夏休みとは青春そのものである。人によって体験する数に違いはあるだろうけど、小学生の夏休みはほぼ全ての日本人に訪れるものだ。そしてその大半が、この大型の連休を喜ばしいものだと考えるだろう。
しかし僕はと言うと──いま、激しい後悔と共にテレビを見ていた。画面にはクリームランドの政治式典が映っているのだが、そんな大人数の中でもひときわ目を引く美しい女性……『プリンセス・プライド』がにこやかに手を振っている。
そう、プライド王女だ。エグゼにおいても人気が高く、モノホンのお姫様かつロイヤルな穴を持つ美女である。敵になったり仲間になったりと忙しない彼女だが、その容姿の美しさは留まるところを知らない。やいとちゃんが『可愛い』とするならば、彼女は『美しい』といった感じだ。
普通ならお近付きになることすら難しいだろうが、とある事件に際して接点を作ることができる──それどころか、やりようによってはエロいことも出来なくはないと踏んでいた。しかし……しかしだ。
この世界では『ゴスペル』が存在しない。WWWも活動はしているが、現状で彼等が重点を置いているのは『勢力の拡大』のようだ。平行してバグの欠片やらなんやらを集めてはいるが、民間への被害はほとんど出ていない。そもそも、バグの欠片の収集は別に違法行為ではないのだ。むしろなんの役にもたたないジャンクデータを、貴重なアイテムと交換してくれる素晴らしいシステムである。
ま、現状じゃ中々手に入らないんだけどね。後々には溢れかえるほどバグの欠片が出現するのは、おそらく『ナビカスタマイザー』の出現によるものだろう。簡易型とはいえ、個人単位でプログラムを弄れるアプリケーションだ。バグが出現する頻度も、それまでとは桁違いとなるだろう。
話がそれたが、重要なことはそう──プライド王女が犯罪に加担していないという現状である。本来であればゴスペルに与した王女が色々とやらかす筈だったのに、これではなんの接点もできやしない。
ついでに言うと、アジーナエリアの襲撃も行われていなければ、日本のマザーコンピューターも問題ナッシングだ。それが何を意味するかと言うならば、世界各地の優秀なオフィシャルが集まる『ゴスペル対策会議』が開催されないという事実である。
タダで海外旅行に行けるプランも、『あのことを知られたくないなら……わかるよね? プライド王女』プランも、海外のダイナミックなおセックスを満喫するプランも、全てがご破算になった。許すまじワイリーお爺ちゃん。もっと暗躍してよね。
しかもやいとちゃんは家族で世界一周旅行に行っちゃったから、気軽にセックスもできない。まどいちゃんはというと、本格的にブティックを立ち上げる用意をし始めた。手伝いたいのは山々なのだが、彼女の近くにいるとどうしてもお触りやらその続きをしたくなるため、涙をのんで応援だけに留めている。
夢に向かって準備をしている人相手に、くだらない茶々をいれるのは迷惑だ。ぶっちゃけると金銭的には邪魔をしたいのだが、約束は約束である。手痛い失敗をして人間は成長していくのだ……そのために僕の数千万ゼニーが消えるのは悲しいけどさ。
──とまあ、そういう訳でまどいちゃんとのセックスもそう気軽には行えない。まりこ先生は、妹のゆりこさんのお手伝い……WWW団員として害を与えた人たちへの、
つまり、僕の性欲に付き合ってくれる人がいないのだ。もう、なんというか……ムラムラっぷりが酷い。下手をすれば男のケツにすら欲情しかねない危うさが、今の僕にはある。熱斗くんのお誘いも今はお断り状態だ。
熱斗くんと遊ぶとすれば、高確率でメイルちゃんもセットだろう。寝取るつもりは毛頭ないし、寝取れる気もまずしないが、しかし手が勝手にセクハラをしかねないこのセク禁状態。二人を性の目覚めに誘導して──三人プレイなんかしちゃいそうな危険がある。
一度変わってしまった関係は、もう元には戻らないのだ。僕自身の自制がまったく信用できない以上、危うきには近寄らずがベストである。まあ危ないのは僕なんだけど。
「うーん……良いオカズも見つからないし、どうしたもんか…」
『外で新しい出会いでも探したら?』
「そうは言うけどさ、外でついお触りなんかしちゃったらまずいことになるぜ。僕もそこそこ有名になってきちゃったし」
