京都2日目の朝。
旅館で出された朝食を食べているのだが、昨晩とかなり雰囲気が違っていた。
まず席順から違っていて、テーブルに俺を挟んでテオとニィが座り、向かい側にアリカとエヴァが座っているのだ。
しかも、なんと言うか……。
「…………ぁ……」
「どうした、テオ?」
「なっ、なんでも……な、なぃ、のじゃ……」
テオが、ものすごく、かわいい!
褐色の肌の頬を淡い朱色に染めて行儀が悪いが箸を口に咥えて、こちらをチラチラと見上げてくるんだ!
はじめてを経験したから顔を合わせるのが恥ずかしいのか、俺の動きに1回1回びくっと大げさに驚くテオドラは本当にかわいい!
しばらく見つめると、顔を逸らして誤魔化すように俯いたままご飯を食べたり、少し足を組みなおそうと近づいただけでかわいらしい悲鳴を上げて飛びのいたりと、なんとも微笑ましくあり、かわいらしいのだ!
「むぅ……」
もちろん隣のニィもだよ?
「アルヴィン、あ~……ん」
「あ~……ん、うん、美味しいよ」
「そうか♪」
テオに対抗するように何度もアピールしてくるし、ニィは確実に俺の貞操を狙っくる。そりゃあもう、浴衣姿のノーパンで胡座をかいた俺の上に座って小さいお尻を押しつけてきたり、ワザと手を胸に押しつけて揉ませたり……。
そろそろ性的に喰われそうだ。
まっ、逆に喰い返すんだろうけど。
そして正面にいる2人というと……。
先に食べ終わっていて食後のお茶を啜っていた。
いや、うん、当然ただ啜っているだけじゃない。
嫉妬深いエヴァは正面でイチャつかれてるのが気に入らないみたいで、お茶を飲んでるフリをしながらテーブルの下から足を伸ばしてきてペニスを弄っている。
アリカはというと、エヴァに視線で「おまえもやれ」と促されて、恐る恐る足を伸ばしてきて、いまでは夢中で亀頭辺りを指で擦ってきている。
まあ、俺も反撃と足を伸ばして浴衣姿でノーパンだった2人のオマンコを弄ってるんだけどな。
アリカには左足の親指を、エヴァには右足の中指をオマンコに突っ込ませてもらってる。
それぞれ昨晩の精液が残っていてすごく興奮する。
――っと、ここで俺とニィが食べ終わった。
「ごちそうさま」
と手を合わせて感謝の言葉と礼をして箸を置き、勃起して射精したくなってきたペニスはエヴァをテーブルに潜らせて飲ませようかと考えていると――。
隣にいたニィが動いた。
まるで隠す気がないようで、顔を俺の股間に埋めて勃起したペニスを咥え込んだ。
「ニィ? ――っ!?」
テオもニィの突然の行動に首をかしげていたが、すぐに何をやっているのか気づいたようで、目を大きくして言葉を失っていた。
「ニィっ」
俺もニィの頭を掴んで呼びかけるが、ニィは早く射精しろとペニスをちゅううっと吸いついた。
「――っ、だ、
ここまでされたら仕方がないと、俺は射精を開始する。
ビュルッ! ビュビュッ! ビュビュゥウウウッ!
ニィの口内でペニスが跳ねる!
かわいらしいテオに、エヴァとアリカの足コキ、ニィのバキュームフェラで勃起したペニスから煮えたぎった精液がニィの口から喉を通って胃に吐き出される!
「じゅぶぶっ、んぶっ! ふー、ふー……、ごくごきゅっ、ふー……」
股間に頭を埋めたままニィは精液をドンドン飲み込んでいく。
どこで覚えたのか射精中も気持ちよくなるように、唇を引き締めて竿を絞めたり緩めたりしながら、小さな舌でも竿をやさしく撫でて、喉を使って最後の一滴まで搾り取るかのように吸いついた。
ニィの突然の行動に固まっている3人を無視して、ニィはたっぷり時間を使って精液を飲み込み、口を離した。
「はぁはぁ……、ネバネバで熱々で、濃厚で……、ふふっ、美味しかったぁぁぁ」
微笑みながら口元に付着した精液を舐め取り、唖然としているテオに見せつけるように、ペニスの掃除を始めた。
竿から亀頭にかけて小さな舌で舐めたり、キスをしたりと綺麗に掃除すると、そこでやっと起き上がった。
「に、ニィ……?」
テオが声をかけるが、ニィはトロンとした緩んだ顔で口をもごもごさせていて聞いていない。
おそらく口のなかで精液を味わっているんだろう。
たっぷり味わいつくしたあと、ごくんと喉を鳴らして息をつき、何事もなかったように、
「ごちそうさまでした」
と手を合わせた。
…………。
…………いつの間にこんなエッチな娘になったんだろう……?
