※この作品はR-18です。

ロリコンがロックマンエグゼの世界で生存を誓う話   作:ラゼ

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3話

 今日も今日とて電脳の平和を守るため、適当にエリアをぶらつく午前二時。成長ホルモンとか大丈夫かな…? まあ前の世界よりあらゆる面で優れた、この世界の人体を得た僕だ。多少の無理は問題ないだろう。

 

 元の世界であってもネットの接続がかなり少なくなるこの時間帯……この世界だと更に少ないようだ。みんな健康的ってことなのかな? ブラック企業が非常に少ない関係かもしれんな。この時間帯は、掲示板の巡回などがベストと最近わかってきた。

 

 ナビが書き込みにくる頻度が極端に少なく、それでいて『掲示板』というのは割と信憑性のある噂が多いのだ。ゲームでもそうだが、やたらと情報通がいるのが掲示板というものである。それは何故かというならば──やはり『インターネット』そのものが、元の世界とは根本的に違っているからだろう。

 

 たとえばナビの性能についてだが、ほぼ人間と変わらない彼ら──まあ今の僕もだが──は、馬鹿みたいに容量を食う。そして思考、感情、その他を人間同様としたいならば、信じられない量の演算処理が必要である。しかしそんな性能が『PET』にあるのかといえば、否だ。スマホなどよりは遥かに高性能ではあるが、それでも前世界のスパコンなどと比べると遥かに劣る。

 

 この世界の技術でも、手の平サイズのPETで『ナビ』を完全再現するのは不可能に近い。最低でも半導体が三十億個は必要だろう。ならばいったいどうやってナビの存在を確立させているのかといえば──『インターネット』そのもので、だ。

 

 電脳の世界に広がる無数の仮想回路一つ一つが、演算機としての役割を持ち合わせているのだ。PETがナビの『住居』と言ったのは、比喩でも何でもない。ナビとは本質的にインターネットに依存した存在であり、彼らにとっての『世界』が電脳というのは、文字通りの意味である。

 

 だからこそゲームでも、別の場所で倒したナビの亡霊データが、そこかしこで彷徨っていたりするわけだ。そんでもって、この理論を提唱した人物こそが熱斗くんのお爺ちゃんである。そのせいでワイリーさんが主導していたロボット工学が隅に追いやられたってのは、ちょっと可哀想ではあるよね。

 

 要はエックス世界とエグゼ世界の分岐点を作った理論がそれだ。そしてこの技術の最大の欠点……それはインターネット“そのもの”がCPUやメモリとして機能している関係上、独立したネットワークを創造することが不可能といった点にある。

 

 もちろん遥かに性能が劣ったクローズドネットワークを作ることはできるだろうが、互換性がなくなる上に、それ専門の技術者を多数用意しなければならないデメリットがあり──少なくとも、僕が知る限りにおいては存在しない。

 

 要はあれだ。金融とか警察関係の、絶対に流出してはいけないデータは、物理的にネットワークから切り離されているのが『前の世界の普通』。対して、ネットワークの性質上それができないのがこの世界。

 

 つまり理論上は、どんな機器から接続しても国の中枢にたどり着くことができるってことだ。ゲームでシャドーマン先輩が日本のネットワーク基盤を破壊寸前にまで追い込めたのは、そういった事情もあってのことだろう。たぶんセキュリティ面だけでいえば、前の世界の方が優秀かもしれない。

 

 『世界は全て繋がっている』といえば聞こえはいいが、それは同時にリスクの分散が非常に難しいということでもある。だからこそ何度も何度も世界が危機に陥ってるんだろう。もちろん技術者たちはそれを理解しているし、そういった事情の中でもなんとか頑張って生み出されたのが、ウラインターネットやシークレットエリアだ。今は犯罪者の温床になってはいるものの、元々はリスク軽減のために科学省が作ったエリアなのだ。

 

 ──話を戻そう。つまり掲示板の噂などに一定の信憑性があるのは、ありとあらゆるネットワークが完全に繋がっているからこそだ。たぶん完全な隠匿というのは、電脳世界に限ると不可能である。だからこそ、犯罪の種を見つけるのに持ってこいってわけだ。

 

 どれどれ……この掲示板は──おお、これが噂のアシガル板か(※秋原小学校ガールズトーク板)。この世界のガルチャン民はどんなもんか……いや、そう表すにはコミュニティが狭すぎるか。そもそも秋原小学校って一学年に二つか三つしかクラスがない上、一クラスが十人前後しかいない。そう考えると、女子の数は百人にも満たない計算だ。匿名性もクソもないな。

 

 しかもウラインターネット以外は、基本的にコテハン(※固定ハンドルネーム)だらけなのだ。プライバシーを自ら放り投げる人の多いこと多いこと。まあ前にも言ったけど、そもそも『優しい世界』っていう前提が、個々におけるネットリテラシーの善性に繋がっているんだろう。

 

 ふむふむ……おや、ここにも『コーエツ兄さん』と『名人』が出没してるじゃないか。秋原エリア三大クソコテ(※糞固定ハンドルネーム)の二人は、実はロリコンだったらしい。さっさと出て行けと、フルボッコにされて涙目で敗走している。女児にレスバで負けるような彼らではないが、流石に住民全員に叩かれてはどうしようもないだろう。むしろなんで書き込んだの?

