第18話 幼女アスナは旧世界に
魔法世界の大戦が終戦し、捕らわれていたアリカも眷属に変えて救いだした俺たちは現在、旧世界の自宅へと戻って来ていた。
元からの生活拠点であるし、魔法世界の大戦の間は拠点を特定されないために、あちらこちらを点々として
まあ、のんびり暮らすといっても、魔法世界を救うための研究はその間も続けてる。そうしないとアリカが安心できないみたいだし。
だから俺の普段の一日のサイクルを考えると、昼間は畑仕事、夜は魔法世界を救う研究とアリカたちとのエッチだね。
あと、亜人と皇女という立場ゆえに、魔法世界を拠点に暮らしているテオとも、週一か二ぐらいで戯れたりと結構充実した暮らしを楽しみ中だ。やっぱり自宅近くにゲートがあるって便利だよね。
「アルヴィン……」
ん? ああ、それともうひとつあったな。
声が発せられた方向の先には、紺色のワンピースを着た、オレンジ色に近い色の髪を両サイドで括り、ツインテールにしたオッドアイの幼女が立っていた。
俺はベッドから上半身を起こす。
「なんだい? アスナ」
「そろそろ、お昼ご飯」
アスナに言われて部屋の壁に立てかけている時計に視線を移す。時計のハリはすでに12時を回っていた。
「もうこんな時間か。うん、わかった。ありがとう、アスナ」
「ん」
お礼に小さくコクリとうなずいてドアへと向うアスナ。
そう、アスナだ。
ウェスペルタティア王国が誇る防衛装置、『黄昏の巫女』と呼ばれた魔法完全無効化能力をもったウェスペルタティア王国の王族、アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。
魔法戦争が終結し、俺とアリカが監獄にいる間だ、2年ほどテオやエヴァ、ニィと暮らしたあと、アリカを救い出してからは魔法世界にいるテオを除いて、皆で一緒に暮らすようになった幼女アスナだ。まっ、幼女といっても見かけだけで、実年齢は100歳を超えてる。精神年齢のほうは不明だけど。
俺はベッドから降りて、軽く身だしなみを整える。
そして、部屋の入り口で待ってるアスナの隣に並んで、手を差し出す。
「ん」
差し出した手に、自らの手を近づけて握ってくるアスナ。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
最初は無表情だった表情も、この3年で少しは変化が現れるようになってきていた。
◆
「ねえ、アルヴィン」
ダイニングへと向って廊下を歩いていると、アスナが話しかけてきた。
「なんだい、アスナ」
「エヴァはまだベッドで寝たままだけど、いいの?」
いや、もう部屋を出て廊下歩いてるところなんだけど。今頃かい?
「ん~……、まあ、今日はね。吸血……? 吸精の日だからね」
俺の言葉に、アスナはさっきと反対のほうへ首をかしげる。
「真祖の吸血鬼は血液じゃなくて精液を飲むの?」
「普通は血なんだけどね。家のロリっ娘吸血鬼はそうなんだ。前に吸血したのだって随分と前で……、あれ? 前はいつ吸血したんだっけ? ここ数百年ぐらい吸血してないんじゃ?」
もうヴァンパイアからサキュバスに名前を変えたほうがよさそうだよ、エヴァ。
「ふーん……。ねえ、アルヴィン」
「ん?」
「私はいいの?」
「いいの、って何が?」
「吸精、しなくてもいいの?」
「アスナは吸血鬼じゃないんだし、別に必要ないけど?」
ていうか、いきなり何を言ってるの?
アスナは納得ができないといった風につぶやく。
「でも、アリカは?」
「アリカ?」
「アリカも吸精してる」
え? それ、吸精じゃなくてフェラチオじゃ? エヴァのことといい、……覗いてたの?
「ああ、あれは……」
どう説明しようか考えながら喋ろうとするが、先にアスナが言葉を重ねてきた。
「ニィもしてるし、テオドラもしてる。……していないの、私だけ」
そう頬を膨らませるアスナ。アレ? 少し……いや、かなり不機嫌になってる?