テオはそんなニィを見て――。
「こ、これが妾のなかに入っておったのか……」
「ちょっ!? テオ!?」
「ふ、太いし、な、長くてキノコのようじゃな……。ニィはこれを咥えて……」
聞いてない!?
ペニスを両手に持って観察してらっしゃる!?
ちょっ!? そのまま行くと――!
「こ、コレ! アルヴィンは妾のものじゃぞ!」
「なっ!? 何をどさくさに紛れて宣言してるんだ貴様はぁぁぁっ!? 元からアルヴィンは私のだぁぁぁっ!」
今度はアリカとエヴァが無駄にいい身体能力を使って、テーブルを飛び越えてテオから俺を引き離しにきた!
「こ、コラ、2人とも行儀が悪いぞっ!」
「うるさい、アルヴィン! いまはこいつらに私が1番であると教え込まないといけないんだ!」
「何を言っておるのじゃ! 誰が1番など別にどうでもいいであろう!」
「ならアリカはアルヴィンから手を離せばいいじゃろう! 妾はさっきはじめてを終えたばかりなんじゃから少しは優遇してくれてもよいじゃろう!」
「それとこれとは関係ないのじゃ! それよりも幼児体型の主らではアルヴィンのは耐えられんじゃろう! 妾が代わりに身を捧げてやろうと言うのだから――」
「誰が幼児体型だぁぁぁっ! 貴様っ! 昨日あれだけイカせてやったのを忘れたのか!?」
「別に妾はエヴァにイカされた覚えはないぞ? アルヴィンにイカされておったのは覚えておるんじゃがのぅ」
「き、貴様ぁぁぁっ!」
「ふふふ、今のうちじゃ。アルヴィン、ほれ、妾の乳に吸いついてよいぞ。さっきからムズムズして切ないのじゃ」
「む、そうか? だったら、いただくよ」
「――っん、ふふっ、ちゅうちゅう吸いついてかわいいのぅ」
「む、テオが上半身を攻めるなら、妾はパイズリでもしようかのぅ」
「――っ! き、貴様ら何をなっとるのだぁぁぁっ! 凍らせて欲しいのかぁぁぁっ!」
「エヴァ、うるさい」
「――っ! ニィ!? 仮にも母親になんて口の聞き方を……!」
「まあ、落ち着いて。それよりもエヴァも参加して精錬されたテクニックで2人を沈めればいいんじゃない?」
「おお! それはいい案だな! しかし、おまえは参加しないのか?」
「今はいい。処女を散らすときは2人っきりでしたいし。エヴァは気にしないで2人を沈めてきて」
「……そうか、わかった。――私はアルヴィンに群がる雌犬共に、しっかり私という存在を刻み込んできてやろう! 私の勇姿を見ているがいい!」
「がんばって、ママ」
「――っ! ああ! 行ってくる!」
「…………さてと、カメラとビデオは……、よし。――認識阻害と透明化の術式展開。これで自由に撮影ができる。ふふふっ、これも家族でのアルバムになるよね」
結局俺たちは夕方近くまで盛り続け、京都旅行2日目は旅館で過ごすことになった。
◆
翌朝、京都旅行3日目。
俺たち5人は昨日の失敗を反省して大人しく朝食を食べ、京都の観光名所巡りへと繰り出し、十二分に京都を楽しみ、再び旅館へと帰ってきていた。
今回は部屋に付けられた露天風呂ではなく、旅館の広い露天風呂(男女別)に入り、そのまま静かに布団に入り、魔法世界の現状と今後の対策を話し合っていた。
まあ、話し合いといっても、ほとんどがエヴァとニィからの報告だけどね。
そこで報告されたことは、『完全なる世界』が活発な行動を見せていることと、使い魔達を使って起こした企業が戦時ゆえの急成長を遂げて各国から資金が集まってきていること。
それに各国に潜り込ませた使い魔達のなかで、メガロメセンブリアの元老院に潜り込ませようとした使い魔が消されたことなどが話された。
「どうやら元老院が怪しいみたいじゃのう」
「ああ、あそこは昔から腐っているところだからな。一昔前にも世界樹と土地欲しさに私とアルヴィンを賞金首にしたてあげようとしたりと本当に迷惑な奴らの巣窟だよ。――国では『立派な魔法使い』とかいう精神を掲げて国民を洗脳するみたいにいいように使っているしな。元々真っ黒な組織だからこそ、『完全なる世界』の隠れ蓑になっている可能性が高いと思う」