 

 さてさて、秋原小の少女たちの話題は、と……ほうほう、処女の喪失時期について盛り上がっているようだ。男の童貞弄りはよくあるが、実は女の子も、言うほど処女を大事にしているわけじゃない。ある程度の年齢になれば、やはり未経験を馬鹿にされる風潮は確かにある。

 

 …おや、『ま、私は処女じゃないけどね…』みたいなレスがあるな。こういったレスの九割は処女な気がするけど、どうなんだろう。ほうほう、つい先日喪失したと……詳細に書き始めるあたりが、ますます胡散臭い。嘘を付く時は饒舌になる──これはどんな世界でも真理だ。

 

 ふーむ、放課後の教室で…? おいおい、大丈夫かこの娘。確率八十分の一くらいでバレるの理解してる? なになに、彼氏は優秀なネットバトラーで…? ほう、オフィシャルにも勤めて──……あの、やいとちゃんさん? 勘弁してもらえます? …ううむ、オフィシャル権限で消しとこう。というか君まだ処女だからね。挿れてないからね。

 

「低俗な書き込みだな…」

「──っ! っとと……あ、こんちゃっす、ブルースパイセン」

『あ、炎山パイセンもお疲れ様っす』

『…そのパイセンと言うのをやめろ。不愉快だ』

『サーセン』

『“申し訳ございません”だ』

『はは、そんな丁寧に謝らなくても。まあでも受け取ってやるか』

『斬れ、ブルース』

「ハッ!」

「うぉわっ!? ──マジでやるなよ!」

 

 掲示板を見上げていたら、いつのまに来たのかブルースが横に居た。危ない危ない、もし敵だったら攻撃を食らっていたところだ。深夜のスクエアと言えど、完全に油断するのはダメだな。しかしいつ見てもカッコいい容姿のナビだ……グラサンがいいよね、グラサンが。

 

 『伊集院炎山』。小学生ながらもオフィシャルのエースネットバトラーであり、同時に大企業の御曹司でもあり、副社長でもある。ついでにイケメンで、欠点らしい欠点といえば卵の殻を頭に被っていることくらいだろうか。彼のナビ『ブルース』も硬派で寡黙、クールでかっこいい実力派だ。

 

「…? 手元を弄って、なにをしている」

「え? いやだって、今のは明確に傷害だし……オフィシャルとしての職務規定にも違反してるし、報告書を…」

『…っ! 貴様…!』

『いやー、いくらからかわれたからって攻撃はダメっすよ……いや、ダメ()()?』

『…』

『伊集院財閥の御曹司がなー。傷害かー。ねえこのデータどうしよっか? 炎山くーん?』

『…』

『足でも舐めちゃう? それとも土下座ぁ~?』

『…』

『なあなあ炎山よぉ……ちょっと、黙りこまないでほしいっす。あはは、ほら、ただの冗談ですって──』

『ブルース、録音したな?』

「ハッ!」

『へっ?』

『光宙とマイン、貴様らを脅迫の現行犯で逮捕する』

『ちょ、おまっ』

「──お、俺は悪くねえ! 全部そこのオペレーターが…!」

「言い訳は後で聞こう。大人しく両手を出せ」

『ち、ちくしょう…! ここまでか…』

 

 くそ、なんて卑怯なやつなんだ。しかし流石はエースネットバトラー……おちょくられるままの人たちとは、ひと味もふた味も違う。僕は目の前のブルースに両手を差し出し、負けを認めた。

 

『ま、冗談はここまでにして……どしたんすか? 炎山先輩。この辺は巡回範囲から外れてますけど』

『…WWWが本格的に動き出した。例のデータだが、アクアデータに関しては俺に一任されている。守るよりは囮に使おうかと考えているんだが…』

『大胆っすねー……まあ上が慎重すぎるってのもありますけど』

『貴様の言うとおりだ。既に本拠地は割れているというのに、いったいなにをグズグズしている──』

『あの、貴様っていうのやめてくれます? だいぶ失礼だと思うんすけど』

『…ふん……“貴様”とは本来、敬うべき相手に使用するものだ。失礼には当たらん』

『なるほど。じゃあ炎山、メロンパン買ってこいよ』

『斬れ、ブルース』

「ハッ!」

「だから僕じゃないって!」

 

 炎山くんが『僕』を敬うって言ったんじゃないか……パシリ宣言みたいなもんだろ? まったく乱暴だな。しかし新人の僕たちにわざわざ報告しにきたってことは、わりと信頼されてるのかな? 試験の時に僕らのことは見てたみたいだし、少なくともネットバトルの実力は認めてくれてると考えていいだろう。

 

 PETを通して喋っている炎山くんと『僕』。こっち側はちょっと手持ち無沙汰気味だし、ブルースとの親交でも深めよう。ついでにぽろっとナビチップでも落とさないかな。

 

「ブルースは最近どう?」

「最近も昔もない。俺はただ炎山様に従うのみだ」

「えー? そんな杓子定規じゃつまんないよ」

「つまらないかどうか……か。あいにく、俺はそんなところで生きていない」

「ふーん……ただ唯々諾々と従うナビなんて──強いとは思えないけど」

「…なんだと?」

 

 おっ、やっとこっちに感情を向けてくれた。別に男に好かれたいってわけじゃないんだけど、会話というものは楽しくあるべきだ。そして会話を楽しくするために重要なのは、相手を楽しくするという部分にある。相手が楽しいのなら、自然とこちらも楽しくなるのが真理というものだろう。

 

 そして言葉の少ない相手、こちらに興味がない相手ならば、まずはどんな感情であろうとも向けてもらわなければ話にならない。好きの反対が無関心とはよく言ったものだ。

 

「『ただ盲目的に従う兵士の軍は、無能の集団である』──こんな古い言葉を知ってるかい?」

「…俺の記憶領域には入っていない」

「僕がいま作ったからね」

「──シッ!」

「どぁっ!? ──おや、今のは炎山くんの指示なのかな?」

「くっ…」

「ま、それは置いとこっか……さっきの言葉はふざけて言った訳じゃないよ。だって、ただただ命令に従う兵士しかいないってことは──指揮系統一つ奪えば、それでおしまいじゃないか」

「む…」

「仮に炎山くんが父親を人質に取られて、PETへの接触も大幅に制限された場合……ブルースはどうするの? 従うだけじゃ誰も救えないぜ。自分の意志で助けるなり、助けを求めるなりしないと」