「ん~、でもアレはねぇ……」
俺の顔を見上げるアスナ。
「私じゃダメ?」
「いや、そういうわけでもないけど……」
見かけは幼女だけど、実年齢的には100歳超えてるし。
「じゃあ、私も吸精したい」
アスナは「あのおもちゃ買ってよぉ」、みたいに強請ってくるけど……。
「ほんとにしたいの?」
その問いかけに、アスナはしっかりとうなずく。
「うん。アルヴィン、いつもしてもらうとき気持ちよさそう。私も、アルヴィンを気持ちよくしたい」
「――っ」
こちらを見上げてくるアスナの瞳には、強い意思が宿っていた。そうか……、そうなのか。そこまで……。
「うん、アスナの気持ちはわかったよ。でも、アスナの体にかけてある成長を止める魔法が解除されかけてるからね。それに影響がでたりしたら心配だから、アリカたちに相談してからにしようね」
「……わかった」
とりあえず機嫌を直してうなずいたアスナ。ダイニングへと続くドアを開けると――。
「やっときおったか、アルヴィン。アスナ、ご苦労様じゃ。エヴァは……いないようじゃな。まったく……、吸血の日とはいっても食事時には集まって欲しいものじゃ」
細く、サラサラとした金髪のロングストレートヘア、クリーム色のワンピースの上から、三毛猫がプリントされたエプロンを付けたスタイルのいい美女……、このやり取りはもういいか。
元女王のアリカが、お玉を片手に立っていた。
「遅れてごめんな、アリカ」
アスナを席に座らせ、自分も謝りながら席につく。
「まあ、いいのじゃ。いつものことじゃしな」
アリカもそれだけ言って、お玉を片付けて席についた。おっ、今日の昼はクリームパスタとコンソメスープか。
日本の文化に従って「いただきます」と手を合わせて食事を開始する。
アリカとアスナも食事中はあまり喋るタイプではないので、黙々と、たまに会話しながら食事をしていると……。
「ねえ、アリカ」
「なんじゃ、アスナよ」
「私も吸精がしたい」
と、突然アスナが切り出してきた。
「――ブッ!?」
アスナの発言に驚いて、飲んでいたスープを噴出すアリカ。
「な、ななな何を言っておるのじゃ?」
口元をポケットから取り出したハンカチで拭きながら、震えた声でつぶやくアリカに、アスナは少し頬を膨らませて不満げに言う。
「皆はしてるのに、私はしてない。私もアルヴィンを気持ちよくしたい」
「…………」
アリカさん、そこで俺を見ないで。俺は何もしてないから。
――本当じゃろうな?
――本当だって。
目線で会話し合う。
会話を終えたアリカは、ため息を吐いてアスナのほうへ向き直った。
「アスナよ」
「何?」
「そういうことはまだアスナには早いと思うのじゃ」
諭すように言ったアリカに、アスナは首をかしげる。
「なんで? 私、アリカより年上だよ」
「うっ。そ、それはそうなのじゃが……。に、肉体の年齢も、精神的な年齢も幼い、から……」
どうやってこの場を収めればいいものかと、顔に汗をかき始めたアリカ。
アスナは畳み掛けるようにパスタが乗った皿を見つめ、さらにパスタをフォークにクルクルと絡ませながら、小さな声でぼそりとつぶやく。
「ニィもテオドラも私とそんなに変わらないのに……」
「――うぐっ! ……じゃ、じゃが、テオはああ見えて20歳近くで……。ニィは……3さい? ……じゃからのう」
大量の汗を流しながら皿の上でフォークを回すアリカ。そこにはもうパスタはないよ、アリカ。
アスナは止めとばかりに言う。下から上に、見上げながら。
「私だけダメなの?」
「――うっ……」
