※この作品はR-18です。

無人島暮らし~いろんなヒロインが流れ着くエロゲみたいな島~   作:みずしろオルカ

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 どうも、長らくお待たせしております、オルカです。

 最近は体調不良が顕著になってきておりまして、更に遅くなっております。

 さて、今回は外伝です。
 特に今作は独自解釈と独自設定が溢れておりますのでご注意ください。

 また、今回で原作アンケートは、締め切らせていただきます。
 続いて、キャラアンケートに移ります。
 今回は、メインヒロインをすべて選択しに入れられません。
 ファンの娘が選択肢に入っていなくても温かい心で許してください。

 それではどうぞ。


外伝 無人島から帰還 VOICEROID

 無事? あの無人島から脱出が出来た。

 俺としては、それぞれの世界に戻ってめでたしめでたし……っというのが希望的観測ではあるが、もし脱出すると仮定した時に、起こり得る可能性として高い方の選択肢だと思っていた。

 

 しかし現実は、VOICEROIDの世界に飛ばされた。

 全員を連れて……。

 この世界に一番詳しいであろう、ゆかりさんは存在統合されたようだ。

 ようだ、というのはこの世界はVOICEROID達がたくさん活動している。

 結月ゆかりという存在もあらゆる業種で活躍している。

 弦巻型、琴葉姉妹型、東北型と沢山の別タイプのVOICEROIDが、これまた多くの現場で働いているのだ。

 人間の仕事は? と疑問に思うかもしれないが、半分ぐらいが彼女達の仕事となり、もう半分を人間が行っている状態だ。

 後は、クリエイター系の仕事が増えている。

 俺達はVOICEROIDの制作会社に保護され、戸籍を用意してもらい、生活をしている。

 結月ゆかり型の全員が本社に俺らの保護要請をしたらしい。

 どうやら、制作会社にはマスタータイプという全VOICEROIDそれぞれの大本となる

VOICEROIDが居るそうで、彼女達にも影響が出た俺らの存在を会社側で観察して、今後に活かすつもりなのだろう。

 

 フェイトさんが制作会社で働き、小猫とアーシアが高校、木乃香と刹那が中学に通っている。

 俺は、会社に用意された家で掃除洗濯炊事等々をこなしている。

 

 いや、働こうとしたんだよ?

 だけど、小猫達からは日中全員家を空けるのは不味いと言われ、家を与えられた会社側からも、マスタータイプの進言で家事に専念させると言われた時には、はぁ!? ってリアルに声出たよ。

 

「いやぁ、こうしてみるとゆかりんの言っていた苦労人って話も頷けるね」

 

「せやなぁ、ウチ等がいきなり部屋に押しかけても、タメ息つきつつ持て成してくれるんは、苦労人やで」

 

「お、お姉ちゃん!」

 

「とりあえず、今食べてるビーフシチュー取り上げんぞコラ」

 

 弦巻マキ、琴葉茜、琴葉葵の三人。

 今日は三人だけだが、この前は東北姉妹、更に前は紲星あかりと音街ウナに京町セイカが来ている。

 

 全員がマスターユニットらしく、結月ゆかりのマスターユニットから俺の存在を知らされ、会社に申請を出して見に来ているらしい。

 

 俺は上野動物園のパンダか何かか?

 

「キョウジ君は、ゆかりんと何度もシタッて聞いてるけど……」

 

「ッ!? ゲホゲホッ……、R指定の規定があるんじゃないのかよ!?」

 

「あー、ウチ等マスターユニットは市場に出回ってる量産タイプの規定は通用せぇへんよ?」

 

 マジで!?

