魔法世界に存在している国で最も古い歴史を持つ王国、ウェスペルタティア。
ウェスペルタティア王国には、最強の防衛装置があった。
王国の王族に、ごく稀に生まれる完全魔法無効化能力者。
その完全魔法無効化能力者を媒介にした防衛装置。
通称、黄昏の姫御子。
私、アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアもそうだった。
気づいたら、黄昏の姫御子と呼ばれ、防衛装置として魔法を消し、戦争の道具になっていた。
そこに私の意思はなく、ただただ命じられた役目を果たす日々だった。
他に何もすることもなく、できることもなく、させられることもなく、いつも城で時が過ぎていくのを他人事のように見つめていくだけで……。
私は完全無効化能力を使うための入れ物だった。
私という入れ物を長く使うために、魔法薬で体の時も止められ、老いることもなく、100年以上も防衛装置として国を守らされていた。
攻め込まれる箇所に連れ出され、完全魔法無効化能力の効果を広範囲に広げる魔法陣の上に乗せられ、魔法を消して、国の敵を殺していく。
――そうだ。
何人、何百人、何千人と完全魔法無効化能力で、私が、殺した。
拒める、拒めないなど関係なく、結局のところ、私が殺した。
私が殺し続けた。
私は大量殺人を行なった悪者だ。
だから、『完全なる世界』に捕まったときは、「やっとこれで終われるんだ」と思った。
何の意味もなかった生が、やっと終わるんだと。
そう、思っていた。
そう思っていたけど、『完全なる世界』が行なおうとした儀式の触媒に使われたとき――。
――私は救い出された。
儀式の触媒として磔にされていた私を、黒い、小さな龍が助けてくれた。
不思議なことに『完全なる世界』に見つかることなく、私の身代わりを作り出して、私を助け出してくれた。
私は……、これで終われると思っていた私は、また防衛装置として生きる日々に戻らされるのかと思った。
思っていたけど、それは違った。
黒い龍は、本当の意味で助けてくれた。
暗闇のなかにいた私に光をくれた。
テオドラとアリカが儀式の触媒にされている私を、黒い龍に助けるよう頼んだそうだが、それでも関係ない。
――黒い龍は私の光だ。
真祖の吸血鬼であるエヴァンジェリン。
エヴァンジェリンの従者で、殺人人形の茶々ゼロ。
火の精霊の加護を受けている悪魔で元人形のニィ。
ヘラス皇国の第3皇女テオドラ。
元ウェスペルタティア王国女王で、現魔族のアリカ。
そして、黒い龍でもある魔界の大魔王、アルヴィン。
――黒い龍でもあるアルヴィンがいたからこそ、私は皆に出会えたのだから。
殺人兵器でしかなかった私を、もはや人でもない私を、全部受け入れた上で家族として迎え入れてくれた皆と出会わせてくれたのだから……。
――私は、アルヴィンが大好き。
もちろん、アルヴィンとアリカが捕まっていなかった2年間、私に様々なことを教えてくれたり、遊んでくれたりした、エヴァンジェリンや茶々ゼロ、ニィやテオドラも大好き。
普段は優しいけど、魔法を教えるときは厳しいエヴァンジェリンも、大好き。
いつも包丁研いでて、戦闘訓練のときはすごくうれしそうに襲いかかってくる茶々ゼロも、大好き。
私を着せ替え人形にして写真を撮ったり、アルヴィンとアリカが裸で抱き合ってるビデオを弄ってるニィも、大好き。
ちょっと口うるさかったり、騒がしいときもあるけど、テオドラも、大好き。
女王を辞めて、悪魔になったアリカも、大好き。
――今の私は、そんな皆に囲まれて、すごく幸せ。
温かくて、居心地がよくて……。
胸がいつもあったかい。
――今の私は、自分で生きてる。
生かされているのじゃなくて、自分の意思で生きている。
――それが、当たり前のことが、すごくうれしくて幸せ。
