すことなく舐めとっていき、そして刺激がある一定に達した時、二乃は絶頂を迎えた。
「あっ、ん、〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
びくっと体が痙攣し始め、少しの間小刻みにふるえ続けたと思ったら、くたっと脱力して浅い呼吸を繰り返す。
「……イったか?」
「……いちいち聞かないでよ。」
どうやらお気に召したようだ。
「なんでこんなに上手いのよ…。」
「お前がただ感じやすいだけだろ。」
「…なによ、私は初めてなんだから仕方ないじゃない。」
「それなのに俺を誘惑しようなんていい度胸だな。」
「タラシ。」
「否定出来ないから言わないでくれ…。」
四人に告白されてるから、あながち間違いじゃないことがなんとも悲しい。
「ねぇ…ここまでやったんだから…ちゃんと最後までしてよね…?」
「……………」
そう言って二乃は腕を伸ばして、「来て?」と俺を迎えるようとする。発情気味に顔を赤らめ、俺に懇願してくる様を見て我慢でるわけがなかった。今からこの愛くるしく、魅力的な子と一つになれるのだと思うと居ても立っても居られない。
「…汚れると大変だから上も脱がすぞ。」
ブレザーを脱がせ、一つずつワイシャツのボタンを外していく。二乃の下着姿は扇情的で、俺が持つ程度の理性を狂わせるには十分すぎた。
「わっ、凄いおっきい…。」
取り出した俺のブツを見てそんな感想を漏らす。他のを見たことは無いが、身長のでかい俺は比例してそこも平均より大きいのだろうか。確かめようは無いが。
それでも他の姉妹が受け入れることができたのだから、殆ど同じ体をしていることを考えると大丈夫だろう。そう思い、亀頭の先端を二乃の秘部にあてがう。
「挿れるぞ…」
「うん…来て…」
痛くないかの確認を時折しながらゆっくりと挿入していく。
「んっ……!」
そして、とうとう俺のものが二乃の膣内で全て包まれる。先程からキスをしたり二乃の性器を舐めたりで興奮が極限にまで達してしまっていたせいか、膣内は俺の物を更に飲み込もうとうねり、それだけで射精してしまいそうになる。そのせいで、出してしまわないよう耐えるためにひたすら無言になってしまう。
馴染ませるために数秒間そのままでいたが、これ以上、二乃を気遣う余裕がなくなってしまい、確認もとらずに腰を振る。
「あ、あ、あ、…すごっ…!」
ただひたすら二乃の体を貪った。時折キスをしたり、胸部を吸ったりもしながら、きゅっと締め付けてくる膣壁を押し広げる。その感覚が余りに気持ちよすぎて、二人っきりの世界が広がっているかのような錯覚に陥るほど、頭の中が二乃の事で満たされる。有り余る快楽を全て享受しようと、今の状況では邪魔になるだけの思考を一切停止して、五感を通じて流れ込んでくる快感を空っぽになった頭に詰め込んでいく。相変わらずそこに言葉はなく、甘い喘ぎと荒い息遣いだけでお互いに意思疎通が取れてしまう。
そんな時間も終わりが来てしまうが、最後の瞬間が最も興奮してしまうことを既に知っていたので、早く絶頂を迎えようと二乃に愛を注ぐ。
「フー君…キス…して…?」
「………っ」
もうこれで何回目なのだろう、二乃の姿を愛らしいと思ってしまうのは。完全に快楽の虜となった顔でキスをおねだりされてしまっては、応えないわけにはいかない。だが、二乃の方は俺からのキスに応える余裕もなさそうなので、そこは遠慮なしにこちらから舌を入れ、吸ったり、なぞったり、甘噛みしたり、好きに暴れまわる。
先に限界が来てしまった二乃は声にならない声をあげて俺にぎゅっとしがみついてくる。その瞬間、膣内が俺のモノを、精子が欲しいのかきつく締め上げてくる。それに対して我慢できるわけもなく、容赦なく二乃の中に精を吐き出す。まだ恋を知ったばかりの少女に、自分の物であることを分からせるかのように、深く、深く刻みつける。
事が終わって乱れた呼吸を整えようと二人して抱きしめあい、性器同士がまだ繋がったままにも拘らずそのままでいる。しばらくしてようやく頭が冷えてきて、息も正常なものになったところで二乃が言う。
「……まだ硬いままね。」
二乃の言う通り、俺のブツはまだ硬く勃起したままだった。まともな食事にありつけたからか、朝からずっと寝ていたから体力が回復したからか、多分どっちもだろうが、そのおかげで性欲が止まることを知らずにいた。