アスナの視線に仰け反るアリカ。助けを求めるようにこちらを見てるけど、俺にはどうすることも……。ていうか、する気もないんだよね。魔界で年の差無視なんて普通だったし。はっきりいって何が悪いかわからないんだよ。
俺が頼れないとアリカは悟ったか、腕を組んで考えるポーズをとり、「う~む……」と唸ったあとつぶやいた。
「と、とりあえず、アスナはそっちの知識がないようじゃし。ま、まずは教育から始めてみぬか?」
「教育?」
「う、うむ。教育じゃな。元々体の時間を止めている魔法が消えるのなら、い、いずれは必要になってくる知識じゃし。わ、妾もちゃんと教えられるか不安じゃが、エヴァもおるし大丈夫じゃろう、……うん」
「?」
ひとりで話を進めていくアリカに、首をかしげるアスナ。
俺はひとりパスタを食べ終わり、スープを楽しむ。
さてと、午後からは畑仕事かな。ハウスの苺が収穫時だし、メロンのほうも……。今度はスターフルーツとかも作ってみるかな。形もおもしろいし。気温と湿度調整して肥料まいて世話をすれば大丈夫だろ。ああ、あと野菜も収穫しとかないとな。ニンジン、キャベツ、ジャガイモ、たまねぎ。
「うむむ……、じゃが何から教えればよいのじゃ? 生理用品の使い方からか? じゃが悪魔化の影響で最近は妾も使っておらぬし……。教えるのなら魔法世界ではなく、旧世界のものじゃよな? 真祖であるエヴァも、実は3歳児のニィも使っておらぬし。うぬぅ……、実技なら教えられる自信はあるのじゃが……」
さすがに最初から実技で教えるのはやめたほうがいいと思うよ、アリカ。
◆
真っ白な城、10メートル近くはあろうかという城壁。
城壁の内側に造られた畑や菜園。
城の内部へと続く大きな扉。
赤い絨毯が敷かれ、高い天井にはシャンデリアが吊るされた、正面ロビー。
何十人分でも一度に調理可能な広いキッチン。
木製の長い机が鎮座してる晩餐会室。
様々な本が並べられた書斎、何十も存在する部屋。
謁見の間と思わしき、装飾が施された椅子が鎮座している部屋。
城の上層部に存在する、ひと際広く、豪華な部屋。
豪華な天蓋付きのベッド、ガラスが嵌められていない窓から覗ける森林。
特に書斎のテラスから望める景色が最高だった。
……地下室もあったな。うん。
そのどれもが懐かしい。
点々と各地を回る生活から一箇所に腰を据えて、生活し始めたときの記憶だ。
10歳の誕生日に、ただの人間から吸血鬼という化け物に変えられて100年。
当時のヨーロッパは魔女狩りの時代で、真祖の吸血鬼となった私には地獄にも等しい、周りから逃げ回り、怯える日々が、アルヴィン・アンドリューという、悪魔らしくない変わった大魔王に、火あぶりの刑に処せられていた私が出会い、救われたときの記憶。
魔女狩りが横行し、住みにくかった旧世界から、魔法世界へと渡り、誰も住んでいない古城にアルヴィンと2人で住み着き、魔法を習っていた頃の記憶だ。
あの頃の私は、吸血鬼になったばかりと弱く、逃げ回るばかりの生活をしていたため、学もほとんどなく、今では得意な魔法も覚えておらず、ただ魔力が多いだけの吸血鬼だった。
本当に、大魔王であるアルヴィンにはあまりにも不釣合いで中途半端な眷属だったよ、私は。
そんな私に、アルヴィンは様々な教育を施してくれたことを覚えている。
アルヴィンも最初こそこの世界の魔法学に関する知識はなかったが、魔界での何千年という膨大な経験や知識、魔物や賞金首を狩って得た金で魔法に関する書物を買い集め、私と一緒に本を開き、知識を収集解析し、丁寧にマンツーマンで魔力の扱い方を私に教えてくれた。