『ヤバイ時は僕がアラームでも鳴らすさ。宙と違って物理的には溜まらないしね』
「マインがそう言うなら……そうだね、気分転換に出てみよっか」
最近、僕とマインの差異も多少は出てくるようになった。自然と呼び方も『僕』と『僕』ではなく、『宙』と『マイン』になり、それぞれの自己が確立されてきたのだ。パーフェクトフルシンクロは相変わらずだが、まあ良い傾向だとは思う。いきなり弱くなるのも、それはそれで困るしね。
「あーあ……『出会って五秒で即合体』シリーズが現実にもあればいいのにな…」
『それただのレイプじゃない?』
「確かに」
『ま、僕は実際にできるけどね』
「くっ…! なんて羨ましいんだ電脳世界…!」
『でも所詮プログラムなんだよね…』
「あー……女の子型のナビって少ないし、難易度も高いし難しいところだよ」
『そこでセレナード様ですよ。電車一本よかよか村、旅館は温泉シークレットエリア、褐色ロリータゲットだぜ!』
「一番キツいお人だよ…」
『きっと締まりもキツいさ』
「というかセレナード様って女の子なの?」
『性別無しとかいう謎の存在だったような…』
「行く意味ある?」
『性別がないのなら、むしろ捗る可能性。『僕が女にしてやるよ…!』的な意味で』
「アリだね」
『うん、アリだ』
「まあ下の穴がなかったとしても、お口でしてもらえばいいわけだし」
『神聖な存在のフェラとかすごい興奮するよね』
今すぐには無理だけど、準備はしておこう。セレナード様という存在の強さもさることながら、そもそも彼女と出会うまでの障害の多さが半端じゃない。しかし性生活という点においては僕の方が充実している関係上、マインの頼みはできる限り聞いてあげなきゃ申し訳ない。
「んー……電気街でも行ってみるかな」
『結構チップも増えてきたもんね』
「仕様がコロコロ変わるのやめてほしいよね、まったく」
『ま、今が新ネットワークシステムの
「それもそっか」
ちゃちゃっと電車に乗り、電気街へと向かう。電気街と言えばメイドさんを思い浮かべるが、残念ながらここでは、駅前でビラ配りをするミニスカメイドはいない。まあ案内された先が残念スポットだったという詐欺もないわけだから、痛し痒しといったところだろう。
「さてさて、とりあえず腹ごしらえでもするかな」
『近場で評判の良いお店は……と。ほい、マッピングしといたぜ』
「サンキュ。可愛い店員がいる店は?」
『もちろんピックアップ済みさ』
「ひゅー!」
『うぇーい!』
「ふむふむ……ツインテールの可愛い店員とな……よし、あそこのパスタ屋にしよう」
『ついでに下半身のミートをペペロンチーノしてもらおうって魂胆かい?』
「プログラムくーん。マインの座布団、全部もっていっちゃってー」
『そんな殺生な!』
「アホなこと言ってないでさっさと入ろうぜ。電脳世界と違って、こっちはクソ暑いんだからさ」
『気候制御してる癖に、なんで気温は昔に準拠させてるんだろうね』
「侘び寂びってやつじゃないかな──どぁっ!?」
『宙!?』
自動ドアが開いた途端、店内から水が溢れ出してきた。なんだなんだ、足湯サービスでもやってるのか畜生。ズボンの裾から下がガッツリ濡れてしまった。靴の中がグジュグジュして気持ち悪い……いったい何事かと店内の様子を見てみると、およそ水が流れている全ての機器から、噴水のように水が吹き出していた。
「あわわ…! どうしよう、どうしよう…! せっかく決まった新しいバイトなのに、クビになっちゃう…! ああ、やっぱりわたしは不幸の星の元に生まれたのね…」
「項垂れるのは勝手だけどね、さっさとどうにかしてくれ! クビは当然だけど、損害賠償もしてもらわないと困るよ!」
「はぁぅっ! そ、そんな…」
「あー……大丈夫ですか? 手伝えることがあるなら、手伝いますけど」
「ん? …ああ、気持ちだけ受け取っておくよ。流石に子供に任せられるような──あれ? 君、どこかで見たような…」
「オフィシャルの光です。何があったんですか?」