「…炎山様が、そんな失態を犯す筈はない」

「答えになってないよ。物事に絶対はない」

 

 うーむ、こんなに頑なだったっけか。最初はこんな感じだったっけ? 実はロックマンに絆されて柔らかくなっていったのか、もしくは炎山くんがデレる内にブルースも影響されていったのか……どっちにしても、ぼっちというものがつまらないのは確かだろう。

 

「一人じゃ限界はあるし、もしさっき言った状況になんかなったら……絶対に誰かの助けがいるよ。友達の一人くらいは作っといた方が捗るもんさ。打算、利用、効率、下心……どんな始まり方でも、きっといつか真実になるから──そしてそれが“強さ”にもなる」

「…」

「だから……さ。もし君が望むなら、僕が──」

「…!」

「月十万ゼニーで友達になるよ!」

「シャァッ!!」

「どわぁっ!?」

 

 あ、危なっ! 今までで一番キレがあったな……まあ過激なツッコミだと思えば、これはもう友達になった証みたいなものだろう。つーかソニックブーム出してこないでよね。それって無印の攻撃になかっただろうに。

 

『何を遊んでいる、ブルース』

「…っ! 失礼いたしました、炎山様」

「あはは、友情の確認ってやつだよ炎山くん」

『ふん……ブルースに友人など必要ない』

『ぷぷっ、ナビに先越されて拗ねてるんすね』

『斬れ、ブルース』

「ハッ!」

「うわぁっ!?」

 

 マジで殺人……いや、殺ナビ未遂で訴えるぞちくしょうめ。ま、現実の方の話は纏まったみたいだし、そろそろ本格的な任務を覚悟しておいた方がいいかな。敵に女の子型のナビでもいればやる気も出るんだけどなぁ……アイスマンくらい? 可愛いって言えるのは。まあショタ趣味はないから、結局やる気は出ないけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分だけが特別なんだと──そう思うことは、人生で何度もあると思う。でも結局、現実に打ちのめされて色んなことを思い知らされる……人生そんなもんだよね。なんでもかんでも上手くいくって方がおかしいんだよ。

 

「──だから、そんなカッカするもんじゃないっすよ、炎山先輩」

「そんなことをした覚えはない。ただ──呆れているだけだ。上層部の無能にな」

「まー、同意する部分もありますけどね」

「そもそもお前が一番憤るべきだろう。手柄を潰された形になったんだ」

「別に手柄とかはどうでもいいんすけど、面倒なことになったなって」

 

 さくっとワイリーさんの野望を打ち砕けば、それ以降の面倒事は大幅に減る──そう思っていた時期が僕にもありました。まあこっちが動けばあっちも動くよねって話よ。敵がガバガバ過ぎて馬鹿にしていたが、よく考えたらこっちのセキュリティもガバガバなことをすっかり忘れていた。ガバを覗くとき、ガバガバもまたガバってやつだ。

 

 ワイリーさんたち、メトロ駅に繋がってた本拠地から引っ越しちゃったぜ。これで元々おぼろげだったゲーム知識が、余計に役に立たなくなってしまった。とりあえず、ネット社会を破滅に追い込む『ドリームウイルス』完成の鍵……『アクアデータ』『ファイアデータ』『ウッドデータ』『エレキデータ』の内、ファイアとウッドがあちらの手に渡っている現状。こっちとしても、残り二つは絶対に渡せない。

 

「まあ資金繰りに難航してたのは確かみたいっすから……あれだけの大移動のことも考えたら、余計に苦しくなってるでしょう。WWWは無頼の寄せ集めじゃなく、高給を約束されたエリート犯罪者集団って部分が強みっす。末端に払いを渋り始めたら…」

「蜘蛛の子を散らすように逃げていく、か…」

「元幹部からの情報によると──目的そのものは共有されてますけど、その実行手段は明かされていない。となると、金の切れ目が縁の切れ目ってやつっす」

「…その元幹部は大丈夫なんだな?」

「これでも人を見る目はあるつもりっす」

 

 炎山くんが任された『アクアデータ』はある程度セキュリティを薄くして囮にし、エレキデータの場所はなんとなく覚えていたため既に僕が確保済みだ。後者に関しては、炎山くんと相談して上には内緒にしてある。若干ながら背任っぽい感じがしないでもないけど、今回の件で思いっきり失態をかましてくれた上層部に、最後の鍵を預けるのはちょっと怖い。

 

「幹部の顔は知れてるんすから、手配に引っかかってくれれば手っ取り早いんすけどね…」

「ああ、あの画像データもお前が情報源だったな」

「正しくは元幹部さんからっすけどね」

 

 今のWWWは、必要なデータよりも資金を稼ぐことの方に力を入れる可能性が高い。頭脳が優秀であろうとも、手足がなければ話にならない──そんなことは当然の話だ。ゆえに、アコギな商売や詐欺事件などをメインに追っているのが、今の僕たちである。

 

 善人が多いということは……つまり幼稚な詐欺事件にも結構な被害者が出ることを意味している。騙されやすい人が多いのだ。やっぱり良いことばかりじゃないよね、優しい世界。

 

「うーん…」

「どうした?」

「いやぁ、どこで情報が筒抜けになってるかわかんない以上、次のWWW制圧作戦はたぶん少数精鋭になるっすよね」

「ああ。俺とお前は間違いなく入るだろうがな」

「民間に凄腕の知り合いがいるんすよ……特に何か依頼するつもりはなかったんすけど、こうなった以上、力になってほしいかなって」

「ふん……お前が凄腕というくらいだ──信用がおけるなら、協力を求めてもいいだろう」

「実際、例の元幹部が起こした事件で活躍してますしね。ただ年齢が…」

「年配の方か?」

「や、逆っす。同級生なんすよね」

「なに?」

 