だから、こんな幸せな日々をくれたアルヴィンや皆に、何か返してあげたい。
――物でも、心でも、何でもいいから何かを返したい。
そう自分の心が思ったから……。
――空っぽだった私が、初めて自分自身で望んだことだから……。
◆
午前6時30分。
私はいつも通り、ジリリリリ……と鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ます。
……目を覚ますけど、目覚まし時計は止めない。
目を瞑って寝息を立てて、寝たふりをする。
寝たふりをしたまま、ちょっと待つと……。
「ん……、ふあああ……」
と、隣で寝ていたアリカが目覚めて目覚まし時計を止める。
そのままベッドから上半身を起こして、隣で寝ている私の体を揺すって起こし始める。
「アスナ、朝じゃぞ。今日もアルヴィンの手伝いをするのじゃろ?」
本当はもう目を覚ましているけど、
「ん……、ん~……」
私は寝たふりをしたままアリカに抱きつく。
ん~……、アリカの体、あったかくて、いい匂い……。
「コレ、アスナ。起きぬのか?」
アリカが背中をさすりながら訊ねてくる。うん、そろそろ起きないとダメ。そうじゃないと本当に寝かしつけられるし。
私は目を擦りながら目を開ける。
ベッドから体を起こして、背伸びをする。
「ふああ……。おはよ、アリカ」
「おはよう、アスナ。やっと起きおったな」
そう言って布団を足元にまとめて、アリカはベッドから降りる。
私もベッドから降りて、アリカと手を繋ぐ。
繋いだ手からアリカの体温が伝わってくる。すごく安心してうれしいと感じる。
……うん、やっぱり私は、手を繋いで歩くのが好き。
「さてと、まず顔を洗いに行くかの」
「うん」
こうして、私の1日が始まる。
◆
顔を洗ってパジャマから動きやすい服に着替えた私は、家の外へと向う。
目指す場所は家の近くに作った家庭菜園。
家を出て2数分ぐらい……、見えた。
アルヴィンは先に作業してるみたい。
長袖長ズボンで厚く、しっかりした作りの作業服を着て土を弄ってた。
「おはよう、アルヴィン」
後ろからそう声をかけると、アルヴィンは作業を止めて後ろを振り返り、「おはよう、アスナ」と挨拶を返してくれた。
私はアルヴィンの隣に腰を下ろして作業を始める。
雑草を抜いたり、間引きしたり、水をかけたり、病気していないか調べたりする。
すごく手間がかかるけど、野菜作りは楽しい。
手間暇かけて、育てて、収穫して、食べる。
自然の一部となって生きる。
すごく楽しい。
以前の私だったら何も感じなかっただろうけど、今は楽しいと思える。
たまに失敗したり、枯らしてしまうこともあるけど、楽しい。
◆
農作業のあと、道具を片付け、手を洗ってから家に帰って、そのままリビングへ向う。
リビングのテーブルにはすでに5人分の朝食が用意されてた。
いつもパンかご飯が中心の朝食で、今日はご飯だ。
キッチンのほうで、エプロンを付けて、調理器具を片付けていたアリカが、私たちに気づて振り返る。
「帰ってきおったな。手は洗っておるか?」
「ああ、洗ってるよ」
「うん」
アリカの問いにうなずいて、私たちはテーブルにつく。
そこに「ふぁあああ……」とあくびをかみころしながらエヴァがやって来て、続いてニィがやってくる。
『おはよう、エヴァ、ニィ』
私とアルヴィンが挨拶すると、エヴァとニィも、
「ああ、おはよう」
「おはよう」
と、返事を返して席につき、アリカもエプロンを外して席について、食事が始まる。
ここに居ないテオドラは魔法世界。
茶々ゼロは……、ソファに座ってテレビ見てる。人形だから食事できないそうだけど、そんなの関係なく、朝から殺伐としてるドラマ見て「ケケケケ……、ソウダ。ブッコロセ」とかうれしそうにつぶやいてる。
