※この作品はR-18です。

魔法先生ネギま!? 現れた誰も知らない大魔王   作:上平 英

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 ハイDに続き、こちらも投稿。


第23話 再会と入院と起こってしまった事件

 トリプルTというロリコンを撃退してから数日後。麻帆良学園の女子校エリア近くにある喫茶店で、アルヴィンとアリカの3人でくつろいでいると、またトリプルTが現れた。

 

 トリプルTは私たち3人を見て驚くような表情を浮かべ、こちらへ駆け寄ってくる。白スーツ姿で……。

 

「やっぱり! アリカさまとアスナさま! それに黒龍さままで!」

 

 大した距離も走ってないのに激しく呼吸を乱す、トリプルT。はぁはぁといやらしい呼吸をするトリプルTを警戒して、私はそっとテーブルの下にナイフをしのばせる。もしもこのロリコンが何かしてきた場合はこのナイフでグサリだ。

 

 テーブルの下で臨戦態勢をとっている私に気づかず、トリプルTは私たちに向って笑顔で話しかけてくる。

 

「お久しぶりです、皆さん!」

 

「おお、久しぶりじゃな、タカミチ」

 

「背ぇ伸びたなぁー。こうして会うのは何年ぶりになるんだっけ?」

 

「終戦してからずっと会っていないので、5年ぶりになりますよ」

 

 アルヴィンの問いに、間髪入れず答えるトリプルT。アリカに同席を勧められ、一席だけ空いているアルヴィンの隣の席へと腰を下ろし、店員にコーヒーを注文する。

 

「やっぱり無事だったんですね、アリカさま」

 

 コーヒーを一口飲んで、うれしそうにつぶやくトリプルT。アリカは申し訳なさそうな表情でうなずく。

 

 魔法世界の公式発表では罪人として処刑されたとされる元女王のアリカ。だけど、実際には処刑される大分前にアルヴィンが助けだしてて、公式で処刑されたのは変わり身のほうなんだよね。

 

 そのことを知っているのはアルヴィンとアリカ、私やエヴァとかテオドラとか、木ノ葉とか最も近しい関係者ぐらい。

 

 魔法世界の大戦中に協力関係だった傭兵集団、『紅き翼』のメンバーにも教えてなくて、他の誰にも知らせてもないはずだけど……、

 

「――やっぱりって、なんで?」

 

「ボクは以前黒龍さま……アルヴィンさまに『六式』っていう格闘技術を習う際に、アルヴィンさまが人になれるって知っていたんです。アルヴィンさまとアリカさまは普段から仲が良さそうでしたし、例え魔道具の契約だからといっても死後のやり取りをするなんてボクには考えられなかったから、きっとどこかでアリカさまは生きてるって思っていたんです」

 

「じゃあ他の『紅き翼』のメンバーも皆知ってるの? アリカが生きてるって」

 

「そ、それは……」

 

 私の問いに苦笑しながらもきちんと答えていたトリプルTが言葉をつまらせる。口を開けたまま表情が固まり、そのまま顔中から大量の汗が流れ始めた。

 

 そんなトリプルTの異変には気づかず、アルヴィンは優雅に紅茶を飲みつつ訊ねる。

 

「そういえば、真っ赤な髪した鳥頭……ナギ・スプリングフィールドは元気か? そろそろ20歳になるんだよな、あいつも」

 

「…………」

 

 無言で笑顔を浮べるトリプルT。大量の汗は止まったようだけど、顔色が最悪になった。浮べてる笑顔も、怖い……。

 

 アリカもトリプルTの異変に気づかず、ケーキを食べながら微笑む。

 

「最近の『紅き翼』は終戦後の復興活動や内戦の鎮圧に力を入れておるのじゃろう? ひと昔前は何も考えずに広域殲滅魔法を放ったりと……殲滅戦などの戦いにしか興味のなかったあやつが、立派に成長したようじゃのぅ」

 

「アハハハハ……」

 

 アリカは懐かしむようにつぶやいたが、それを聞いてトリプルTの口から出たのは乾いたような笑い声。……嘘、ついてる? 色々と。

 

「そっ、そういえば! その……アスナさまはなぜ5年前のお姿のままなんですか?」

 