「ああ、この前テレビに出てた子か! それなら是非お願いできるかい? この娘のナビが暴走しちゃって、店の中もホームページも水浸しになったんだよ。『ウイルスバスティングなら任せてください!』なんて言うからやってもらったら、これだもんな……営業再開はいつになるか……はぁ…」
「うぅぅ…!」
──あ、誰かと思えば『しゅーねーちゃん』か。本名は……『城戸舟子』だったかな? ニャロメちゃんもみゆきちゃんもそうだったけど、ゲームのキャラって意味ではあんまり記憶にないんだよね。
でもこの娘のことは割と覚えてる。なんせロックマンDASHの方にもチョイ役で出てたし。というかあっちが先だっけ? 三作目はいったいいつになったら出るのだろう……まあもう考えても仕方ないことだけどさ。とにかく今は、事態を収めることに注力しよう。
…しかし前々から思ってたんだけど、インターネットが火の海になったり水没したりするのはいいとして、なぜ現実までそれに
「──プラグイン! マイン.EXEトランスミッション!」
『よっしゃ行くぜー! ──ガボゴボゴボッ!?』
「おお……見事に水没しておられる」
『おっ、溺れっ──ん? あ、平気だコレ』
「その辺のナビならともかく、マインはロックマンにだって負けない高性能ナビなんだからさ。わかりきってた結果だろ?」
『でもさ、いきなり深海に放り込まれたようなもんだぜ? びっくりしたぁ…』
──ナビにはそれぞれコンセプトがある。何かに対して優位を保とうとするなら、別の何かには著しく弱くなる……故に、全てにおいて長じるナビは存在しない。たとえばこの水没状況で電脳世界に居続けられるナビは、アクアマンやダイブマンといった、水に有利なナビのみである。ヒートマンなどがこの場にいれば、呼吸が続かないどころか継続的な大ダメージを受けることだろう。そして一般のナビでも、そう長くはいられない。
先程の『コンセプト』で言うなら、ロックマンやマインは『オールマイティ』なのだ。そして戦闘スタイルはかなりチップに依存している。ブルースやカーネルといった高性能ナビたちが大してチップを使用しないのは、通常戦闘で強力な能力を発現させている反動のようなものだ。
これはナビのプログラムに加え、PETカスタマイズの比重も大きい。熱斗くんが別のナビを操作する時、能力を十全に発揮できないのはそのせいだ。『チップを主体とする戦闘』に重点を置くなら、ナビそのものの戦闘力は下がる。逆もまた然り、一長一短なのだ。
「長時間はいられなさそうだね……アクアマンは見えるかい?」
『うん、そう広くもないホームページだし──あ、いた』
『怖いっぴゅ~! 痛いっぴゅ~!』
『ウイルスに攻撃されて錯乱してるみたいだね……当のウイルスは水死しちゃってるけど』
「なんという暴走キャラ…!」
『しゅーねーちゃん助けてぴゅい~!』
『アクアマン!』
『…っ! だ、誰っぴゅ!』
『しゅーねーちゃんの命が惜しければ、今すぐ大人しくするんだ! このままだと彼女の命はないぞ!』
『ぴゅいっ!?』
『さぁ! 早くしろ!』
『わ、わかったぴゅ! しゅーねーちゃんに手は出さないでほしいっぴゅ!』
『よーし……そのままこっちへ来るんだ。うん──終わったぜ、宙』
「オッケー、完璧な対応だったぜ。さすが僕」
『落ち着いて!』とか言っても絶対に落ち着かなさそうなタイプへの対処としては、実に適当である。そのままアクアマンをしゅーねーちゃんのPETへ誘導し、とりあえず店の噴水状態は終了した。とはいえ水に弱い機器はショートしてるし、もう使い物にならなさそうなソファやらなんやらもある。営業できない間の機会損失も考えると、結構エグい損害額になりそうだ。
「いやぁ、助かったよ。流石オフィシャルだね! 大したお礼はできないけど、よかったらこれを…」
「いえ、これも仕事の一環ですから。お気持ちだけ有り難く」
HPメモリを差し出してきた店長さん。しかし体力は既に限界まで上げてしまっているので、マインには無用の長物だ。それなりの値段で売れはするが、頂いたものを売るのは少し抵抗がある。というかそんな余裕があるなら、今回の一件での補填に使った方がいいんじゃなかろうか。
そう言うと、店長さんは思い出したようにしゅーねーちゃんへと向き直った。険しさも含みつつ、しかし複雑な表情だ。