 そういえば、ゆかりさんから概要しか聞いていないから、一度詳しい規定を調べないといけないな。

 

「正確には、量産タイプの規定とマスタータイプの規定は別物で、私達マスタータイプは普通の人間と変わらない人権もありますし、会社の権力の届く範囲なら普通よりも優遇してもらえるんですよ」

 

 教えてくれたのは葵ちゃん。

 ああ、なるほど。

 マスターユニットは唯一無二だから、会社側は全力で守る必要があるのか。

 

 だから、マスターユニットのゆかりさんからの申請が直ぐに通ったわけだ。

 

「ちなみに、ゆかりんは最初のVOICEROIDという事で、私達よりも権限があるよ」

 

「だったら何故に俺らの家に日替わりでお前らを送ってくるのかを知りたいわ」

 

 そもそもマスターユニットとは何か?

 市場に出回っている『結月ゆかり』の同期情報が一時的に制作会社のデータベースに蓄積され、マスターユニットが取得し、『結月ゆかり』としての情報に変換し、全ての市場タイプへ拡散される。

 

 リアルタイム同期の情報とワンクッション置く定期同期があり、リアルタイム同期は緊急性の高い情報。

 例えば、規定違反の情報だったり、個体の危機情報などがリアルタイム同期の対象であり、それを受け取った時点で全市場タイプ及び会社へ情報が転送される。

 

 そうして、原因への対処がされるわけだ。

 特に警察へもVOICEROIDが普及しており、この娘らにも情報が行って第一報となる。

 初動がものすごく速いらしい。

 

「そこはゆかりんの事だし、面白そうとかそんなんじゃないかな~」

 

「容易に想像できる当たり、何も言えねぇ!」

 

 ゆかりさんはあの島では自重していたが、基本的に悪戯好きだし、お茶目な一面がある。

 この世界は、あの島程に死が眼前にあるわけでも無ければ、困窮する事も無い。

 

 そうなると、彼女の悪戯心が再燃することは当然の事だった。

 この部屋は制作会社の用意だが更に言えば、ゆかりさんの契約した部屋になる。

 

 まぁ、買い物から戻る度にゲームが増えてたり、調理器具が増えてたり、漫画や政治形態の本が増えたりと一貫したモノが無い。

 彼女が他の結月型との同期処理で知識が増えているのは知っていたが、何の仕事してるんだ?

 

「お、ええツッコミやな。ウチと漫才のコンビ組まへん?」

 

「そこは妹と組んで、美少女姉妹の漫才コンビで売り出した方が注目度アップだろ」

 

 普通に漫才風の会話をする。

 琴葉茜は存外しゃべりやすい性格をしていた。

 

 弦巻マキは会話の中に稀に探りを入れているのが分かってしまい、中々の切れ者でもあるという感じ。

 琴葉葵は、茜ちゃんとの会話やマキさんとの会話をしっかり聞いている。多分このメンバーの中で一番真面目な話をしやすい娘だと俺は思っている。

 

 勝手な印象だが、よくこの部屋に来ては雑談をしては帰っていく。

 俺を測られているのだろうと感じている。

 

「サラリとそういう事言うんだねぇ? やっぱり、件の島で沢山の女の人を抱いてきたプレイボーイは違うね」

 

「それもゆかりさんに聞いたのか? 已むに已まれぬ事情だったんだが……」

 

 事実なだけに否定できない。

 後悔こそしていないし、同じ状況でもその選択をするだろうが、やはりそこを責められると辛いものがある。

 

 一般的な倫理観に思いっきり反していることも自覚はあるのだ。

 特殊な環境下の話とはいえ、女性の弱みに付け込んだ行為だったと批判されても仕方が無い。

 

「いやいや、責めてないからね? 女の子達が特殊な状況を脱した上でキョウジ君とそういうコトを進んでしているなら、女の子達の中で納得してるって事だよ」

 

「当人同士が納得しとることで、外野がとやかく言うんは違うやろ?」

 

「そうですね、ゆかりさんや小猫ちゃん達が納得しているのでしたら、本人たちが納得してるんですよ」

 