 話をかえるようにトリプルTが私に視線を移した。アルヴィンは私の頭を撫でながら言う。……大丈夫だよ、攻撃しないよ。ただ、ちょっと向けられる視線が不快なだけ。トリプルTはロリコンだし。私服=白スーツぽいから。警戒してるだけ。

 

「今まで投薬されてた魔法薬がまだ切れないんだ。――まあ、あと数年もすれば自然に効力を失って自然に成長が始まるさ」

 

「そうだったんですか……」

 

 私を見つめるトリプルT。……いずれ成長して幼女じゃなくなることを悲しんでる? やっぱりこの場で男性としての機能を奪ったほうがよさそう……む、アリカ、ナイフ返して。私やエヴァの身が危ないんだよ。

 

 視線を使ってアリカの説得を試みるが上手くいかない。むぅ……。

 

 私とアリカが視線でやり取りをしている中、紅茶をテーブルに置いたアルヴィンがトリプルTに訊ねた。

 

「そういや、タカミチはなんでここにいるんだ? 制服着てるみたいだし、学校に通ってるのか?」

 

「あ、はい……今は――」

 

 アルヴィンの問いにまたもや口を閉ざすトリプルT。どうしたんだ? と疑問符を浮べるアルヴィンとアリカに、私の知っている情報をトリプルTよりも先に話す。

 

 数日前に女子校エリアで会ったこと。

 

 トリプルTが女子中学生数人から囲まれて登校してたこと。

 

 そして、私に告白する前に振られて、そのあと私は襲われそうになり、持たされていた痴漢撃退スプレーをかけて逃げたこと。

 

 トリプルTはロリコンだと言う事も話した。

 

 説明を終えてすぐ、トリプルTがこちらに向って身を乗り出してきた。究極技能を使う準備でもしとこうかな? 右手に……、左手に……。

 

「ご、誤解ですよ、アスナさま! そもそも告白してませんし、僕はロリコンなんかじゃないです!」

 

「なら、女の子に囲まれてたのに迷惑そうだったのは?」

 

「学園長に無理矢理女子中に放り込まれたからですよ! 僕は男なのに女子中に通わされて……」

 

「? それってうれしいことじゃないの? ハーレムだよ?」

 

「うれしくなんて全然ないですよ! クラスメイトは全員女子生徒だから男の友達は作れないですし、皆さん女子校生活が長いとあって男であるボクを意識しない行動ばかり……。僕がまだ教室にいるのに着替えたりするんですよ! 最初の頃なんてどう接していいのかわからなくて胃に穴が空きかけたんですから!」

 

「そう、なんだ……」

 

 ニィがよく読んでる本ではトリプルTみたいな立場になった男は迷惑がるのは最初だけで、数日も経てば小躍りするほどその状況に楽しむようになってたけど……。実際は違うのかな?

 

 ううう……っと涙を流し始めるトリプルT。女嫌いってわけでもなさそうだけど、このままいけばあらぬ方向へ腐りそうだ。アルヴィンもそれを感じてるのか、トリプルTから少しだけ距離をおいた。

 

「まあでも、この生活もあと半年もすれば終わるからよかったです。高校も女子校で3年も通わされることになってたら、僕は耐え切れずにこの麻帆良から逃亡してました」

 

 アハハハハ……と、トリプルTは涙を拭って笑顔を浮べた。……というか、今現在女子中学校に通って3年目になるんだ、トリプルT。

 

 残っていたコーヒーを一口で飲み干し、息を吐く。その息を吐く姿はもはや社会に疲れた中年男のそれだった。

 

 そんなトリプルTを懐かしそうに眺めながらアルヴィンがつぶやく。

 

「それにしてもタカミチが学生かぁ。破天荒だったナギもまともになって……ん? そういや、『紅き翼』のメンバーって人間じゃないのも含めてまだ4人ぐらいいなかったか?」

 

「そ、それは……」

 

 再びトリプルTの顔色が悪くなる。……すごい変化速度だ。顔芸って呼べるレベルだね。

 

 キョロキョロとあちこちに目を泳がせながらトリプルTは話し始めた。

 