魔法の勉強ばかりではダメだと、一般的な教養を、授けてくれた。
算数や理科、国語、社会など、アルヴィンは惜しみなく資料を集め、手間をかけて私に教えてくれた。
勉強ばかりで家に引き篭もってばかりはダメだと、遊びに連れ出してくれたり、様々な場所に連れて行ってくれる。
――アルヴィンはよく笑う。
何千年と生きているのに、無邪気に、子供のように、人外であることを気にすることなく、自由気ままに楽しそうに生きている。
――私はそんなアルヴィンが見せる笑顔が大好きだ。
闇に生きて闇のなかで朽ち果てる、そんな未来しかないと、火あぶりにされて殺される直前まで世界に絶望していた私を、身を焦がす炎のなかから光の下へと救い上げてくれた光そのもののように思えるから。
――だから……、だからこそ私以外を見て欲しくない。
ずっと、私だけを見て欲しい。そう思っていた。
私だけを見て、私をずっと一緒にいて。そう願っていた。
――けど、その気持ちも変わっていく。
自由気ままに出かけたり、旅をするアルヴィンのおかげで、真祖になって初めて友人が出来た。知り合いもできた。
――だけど、皆、時の流れのなかで消えていく。
アルヴィンを取り合った末に、種族を超えて認め合った悪友たちも、最後は老いてときの流れに消えていった。
――いつも慣れない別れを繰り返す。
寂しい、辛い、そう想う。
私よりも長い時を生き、人間や亜人に愛情を注いでいるアルヴィンは、私以上に寂しいだろう、辛いだろうと、想う。
魔界ではアルヴィンと同じ魔族が、何千という時を生きるのに対し、ここでは精々永くても数百年、一般の人間なら100年程度だ。
アルヴィンが地球へやって来て、600年ほど。アルヴィンはどれだけ別れを繰り返したのだろう?
私の知らない100年間。
私が知らないところで出会った者たち。
私と出会ってから別れていった者たち。
どれだけの別れを繰り返しているのだろう?
どれだけ悲しい想いをしたのだろう?
私は……、私はいつもアルヴィンという光がいてくれるから大丈夫だけど、アルヴィンは?
アルヴィンは寂しくないのか?
…………。
――やはり、私だけじゃ足りない。
茶々ゼロだけでは足りない。
ホムンクルスたちだけでは足りない。
――私のほかにも、必要なんだ。
アルヴィンは500年間も私と一緒に居てくれた。
私は、500年間もアルヴィンを独占していた。
――私はずっと考えていた。
あり得ないと思うが、アルヴィンが私を例え見てくれなくなっても、一緒に永遠に近い時間を過ごす家族がもっと必要だと考えていた。
――アルヴィンが感じる寂しさや辛さを埋められるような家族を見つけること。
それは、光の下へだしてくれたアルヴィンへ、私からの恩返しだと考えていたから。
――だから、アリカを初めて見たとき、チャンスだと思った。
優れた容姿はもちろん、強い意志が宿った瞳、ふとした仕草だけでも高貴な者であることを感じられる気品など。
同じ男を好いてるから、そんな女を数多く見て着たからこそわかる、アリカがアルヴィンに向ける感情など、素質は充分だったから。
新たな家族となったニィが増えても、まだ足りないと、私はずっとアリカをどうやって吸血鬼に変えようかと考えていた。
吸血鬼になればアルヴィンはアリカと永い時間を共に過ごせるだろう、と。
本人の意思を確認した上に、望むのなら行動しようと考えていた。
まあ、それもアルヴィンの眷属となった今では無駄になったがな。
だが、これでアリカとニィ、それにおそらくだが、テオドラが人外を選び、家族となるだろう。