ただ、これ以上やると二乃の負担になりそうなので、満足できなかった分は後は自分で処理するなり落ち着くまで心頭を滅却すればいい。
「……すまん、今抜く。」
自分のモノを二乃から引き抜くと、白い液体が二乃の秘部から垂れてくる。その様子を見て再びムラッとするがそこは我慢する。これ以上やってしまったら歯止めが効かなくなりそうだ。
「…エッチって…凄いのね。」
「……」
「身も心もフー君の物になっちゃった…。」
「そういうのは本当にやめてくれ…」
「もう一回…しない…?」
「これ以上は流石にやばいだろ…。」
「あら残念。また今度ね。」
「本気でやめてくれ」
心なしか俺も期待しちゃってるから。と言いかけるがこれは無理矢理喉の下に押し留める。
「………シャワー借りてもいい?」
「ああ…」
「……一緒に浴びる?」
「いや、いい。先に二乃が浴びてこい。」
「言い方が悪かったわ、一緒に浴びたいんだけど。」
「……………」
・
・
・
「痒いところは無い?」
「あ、ああ、大丈夫だ。」
浴室。汗をかいてしまったのでシャワーを浴びようと一緒に入ったが、今は二乃が背中を洗ってくれている。
「こんなサービスまでしなくてよかったんだがな。」
「私がしたいんだから良いのよ。」
「疲れないか?」
「全然。好きな人にやってあげることは苦じゃ無いもの。」
「そういうもんか。」
「そういうものよ。」
なんて会話をしながら、少し鼻歌交じりでご機嫌そうな二乃の奉仕を大人しく受ける。柔らかい力加減で非常に心地よく、それだけで二乃の優しさが伝わってきて少しむず痒い。
「フー君もやっぱり男の子なのね。」
「普段男らしくなくて悪かったな。」
「普段も十分カッコいいわよ?」
「そりゃどーも。」
「…やばっ、フー君の裸見てたらちょっと興奮してきちゃった。」
「女としてどうなんだ…?」
「冗談よ。ほら、洗い終わったわよ。交代しましょ。」
「お、おう…」
二乃と俺の配置を交換して、今度は俺が二乃の体を洗う。のだが…
どこもかしこも、淫靡すぎて目のやり場がない。肌は陶器のように白くて綺麗だし、出てるところは出ていて、くびれ方も美しいしで…。
「………力加減はこれぐらいでいいか?」
「うん、ちょうどいいわ。」
なるべくそういったのを意識しないように腕をそっと持ち上げて、泡立てたボディタオルで優しく洗う。腕なんか、非力な俺でもちょっと力を入れれば折れてしまうんじゃないかと危惧するぐらい華奢で、普段は少し気が強いけどやっぱり女の子なんだなと改めて感じる。
…いやいや感じちゃ駄目だろ。これ以上は我慢できなくなる。
だけど、腕、背中と洗っているうちに、考えたくもないのに先ほどの行為が思い出され、心臓の鼓動が早くなっていく。息をすることも忘れ、ついつい二乃の裸を食い入るように見てしまう。
そして、ついに箍が外れてしまった。
「〜〜〜っ!二乃…!」
「きゃっ!え、どうしたの?!」
後ろから思いっきり抱きしめてしまった。温かくて、柔らかくて、興奮して、安心して…色々な感情が混ざり合う。
もう我慢できなかった。一回して少し収まりかけていた欲が暴発してしまった。
二乃を後ろから抱きしめ、手で全身という全身を弄る。
「あ、ん…!手つきが…いやらし…てば…!」
「すまん、ちょっと我慢できん。」
「んんっ…!」
しばらくの間、二乃の体の感触を楽しむ。このままブツを挿入して滅茶苦茶にしてしまいたかったが、それは流石に躊躇う。
二乃の背中にそそり立ったそれを押さえつけて、腰を動かす。本番行為には見劣りするがこれでも十分気持ちいい。これで一回達してしまえば多分収まるはずだ。
「少しだけ我慢してくれ…すぐ終わる。」
「え?え?、ちょ、フー君ストップ!」
「……すまん、痛かったか?」
「そうじゃなくて…その…私のここ使っても良いのよ…?」
「…!」
「そ、それに…私も…その…フー君と…したい…。」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
今にも消え入りそうな声量で恥ずかしそうに言う二乃の破壊力が凄まじくて、その後はもうただひたすら二乃のことを愛し続けた。
浴室の壁に二乃の体を押し付け、後ろからブツを挿入して出し入れをする。一回射精が終わったら今度は対面、次は足を上げて、次は浴槽の中で座位…その過程で口づけを何度行ったか数えるのも億劫なほどで。
ようやくお互いが満足したときには、二乃の秘部は白濁液に塗れていて、そこまで来てようやく俺がやっていたことを自覚した。