「ら、ラカンさんは魔法世界にいてですねっ、ガトウさんとアルビレオさんはナギさんと一緒に行動していて、旧世界と魔法世界をいったり着たりしてて……詠春さんは……」

 

「青山詠春がどうしたのじゃ?」

 

 途中で口を閉ざしたトリプルTに、アリカが心配そうに訊ねた。

 

 トリプルTは空になっているコーヒーカップに視線を向けたまま、言い難そうに小さな声でつぶやく。

 

「詠春さんはこの日本に戻ってきていて……ですね……。今はその……ご実家のほうで療養中でして……」

 

「療養中? 負傷しおったのか? あのサムライマスターが」

 

「……はい。……心のほうに結構な傷を負ったらしくて」

 

「むむ、心じゃと?」

 

「事情が事情だけにあまり詳しく言えませんが。なんでも魔法世界の大戦とその戦後処理におわれてずっと京都のほうに帰らなかったらとうとう婚約者にフラレてしまったらしくて……」

 

「むぅ、そうじったのか……」

 

「はい……。元々、家同士が決めていた許婚という関係らしくて。相手の方とは幼なじみだけど、恋人というわけではなかったらしいんですが……」

 

「青山詠春にとってはそうでもなかった、か」

 

「ええ……」

 

 あー……うん。結構よくある話だよね。放っておいた婚約者がいつの間にか他の人のお嫁さんって。それにトリプルTの話からして、その寝取られた人は最初から青山詠春のことをただの幼なじみぐらいとしか見てなかったようだし。哀れ、サムライマスター。最初から脈はなかった。

 

 寝取られサムライマスターの話に誰もが口を閉ざし、場の雰囲気が悪くなる。

 

 そんな雰囲気の中、喫茶店の出入り口のドアが開く。

 

「アルヴィンはーん」

 

 開いたドアの方向からトリプルTの声を遮って、アルヴィンへと声がかけられる。その突然の声に、アルヴィンを含めてテーブルについていた全員が声のほうへと視線を向けると、そこには洋服を着た木ノ葉が立っていた。木ノ葉の後ろには自前の改造巫女服を装備した千草が付き人のように立っている。

 

「遅れてごめんなぁー。ちょっと千草はんの準備に手間取ってもうて……」

 

 そう謝る木ノ葉と、こちらに向って無言で頭を下げる千草。……千草の、準備。歩き方も変だし、いつもより大きな胸といい、巫女服の下は荒縄か。大方千草が悪さでもしたんだろう。女2人でお仕置きプレイ中らしい。

 

「まあ、いいから。とりあえず椅子に座れ、木ノ葉」

 

 アルヴィンが席を立ち、代わりに木ノ葉に座らせる。千草は席にはつかず木ノ葉の後ろに控える。……一見、一人だけ立たされてかわいそうに見えるけど、ドMの千草にはご褒美です。だからトリプルT、席を譲らないでいいんだよ。プレイ中の千草はやさしくされるとプレイの邪魔されたと思って呪ってくるからさ。

 

 一度席を立って、私の席にアルヴィンを座らせる。そして座る椅子がなくなった私は、アルヴィンに抱えられて特等席である膝へ乗せられる。うむ、これでOK。

 

 私が特等席についたところで、木ノ葉がトリプルTへ向ってあいさつする。

 

「はじめまして。近衛木ノ葉っていいます」

 

「はっ、はじめまして! た、タカミチ・T・高畑です!」

 

 戸惑いながらもそう木ノ葉に自己紹介を返したトリプルTだったけど、

 

「近衛? 近衛ってまさか学園長の……」

 

「うん。娘やね。まあでも、結構昔に絶縁してるから麻帆良学園での権力はないでぇ」

 

 いつもの調子でニコニコ笑いながらつぶやく木ノ葉。トリプルTは顔をドンドン引きつらせて訊ねる。トリプルTはある一点を指差して――、

 

「し、失礼ですけど、そのお腹は……」

 

「ん~……気づいたん? まだ目立ってないはずやのに」

 

 トリプルTが口元をピクピクと引きつらせる。木ノ葉は赤くになる顔を隠すように両手で頬を挟み、恥ずかしそうに笑う。

 