 別にゲームがなんだ、原作がなんだ、やっぱり主人公に任せなきゃ、などと気にするつもりは一切ない。だからこそ『WWWメトロパス』を上に渡して、さっさと解決したかったんだが──少数精鋭でWWWの本拠地に行くとなれば、実力の高いオペレーターに来てほしいのは当たり前だ。

 

 冗談は一切抜きで、熱斗くんは超一流である。世界大会で優勝したり、ウラインターネットの王になったり、何度も世界を救ったりしたのは『主人公』だからじゃない。彼らの実力が図抜けているからこそ、そうなったというだけの話だ。もし任務についてきてくれたなら、成功の確率は飛躍的に上昇するだろう。問題があるとすれば、やはり危険な任務に小学生を連れて行くという、非常識な要請そのものなのだ。

 

 …ん? よく考えたら僕と炎山くんも小学生じゃねーか。そんな非常識でもないか…? 完全に僕の尺度で考えてるし、この世界なら案外ありえるのかもしれん。というか、いま考えることでもないか。まずは新しいWWWの本拠地を見つけないと、話にもならない。

 

「…役には立つんだな?」

「うーん……決断力高し、判断力低し。視野狭め、直感力高め、ネットバトルの腕は炎山先輩と遜色なし──って感じっすかね」

「…俺はまだ、お前に本気を見せたことはない」

「そんじゃま、炎山先輩の一段下くらいってことで」

「…」

 

 黙り込んじゃった。自分に絶対の自信がある人って、生きるの面倒くさそうだよね。生きていく上でプライドは必要なものだが、その高低が本当に難しい。慢心には痛いしっぺ返しがつきもので、しかし卑屈には余計なトラブルがつきものだ。横柄と謙虚の間にあるちょうどいい隙間こそが、人間性を求める上で目指すものなんだろう。

 

 さて、話も一段落ついたことだし──そろそろ捜査を再開しよう。炎山くんと遥々やってきたのは『デンサンタウン』。なんだかんだ一緒に行動してくれるあたり、案外とデレ期に突入してるのかもしれんな。まあエースネットバトラーとはいえ、オフィシャルの中で一番年下だったのは確かだ。この年齢ながら年功序列を大切にする彼に──明確な『後輩』ができたのは初めてだろう。敬語を使う必要がない同僚は僕だけのはずだ。実は内心嬉しがってるとかだったら、ちょっと可愛いじゃないか。よし、そう思っとこう。

 

「じゃ、ここでひとまず分かれましょっか……炎山先輩はどっちがいいっすか?」

「どちらでも構わん」

「不思議系かわい子ちゃんと、不思議系を装ったかわい子ちゃんどっちがいいっすか?」

「どちらでも構わんと言っている」

「ピチピチ十六歳とゆるふわ二十三歳、どっちがいいっすか?」

「お前の享年を十一歳にしてやろうか?」

 

 中々に怖いことを仰るな。しかし君がむっつりスケベだという調べはついているんだ。どうせおっぱいの大きいほうがいいんだろう? そうなんだろう?

 

「んー……じゃあ、僕は大園ゆりこさんのところへ行きましょうかね」

「…待て。やはり──お前では温情をかける可能性がある。犯罪者の方は俺が受け持とう」

「“元”犯罪者ですって。今は足抜けしてるんすから、酷いことしちゃダメっすよ?」

「ふん……人の本質などそうそう変わらない。俺は俺のやり方で見極める」

「うーん……心配っす」

 

 『大園ゆりこ』──まりこ先生の双子の姉である。デンサンタウンで塾講師をしているらしいんだけど、実は彼女、WWWの元構成員なのだ。日暮さんが秋原小学校へ教生として潜入する際、妹のツテを利用して彼を斡旋したわけだ。教職員をコネで雇わせるって、いったいどんな雇用形態してるんだろうね秋原小。

 

 足抜けしたのは日暮さんより後とのことだから、彼よりも最近のWWWを知っているということになる。ヒグレヤの開業準備を手伝っている際にそんな情報を聞けたので、わざわざデンサンタウンに赴いて話を聞きに来たわけだ。

 

 後はついでと言うのもなんだけど、同じくデンサンタウンに身を置く“ネットエージェント”──『黒井みゆき』さんに、デンサンタウンとデンサンエリアの近況を伺いにきたのだ。古物商の資格を持ち、この街で骨董品店を営んでいる彼女。ネットバトルの実力も高く、エージェントとしてもお墨付きだ。彼女には炎山くんが話を通していたみたいで、どうせならと一緒にこの街へ向かったのだ。

 

 しかしそう考えると、やっぱり僕がゆりこさんで、炎山くんがみゆきさんの方へ向かうのが自然ではなかろうか? 結局おっぱい大きい方がいいんだろうか。まりこ先生と双子ってことは、当然ながら豊満なおっぱいを持ち合わせているってことだ。みゆきさんという未知数より、確実なおっぱいを選んだ……ナルホド、むっつりめ。

 

 ──いやまあ、炎山くんはまりこ先生を知らないから関係ないか。さて、やたらハイテクな街並みを歩いてたどり着いたのは、まったく繁盛していなさそうな骨董品店。といっても、繁盛している骨董品店なんか見たことないけどね。開店準備中と書かれた札を無視して、一声かけつつ店へ入る。

 

「失礼しまーす」

「…いまは開店準備中……営業はしていない…」

 

 ぼそぼそと口数少なく喋るのは、黒と紫を基調にした度し難いファッションの女性。帽子も紫と黒が混ざり、ど真ん中にドクロマークがデデンと貼っ付けられている。おさげの先には金色のリングがぶら下げられており、なんともパンクな女の子だ。

 

 いまいち視点の定まらない目で、ぼうっとしている。そっとおっぱいを触ればバレないんじゃないだろうか? そんな感じの雰囲気だ。いわゆる不思議ちゃんってやつだろう。一応ゲームに出てきてはいた筈だが、ほとんど覚えていない。

 