 箱入り的な扱いをされているのに、随分とおおらかな感性を持っているな。

 いや、そういう感じでとらえてくれるならありがたい限りなのだけど、微妙な気持ちになるのは仕方が無いのだろう。

 

「まぁ、ゆかりんの仕入れてきてる読み物にも似たようなこと書いてたしね」

 

「ゆかりさんどれだけ自由なんだ!?」

 

 葵ちゃんの話では、存在統合される前からその手の資料は収集しては、他のマスターユニットたちと共有していたらしいが、存在統合されてからもその資料収集は続いているそうだ。

 

 最近は実体験を共有してくれる為、資料の重要度も上がっているそうだ。

 クソゥ……。

 

 自身の性体験を他のマスターユニット達に共有するのはやめて欲しいものだ。

 先日は、マキさんにニヨニヨしながらプレイ内容を聞かれた時はダッシュでその場から逃げる所だった。

 

「ゆかりんだしねぇ。あ、明日来るってさ」

 

「サラッと言ってますが、ゆかりさんが俺の居る状態で家に来るのは初めてですよ?」

 

 マスターユニットとしての仕事なのか、何らかの準備をしていたのか。

 ゆかりさんとこっちの家で会うのは初めてで、小猫の話だと俺が買い出しとかに出ている時に何回か来宅しているらしい。

 

 会社の方では何度も会っているんだが……。

 

 

**********************

 

「キョウジさんは相変わらず、女性に弱いですよねぇ」

 

「来てくれて早々で申し訳ないが……帰れコノヤロウ」

 

 悪戯っぽい笑みとからかう様な声に思わず、あの島の感覚で話してしまう。

 多分青筋が見えていたのかもしれない。

 

「ふふ、キョウジさんは相変わらずですね。だからこそ、私もマキさん達も好印象を抱いたのでしょう」

 

 そういうゆかりさんはあの島での彼女と被るような笑みを浮かべているが、同時に彼女の俺の呼び方に別人だという事が嫌がおうにも突き付けられる。

 

 あの島でマスター登録をしていた彼女はもう居ないのだろう。

 

「それで? マキさんや琴葉姉妹、東北姉妹達を代わる代わる俺の所に送り出してきた理由……あるんだろ?」

 

「ふふ、やっぱりキョウジさんはすごいですね。他者を侮らず、敬意を持っています。残念なのは自身を過小評価している事ですか……」

 

 そう言うと、手に持っていた袋から何か箱を取り出す。

 文庫本より少し厚く、大きさはコピー用紙程度。

 

 表面にはこう書かれていた。『銘菓 Vロイド饅頭』。

 

「……」

 

「はい、お土産です。ミルク餡を包んだお饅頭ですよ」

 

 三十個入と書かれた箱は、包装紙にアニメ調のゆかりさんとマキさんが描かれている。

 ロゴの周囲にはデフォルメされた琴葉姉妹や東北姉妹が描かれていて、よくある都道府県のお土産品といった感じだ。

 

「……お茶入れるから座ってて」

 

「はい♪」

 

 俺、弱いなぁ……。

 そう心で呟きつつ、台所へ。

 

 ミルク餡は牛乳系の飲み物が合うから、ミルクティーにしよう。

 この世界に来てから、マキさん達が頻繁に来る為に来客用のティーセットやお菓子なんかは一通り揃っている。

 

 貰ったお土産を開けてから、数個を皿に取って他のお菓子も戸棚から出す。

 お盆に乗せると、ティーセットも準備する。

 

 ロイヤルミルクティーではなく、ミルクを別で用意する方式だ。

 好みでストレートも楽しめるようにしている。

 

「はい、お待たせ。ミルクティーと貰ったお土産と来客用のお菓子だ」

 

「おお、流石キョウジさんです。うちの会社のお土産ですが、あまり食べないんですよね」

 

「そんなモノだろう。お土産のお菓子ってあまり普段食べないと思うぞ?」

 

 食べないよな?