 ――妊娠3ヶ月。

 

 相手は言わずと知れたアルヴィンだ。いつもかけてる避妊の魔法を木ノ葉が自分で解除して、逆に悪魔が相手でも妊娠しやすくなる術を新しく開発したらしい。その新術を使って木ノ葉は見事懐妊したそうだ。

 

 木ノ葉の懐妊が判明したときはアリカもエヴァも皆驚いたなぁ……。まぁニィは相変わらずで年の離れた異母姉妹プレイが出来るとか喜んでたけど。テオドラなんかは今のトリプルTみたいに驚きのあまり倒れて――、

 

 ん? 倒れて?

 

「タ、タカミチ!?」

 

 慌てて駆け寄るアリカ。おお、トリプルTが倒れてる。トリプルTの状態は……テオドラのときよりも酷いね。泡噴いてるよ。

 

「しっかりするのじゃ! コレ! タカミチっ!」

 

「近衛……近衛って……。ううぅ、ナギさんだけじゃなく……えい、詠春、さんまで……」

 

 ――それが、トリプルTの最後の言葉だった。

 

「ぼ、僕はもうどうすれば……」

 

 ……訂正。まだ生きてた。

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 突如倒れてしまったトリプルT。急いで病院へ運んで診てもらうと、原因は心労だったそうだ。

 

 胃に数箇所の穴に、鬱病の気配。一時期精神科に通院していた記録もあったそうだ。

 

「うう……ナギさん……。詠春さん……」

 

 病室のベッドの上でトリプルTが唸る。意識が回復してない今、トリプルTはずっと2人の名前と、『ガトウ』という人物の名前を呼んでいた。

 

 3人の名前を呼び続けるトリプルTを見て、アリカが心配そうにつぶやく。

 

「むぅ……。ナギと詠春を呼んだほうがいいのじゃろうか?」

 

「ナギと詠春か……。それが1番だとは思うが、ナギは魔法世界と旧世界を飛び回ってるし、詠春は病気なんだろ。この場につれてきてもあまり効果がなさそうじゃないか?」

 

「それは……そうじゃな。妾が生きておることを知ればタカミチどころではなくなりそうじゃし……。今妾たちの存在が広まるのはマズいのじゃ」

 

「まっ、連れて来るとしたら『紅き翼』のメンバーで居場所がわかりやすくて、この状況にも臨機応変に対応してくれそうなヤツだな。アリカが生きてることを知っても簡単にバラしそうにない信用できる人間……」

 

「ガトウじゃな」

 

「ああ、ガトウしかいないな」

 

 どうやらガトウという人を呼ぶことになったようだ。……というか、始めからその人の他に候補がいなさそう。

 

 アルヴィンは念話を使って学園長に連絡をとる。トリプルTの状況を話してガトウを呼んでつれてこいと言ってるみたい。

 

 念話を終えて、アルヴィンは私へと手を伸ばす。私はその手を掴んで隣に並ぶ。

 

「これでよし、と。じゃあ俺たちは帰るか。木ノ葉たちも待たせることだし」

 

「うむ。そうじゃな。またの、タカミチ」

 

「またね」

 

 トリプルTに声をかけてから3人で病室を出て行く。

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 ――京都某所にて。

 

「詠春。準備はできたか?」

 

「ああ。封印を解く呪文も、再封印の呪文も覚えた」

 

「……そうか」

 

「京に眠る伝説の大鬼神リョウメンスクナノカミ。その鬼神を倒し、再封印すれば……旧世界での俺の功績になる。この功績があれば俺は……」

 

「また婚約者として認めてもらう!」

 

「手伝ってもらって悪いな、ナギ」

 

「仲間だろ! 気にすんなよ、詠春!」

 

「それでも、ありがとう、ナギ」

 

「へへっ。じゃあ、ちょっくら大鬼神でも目覚めさせにいくとするか!」

 

「ああ!」

 

 こうして京に封じられていた大鬼神は目覚めることになり、目覚めてすぐに2人の英雄に再び再封印されることとなった。

 

 ちなみに、再封印後――。

 

 青山詠春は功績を得ることはなく、鬼神を復活させた犯罪者として即座に拘束され、もうひとりの実行犯ナギ・スプリングフィールドは現在も逃亡を続けている。

 

 なぜ2人の計画がすぐにバレてしまったのか?