「…! あなたの魂と……ナビは……普通じゃない。私には見える…」

「へえ、そりゃ凄いね。あ、オフィシャルネットバトラーの『光 宙』です。ちょっとお話を聞かせていただいても?」

「ナビの輝き……あなたの輝き……まったく同じ光。不思議…」

「おっぱい触ってもいいですか?」

「さっき来た男の子と似てる……けど……それよりも更に同調して…」

 

 話が通じやしねえ。不思議ちゃんレベル高すぎだろ。問題は彼女の言っていることが百%真実だということくらいだろうか。まあ呪いが実際にあって、実害も出るような世界だ。魂が見える少女がいてもおかしくはない。

 

「さあ……魂を交わしましょう」

「えーっと……ネットバトルってことで、いいのかな?」

 

 PETを構えているあたり、そういうことなんだろう。しかしなんと言えばいいのか……僕を見ているようで、まったく見ていないのが悲しいところだ。『人とは視点が違う』──それはそうなんだろうけど、だからといって意思の疎通を諦めるのはまだ早い。

 

 そもそもネットバトルを通じてコミュニケーションを取ろうとしていること自体、人との繋がりを望んでいる証拠だ。ちょっとばかし個性的だから、我慢強くない人は呆れて会話をやめちゃうんだろう。だから言葉がいらないネットバトルで親交を得ようとしている……とかだったら可愛くない? 

 

 まあ出会ったばかりでそんな深くまで理解できたら世話ないけどさ。とはいえ、誰にでもこういう接し方だというならば──当たらずとも遠からずな気はする。なんにしても、いきなりネットバトルってのもどうかと思うし、まずは仲良くお喋りタイムといこう。聞き込み捜査の基本とは、対象と仲良くすることである。

 

「みゆきさんって可愛いね。彼氏とかいるの?」

「…早く魂を交わしましょう…?」

「そのドクロマークもイカしてるし、どこで買ったんだい?」

「…」

「お買い物はいつもこの辺?」

「…」

「あ、もしかしてナビがスカルマンだからドクロ? ナビとお揃いっていいよね。ナビを大切にする人って僕、好きだよ」

「そう……私も…」

「お、気が合うね。んー……そういえば昨日のデンシレンジャー見た? ブラックが渋々助けにきたところ、めっちゃかっこよかったよね」

「…私はレッドの方が……好き…」

「ひゅー、わかってるね! みゆきちゃん。ところで僕の名前は覚えてくれてる?」

「…光くん」

「宙って呼んでよ。そっちの方が嬉しいな」

「…わかった」

「これからよろしくね、綾波」

「誰それ」

 

 お、この娘からツッコミを引き出せたのはかなり頑張ったほうじゃなかろうか。テンポが独特だけど、慣れればちゃんとコミュニケーションも取れるね。みゆきちゃんの店舗は自宅と兼ねている造りで、畳敷きの居間がレジと同化している。くいくいと袖を引っ張られてお呼ばれしたので、上がり込ませてもらった。

 

 お茶を淹れていただき、ホッと一息ついたはいいものの──客がきたら丸見えの居間って、ちょっと落ち着かないな。まあ一日に十人も来なさそうな店だし、そこまで気にしないってことなのかも。十六歳の日常の香りが感じられて、客からすれば嬉しいのか?

 

「…魂を交わしましょう」

「あ、それはそれでヤるんだ。うーん……じゃあさ、負けた方が一つお願いを聞く──なんてどう?」

 

 コクリと頷いたみゆきちゃんを見て、僕もPETを取り出す。彼女の操るナビは『スカルマン』……自分の体の一部を飛ばして攻撃する、かなりトリッキーなスタイルのナビだ。ナビチップは攻撃力が高く、命中率も高い使えるチップだった筈。できればV3が欲しいから……先に断っとこう。

 

「あー……みゆきちゃん」

「…?」

「悪いけど、十秒以内に終わらせるから。自信を失いたくないなら、やめてもいいぜ」

「…!」

 

 ──おお、初めて強い感情をぶつけられた。ネットエージェントだけあって、やはりバトルの腕には誇りを持っているのだろう。しかしながら、僕は戦闘を長引かせないように戦うタイプ……瞬殺するか、もしくはされるかみたいなバトルスタイルだ。相手からしても、傍から見ても、実力以上の強者に見えるのが長所でもあり、短所でもある。『反撃を許さない』とは、つまりフルボッコ以外の勝ち方が難しいってのと一緒だ。

 

 手加減=反撃の可能性=攻撃に当たる可能性=とても痛い。これが僕の図式である。痛いのは嫌なので、僕はいつだって本気でしか戦わない。他人のナビを操作する時は別だけどね。

 

「…やるんだね? なら──バトルオペレーション・セット」

『イーン』

「いって、スカルマン…」

 

 ──『パーフェクトフルシンクロ』が可能にする超高速戦闘。視点が重なるからこその高等技連発……当事者同士にのみわかる、決定的な技量の差。四つの意識が限りなく圧縮され、一つの世界を作る──というと非常にカッコいいんだけど、はた目からは僕とみゆきちゃんが端末でカチャカチャやってるだけである。ちなみに悪の組織とオフィシャルの戦いも似たようなものだ。僕が熱斗くんに手助けして欲しい気持ちもわかるだろ? 死の危険とかなさそう感がすごい。

 

「負けた…」

「八秒ちょっとかぁ……うん、まずまずかな」

「…」

「スカルマンもマインもお疲れ様。ありがとね」

「…!」

『アイサー』

『お気になさらず。みゆきさんのナビ使いが荒いのはいつものことですので』

「…むっ……そんなことない…」

 

 おお、なんという礼儀正しいナビだ。見た目からはまったく想像できんな……まあみゆきちゃんも中身と外見がチグハグだけどさ。ロックンロール! とか叫び出してもおかしくない格好だが、実際はこんなんだし。

 