にぎやかに、騒がしく、わいわいしながらじゃないけど、いつも通り、皆そろっての食事はそれだけでうれしいと思う。
黄昏の姫御子のときは、食事は単なる作業だったけど、今は違う。
「アスナよ。ピーマンも食べないと大きくなれないぞ?」
「エヴァもニンニクとネギ食べない」
「――うっ! そ、それは……、私は吸血鬼だから……」
「それに魔法薬抜けない限り大きくならないし」
「それはそうじゃが、肉体が成長しないだけで、栄養による変化は現れるのじゃぞ?」
「……つまり?」
「食事しだいでは太ったりもするし、痩せたりもする。好き嫌いなく食べる私は最強」
「ニィが最強?」
「すでにエヴァも超えてるし、テオドラも超えてる。将来的なプロポーションもアリカを超えると予想する」
「聞き捨てならんぞ、ニィ! この私を超えたなどと……」
「私はすでにBの高みへと到達し、更なる高みへと向っている」
「Bっ、Bだと!?」
「ねえ、アリカ。私も食べたら大きくなる?」
「うむ、そうじゃな。今は体に変化は現れぬとも、将来的には関わってくるじゃろうな」
「……なら、食べる」
「そうか、良い子じゃな、アスナは」
「うん」
「あ、アルヴィン……。私は、ニィに……」
「大丈夫だよ、エヴァ。真祖の吸血鬼だから時間はかかるだろうけど、いつかは大きくなるよ」
「おまえのいつかは千年とか先だろうがーっ! 私はもっと早く大きくなりたいんだー!」
「ケケケケ。御主人ハセッカチダナ。別ニソノママデモイイジャネェカ。エターナルロリータ」
「エターナル……っ!? おいコラ、ボケ人形! ご主人様になんて口の聞き方を……!」
「ケケケケ」
「笑うなー!」
うん、すごく温かくて楽しい。
◆
朝食を済ませたあと、アルヴィンとニィが食器を洗って片付けている間に、私はアリカと一緒に洗濯物を集めて洗う。
魔法を使えば全部早く、綺麗にできるけど、魔法は使わない。
大体が機械とかを使ったり。
魔法に頼りすぎるのはよくないし、皆寿命も永くて時間もあるからだ。
全ての洗濯物を洗い終え、干し終えると、リビングで休憩。
アルヴィンはソファに座って魔法の本……、メモ帳に育ててる植物や動物がどういう状態か記録を付けたり、次に育てる物を考えたり。
アリカはアルヴィンの隣に座って、連続して放送されるテレビドラマを見たり、何とか茶々ゼロから刃物を取り上げようと説得していたり。
ニィは一人用の椅子に座ってイヤホンってものを耳に付けてビデオカメラで何かしてたり、ブックカバーを被せた本を読んでたり。
茶々ゼロはテーブルのインテリアになっていたり、持ち歩いている刃物についてアリカに怒られたりしてる。
朝食後いなかったエヴァは……、寝てる。
吸血鬼であるエヴァは朝に弱いから、朝食が終わる頃辺りでうとうとし始めて、リビングに2つ、L字に並べて置いてあるソファのひとつを占領して寝てる。
ちなみに、私はというと、アルヴィンとアリカの足の間、カーペットの上に座って背の低いテーブルについてお茶を飲んでまったりしてる。
前はアルヴィンやアリカのヒザを枕にして横になっていたけど、ほとんど寝てしまうから、今はソファに座ったり、床に座ったりしてる。
でも、時々はヒザで寝させてもらう……。
そして、休憩が終わると、昼食の準備が始まる。
私とニィがアルヴィンとアリカに頼まれた食材を菜園から取ってきたり、野菜を切るのを手伝ったりする。
丁度、この頃になるとエヴァが目覚めて、午後の準備を始めに茶々ゼロを連れて、地下室へと向う。
料理が完成したらまた皆で食べる。
◆
昼食休憩も終わって午後。私はアルヴィンとアリカと別れ、エヴァたちと地下室へと向う。
地下室でやることは、魔法の勉強や戦闘訓練。
私は魔法世界、旧世界を含めて貴重な能力である、魔法完全無効化能力を持っているし、他にも色々な事情もあって、様々な組織に狙われるから自衛の手段として戦い方も含めて魔法を習ってる。