報告を聞いたテオがうなずきながら言い、エヴァが賛同する。
アリカはエヴァの言葉にうなずき、そういえばと口を開く。
「『紅き翼』はどうなっておるのじゃ? 指名手配にされて逃げ回っておるのじゃろう? そもそも本当に妾達を助けようと動いておるのか?」
エヴァは首を横に振って答える。
「それについてはまだ不明だ。聞いていたよりも思いのほか慎重で、表にも裏にも情報が出てこない」
「そうか……」
残念そうに息を吐くアリカに、ニィが首をかしげながら訊ねた。
「アリカって、『紅き翼』のナギと仲良かったんだっけ?」
「そうなのか!? アリカ!」
突然の情報にテオががばっと起き上がりアリカを見る。
アリカはテオの興味津々という視線を受けるが……。
「ん? 別に何もなかったが?」
と普通に返してテオを意気消沈させた。
そのテオの落胆振りにアリカは慌てて思い出すように唸り、慌てて話し始める。
「あっ、そっ、そういえばデートに誘われたのじゃ! オスティアでもデートのようなものもしたような記憶が……、ある? む、む~……、買い物とソフトクリームを食べたぐらいじゃったし、そのあとはテロが起きて『完全なる世界』のアジトに乗り込んだり……。いま思えばあれはデートじゃったんじゃろうか?」
「テロに巻き込まれて敵のアジトに乗り込むデートねぇ……」
いったいどんなデートなんだ?
エヴァも半ば呆れたようにため息を吐く。
「普通のデートの誘いとかはなかったのか?」
「ふ、普通のデート……」
再びうんうんと唸りながら思い出そうとするアリカ。
はっと思い出したと口に出す。
「そういえばナギに、人間ながらも時を止められ、『黄昏の巫女』という名を付けられてウェスペルタティア王国の最終防衛装置にされているアスナをつれて京都でデートしようと誘わたことがあったのじゃ!」
「「「「…………」」」」
「はぁ……。早く大戦を終わらせてアスナを解放し、再び全員そろってまた京都旅行を楽しみたいのう」
憂いをながらつぶやくアリカだけど……。
『おい、アリカの奴、ナギという男の存在を忘すれてないか?』
『うむ、エヴァの言うとおり、あの言い方なら忘れておるな。おそらく皆の中にはナギという奴は入っておらんじゃろう』
『デートしようという言葉だけ覚えてて、デートの意味とかそういうのは忘れてるみたいだし』
『俺、さっきまでアリカにデートしようって誘っていたという赤毛少年のナギに嫉妬心を抱いていたけど、アリカの話しを聞いて少しナギが不憫になってきた……。まあ、本人に悪気はないんだろうけど、アリカのなかでのナギの位置付けが圧倒的にアスナって子より低くて……』
全員がアリカに視線を集中させて小声で話していると、何を勘違いしたのか予想はつくが……、アリカは真っ赤になってナギとの関係を否定し始めた。
「ち、違うぞ、アルヴィン! わ、妾は……そ、そなただけで、その……、ナ、ナギはケンカ相手というか……、妾が愛しておるのは……、――っ! とっ、とにかく違うんじゃからな!」
「うん、ありがとう、アリカ」
俺は隣の布団から迫ってくるアリカを正面から抱きしめるが、内心で赤毛少年ナギに謝った。
「こ、コレ、いきなり抱きしめるのは止めよ……、こ、今夜はしないんじゃろう」
真っ赤になってもじもじするアリカを抱きしめながら、謝った。
――本当にいろいろごめん、赤毛少年。
「「「…………(天然は時に残酷なんだな)」」」
◆
3日間の京都旅行を終えて魔法世界に戻った俺たちだったが、もはや牢屋に閉じ込められているほうが大戦を長引かせるだろうと、エヴァの手引きで『闇の迷宮』から脱獄することにした。