「さってと……じゃあみゆきちゃん、約束通りおっぱい触らせてもらえる?」

「わかった──えっ!? そんなの聞いてないけど」

「普通に喋れるんかい」

「あっ……こほんっ。…そんなこと……聞いてない…」

「もう遅いんですけど」

 

 おっと、ついツッコミ役をしてしまった。まったく、熱斗くんじゃあるまいし……常に冷静沈着が僕の座右の銘だ。しかしみゆきちゃんめ、電波系を演じていたとは。まあよく考えたら、コミュ障にネットエージェントが務まるわけないか。

 

「まあその辺は置いといて、と。何かこの辺り……もしくはデンサンエリアで不穏な動きとか、噂とか聞いてない? WWWも困窮してるみたいで、金策を優先すると思うんだよね──ワイリーお爺ちゃんの性格を考慮すると、たぶん『一気にガッツリ』いくんじゃないかな……初手をしくじると結構な被害が出そうだし、初動を察知しときたいんだ」

「…今の所は、なにも」

「そっか。じゃあ何かあればすぐ連絡くれるかな? みゆきちゃんの実力は信頼してるけど、一人でできることなんてたかが知れてるからね」

「ん…」

「んじゃ、他にも聞き込みがあるから……またね、みゆきちゃん」

「…これ、持っていって」

 

 お、Pコード貰っちゃったぜ。割と信用してもらえたのかな? まあオフィシャルという時点で一定の信用はあるだろうけど、個人的な感情は別だ。まりこ先生に負けず劣らずのおっぱいを持つ彼女と仲良くなれたのなら、それは素晴らしい成果と言えるだろう。

 

「じゃ、これ僕のPコード」

「ありがと…」

「じゃね、また今度」

「…胸は……触っていかないの?」

「あはは、じゃあそれもまた今度だね」

 

 ふふふ、軽口がきける関係っていいよね。これを真に受けて『じゃあ一揉み…』とか言い出す奴はただの変態だ。軽くいなして、次のおっぱいに繋げるのがよく訓練された変態だ。そして僕はさらなる高みを目指す、変態という名の紳士である。

 

 さて、一発目は不発だったし……炎山くんの方はどんなもんかな? 尋問と称してゆりこさんに変なことをしていないだろうか。僕の中のエロ漫画担当大臣は『オネショタにおいて、ショタが仲間を連れてくることを禁ずる』と定めているが──僕が二人目になるのはオーケーだ。何事も柔軟に考えるのが、エロの秘訣ってやつだろう。

 

 ──ん? あっちの横断歩道を歩いてる女性……もしかして──

 

「僕、照合頼むよ」

『オッケー。照合システム起動……類似率九十八%。WWW幹部──“色綾まどい”と確認』

「あ、やっぱり? 犯罪者でも堂々と表を歩くのがすごいよね……ま、僥倖ってやつか。後をつけよう──炎山くんと本部に連絡、僕の位置情報は常に発信しといてくれる?」

『了解。気をつけてね、僕』

「あいさー」

 

 ううむ……悪の組織の女幹部とは、露出の激しい服をきてナンボの筈なのに。なんだあの野暮ったいシャツとジーパンは。しかもお前、赤の運動靴って。だというのに化粧は派手で、高価そうな耳のピアスが露骨に浮いている。色んな意味で目につく存在だ。僕の目についたのも、むしろ当然といえるだろう。

 

 おっぱいは普通だが──しかし後ろから目に入るケツは、中々のものだ。ダボッとしたジーパンのせいでわかりにくいが、ツンと上向いた尻の魅力を隠しきれていない。後ろからガン突きしたいタイプのヒップだ。

 

 『デンサンタウン』『色綾まどい』でようやく思い出したんだけど、そういえば彼女は金策担当で何かやらかそうとしてた記憶がある。確か信号機の電脳を弄って、そこら中で交通事故を発生させて──その対策プログラムを超高額で売りつける、とかそんな感じだった筈。無茶苦茶ってレベルじゃねえ。そして買う人も単純ってレベルを超越してるぜ。

 

 おっ、路地に入っていった。流石に尾行するのは厳しいかな…? でもこんなチャンスはまたとないだろうし、オフィシャルに入った以上、多少の危険はつきものだ。お給料分は働かないとね。

 

 …ん? あれ、どこいった?

 

「──どうしたんだい、坊や? こんなところに一人で入ってきたら……危ないよ~?」

「…っ!」

 

 いやちょっと待て、どのタイミングで僕の後ろに回り込んだんだ。もしかしてグルっと一周してきたのか? 水面下では水かきを必死でバタつかせている白鳥のように……僕を驚かせるためだけに、ダッシュで往来を走り抜けたのか? よく見たらちょっと息が上がっている。うーん、カッコつけるのは正義も悪も大変らしい。

 

 しかしどう言い訳したものか……いや、他のオフィシャルよりは難易度が低い筈なんだ、頑張ろう。なんせ見た目は小学生のガキなんだから、誤魔化しやすいことこの上ない。炎山くんは有名すぎて無理だろうが、入ったばかりの僕なら問題ない。

 

「え、えっと…」

「さっきからあたしのこと着けてたよね~? 正体知ってて近付いてきたんなら──」

「ご、ごめんなさい! あんまりにもお姉さんが綺麗だったから、つい…!」

「──へっ?」

 

 アドリブ力だ、アドリブ力を高めるんだ…! 綺麗なお姉さんに、ついフラフラと誘われてしまった……そんなクソガキを演じよう。コナン君になりきるんだ。その上で、話を長引かせなければならない。『もう、ダメでしょ!』『ごめんなさーい』で終わると、次の尾行はもう無理だ。

 

「ふ、ふーん……そう。あたしが綺麗だったから?」

「うん! 服はダサいけど、お姉さんの魅力は隠しきれてない──あだっ!」

「一言余計だよ!」

「ご、ごめんなさい」

 