「…君の境遇は可哀想だと思うけど、だからといってこちらも余裕があるわけじゃなくてね。君に任せた責任はこちらにもあるから、全て請求はしないけど…」
「あぅぅ…」
持ちナビに損害額の概算を出させ、その一部をしゅーねーちゃんに請求する店長さん。業務上の過失による損害は、基本的にアルバイトに請求することはできない──が、それも場合によりけりだ。今回のような状況であれば、正当な事例として認められる。むしろ彼の請求額はかなり譲歩している方だろう。
──そういえば彼女って『ビンボーネットバトラー』とかなんとか言われてた娘だっけ。うーんと……ああ、なんとなく思い出してきた。確か早くに親を亡くしたせいで、アルバイトを掛け持ちして生計を立てていた……んだっけ? しかしそれなら、国に援助を求めてもいいだろうに。孤児院暮らしが嫌だったとかだろうか。
「あの……ご、五百回払いでお願いできますか…?」
「店が続いてるかも怪しいよ! せめて五年以内には返してくれ!」
「五年……ああ、どうしよう…! やっぱりわたしは幸せになれないオンナ…!」
いちいち悲観的な挙動をするせいで、いまいち同情できないな……できないが、しかしこれはチャンスだ。この世界はともかくとして、僕が元いた世界では──金で股を開く女など、掃いて捨てるほど存在した。
彼女がそういった人間だと一口には言えないが、こう──なんだろう。恩着せがましく押せ押せでいけば、なんとなく受け入れてしまいそうなタイプに見える。有り体に言うなら、飲み会のあと強引な先輩にお持ち帰りされそうな娘だ。
「──よかったら、僕が肩代わりしようか?」
僕の言葉を聞いて勢いよく振り返った彼女の瞳には、救世主を見たような輝きが灯っていた。まあ救世するっていうか、吸精してもらうんだけど。
■
爪に火をともすような生活……という言葉が相応しいような、ボロい家。ツギハギだらけの服なんて初めて見たよ。冷蔵庫などといった家電以外は、寝る前にコンセントを抜いて節電しているらしい。そのあたりも含めて僕が見たところ、彼女は典型的な『節約下手』である。
節約するところを履き違えて、無駄に苦労するタイプだ。一晩で数円変わるか変わらないかの部分を気にしておいて、自販機で飲み物を買うようなしゅーねーちゃん。貧しい貧しいと言いながら、カップラーメンの安売りに手をのばすしゅーねーちゃん。
コストパフォーマンスという言葉をご存知ないのだろうか。カップラーメンは手軽なだけで、けして安い買い物ではないぞ。自販機のジュースを五日我慢すれば、安物の服くらいは購入できるだろうに。『ツギハギだらけの服を着ている』という一種の悪印象は、節約以上に色々なものを損していると思う。
──そんなことを頭の片隅で考えながら、腰を振り続ける。
「あっ、ぐ、ふ、ぅっ──ん゛っ……イっ、あぅっ…!」
「またイったの? さっきまで処女だったってのに……大した淫乱だね、しゅーねーちゃん」
「ちっ、ちが──あぐぅっ!」
「あんまり喘ぐと、隣の弟くんたちに聞こえるよ? …それとも聞かせたいのかな」
「あぅ、んっ──ひぎゅっ…」
彼女が子供ながらに一家の大黒柱として頑張っていたのは、どうやら双子の弟たちのためだったらしい。孤児院の状況いかんによっては離れ離れになってしまうことを危惧し、家族一緒に暮らすため、国からの保護を蹴ったそうだ。
自分は中学を中退したというのに、弟たちを私立の中学に通わせるため高い学費を稼いでいる……なんとも健気な少女だ。ちなみにこの世界の義務教育は小学校までである。カリキュラムが効率的なせいか、教育の水準は上がりながらも、義務教育の期間は短いという素晴らしい教育体制だ。
「ふー……二日禁欲しただけでこれはヤバイな…」
「ん゛っ……あ……ぅ…」
早漏の
彼女を家まで送り、そのまま上がり込んで──努めて紳士的に振る舞い、彼女の苦労話に深く共感し、今までの頑張りを褒め称え、これからの援助さえ申し出た僕。感動しながら『わたしにできるお礼ならなんでも』と言われたので、それならばと美味しく頂いた所存である。
「んっ…! は、ぁぅ…」