皆に守ってもらうばかりでは嫌だから、頑張って習ってる。
地下室に造られた、まるで絵本に書かれているような『魔法使いの部屋』で。
……うん、1階と違ってここは本当に『魔法使いの部屋』。
木製の棚には様々な形のフラスコが並んでいて、その中には赤色や黄色、青色や紫色、緑色などの液体が入ってて、天井には変な形の草や干物などが吊るされている。
床や壁もコケなどが生えた汚れたレンガ……、に見せた普通のレンガ。
いつも小さい鍋しか使わないのに、なぜか部屋の一角を占領してる大きな鍋と薪。
エヴァは発動体を必要としないのに関わらず、私が使う杖が初心者用の杖に関わらず、1メートル以上長い立派な杖が立てかけられていて、その隣にも掃除には使わないのにホウキが。
極めつきにエヴァの今の服装は、黒色のスクール水着みたいな薄い服に、体をスッポリ覆うローブと、ツバが長いトンガリ帽子で、私にもその格好を強要してくる。
…………。
すごく悪の魔法使いの衣装らしいとかニィに絶賛されてから、魔法を教えるときとかによく着てるみたいだけど、私は騙されてると思う。アリカが毎回顔をしかめるのも当然だと思う。
だって私のは黒色じゃなくて、白色だから。
エヴァと黒と白でおそろいとかニィが言って、エヴァもうれしそうな表情を浮かべたけど、私はうれしくない。
帽子やローブはともかく、私がなかに着てるのは本物のスクール水着だったから。
肌触りが変で、服に魔法がかけられてるみたいだから、試しに魔法完全無効化能力を発動させたら、胸のところに『アスナ8才』とか丸い文字で書かれた布が現れた。
ニィにその事を訊ねたら、あっさり認めて「そっちのほうがレア」と握りこぶしに親指立ててた。
正直、ニィの言葉の意味が分からなかった。あと、私は8才じゃない。本当の歳はわからないけど。
「さてと、座学はこれぐらいでいいな。次は魔法球のなかで実技だ。行くぞ、アスナ」
「うん」
初級魔法と中級魔法の教科書を片手に、エヴァの後ろに続いて魔法球が置かれた別室へと向う。
……やっぱりこの格好で行くの?
◆
魔法球のなかに移っての魔法の訓練。
通常の魔法球は外と中で時間が違うけど、私が特訓に使っているのは特別仕様。
外と中で時間が変わらず、いつでも出入り出来るタイプの、本当に特訓するための場所を作り出しただけの魔法球。
今回使用するのは草原タイプ。
その他にも砂漠や南極仕様などが存在する。
他にも魔法球内12時間が魔法球外での6時間などの仕様があるけど、外と時間がずれると、夕食とか寝る時間がずれるから、特訓では一分の一ぐらいしか使わない。
今すぐ強くならなければいけないわけでもないしね。
私はそこでエヴァの指示に従い、魔法を発動させて的を撃ったり、新しい魔法を試したりする。
基本の『魔法の射手』はもちろん、『武装解除』、『眠りの霧』など、戦闘に関係のない占いの魔法なども覚えて、練度を上げていく。
そして、休憩を挟めながら工夫を凝らしながら訓練していき、午後3時ぐらいになると、魔法球内にアリカがやってくる。
手にお菓子を持って、3時のおやつ……ではなく、休憩をする。
その休憩が終わると、今度はアリカと訓練。
アリカとの訓練は主に勉強と剣。
勉強は一般常識とか住んでる国の歴史とか、算数とか国語、生活に必要な知識を蓄える。
剣の特訓をするのは、私が完全魔法無効化能力を持っているから。
私の能力である完全魔法無効化能力は、魔法と気、式紙なんかも消せるけど、自分の魔法も消してしまうので、魔法と一緒に発動できない。
だから、私は剣も覚えてる。
幸い剣の才能は魔法が人並み以下なのに比べて、人並み以上にあったから、剣だけを覚えるというのもあるけど、その場合、必然的に防御には魔法無効化能力を使うことになる。