2人っきりで過ごす時間は少なくなったが、これはこれで楽しい日々になっている。
アルヴィンがいて、私がいて、茶々ゼロがいて、アリカがいて、ニィがいて、テオドラがいて、アスナがいて、別荘に行けばホムンクルスたちもいる。
にぎやかな食卓を皆で囲み、アリカと
ニィに魔法の手ほどきをしたり、下着や衣装造りを手伝わされたり。
じゃれついてくるテオドラをからかって遊んだり、私とテオドラ、ニィとの3人で街へくりだして買い食いしたり。
茶々ゼロが暇だと言うから、庭の草刈りをさせたり。
魔法球にいるホムンクルスたちがいつの間にかコスプレ好きになって、私たちまでにコスプレを勧めてきて撮影会を開催したり。
魔法世界で拾った訳あり王族のアスナに、アルヴィンが私にしてくれたように教育したり。
皆で旅行へ行って観光したりと、なかなか充実している。
ああ……、本当に充実してるよ。
本来日陰者で、退治されるべき存在である真祖の吸血鬼である私が、幸せを感じている。安心して暮らしていられる。
全てアルヴィンのおかげだ。
アルヴィンがいてくれたから今の私がある。
私は、アルヴィンが大好きだ。
私は、アルヴィンを愛している。
だから、いつかは……。
これ以上私が望んでいいものではないだろうが、いつかは、アルヴィンとの――。
◆
日が暮れて、夕食も終わった午後8時。
食器の片付けをアルヴィンとニィに任せ別れたあと、アスナをつれてエヴァの部屋へとやってきていた。昼間の性教育のためだ。
ドアを2回軽くノックする。
しばらく待ってみるが、なかからは返事がない。
まだ眠っているおるのか。
ドアノブに手をかけて、部屋のなかへと入る。
案の定、ベッドでスヤスヤと眠っているエヴァンジェリン。
すごく気持ちよさそうに眠っているようだが……。
「アリカ。エヴァはなんで股を弄ってるの?」
「アスナよ。これは見なかったことにしておくのじゃ」
裸で股を弄りながら眠るのはダメじゃろう……。
「ん……、あぅ……、んっ……」
エヴァは色っぽい声を出しながら片手を胸に寄せて、揉みながら寝返りをうち、うつ伏せになる。
「あっ……、いぃ……、んんっ」
胸を揉みながら、もう片方の手の指を膣道に挿入して弄り始めるエヴァ。
「アリカ。なんで隠すの?」
「アスナよ。これは主には刺激が強すぎるのじゃ」
アスナの目をしっかりと手で目隠ししたまま、エヴァを起こそうとすると……。
「――っ、んっ!」
エヴァの体がビクッと跳ねた。
「くっ……、んっ、……んんっ……、はぁぁぁ……」
ぷるぷると体を震わせたあと、気持ちよさげに息を吐くエヴァ。
「…………」
寝ながらイッタようじゃな……。
それにしても、見かけは10歳の幼女なのに、なんでこんなに色っぽいのじゃ?
キラキラと煌く金髪、細い手足、白い肌、胸や尻と大人の女と比べると肉付きはあまりよくないが、しっかりと女を示すような、膨らみや腰のくびれ、尻など存在している肉体。
気持ちよさそうに、純粋に絶頂の余韻を味わっているのがわかる蕩けた表情。
吸血鬼ゆえに鋭い牙が生えているのだが、それは牙というよりも八重歯に近く、口から覗けるそれはかえってエヴァをかわいらしく見せる。
それに加えてネグリジェやベビードールが異様に似合ってしまう幼女か……。
ロリコンにとって最高の獲物じゃろうな。
「んはぁぁぁ……」
うつ伏せから仰向けになって、気持ちよさそうに息を吐く、エヴァ。
「アリカ。なんで耳まで塞ぐの?」
この声はまだアスナには聞かせられないのじゃ。
「スゥ……、スゥ……」
仰向けになったエヴァから再び寝息が聞えてくる。