 おや、満更でもなさそうな表情。まあ子供の純粋な意見だけに、本音か世辞かもわからない言葉より突き刺さるものがあるのだろう。実際に嘘じゃないしね……こんな魅力的なケツを往来でフリフリされたら、そりゃあ引き寄せられるってもんだ。

 

「ま、ガキの内はイタズラで済むけどさ。そのままいったらストーカーよ?」

「う、うん…」

「わかったんなら、ほら、帰りな……車には気をつけなよ」

「え、えっと…」

 

 こういう、ガチの悪人ってわけじゃないところがまたアレだな。しかしこのままでは会話が終わってしまうし……あ、そういやこの娘ってお金を稼ぎにデンサンタウンにきたんだったな。交通事故なんかより手っ取り早い道を示せば、誘導できるんじゃないか? 市民の被害も減るし、一石二鳥だろう。

 

「あっ…」

「なにやってんだい。ほら、気をつけ──……っ!? なっ…」

 

 PETを落とした振りをして、まどいちゃんに拾ってもらう。ちなみに画面は予想通り、電子マネーの残高が表示されていた。こういう時、意思の疎通なしで理解しあえるのが僕の強みだ。目論見通り、まどいちゃんの表情が固まる。

 

 残高は三千五百万ゼニー。元々貯めていた一千万ゼニーと、ガッツリ溜まっていたチップをオフィシャルのツテで売り捌いたお金……そしてオフィシャルのお給料を足した全財産だ。一所に纏めるのは危ないようにも思えるが、(マイン)が管理している以上、世界最高クラスのセキュリティを誇る。

 

「な、なんで子供がこんな大金…」

「えっと、お小遣いだけど…」

「…! ふぅん、なるほどねぇ……へえぇ……ウフフ」

 

 すげえ悪い顔してる。まあ三千五百万ゼニーをお小遣いと言い張る小学生だ。そのまま奪ってもいいし、なんなら誘拐して身代金まで分捕ってやろうという魂胆かな。しかも自分に惹かれてやってきた子供の誘拐なんて、イージーモードどころの話じゃないだろう。

 

「ねぇボクぅ…? お姉さんと一緒に楽しいところに行かない? そうしたかったんだよね?」

「行かない!」

「なっ……なんで?」

「知らない人に着いてっちゃいけないって言われてるし…」

「さっき自分から着いてこなかったっけ!?」

「うーん……あ、じゃあ知らない仲じゃなくなったら大丈夫かな?」

「…! そうそう、そうよねぇ。ボクとあたしはもう友達……そうでしょ?」

「名前も知らない友達とかいる?」

「ぐっ……こ、このクソガ──ゴホンっ! あたしは色綾まどいっていうの。坊やは?」

「僕は光 宙だよ。まどいちゃんって呼んでいい?」

「ええ。それじゃ、あたしも宙って呼ばせてもらうから……これで友達だよね?」

「おいおい、もう少し弁えろよ庶民風情が」

「こっ…!? がっ──フゥゥ……我慢……我慢…!」

「あはは、冗談だってまどいちゃん。でも友達より恋人の方がいいかなー」

「あら……ふふ、じゃあそうしよっか。恋人になったあたしのお願い──聞いてくれるよね?」

「うん、いいよ。そのかわり僕のお願いも聞いてくれる?」

 

 んー……あと十分は引き伸ばしたい。先にお願いを聞いてもらうとして……後はどうするか。十分以上かかり、なおかつ恋人として適当なお願いとくれば──よし、セックスだ。

 

「じゃあまどいちゃん、ちょっと屈んでくれる?」

「うん? いいけど──んむっ!? ん、ぐ……ぷはっ! い、いきなりナニすんだい!」

「え? だって……僕たち恋人なんだよね?」

「う…! そ、そうね……いきなりだから驚いちゃった、はは…」

「それもそっか。ごめんねまどいちゃん……じゃあセックスしよっか」

「ふぁっ!?」

「恋人なんだからセックスだってするでしょ?」

「え、いや、なっ……こ、このエロガ──」

「…もしかして全部嘘だったの?」

「──っ! そ、そんなことないわよ」

「じゃあ、しよっか」

「う、ぐ、く……このマセガキ…!」

 

 壁に手をついたまどいちゃんのジーパンに手を突っ込み、後ろからオマンコを弄くる。小学生だから、ちっさいチンポをちょっと抜き差しして終わり──そんな風に考えてるんだろう。ここは本気を出して、彼女をイかせてやらねば。

 

「…っ、ぅっ…っ、ぁ──ふっ…! んぅっ…!? く、あ…っ!」

「どう? まどいちゃん」

「う、ぐっ…! ふ、ぁっ…! んんっ、ひぁっ、な、なんで、こんな…!」

「お、こっちが弱いのかな?」

「ん゛っ──うぁっ!? イ、イっ…!」

 

 おお、達したようだ。なんかこの世界の人って、妙にイキやすいよな……まあそこまで人数こなした訳じゃないし、偶然の可能性も否めないけど。ペタンと座り込んだまどいちゃんの顎をクイと持ち上げ、口内を舌で嬲りつくす。体も穴もヒクつきっぱなしで、されるがままだ。

 

 シャツをめくり、乳首の先を弄りながら舌を絡ませていると──ピクリとあちらの舌も動いた。その動きに合わせるようにグチュグチュと刺激していると……次第にあちらも動きを合わせてきて、唇と唇での性交が始まった。

 

 熱く、ぬるぬるとした肉の塊を、唾液を交換しあいながら絡ませ合う──それはもう、セックスと大して変わらない。脳に近いぶん、刺激の伝達も速い。キスと手での刺激だけで、まどいちゃんが三回ほど絶頂した頃、床には黒い染みがいくつも描かれていた。

 

 瞳がぐらついているまどいちゃんに了解を取り、愛液がとめどなく溢れている膣口にチンポをあてがう。熱の籠もった、あるいは期待に満ちた顔でそれを見ていた彼女。望み通り一気に突きいれてやると、ただそれだけでもういちど達した。