いつの世もどこの世界でも、初物をいただけるのは素敵な体験だ。ぴっちりと閉じた桜色の割れ目を弄りながら、感慨深げにため息をつく。にちゅにちゅと人差し指を締め付けてくるこの蜜壺も、ついさっきまでは肉棒の感触を知らない、なんの汚れも知らない聖域だったのだ。
そこへ強引に押し入り、白濁とした欲望を何度も注ぎ込む──男冥利に尽きるってもんだろう。小さな割れ目に何度も指を抜き差しされ、息を荒げながら身を捩らせているしゅーねーちゃん……そんな彼女の陰核を親指で擦ると、ビクリと体が跳ねる。
──もう五人目ともなると、流石に否定はできなくなってきた。『この世界の女性はとても感じやすい』……その事実に間違いはなさそうだ。処女喪失で感じる女性など、現実ではまず有り得ない。オナニーが好き、スポーツや激しい運動で膜がなくなっている、そしてスケベ。この三拍子が揃っているのなら、なくはないだろうけど……やいとちゃんたちがみんなそうだった訳もなく。
ならば考えられるのはやはり感度の違いであり、つまり男にとって都合のいい素晴らしい世界であるという事実だ。
「あぎっ…! ひっ、あっあっ──あ゛ぅっ! ──んむっ……ん、ちゅ…」
中学生だというのに、膣の狭さはやいとちゃん並だ。腰を掴みながら対面座位で突き上げていると、奥の奥まで到達した感触を味わえる。恥も外聞もなく口の端からよだれを垂らし、未知の感覚を楽しんでいるしゅーねーちゃん……その唇からだらしなく覗いた舌を、僕の口内に招き入れ、二つの舌を複雑に絡ませる。
蛇のようにうねる舌は、膣壁の動きに呼応しているようで、唾液が交わる度に淫らになっていく。彼女の重みで腰の動きが緩慢になってしまうのがもどかしい。もっと早く、もっと情熱的に肉と肉を擦り合わせたい──その思考が一致したのか、彼女がベッドに背中を預けるのと、僕が彼女を押し倒したのは同時だった。
一人分の体重から解放された腰の動きは、先程の鬱憤を晴らすかのように激しくなった。欲望をそのまま叩きつけるかのように、淫らな水音を響かせながらピストンを繰り返す。
込み上げてきた射精感のせいか、肉棒がひときわ大きく膨らむ。それを雌の本能で敏感に感じ取ったのか、腕と脚、全てで僕にしがみついて子種を催促するしゅーねーちゃん。その期待に応え、膣の最奥で欲望を解き放つ。子宮が満たされた合図──粘性を含んだ、トプンという水音。聞こえる筈のないそんな幻聴を子守唄に、僕らは繋がったまま眠りについた。
■
──寝坊した。時刻は朝の六時十五分……しゅーねーちゃんの家から秋原町の公園までは、急いで十五分。ラジオ体操の開始時刻は六時半であるからして、いまこの瞬間にダッシュを始めれば間に合わなくもない。
間に合わなくもないが、朝っぱらから生臭い香りを漂わせて体操にいそしむオフィシャルなんて、最悪だ。仕方ない、今日のハンコは諦めるとしよう。皆勤じゃなくてもそれなりの回数までいけば、最後の最後にお菓子を貰えるのだ。
ラジオ体操には間に合わないこの時間も、一般的に見れば早起きの部類だ。いつの間にかしゅーねーちゃんから抜けていた肉棒が、雄々しく朝勃ちを迎えている。ぐっすり眠っているところを起こすのも申し訳ないので、胸や尻にゆるゆると擦りつけるだけの射精で我慢した。
そっとベッドを抜け出し、熱いシャワーを浴びながら今日の予定を考える。仕事の斡旋を約束したはいいものの、しゅーねーちゃんのドジっぷりを考えれば、ミスが許されない類の職は紹介しにくい。
コネ入社というものは、両極端な結果になりがちだ。すなわち『役立たず』か『有能』かのどちらかである。そしてしゅーねーちゃんが有能か無能かで言うと……いや、言わないでおこう。とにかく、彼女に合った職場を探すことが肝要だ。
くたびれたタオルで体を拭いて、昨日と同じ服を被る。あまり衛生的ではないが、新しい服もないから我慢しよう。それにそろそろ頼んでいた荷物が──っと、きたかな? 呼び鈴を聞いて玄関へ向かうと、扉の外にはいくつかのダンボールが置かれていた。
昨晩に頼んで明朝に届くとは、さすが近未来的な世界である。PETでぱぱっと支払いを済ませ、何回かにわけて荷物を運び込む。子供になると、こういった単純な作業がいちいち重労働になってしまって辛い。