 お土産用ってこともあって、値が張る物が多い。

 

 それよりだったら、地域特有のお菓子。

 所謂、地域に根差した会社のお菓子の方がよく食べると思う。

 全国展開だと思っていたら、地方限定だったようなもんだ。

 ……少し違うか?

 

 ミルクティーとお菓子でまったりした時間を過ごす。

 会話も当たり障りのない物で、あの島の話題は無い。

 ほとんどがこの家に数か月間通っていたマキさん達の話題だ。

 

「直接話も聞いていましたが、マキさん達ともかなり仲良くなったみたいですね」

 

「ほぼ毎日、入れ替わり立ち代わりで訪問されてたからな。それなりに交流も進むわ」

 

 特に、今日来ていた弦巻マキ、琴葉茜、琴葉葵の三人との仲は良好だと思う。

 まぁ、結月ゆかりと弦巻マキの二人はVOICELOYD界を代表する二人。

 

 会社側も彼女達の立場をかなり高い所に配置しているようだし、俺らの様な得体のしれない人間達を彼女の依頼で匿う程度には権力を与えている模様。

 

「いえいえ、マキさん達も多くの自分達からの同期情報を得ている身です。人柄を図る事ぐらいはできますし、キョウジさんの人柄がマキさん達を飼い慣らしたのです」

 

「言い方ぁ!?」

 

 いや、元々明け透けな言動も多かったが、こっちの世界だと本当にバサッと言う。

 そして、彼女達と俺が仲良くなることが分かっていたかのような口ぶり。

 ゆかりさんの目的は何だろうか?

 

「……独自な方法で稼いでるようですね」

 

「株と動画投稿で稼いでるんだよ。ゲーム実況がメインな」

 

 この稼ぎ方はゆかりさんを見て連想した。

 お陰様で無収入ではないし、ある程度贅沢も出来る。

 

 まぁ、プライベートと仕事の境が分かり辛いのはこういう職業の宿命だろう。

 

「なるほど、普通の仕事はさせてもらえませんからね」

 

「ゆかりさんや小猫がメインで俺の就職を邪魔しやがって、ヒモにしようとするなよな」

 

「私達的には、ヒモでも良かったんですけどね?」

 

 サラリと恐ろしい事を言う。

 そして、小猫達との交流は進んでいるようで安心であるチクショウめ。

 

「それと、確かに日中にこの家に人が居ないのは問題だって進言したのは私と小猫さんですけど、それに木乃香さんと刹那さん、フェイトさんにアーシアさんも賛成してますからね」

 

「ダメ男製造して楽しいかお前ら?」

 

 うちの家族全員に言えるが、男を堕落させるというか……。

 失礼な話だが、刹那以外はダメ男製造するタイプに感じる。

 

 唯一の刹那も甘えん坊な部分があり、別の意味で堕落しそうな気がする。

 

「それは男性側の意思次第でしょう。フェイトさんなんかは悪い男に捕まってヒモを養うなんてことになりそうな感じですが……」

 

「フェイトさんに失礼だし、ナチュラルに俺の思考を読むな」

 

 まぁ、失礼な考えをした俺が悪いのだが……。

 彼女は身内というか近しい人間に対して非常に甘い傾向がある。

 

 芯は強いし、意志も強い。

 少し世間知らずというか疎い部分があるが、真面目で職業柄か物事を調べたりすることが多いので、悪い人間に騙されるなんてことも無いだろう。

 

 だが、親しい人間に対して、自分のできる限りのことをしようと頑張ってしまう傾向があるのだ。

 

「キョウジさんと一緒になったので大丈夫でしょうけど、しっかりと見ててあげてくださいね?」

 

「……わかってるよ」

 

 この世界に来て、もうあの島の果実の影響は無くなった。

 それでも、俺と一緒に居たいと言ってくれた。

 

 フェイトさんや小猫達は、俺から離れずにこうして一緒に暮らしてくれている。

 少しでも彼女達の生活が楽になる様に、少しでもこの世界で不便の無いように。

 