脱出……、まあ、救出になるんだが、その方法はかなり単純で、使い魔たちに起こさせた会社のなかの1つである傭兵派遣会社で同じく使い魔だけで構成したチームを派遣し、資金欲しさに『闇の迷宮』を荒しに来たが、そこで怪しい奴ら(監視している『完全なる世界』の連中)と戦闘になり、ついでに捕らわれていた姫を救い出したという設定で救出されることにしたのだ。
そのあとは救出された俺たちは国に帰っても『完全なる世界』の者たちに捕らえられる可能性が高いと、それぞれ国に帰ることはせずに、『闇の迷宮』をアジトに変えて傭兵集団(すべて使い魔たち)を通じて自分たちの身の安全と、大戦を拡大させている『完全なる世界』をすべての元凶とし、いままでに集めておいた資料と共にその存在を全世界に公表した。
『完全なる世界』を魔法世界の敵としてからはすべてが早く進んでいく。
各地に潜り込ませていた使い魔たちが連携し、『完全なる世界』の傀儡になっていた組織を暴きだしたり、まえに元老院を兆弾したときのように民衆のなかに含ませた使い魔たちに意識誘導させて戦争の沈静化をさせたりと、捕まっていた約半年の間に勢力を拡大させ、様々な場所に潜り込ませた使い魔たちがものすごい働きを見せて、大戦が『完全なる世界』によって仕組まれていることを暴き出していってるのだ。
それとほぼ同時に『紅き翼』のメンバーたちの無罪も使い魔たちに訴えさせて、どうにか再び接触することができた。
まあ、赤毛少年はアリカを自分で『闇の迷宮』から助け出したかったみたいだけどな。
再会したとき、自分達が活躍するまえに打倒『完全なる世界』ムードになってて若干残念そうにしてたし。
だけど、こちらとしては『紅き翼』の参入で戦力がかなり増強できたので大助かりだ。
赤毛少年ナギはアリカにアプローチしてるのか近衛兵みたいな感じで結構近場にいて動いてくれるし、筋肉達磨のラカンは喜んで敵拠点を殲滅しに行ってくれる。詠春とかいう神鳴流剣士やゼクトという見た目子供は、ナギやラカンと違って周りに被害が出ないように戦ってくれるし、アルビレオとかいう実体のない人型を作り出す本や、無音拳とかいう武術の使い手ながらも元政府の犬というガトウは情報収集能力に長けていて、そちらの面で活躍したりと、トントン拍子でことが運んでいくからな。
ああ、トントン拍子で進んで行くんだが……。
「お願いします! 黒龍さま! 僕に戦う力をください!」
『紅き翼』の一員である少年探偵タカミチがなぜか貢物らしき果物を持ってお願いに来ていた。かれこれ1週間になる。
相変わらず俺は喋らないので、アリカが代わりにタカミチに訊ねる。
「なぜこやつに頼んでおるのじゃ?」
アリカの問いに、片膝をつき頭を下げたままタカミチは言う。
「詠春さんから聞いたんです! 京都というところでは大昔から黒龍さまにそれ相応の対価を支払えば、なんらかの力を授けてくださると! 僕もナギさんたちの役に立ちたいんです!」
ああ、詠春……、あの神鳴流剣士ね。暇があれば俺に話を聞こうとしてくるからあいつの前では基本アリカの胸の谷間に顔を埋めて狸寝入りしてるんだよなぁ~。
「そうか……」
アリカはタカミチの話しにうなずいて……。
『どうするんじゃ、アルヴィン』
『俺に丸投げかよ!?』
『当たり前じゃろう? こやつは主に頼んでおるのじゃぞ』
『それはそうだけど……』
う~ん、どうするかなぁ……。
いまは戦力になる者が1人でも欲しいのは本当なんだけど、いまのタカミチが魂を対価にしたとしても絶対に赤毛少年ナギに劣るだろうし、ナギとほぼ同等の『完全なる世界』の幹部に経験からいっても太刀打ちできるはずがないし……。
だけど、1週間も真剣に頼み込んできているこいつを無下にするのは……、まあ、できるけど。
ん? ああ、そういやこいつって白スーツのガトウから無音拳習ってるんじゃなかったけ? 同じ白スーツだから思い出したよ。
ん~……、まだ弱くていまは役に立たないだろうけど、戦争が終わればそれなりに役に立つんじゃないか?