 

「──あ、ぐっ、んぅ…! ひぁっ! い、いまイッた、かひゃっ…!」

 

 両手を僕の胸に押し付け、精一杯の抵抗を試みているが──構わず腰を振り続ける。一突きごとに腕の力が弱まり、最後には僕にしがみつきながら、自ら腰を振っている有様だ。体勢を変え、少し乱暴に後ろから腰を振る。

 

 彼女のオマンコは少し下付きのようで、後ろからの方がピストンしやすい。小ぶりながらも、白人系人種のように形の良いケツだ。半脱ぎ状態のジーパンが揺れるお尻を際立たせ、腰の動きをはやらせる。イキやすい体質なのか、挿入してからも三度は達しているだろう──恥も外聞もなくヨダレを垂らし喘いでいる。

 

 そんな痴態を満足しながら眺め、ようやくやってきた射精感に身を任せる。やいとちゃんの素股はとても気持ちいいんだけど──穴の中で出すのと、外で出すのはまるで別物だ。膣内射精は、まるで精子を膣に飲み干されるようなバキューム感を味わえる。彼女がもう少し成長するまでは、たまの浮気も容認してほしいところだ──そんなことを思いながら、最後に腰を強く打ち付け、彼女の雌穴に精子を流し込んだ。

 

「ふー……気持ちよかったよ、まどいちゃん」

「う……ん……こ、こえで、ついてきて、くれうのよね…?」

「んー。あはは、ゴメンネ?」

「ひぇっ…?」

 

 脱力しきったまどいちゃんの両手に、ガチャリと手錠をかけた。キョトンとしている彼女にオフィシャルの証を提示する。みるみる青褪めてる彼女の表情に、少しばかり罪悪感が湧き上がるが──まあ所詮は数ヶ月くらいの勾留だ。この世界の善とは、悪とのイタチごっこなのである。

 

「くっ…!」

 

 慌てて立ち上がり、逃げ出すまどいちゃん。衣服は正しておいたが、そんなに走ると精液が溢れだしちゃうと思うけど……ま、一瞬だけの話か。僕も重い腰を上げて立ち上がると、同僚たちに止められているまどいちゃんを挟み撃ちにした。

 

「く、く…! 騙しやがって…!」

「騙される方が悪い──とは言わないけど、場合によっては嘘も必要だからね。君を放って置くと、被害が増える」

「くっそ──ヤリ損かよ! このエロガむぐぐっ!?」

「あ、車までは僕が運ぶんで、先輩方はどうぞお先に。ちょっと話したいこともあるので」

「そうか? まあお前なら大丈夫だろうが……逃げられんようにな」

 

 路地を出たところに停められた、オフィシャルカー。そこまでの道のりで、彼女と少しばかりお喋りをしよう。睨まれるのも納得の状況だが、怯んではいられない。背中にそっと手を置きながら、優しく話しかけてみる。

 

「なんでまどいちゃんってWWWに協力してるの?」

「はん……金以外になにがあるってのよ。あたしらみたいな半グレはね、稼ぐ手段なんか限られてんのよ。犯罪者でも受け入れて、たっかい給料払ってくれる組織なんて他にある?」

「資金難で君に金策させてる時点で破綻してない? それ」

「うっ……だって、抜けたところで行くとこもないし…」

「そんなことないよ。君の元同僚の日暮さんだって、いま店を開く準備してるし。案外やろうと思えばなんでもできるもんだぜ」

「…」

「だいたい、WWWってどう考えても割に合ってないよ。ワイリーお爺ちゃんは短気だし、そうでなくても日常的にオフィシャルを警戒しなくちゃならないし」

「まあ、そうだけどさ…」

「なんかやりたいこととかないの? 開業資金くらいなら出してあげるよ」

「…っ、な、なんでよ。そこまでする義理ないでしょ?」

「やだな、義理ックスしたばっかじゃないか」

「義理ックス!?」

 

 なぜ僕が彼女に優しくするのか。もちろんセックスしたからというのもあるけど、彼女の持っている情報がWWW壊滅の鍵になるってのがでかい。そのためなら、あぶく銭に近い僕の財産など無くなっても構わない。

 

 なにせワイリーお爺ちゃんが目指す世界が実現すれば、今のインターネットは不要になる。ということは、(マイン)が死んで──僕も死ぬかもしれない。WWWの野望は、僕にとって絶対阻止しなければならないのだ。

 

 そのためにはまどいちゃんを懐柔しなければ。男と女って、一回寝るとなんだかんだで親密になるからね。もちろん合意ありに限るし、さっきのはセーフ寄りのアウトみたいなセックスではあったけど。でもあんだけヨガってたんだし、半分くらい快楽堕ち的な感じになってるんじゃなかろうか。

 

「…はぁ……ねぇ、出資してくれるってほんと?」

「お、乗り気になった? なにがしたいんだい?」

「…笑わない?」

「人の夢を笑うやつは、好きになれないね」

 

 よしよし、人は希望があれば悪いことをしなくなる。彼女だって生まれたときから犯罪者ってわけでもないんだから、いつか見た夢くらいあるだろう。ちょっとレイプ気味だったお詫びも込めて、全財産までなら出資してもいい。

 

「…ブティックをね、やってみた──」

「ごめん無理」

「なんで!?」

「そのクソダサいコーディネートで成功するわけないだろ?」

「なんですってぇ! このセンスがわからないの!?」

「センズリする気も起きないぜ」

「こ、こんのエロガキが…!」

 

 掴みかかってきたので、こちらも胸を揉みしだいてやった。とりあえず留置所で頭を冷やし、服飾関連の夢を諦めるよう諭してみる。ま──実際、出所後に犯罪を起こす気がなければ、釈放はすぐだ。WWWの情報をさくっと吐くなら、尚更に。

 

 ──出所したら花束でも持って迎えてやろう、そうしよう。

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