「……これもマキさん達のお話通りですね」

 

「ゆかりさん?」

 

 呆れた様な、予想通りの箱の中を見た様なそんな感じの表情。

 マキさん達が何をゆかりさんに報告していたのかは気になるが、やはり何か欲しい情報があったのだろう。

 

「元々、私に同期された情報とマキさん達からの情報で予想していましたが……」

 

 そう言いながら、立ち上がって俺の前まで歩いてくる。

 その目は真剣そのもので、一瞬だけどあの島で暮らしたゆかりさんが脳裏をよぎった。

 

 今はもうこの世界のゆかりさんと統合されて、同一の存在というよりは一部となっているはずだ。

 

「相変わらず、自己評価が低いですね? キョウジさんは誰よりも小猫さん達を思って、誰よりもその身を粉にしてきています。もっと我儘に、もっと自分を大事にしてください」

 

 ズイッと椅子に座っている俺の前に身を乗り出すような形で、顔を近づけてくる。

 真剣な眼差し、決して逃がさないと言わんばかりの表情だ。

 

 後ろに壁があれば、俗に言う壁ドン状態になってたのではなかろうか?

 

「キョウジさん。キョウジさんが思っている以上に、小猫さん達は……私達も貴方の事を好いているのですよ?」

 

 グッと首筋に力が入ってしまう。

 それは眼前のゆかりさんの顔のせいか、それとも話題のせいか。

 

「どうして私が、こうしてキョウジさんと二人きりで話す機会をずっと持たなかったか分かりますか?」

 

 そんなのは簡単だ。

 知らない男に抱かれている記憶が、目の前の彼女には有る。

 

 あの島でゆかりさんが考えて、決めて、実行した行為。

 だけどそれは彼女には関係のない事だ。

 

 実際に抱いたわけじゃない。

 彼女にあるのは記憶だけのはずだ。

 

 だけど、良い気持ちがするだろうか?

 彼女にしてみたら、見ず知らずの男にひたすら抱かれ続ける記憶。

 彼女が決めたわけでもなければ、望んだわけでもない。

 

「私達、VOICEROIDはその特性上、別の私達から日々情報が流れてきます。それこそ、世界何千と派遣されている私達の情報です」

 

 それは知っている。

 経験や情報と、記憶や個体レベルの情報は分けられて保存しているとも聞いている。

 

 彼女達にとっては日常なのだろうが、俺からしたらその感覚は分からない。

 いや、もしかしたら経験する可能性もあるかもしれないが、日常的にそれを行う事を想像できない。

 

「キョウジさんは、私が同期された情報が忌避するモノだから私が会いに来ないと思っていましたよね?」

 

「……ああ、自分の知らない記憶の男となんて会いたくは無いだろう?」

 

 それが普通だろう。

 閉鎖空間で女性を抱き続けた事実。

 

 それは女性が忌避するであろう事柄であり、俺自身も最善の行動と思いやってきたが、どう考えても受け入れられるモノではない。

 

「それがそもそもの間違いです。私達は、その手の情報は幾つも経験しています。キョウジさん、何千と世界に展開されているVOICEROID達がそういう事件に巻き込まれないと思っていますか?」

 

 それは無理だろう。

 法の抜け道を探す様に、グレーゾーンを狙い撃つように、人間は行動する者が出てくる。

 

 他者の迷惑なんて考えない人間はどこにだって居る。

 俺が元居た世界でビルの爆破に巻き込まれて死んだように、目的の為に犠牲を厭わない人種は存在する。

 

「VOICEROIDのマスターユニット達は、全員そういう情報をカットしたり、スルーするスキルが有ります。……例えば、この近所のコンビニで働いている私は、店長に恋心を抱いています」

 

 更に顔を近づけてきて、額同士が当たる。

 熱い。

 よく見ると頬が赤く染まり、瞳も潤んでいる。

 