相変わらずその姿は全裸で、清清しいほど、隠す気はないと言わんばかりに布団を隅において、大の字になって眠っていた。
あまりの格好に息を吐き、アスナから手をどけて、ベッドに近づく。
そして、布団をかけてからエヴァの体を揺さぶる。
「エヴァ、エヴァっ、起きるのじゃ」
「ん~……?」
声をかけながら揺さぶっていると、ゆっくりと反応を見せ始めた。
「エヴァ」
「むぅ……」
ゆっくりとエヴァの瞼が開く。
ベッドに両手をつき、上半身を起こすエヴァ。
「むぅ~……、なんだ、人が気持ちよく眠っているというのに……?」
エヴァは目を擦りながら、不機嫌そうにつぶやき、妾の隣に立っていたアスナに気づいた。
「ん? アスナもいるのか?」
くああ……っと、あくびをするエヴァに、アスナはいつも通り挨拶する。
「おはよう、エヴァ」
「うむ。おはよう」
エヴァもアスナに挨拶を交わすが、もう夜じゃからな。
「ん~……、丸1日ぐらい寝ていたみたいだな」
ベッドから上半身を起こしたまま背伸びをするエヴァ。せっかくかけてやった布団が捲れて上半身が丸見えだ。
このままではアスナの教育にも悪いので、妾は少しエヴァから視線を外しながら言う。
「とりあえず、エヴァ。前を隠すのじゃ。見えておるぞ」
「ん? ……おお、すまないな」
上半身が丸見えだと気づいたエヴァは、ベッドから降りて、パチンと指を鳴らした。
エヴァが鳴らした音に反応するように、どこからともなく黒い絵のようなコウモリが現れ、エヴァの体を覆っていく。
やがてエヴァの体が足元から首まで覆われ、黒いコウモリは体に張りつきながら消えていき、服へと変化した。
「これでいいだろう」
と、全裸から一瞬で着替えたエヴァはドヤ顔でベッドに腰掛け、悪の魔法使い(エヴァの妄想の産物)っぽくポーズをとるが……。
「エヴァ……、前から言っておるが、その格好でかっぽするのはアスナ教育に悪いのじゃ……」
「む? そうなのか? 私は別に普通だと思うが……」
そう言いながら自分の服に視線を向けるエヴァ。自覚なかったのか……。
「……いや、丈が腰辺りまでしかない薄い黒のキャミソール。一応フリルがあしらわれておるが、それも短く、立っていても座っておっても下着は丸見え。しかも、着ておる下着も生地が薄い黒のショーツ。絶対に普通ではないじゃろ……」
直ばきだから、少し動いただけで脇の間から胸が丸見えだったりするからのぅ。さらに黒いマントをつけて空を飛びまわる姿は、もはや痴女じゃ。
そんな指摘にエヴァは顔を赤くして、誰とも視線を合わせない様に、ひとり言のようにつぶやく。
「ぬぅ……。だ、だが……、その……、か、格好いいだろ。こっちのほうが……」
「…………」
…………いや、格好がよいのか?
「うん、格好いいよ。エヴァ」
無言で首をかしげる妾と違って、アスナがうなずいた。
エヴァはアスナの言葉に「本当か!?」と、顔を輝かせる。
アスナの両肩を掴み、顔を覗き込むエヴァに、アスナはもう一度うなずく。
「すごく似合ってると思うよ」
「お、おおお……」
アスナの言葉に喜びをかみ締めるエヴァ。
エヴァは俯き、表情を崩すぐらい喜んだあと、顔を上げてうんうんとうなずいた。
「さすがアスナだな! この服の良さがわかるとは! うむ! この私が教育しただけのことはある! フハハハハ! そうか! 格好いいか! フハハハハ!」
と、大声で笑うエヴァじゃが……、教育した? 何をじゃ? 妾とアルヴィンはアスナを助け出してから2年間は牢屋で過ごしておった間、何か教育しておったのか?
……魔法や戦闘とか一般常識とかの教育じゃよな?