それに俺は戦争中、表で活躍できないから暇だし、暇潰しがてらに鍛えるのもいいんじゃないか?
うん、暇潰しがてらに魔界で読んだいた漫画で使えそうだった戦闘技術を教えてみるか。
考えがまとまったので定位置となっているアリカの首からタカミチの前へと移動する。
そして威厳たっぷりに名を呼ぶ。
「タカミチよ」
「は、はい!」
まさか喋れるとは思っていなかっただろうタカミチは驚いたが、きちんと顔を伏せたまま返事を返した。
俺は浮遊しながら訊ねる。
「力が欲しいのだな?」
「はい! 僕はナギさんたちの役に立って大戦を停めたいんです! そのための力が欲しいんです!」
真っ直ぐこちらを見てくるタカミチ。まったく曇りがない子供らしい眼だが、俺は冷酷に告げる。
「……おまえのようなただの子供が魂を捧げたとしても得る力はないぞ」
「――っ。……それはわかっています」
「そもそもいまおまえが大きな対価を支払い、一時的に強大な力を得たとしても『紅き翼』の面々は喜ばないだろう。それどころか子供であるおまえの未来を奪わせ、戦線へと出すことになった己の無力さを嘆くかもしれん」
「…………」
俺に言われて俯くタカミチだが、ここからが本番だ。
俺はタカミチに言う。
「だが、戦後……、将来の力となる戦闘技術を与えることはできるだろう」
「――っ!」
まだ希望があるのかと、バッと顔を上げたタカミチにもう一度、今度は分かりやすく言う。
「いまのおまえの力は微々たるものだろう。――しかし、将来、『完全なる世界』を打ち倒したあとの未来、大人へと成長する頃まで鍛え続ければ、おまえはガトウを超える力を得るであろう。――今の『紅き翼』が年月によって過去の者に変わっていく頃、おまえは次世代の『紅き翼』になるだろうな」
「次世代の『紅き翼』……」
「そうだ。いまではない、未来のおまえだ。おまえの師であるガトウも今回の大戦で使うために無音拳を教えているわけではないのだからな」
俺の言葉にアリカもうなずく。
「そうじゃな。ガトウも大戦が終わったあとの未来のために教えておるのじゃろうな」
「…………」
タカミチは何かを考え込んでいるように無言だ。
おそらく教え込まれていた無音拳が自分の将来のためのものだったとは思ってなかったんだろう。
ここで話を早く進めるためにこちらから声をかける。
「どうするのだ、タカミチよ。主は今、役に立つために大きな対価を差し出し、未来を捨てるか? それとも、いまは裏方で我慢し、未来に役に立てるように鍛えるか?」
「……ぼ、僕は……、僕は――!」
……タカミチは未来を選択した。
◆
未来を選択したタカミチに改めて契約を持ちかける。
「未来をとった主に求める対価は3つ。まずは俺が教える戦闘技術を他の誰にも教えないことだ」
「あのっ、教えないというのは?」
「勝手に弟子をとったり、他人に俺が教えた戦闘技術を教えるなという意味だ。やり方を故意ではなく、力量差などで見破られたりした場合は不問とする。――そして2つ目の要求は俺が自由に話せる事を誰にも言わないこと。これに関しては俺が自分から話せることをバラすまでだ。話せると分かれば青山詠春あたりがいろいろとうるさそうだからな」