希少なスキルである魔法無効化能力を公に使えば、各勢力や組織に狙われるから、並み以下の才能しかなくても、魔法も覚えてる。
なので私の戦闘スタイルを分類する場合、後衛大火力型の魔法使いではなく、スピードを生かした前衛型の魔法剣士スタイルになる。
剣を片手に持って、遠距離から中距離は魔法で対処し、近距離戦闘をする場合は、身体強化を行なった上に、剣と魔法を組み合わせて戦う。
ちなみに、身体強化は魔法行使で消費する魔力を無駄使いしないように、主に『気』で行なうけど、本気で戦う場合は少し特殊な技を使う。
魔力と気を合成して大きな力を得る『
それを使って、飛躍的に上昇した身体能力で近接戦闘を仕掛け、一気に相手を仕留める。
ちなみに『気と魔力の合一』は、自分を無にして、相反する力である気と魔力を両手にそれぞれ、同じぐらいの強さで宿し、手を合わせて合成して、自分を強化する『究極技法』と呼ばれるぐらい何年も修行が必要な難しい技らしいけど……。
私は元々空っぽだったからか、あっさり出来た。
私の肉体に存在する気と魔力が同量ぐらいだったから、アルヴィンに言われて試して見たら、あっさりと出来た。
出来てからは『気と魔力の合一』の制度や密度を上げる訓練をしたりしていたけど、最近は調子が悪い。
発動出来て、前よりは出力と密度も上がっているのだけど、完全に自分を無にすることができなくなった。
……完全に自分を無にすることができなくなった。
それは、私が空っぽじゃなくなったてことなのかな?
よくわからないけど、ちょっとうれしかった。
自分を無に出来ないことが。
自分の器に、空っぽだった器に何かが芽生えたのだと証明しているみたいだから。
無に出来ない自分を感じながら、自分を無に変えていく『気と魔力の合一』の修行はすごく、楽しい。
日々成長していく自分がうれしい。
「さてと、アスナ。今日は歴史から始めてみようかの」
「……うん」
「平安時代に作られた……」
……でも、勉強は苦手……。
わかるようになった時はうれしいけど、わからないこと、覚えなければいけないことが多すぎる。
魔法でも座学は苦手。魔法薬に関しては全滅。すり潰すだけで回復薬代わりになるアルテミシアの葉だけ覚えておけば私は充分。
…………。
「コレ。聞いておるのか?」
「……聞いてるよ、アリカ」
「そうか。では続きを……」
……早く剣の訓練にならないかな……。
体を動かすのは得意で楽なのに……。
◆
訓練を終えて夕食も食べ終わって、午後8時。
広いお風呂に入る。
いつもはアルヴィンやアリカと入ったり、ニィと入ったり、エヴァと入ったりとバラバラだけど、私はあまりひとりでお風呂に入ることはない。
今日はアルヴィンとエヴァと一緒に入ってる。
アルヴィンは今、湯船から出て体を洗ってる。
私とエヴァは湯船に浸かってる。
…………。
「おい、アスナ。おまえ、どこ見てるんだ?」
「アルヴィンのペニス」
「――ぶふぉっ!?」
エヴァが噴出した。
「ま、まだおまえにはそういう事は早いんじゃないか? 絵や標本を使った夜の座学だけで……」
私はエヴァを見る。上から下に。
「な、なんだ?」
胸を隠すエヴァ。だけど、私の視線はもっと下を見てる。
本当にあそこに入ってたの? 私と同じぐらい小さいのに……。
「よく入ったね」
「――ぶふっ!?」
ちょっとだけ触ってみる。
「こ、コラっ……!?」
プニプニしてる。やわらかい。奥がちょっとスベスベ? でも変な感触。
「んっ……、や、やめ……、どこでおまえ……」
「穴がある? ここが膣口?」
「そ、それはさすがに洒落になら……、あうっ!?」
エヴァのなかに指が吸い込まれていく。すごい、人差し指が全部入った。指が締め付けられる。気持ちいい、のかな?