・
・
・
「すぅ…すぅ…」
あの後、もう一度シャワーを浴びて後片付けをした後、二乃が「せっかくのお家デートだし、ハグしたい」と言い出したので、しばらく俺が後ろから抱きしめてあげていた。だが、行為で疲れ切ってしまったのか、二乃は俺の懐の中ですぐに眠りについてしまった。寝やすいように、俺は背中を壁に預け、少し体を斜めにして二乃の頭を胸に乗せ、後ろからそっと抱きしめてやる。
一回だけ二乃の寝顔を見たことがあるが、今回も無防備な寝顔。気の強そうな表情でガツガツしているいつもとは違うその姿を見ていると自然と笑みがこぼれる。
「…………」
だが、そんな穏やかな気持ちも一瞬で無くなり、すぐ真顔に戻る。こうやって二乃が寝てる姿を見ると嫌でも意識させられる。関係を持ってしまったことを。
関係自体が嫌なわけではない。こんな俺と関係を持たせてしまったことが嫌で、申し訳なくて、誰も悲しませたくなくて…。
これで三人目で、しかもその三人以外にも一人告白されている。つまり四人目もあり得ることを示唆している。自惚れだとか言っている場合ではない。この関係が更に複雑化する前に早急に手をうたないとまずい。もう既に戻れないところまで来てしまったが、傷はなるべく浅いに越したことはないのだ。
そして一番の問題が、誰を選んで、誰を振るかということ。それさえ出来れば全部とは言わなくともほとんどは解決できる。
そのはずなのだが、なんでこうも不快な何かが消えてくれないのだろう。俺がそうして出した答えの先には、黒くて気持ちの悪いものがある気がしてならない。だからなのだろうか、その道以外の、ありもしない希望を諦めたくないのは。
「俺は…どうしたらいい……。」
一人で呟いてみるも、二乃は夢の中なのでこの問いかけは空に浮かんで霧散する。
そうやって思い悩んでいると、突然俺の手が温もりに包まれる。
「!」
「…フー君…すき…」
見ると、俺の手の上に二乃の手が乗っていた。寝返りをうった際に偶然にか、はたまた夢の中でも俺の手のある場所が分かっているのか…。
手放すのも名残惜しいので二乃の手をそっと握る。
「……あぁ、そうか…」
駄目だ、気づいてはいけなかった。だが、たった今気づいてしまった。違う、本当は薄々分かっていた。ただ気づいていない振りをしていただけだ。こうして二乃の手を握って、抱きしめて思ってしまった。
俺は、この姉妹全員が好きなんだと。
それは多分だが、三玖と五月の二人に関しても例外ではない。ますます俺の踏ん切りがつかなくなってしまっている。
結論を出すことを躊躇しているのは、実際は振ってしまうことで相手が傷つくのが怖からじゃない。いや、確かにそれもあるが、一番の理由はこれだったんだ。誰かを選びたいわけでも、全員振りたいわけでもない、
手放したくなかったんだ。
それと同時に、全部が欲しかったんだ。
俺は、なんて傲慢で下劣な奴なのだろう。かつて四葉に言った、全てを得ようとするなんておこがましいと。どの口が言っている、結局はお前も同じ気持ちだったんじゃないか。
ポタッ
「……?」
上から何かの液体が落ちてきた。なんだ、水漏れか?と一瞬思ったが、それは違うとすぐに分かった。
その水の発生源は、俺からだった。
「……ははっ、どうすればいいんだよ…。」
今まで一花と四葉の優しさで霧がかかっていた現実が、選ばなければならないという現実がはっきりと姿を表して、今ここで突然俺に襲いかかる。なぜこのタイミングで、と運命を恨んでみるも、完全に俺の怠慢としか言いようがなかった。
落涙するとはこんなにも涙が溢れて気持ちが悪いものなのか。この感覚、久しく忘れていた。涙を止めようとしても体は言うことを聞かず、止めどなく溢れる。再び二乃を見てみるも、涙のせいでせっかくの二乃の綺麗な顔も滲んで見えてしまう。
こんなにも、泣いてしまうほどのことだったのか。
それほどまでに俺はこの姉妹を好きになっていたのか。
だが、そうは言っても選択肢は限られている。先程から述べているように、気づいたところで道はただ一つ、たった一人を選ぶしかない。
「選ぶしか…無いのか…?でも、誰を…。」
謎のプレッシャーによって、二乃の手を握っている手がじっとりと汗ばんでくる。正体不明の罪悪感が胸の中で大きくなっていく。その圧迫感で今にも吐きそうだ。
俺は…………
「俺は__________」