「わかりました」
「そして最後の対価だが、無音拳以外の戦闘技術を習うという断わりをガトウに入れておけ。教えてもらってる者が途中で別の者に教えを請う場合の最低限の礼儀でもあるからな」
「え?」
拍子抜けしたような声を漏らすタカミチ。まあ、そうだろうな。対価という対価がないんだから。
俺は威厳たっぷりから少しだけ態度を崩して言う。
「俺が教えるのは手ほどきまでだからな。これぐらいの対価で十分だ」
「こ、黒龍さま……。――ありがとうございます!」
タカミチは感激したような声を漏らして頭を下げてくる。
俺はそんなタカミチにニヒルな笑みを浮かべて、
「だが、俺が教える戦闘技術を生かせるかどうかはおまえしだいだということを忘れるなよ? それとガトウには俺が喋れることは話さず、あくまで念話で話したと言え」
と、ゆっくりと浮遊しながらアリカの首へと戻った。
タカミチはもう一度深く礼をすると立ち上がり、「すぐにガトウさんに報告してきます!」と飛び出していった。
これは今日中に教えを請いに来るだろうな。
タカミチが出て行って誰もいなくなったところでアリカが訊ねてきた。
「よいのか、アルヴィン。あのような対価で」
「まあ、アリカの言いたいことはわかる。でも、まあ、暇潰しと子供にあそこまで頼まれたらねぇ」
「ふふふ、とことん甘い大魔王じゃのう」
そう言って俺の頭を撫でながら微笑むアリカ。
い、言えない……。ま、漫画で読んだ技をタカミチに再現させてみようとかいうノリで教えようとしてるなんて……。
「と、とりあえず、そろそろ休憩しないか? タカミチと話す前から仕事していたんだしさ」
「む、それもそうじゃな。一息つくかのう」
…………。
……うん、よし! タカミチにしっかり教え込んでやろう! 契約通り手ほどきしかしないけど、魔界でいまの俺と同じように漫画技を再現しようとした悪魔が記した、特訓とかのやり方とかが書かれた書の写本を渡せばいいだろう。
え~と、写本はタカミチと血で契約させて他の誰にも見えないようにして……。最初に覚えさせようとした6つの超人技だけで内容を再構成させて、魔力と気でのやり方も書いてと……。
これはいい暇潰しになりそうだ。
◆
こちらの予想していた通り、その日の内にやってきたタカミチ。
俺はさっそく訓練用ダイオラマ魔法球(市販)を使って、タカミチとの特訓が開始した。
「それではタカミチ! これからおまえに戦闘技術を教える!」
「はい!」
「この戦闘技術は6つの技から構成させる技で、この6つを習得し、鍛えれば無音拳がなくても十分におまえは強くなる! そして、さらに無音拳との組み合わせでさらに強くなれる!」
「はい!」
「まずは俺が人型になってその6つの技を実際に見せてやろう! おまえに分かりやすいように手加減して見せるからちゃんと見ているように!」
「はい!」
返事をしたタカミチに背を向け、特訓用木人くん18型に向き直る。
指を1本立てて、魔法で強化している木製の木人くん18型の腹に狙いを定めて……。
「まずは硬化させた指で相手の体を撃ち抜く局部破壊技……、指銃!」
木人君18型の腹部に指を突き刺す!