とりあえず要冷蔵の食品を冷蔵庫に詰めていこう。成長期の子供がカップ麺だのもやしだので過ごすのは、健康的によろしくない。というか何度も言うけど、お金をかけるところを間違ってるよね。まともな食事ができていないのに、なぜ缶ジュースやお菓子の袋があるんだ。
新しい目覚まし時計を買う余裕があるなら、新しい服を買うべきだ。中々雇ってもらえないと愚痴っていたが、面接にツギハギだらけの服を着ていって、採用してくれって言う方が無茶だろう。
冷蔵庫の整理を終え、軽く部屋の掃除をした後に朝食の準備に入る。サラダとベーコンエッグ、トーストにコーンスープというなんの捻りもない、ありふれた朝食である。しかしこと食事に関して言えば、『ありふれた』という表現は褒め言葉となる。
万人に受け入れられたからこそ、『ありふれた』という称号を得ることが出来たのだ。それは実に素晴らしいことではないだろうか。
「おはよー、宙……うわ、すごいごちそう」
「ほんとだー。宙が作ってくれたの?」
「おはよう、二人共。お弁当も作っといたから持っていってね」
弟たちは姉の献身をしっかり感じているようで、勉学も部活も頑張っているようだ。とはいえ、やっぱりしゅーねーちゃんの血筋と言うべきか、大雑把な部分は変わらない。彼等の昼食は学食か購買であり、一般より安いとは言え外食は外食なのだ。こちらも家計費を大きく圧迫しているに違いない。弁当のありがたみを教え込まねば。
「しゅーねーちゃんは?」
「まだ寝てるよ。昨日色々あったし、疲れたんだろうね」
「うん……ネットニュースにもなってたもんな」
「まだ落ち込んでるのかな…」
「大丈夫、大丈夫。アツホとタイチが寝た後、すっごい悦んでたからさ」
「へ? 喜んでたの?」
「ああ、宙が仕事紹介してくれるって言ってたからか?」
「その他、諸々も込みでね。まま、しゅーねーちゃんのことは僕に任せなって」
「お、子供の癖に生意気言いやがってー。しゅーねーちゃんは俺たちのしゅーねーちゃんだからなー」
「でもその年でオフィシャルってすごいよなー」
ううむ、間延びした喋り方がどことなくアホっぽい……が、しかし彼等は進学校の中でも成績上位の二人だ。それすなわち、僕よりも頭が良いということに──くっ、深くは考えないでおこう。だいたい僕が高卒認定に落ちたのだって、想像の二倍くらい難易度が高かったからだ。
小卒の時点で元の世界の中卒以上の学力ってことは、高卒の難易度も推して知るべしだった。そう、だから僕の頭が悪いんじゃないんだ。よし、証明終了。
しかし子供に子供扱いされるのは、なんとも言えない感覚だな。まあ中学生からすれば、小学生が子供に見えるのは仕方ないか。でもこういうこと言ってる子に、姉との情事を見せつけるシチュエーションって凄い興奮しそうだよね。絶対やらないけど。
「弁当、ありがとなー」
「サンキュー」
「はーい。部活、頑張ってね」
部活かぁ……なんとなく羨ましい、もう戻れない青春の日々──あ、戻ってたわ。バリバリ現役だったわ。二人を優先したせいで、すっかり冷めてしまった朝食を口に詰め込む。そのまま洗い物を済ませた後、いまだに寝ているしゅーねーちゃんから布団を引っ剥がす。
生なましい匂いが漂い、体中に付着していた精液がカピカピに乾いている。眩しそうに身じろぎしている彼女の太腿には、赤黒い液体の跡が掠れていた。シーツにも染み込んでしまっているが、荷物の中に新しい布団も入っているから大丈夫だろう……というかタイチたちが布団引っ剥がしてたら、色々ヤバかったな。
「むにゅ……あ、オハヨ……っ!? あ、えと……お、おはよう…」
なぜ二回言ったし。僕の顔をマジマジと見た後、横にあった掛け布団で、自分の顔の下半分を隠すしゅーねーちゃん。それでも真っ赤になった肌は隠しきれておらず、どうしようもないほど可愛い状態となっていた。ちらりと覗く瞳が上目使いのようになっていて、まるでもう一度してほしいとねだっているように見えてしまう。
「ごはん出来てるよ……先にお風呂入る?」
「う、うん……その…」
「…?」
「い、一緒に入ろ?」
──うーん……仕事の紹介は明日になりそうだ。
下記の作品も同時更新しております。
『混譚 ~まぜたん~』※オリジナル
『鬼滅の刃 “裏の柱”』※短編