「エヴァ。私もエヴァみたいな服が欲しい」
「ん? 私みたいなのか?」
「うん。格好いいし」
「――っ。フハハハ! そうか! 格好いいからな!」
褒められて益々上機嫌になるエヴァじゃが……、次に放ったアスナの言葉にこおりついた。
「それに、便利だから」
「フハハハ! うむ! 便利だから……、便利?」
服が便利だとは普通は言わない。消防士や警察官、作業服など機能性に優れた服装でない限り……。
ましてはエヴァが今着ている、ほとんど下着と変わらない服ならなおのこと。便利だという言葉は限定される。
……嫌な汗が顔を伝う。エヴァも妾同様、口を開けて固まっている。
だが、そんな妾たちを無視してアスナはつぶやく。無邪気に、事実だけを。
「そのまま着替えなくてもセックス……? エッチができるでしょ?」
と……。
「私も着るならそういう服がいい。いつでも押し倒されてもいいように」
と……。
エヴァはあまりの事態に絶句し、汗を大量に流した。
「あ、あああアスナ? お、おまえ、いったい何を……?」
動揺で震わせた声でつぶやくエヴァに、アスナは妾に言ったときのように、完結に言った。
「私もアルヴィンが欲しい」
と。
「……………」
「……こっちを見るでない。妾は何も知らぬ。主が教育したのではないのか?」
「そ、そそそんなことするわけがないだろっ! わ、私たちが教育していたのは魔法の使い方とか一般常識に関してだ! 情操教育はしておっても、せ、性教育はやってない!」
断言するエヴァじゃが、何かおかしい。反論の際に視線を一度もこちらに合わせておらんのじゃ。まるで何かを隠しているような……。
腰をかがめ、アスナと視線を合わせ、肩を掴んで訊ねる。
「アスナよ」
「なに? アリカ」
「妾がまだ牢屋におった頃に、エヴァから他に何を教えてもらっておった? いや、何か話を聞いておらぬか? アルヴィンの」
「お、おいっ、ちょっと待て!」
慌てるエヴァ。益々怪しいのじゃ。
止めようとするエヴァだが、正直、というか純粋なアスナは喋ってしまう。
「酔っ払ってるエヴァが色々話してた」
「あ……」
手を伸ばして固まるエヴァ。アスナは気にした様子もなく話し続ける。
「えっと……、昔、火あぶりにされかけたところをアルヴィンに助けられて、魔法世界にやってきて、捨てられた城で暮らしはじめて……」
「うむうむ……、それで?」
「それからアルヴィンに魔法習ったりして、すごく楽しかったけど、だんだんアルヴィンが欲しくなって、吸血の日に思い切って誘惑して、それから開発? 女性器舐められたり、胸弄られたり……。自分からもしてみようと思って寝込みを襲ったりして……」
「……もうそれぐらいでよいぞ、アスナ」
「ん? わかった」
……ふぅ……。まったく……。
立ち上がり、エヴァのほうへ近づく。
「あ……、アリカ?」
「なんじゃ? エヴァンジェリン」
「――っ。そ、そうお、怒ることでもないだろ? は、話しだけで、あっ、アスナは100も超えているんだし!」
「ふふふふ、何を言っておるのじゃ? 怒ってはおらぬよ、妾は。その証拠に、ほれ、笑顔を浮べておるじゃろう? ――アスナ、ちょっと部屋から出て行ってもらえるかのう? エヴァと2人で少し話があるのじゃ。なあに、すぐに終わるからな」
「わかった。今すぐ出る。じゃあね」
スタタタっと部屋から出て行くアスナ。
「いい子じゃな。――さてと……」
もうひとりの幼女はどうしようかのう?
「――っ! ちょっ!? ま、待て! 話せばわかる!」
「さあ、エヴァンジェリン。まだ精神的に未熟なアスナにまだ早い知識を植えつけた罰を受けてもらおうかのう?」
それにわざとではなくても、オナニーを見せたことに対してもじゃ。
じりじりと距離をつめて捕まえる。
ベッドに座り、上半身を膝に乗せ、キャミソールを捲り、ショーツをずらして尻を出させる、
「ま、待てって! て、手に魔力を宿らせるんじゃない! わ、私は……」
「さてと、軽く30発はいってみようかのう」
「待て~~~~!」
――パンッ!