エヴァも私にもたれかかって気持ちよさそう。
「エヴァ、気持ちいい?」
「ぅん……、くっ、そ、それ以上は……っ。ど、どこでこんなテクを習って……」
「テク? ……そういえば、上側を擦るんだっけ?」
「――なっ!? そこはダメだっ! そこはすごく弱っ……!」
エヴァがビクビク震えてる。
「わかった。やめる」
エヴァの様子が変だったから、私はエヴァの中から手を抜いた。少し手がヌルヌルしてる?
「……はぅ? ……やめた、のか?」
エヴァがちょっと残念そう?
「続けたほうがよかった?」
「そ、それは……。――って、何を言わせる気だー!」
「?」
今日のエヴァはよくわからない。
◆
午後9時。お風呂も終わって歯磨きをして私が寝る時間。
寝室につれて行かれ、アルヴィンやアリカに私は寝かしつけられていたけど、最近はちょっと違う。
アリカとエヴァから性教育というのを1時間ほど受けさせられてる。
ペニスとかヴァギナとか、精子とか卵子とか、生理とか……、正直わかりにくい。やっぱり実物が1番。
あと、お風呂でエヴァのを弄ったことをアリカとエヴァに怒られた。
そういうことは私にはまだ早いし、同性で親しい間がらでも許可なく触ってはいけないらしい。
でも、アリカもエヴァもニィのビデオで、アルヴィンに押し倒されたり、押し倒したりしてなかった?
そのことを指摘したらまた怒られそうだから言わないけど、ちょっと不満。
保険体育の教科書で勉強したあとは、今度はニィの寝室へと行く。
アリカとエヴァはまだ起きてるし、ニィが今日は私と一緒に寝ると言ってるから。
ニィの部屋に入る。
ニィはすでにベッドにいた。
私もベッドに上がり、うつ伏せになってニィの横に並ぶ。
「じゃあ、勉強するか」
「うん」
ニィは大きな枕の下に手を入れる。ゴソゴソと取り出す。
取り出したものはペニスに似せたおもちゃや、雑誌や小さな本。
「とりあえず、男性器の特徴のおさらい。フェラチオの復習だな」
「わかった」
ニィの授業はペニスやヴァギナに似せたおもちゃを使ったり、絵を見て覚えたりだから、アリカやエヴァの授業よりわかりやすい。やっぱり私は実践派。
今日も口を大きく開けてペニスのおもちゃを咥える。
かなり大きくて太いから先っぽしか咥えられない。
けど、おもちゃはアルヴィンのと同じ大きさと形だから、これをきちんとフェラチオできるようにならないと、精液が竿に上ったりして急に大きくなったりする本物では無理。
結構疲れるけど、アルヴィンに喜んでもらえるように頑張る。
ニィの授業を終えたら今度こそ寝る。
ニィの授業は、ニィと寝る時だけだから、いつもより真剣に取り組む。
「なかなか上手くなったな。今度、試しに夜這いかけてみるか?」
「いいの?」
「アルヴィンは一度寝たらなかなか起きないしな。本番はまだダメだが、フェラチオだけして帰れば大丈夫だろう」
「…………」
「やめておくか?」
「うんん。する。アルヴィンを気持ちよくしてあげたい」
「なら、手引きは私に任せておいて。数日かけて仕込みをしてアルヴィンをフリーにしておくから」
「わかった。ありがとう、ニィ」
「礼はいい。義父との禁断の愛に目覚めている同志よ」
ニィはキメ顔でそうつぶやいた。
これで怪しげな服を着せてこなければ、いいんだけど……。
おそらく酷くなることはあっても、改善することはないだろうと、私はもう諦めた。
「さすがにアナルの改造は早いしな。とりあえず方法だけ教え込んでおくか……」
「…………」
ニィ、その大きな注射器はなに? なんで先が太くて、かえしが付いてるの?