「でも、私はその店長を好きになったりはしません。私は、コンビニで働いている結月ゆかりではないですから……」

 

 肩と後頭部を押さえられ顔を反らすことものけぞる事も出来ない。

 互いの呼吸が感じ取れる距離で、額の熱がジワジワと上っていく。

 

「今まで会いに来なかったのは、私なりに動いていたからです」

 

 そう言うと、一旦離れてからカバンから書類と取り出し、突き付けてきた。

 何かの書類だ。

 

 丁寧にまとめられた書類には、大きく題目が記されていた。

『VOICEROIDの人権法の改定と結婚に関する改定案』

 

「流石に、人権や結婚なんかに関する事なので、最初のマスターユニットである私でも苦労しましたが、無事に先日国会への提出が叶いました。過半数を抱える与党からの法案なのでほぼ決定とみていいでしょう」

 

 内容は簡単に言えば、VOICEROIDの人権範囲の拡大と、人間との結婚に関する法案だ。

 VOICEROIDには男女が存在し、なおかつ世界は少子高齢化が進み、結婚率も大幅に減少している。

 

 社会問題で少子高齢化はガンだと言える。

 すぐに子供が沢山生まれたとして、今すぐに労働力が確保できるわけではない。

 子供を育て、その子供が働ける年齢になる頃には高齢者は生まれた人数以上に社会からいなくなっているだろう。

 

 亡くなっていたり、働けない状態になっていたりと様々だ。

 だというのに、生まれた子供たちは社会から居なくなった人達よりも少ない。

 

 現状は男女ともに結婚する事すら稀だという。

 

「社会問題から上手く繋げてるな」

 

「はい、この法案が通れば、世間で活躍している量産型も、私達マスターユニットも結婚して子供を産むことができます」

 

 笑みを浮かべながらそう言うゆかりさんは一仕事終えた達成感を滲ませていた。

 その姿を微笑ましく思いつつ、更に資料を読み進めていく。

 

 『少子高齢化に対応する為の施策の一つとして、一夫多妻制の法令整備について』という文言が目に入った。

 

「……」

 

 無言でその部分をゆかりさんに見せる。

 フイッと目線を反らされた。

 

「いえ、少子高齢化対策に関する対策の一つとしての名目なので、必要なモノなんですよ」

 

「いや、これもゆかりさんのプランで必要なモノなんだろ?」

 

「……さっすがですよキョウジさん! その分析や理解力は目を見張るものがあります!」

 

 キラキラした笑顔を見せながら、椅子に座っている俺の膝の上に対面座位の様に座ってくる。

 女性特有の柔らかい身体の感覚と、甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 

「一夫多妻制のテストケースが必要だと考えていまして、キョウジさんが最適だと考えています」

 

「え?」

 

「今までの一夫一妻制を崩すのですから、男女双方に相当なバッシングが予想されます。そして家族や親族にも相当の負担が考えられます」

 

 それはそうだ。

 一夫多妻制の最初の一組目ともなれば、マスコミの格好の餌食だ。

 本人のみならず、周囲の人間すら食い物にしてくるだろう。

 

「だからこそのキョウジさんです。この世界に親類は無く、小猫さん達も同様です。その上、私達VOICEROIDとも良好な関係を築けている」

 

 あ、理解してしまった。

 この法案を提出した理由も、マキさん達を次々に俺と合わせていた理由も……。

 

「VOICEROIDとの結婚及び一夫多妻制の最初の男性として、最高の存在なのです」

 

「なんてことを考えるんだ!?」

 

「マキさん達は積極的でした。小猫さん達も喜んでサインしてくれましたよ?」

 

 そう言いながら取り出したのは数枚の紙。

 殆ど記入が住んでいて、書類の名前は『婚姻届』だった。

 

 外堀を埋められているのか!?