「~~~~っ!」
――パンッ!
「ひゃっ!」
――パンッ!
「や、やめっ!」
――パンッ!
「うぐっ! あ、アリカぁ……」
――パンッ!
「んくっ! んん~~~っ!」
口を両手で押さえるエヴァ。……ん? 何か変じゃぞ?
「どうしたのじゃ?」
「…………」
無言で体をビクビクさせながら俯いているので、顔を覗き込んでみる。
赤い顔、かすかに漏れる吐息は甘く、切なさが含まれている。
……これは。
尻を指先で軽く撫ぜる。
「――ぁん! くっ、や、やめ……ろ」
…………。
ゆっくりとある場所を触ってみる。
――ぐじゅ……。
「…………」
「…………」
「……のう、エヴァよ」
「…………。……なんだよ?」
「主、少しばかり控えたほうがよいのではないか? いくらなんでも淫乱すぎるぞ」
プレイでもないただのお仕置きで濡れるなんて終わっておるのじゃ。
「――っ。お、おまえにだけは言われたくはないぞっ! わ、私は永い時間をかけて
「――っ。お、お主こそ! ドSでありながらドM! 小さいなりでアルヴィンの巨チンを咥え込み、吸血ではなく、精液を吸うなんてサキュバスに種族を変えてはどうなんじゃ!」
「言ったな、こいつ! 私のテクニックで本物の淫乱女王に変えてやろうか!」
「ハッ、軽く返り討ちにして、妾が主を調教してくれる!」
まずはそのだらしないオマンコを手淫で犯してやるのじゃ!
「――っ!? こ、コラ! ひ、卑怯だぞ!」
「ふんっ、卑怯で結構。これは戦いなのじゃ。ほれ、こっちはどうかのう?」
「――ひゃ!? や、やめ……、わ、私はおまえと、違って……、し、尻はあまり……、んぐぐ……」
「ふふふ、そういうわりには簡単に妾の指を咥えこんでおるな? どうじゃ? 気持ちがよいじゃろう」
「ハッ! 何を言っているっ。アルヴィンと比べると、こんな、もの……! それに、この格好でも反撃は、できるっ!」
エヴァの手が妾の服を切り裂き、なかへと侵入してきた!
エヴァの手が的確にショーツを捉え、ずらして手淫が開始される。
「――っ! 服を破くとは……!」
「あとできちんと直してやるさっ! 私がおまえを倒したあとでな!」
「クッ! 倒すのは妾のほうじゃ!」
「いや、私だっ!」
負けられない戦いが、そこにはあるのじゃ。
◆
「ん? アスナ、どうした? エヴァの部屋の前で立ってるなんて」
「ニィ」
「立たされてるのか?」
「半分合ってる」
「?」
「ねえ、ニィ」
「なんだ?」
「私もアルヴィンがほしい」
「そうなのか?」
「うん。でも知識がないからアリカがダメだって。それで、エヴァと一緒に教えてもらえる予定だったけど……」
「……エヴァとアリカは部屋に篭ってる、と」
「うん」
「じゃあ、私が教えるか?」
「ニィが?」
「これでも性に関する知識は豊富。処女を捧げた相手は義理の父であるアルヴィン。アスナのターゲットでもある」
「つまりニィは私の先輩?」
「そういうこと」
「じゃあ、お願い」
「了解。基本的なことから全部教える。私が持ってる小型の魔法球に資料も教師役になりそうなのもいるから今から行こう」
「わかった。ありがとう、ニィ」
「いいよ。アスナは私の義理の妹だし」
「……それでも、ありがと」
「うん」
こうしてアスナは1番教わってはいけなさそうな人に頼ることに……。
とりあえず1万字超えて切りもいいので今回はこれで終わり。