すると、木人君18型の腹部に丁度指のサイズの穴が開いた。
「――なっ!?」
驚きの声を上げるタカミチに続けて技を見せていく。
木人くん18型から少し離れた位置で、腰を捻らせ、蹴りの体勢になってから……。
「蹴りで鎌風を呼び起こす足技にして斬撃技……、嵐脚!」
高速で足を振ると、ヒュゥウウウ! っと、風きり音を響かせながら斬撃が飛び、木人くん18型の体を真っ二つに切り裂いた。
「――っ!?」
今度は絶句のタカミチ。
だんだんと技を見せるのが面白くなってきたな。
「今度は剃。瞬発的に加速し、消えたように移動する移動技術。これは瞬動術とあまり変わりはないが、剃は純粋な体術によるところが大きいので魔力や気を使用せずに消費を抑えられる」
剃を何度か使用して見せ、次に移る。
「月歩。爆発的な脚力で空を蹴り、宙に浮く移動技術。これは浮遊術を使用できない術者が空を飛ぶ相手などと戦ったりするときに有効だ。剃と同じように魔力や気を使用しない純粋な体術のでこちらも消費を抑えられる」
パパパッンと音を鳴らしながら空を蹴るように飛び続ける。
お~、タカミチの口が開いたままになってるなぁ~。
地上に降りて次の技に移る。
今度から防御技なので木人くん18型を再生させて対峙する。
「今度は防御技だ。鉄塊、肉体の硬度を鉄に匹敵するほどに高める防御技……、なんだが、人間ではなく、魔法使いや気の達人相手では通用しない場合があるので、必要に応じて鉄塊を使用する際、気で強化すること」
木人くん18型が殴りかかってくるがそれをすべて微動だにせずに受け止める。
「さらに紙絵。相手の攻撃によって起こる風圧に身を任せ、攻撃を紙の如く避ける回避術。これは近接格闘の場において相手の攻撃が強いほど有効だ」
木人くん18型の攻撃を今度は緩やかな紙のように避ける。
「そして、六式全てを鍛えた者のみが扱える六式最終奥義……」
紙絵で木人くん18型の大振りな攻撃を避けたところで、そのまま懐へと入り、拳を腹部に添えて……。
「六王銃ッ!」
ゴガンッ!
大きな打撃音と共に木人くん18型が砕け散った。
すべての六式と最終奥義まで見せたので、タカミチのほうへと移動する。
「これが俺がおまえに与える戦闘技術……、力だ」
「僕の……力……?」
「まあ、ものになるかはおまえしだいだがな。――これから暇なときにダオライマ魔法球を使用して先ほど見せた六式の手ほどきをしてやる」
「……は、はいっ! よ、よろしくお願いします!」
真剣な表情で返事をするタカミチに注意として言っておく。
「あと、あくまで俺が教えるのは手ほどきまでだ。六式を使うための基本知識と基礎ができればあとはお前自身で極めていけよ?」
「ええ!?」
「なぜ驚く? 俺が教える六式の技術と差し出した対価を見ても、よくて手ほどきまでだろう?」
「は、はい……、そ、そうですね」
納得できないようなタカミチだけど……。
「まあ、単に基礎を教え込んで放りだすことはしないから安心しろ。卒業までにはおまえにしか見えないようにした六式の習得方法などが書かれた秘伝書を作って渡してやる」
「僕にしか見えない!?」
「まあ、あくまで六式の習得方法ぐらいしか書かないがな。あとはガトウから教えてもらってる無音拳と組み合わせたりして新たなおまえ専用の戦闘術を生み出せ」
「僕専用の戦闘術……」
タカミチは両手を握ったり緩めたりしながら瞳をキラキラと輝かせた。
うん、やっぱり子供って自分だけとか、自分専用とかいうのに弱いよなぁ~。
――っと! 今夜は久々にアリカとテオの2人と一緒に寝るんだった!
それによくよく考えてみれば、大戦も終わりそうだし、傭兵集団『紅き翼』の一員であるタカミチとは『完全なる世界』を打ち倒すまで関係じゃないか!?
このままタカミチが基礎を覚える前に『完全なる世界』を倒してしまったら、出張して教えないといけなくなるんじゃないか!?
こ、これはマズい!
『完全なる世界』を打ち倒し、戦後処理をしながら、魔法世界の崩壊を阻止するために地球化の研究とかしなきゃいけないのに!
アリカやテオ、エヴァやニィはもちろん、まだ見ぬ美女や美少女と戯れる時間がなくなるではないか!?
い、急いでタカミチに六式の基礎を叩き込まないと……!
「さあ、タカミチ! 俺が教えられる時間は限られているんだ! 止まっている時間などないぞ!」
「はい!」
「六式を教えるにあたって、まずは六式を扱う上ですべてに必要となる超人的な身体能力を得る事が専決となる! だが、子供の頃からあまり筋肉を付けると背が伸びなくなったりして大人になったときに体格なので困るので、ひたすらランニングをして体力を作れ!」
「はい!」
「さあ、ストレッチで筋肉を解してから『ダイオラマ魔法球のなかを倒れるまで走ってみよう! 地獄のランニング』のスタートだ!」
「は、はいっ!」
さあ、タカミチよ! 『完全なる世界』との最終決戦までには卒業してもらうぞ!