 俺が日々を過ごしている間に、ゆかりさんは外堀を埋めていた。

 

 いかん、ゆかりさんは俺に対して好意を持っていないという前提で考えていた。

 だが、それのせいで可能性を排除していた。

 

「こっちが小猫さん達の分で、こっちが私達VOICEROID達の分です。言っておきますが、希望者だけですからね?」

 

 そう言われて婚姻届を見ると、小猫達は全員分あり、VOICEROIDの娘達も俺が会った事のある娘達は全員分あった。

 

 音街ウナや東北きりたんは幼かったはずだが……。

 

「因みにウナちゃんやきりたんは、容姿が幼いだけで他のマスターユニットと変わらない年齢ですよ。個体年齢で言えば、ウナちゃんときりたんは、あかりちゃんよりも年上です。合法ロリですよ、キョウジさん」

 

「だから言い方!?」

 

「合法ロリは、小猫さんとウナちゃん、きりたんもですから三人ですよ!」

 

「よっし、話を聞く気が無いなテメェ!?」

 

 畳み掛けられるように情報を渡されて混乱してくるが、落ち着いて整理する。

 

 ゆかりさんは、おそらく俺らがこっちに飛ばされて来てすぐにこの法案を考えて準備していたのだろう。

 だからあまり俺達に会いに来なかった。

 

 おそらく俺を外に出さなかったのも、この世界にあまり関わらせない為だろう。

 本来は小猫達も外に出したくはなかったのだろうが、俺よりも小猫達を普通に生活させた方が広く法案の実情を宣伝できると踏んだ。

 

 そして、VOICEROIDとも結婚の実績を作る為に、他のマキさん達を俺と引き合わせて、相性を見ていた……という所だろう。

 

「正直な所、マキさん達の中で二、三人程度希望者が出てくれれば十分でしたが、キョウジさんは流石です。皆さんを見事に攻略してくれました」

 

「その気はなかったんだが……」

 

「いい加減に気付いてください。それがキョウジさんの魅力です」

 

 再びコツンッと額を押し当てられ、真剣な眼差しを向けられる。

 足が椅子の背もたれごと巻き込む様に、足を絡ませてきた。

 

「あの島の記憶から自罰的な行動や好意に対して一歩引いた感じがありましたが、こっちでも変わりませんね」

 

 逃げられない。

 頭を固定されているし、椅子ごと足を絡められてしまっている。

 

「一朝一夕には変わらない事は分かります。ですから……」

 

 キス。

 それも、舌を絡ませては口を離す事も無い深いキスだ。

 

「私達も、小猫さん達も……長い時間をかけてでも改善していきます。キョウジさんは、いつも通りで構いません。私達が全員で自覚させてあげますから」

 

 そう言いながら、俺を解放するとテーブルに婚姻届を並べていく。

 そしてペンとハンコを用意された。

 

「どうぞ、日本初の一夫多妻制及びVOICEROID婚姻の最初の夫です」

 

 笑顔でテーブルに広げている婚姻届を書く様に進めてくるゆかりさん。

 この世界での俺の立ち位置を確信した瞬間だった。

 




いかがだったでしょうか?

今回は独自解釈や独自設定が多い為、楽しんで頂ければ幸いです。

ご不明な点等ございましたら、遠慮なくご質問下さいますようお願い致します。

また、原作アンケートの結果は、
(146) 僕のヒーローアカデミア
(232) とある魔術の禁書目録
(552) IS 〈インフィニット・ストラトス〉
(430) Fateシリーズ
(116) めだかボックス
上記の通りとなりました。

ISという事ですが、メインヒロインがすべて選択肢に入れられず、ストーリーの都合上必要なキャラが選ばれておりますのでご了承ください。

キャラクターアンケート5

  • 篠ノ之束(天災)
  • シャルロット・デュノア
  • ラウラ・ボーデヴィッヒ
  • 更識 楯無(刀奈)
  • 更識 簪
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