 

 それは、鬼神が封印されてる神殿近くの監視カメラの映像によるものだった。

 

 大戦の英雄たちも魔法世界の魔法的なセキュリティには敏感でも、旧世界の機械的なセキュリティには鈍感だったようだ。監視カメラの映像に2人の姿が祭壇に完全武装で侵入する姿がバッチリと映っおり、祭壇に1番近い場所に存在する監視カメラには青山詠春が封印を解いて再封印するまでの姿が鮮明に映っていたのだ。

 

 それらの証拠を元に後日、青山詠春は無期限の自宅謹慎の処分を言い渡された。これは関西呪術協会の最終兵器である大鬼神を勝手に復活させたことに対し、軽すぎる処分であったが、魔法世界の英雄であることと大鬼神を再封印したほどの実力を考慮してである。

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 アルヴィンとアリカと一緒にトリプルTのお見舞いに行ったら、丁度トリプルTのお見舞いに来てた白スーツのフケ顔で『紅き翼』のメンバー、ガトウがいた。

 

 ガトウは私とアリカを見ても大して驚かず、むしろ納得したという様子でうなずいた。なんでもかなり前からアリカの生存と大方の居場所を知っていたそうだ。さすが『紅き翼』唯一の常識人にして諜報担当……なんだけど、『紅き翼』のメンバーでトリプルTとアルビレオ以外にはその情報を教えていないとか。

 

 今はアリカから魔法世界を救う方法を研究してることを聞いたり、代わりに現在の魔法世界の状況など『完全なる世界』関連のことを話したりと色々情報交換をしている。……はっきり言って私はその辺りには興味がないので聞き流してる。

 

 病院の売店で買ったお菓子を食べつつ、話が終わるのをアルヴィンと待つ。ちなみにトリプルTはベッドでおやすみ中だ。起すのも悪いので話し声も小さく静かにしてるが……実は結構前から起きてるよね、トリプルT?

 

「そういえば黒龍さま」

 

「ん?」

 

 ガトウがアルヴィンに話しかける。

 

「5年前に使ったあの魔法具は……まだあれから使われたりしてないのですか?」

 

「ん? ああ、アレか。あれ以来一度も使われてないぞ。まあ、2つの世界に散らばってるからなぁ。次に使われるのは何年後になるか不明だよ」

 

「そう、ですか……」

 

 残念そうなガトウ。だけど、そこまで落ち込んでない。むしろホッとしてる? 魔法世界を救う方法が見つかりそうだからかな?

 

「――む?」

 

 突然ガトウが別のところへ意識を向けた。あの感じからして電波を……魔力をキャッチしたんだろう。術の感じからして念話。送られてくる魔力の質から相手は学園長かな?

 

 ガトウは一言断わりを入れてから念話に応える。

 

「何かあったんですか、学園長」

 

『何かあったどころの話じゃないわい! 京で! 京都で詠春くんが……』

 

「詠春? 詠春がどうしたんですか?」

 

『逮捕されてしまったんじゃ!』

 

「逮捕って……何かあいつが仕出かしたんですか?」

 

『ナギと一緒に鬼神の封印を解いたらしいのじゃ! 幸い、すぐに再封印されたようなんじゃが……』

 

「鬼神の封印を解く? なんで詠春がそんなまねを……」

 

『そんなもんこっちが教えて欲しいわ! それに今はナギじゃ! 詠春くんはすで逮捕されておるようじゃが、ナギは未だ逃亡中らしいのじゃ! ガトウくん、ナギがこれ以上バカなまねをしでかす前に急ぎ京へ向ってくれんか?』

 

「……わかりました。ただちに京へ向います」

 

『これ以上東と西の関係が悪くなる前に、くれぐれも頼むぞい』

 

 その言葉を最後に念話が終わった。ガトウは一度大きく息を吐いたあと、こちらに頭を下げた。

 

「すみません。急用が出来たましたので、私はこれで失礼します」

 

「う、うむ……」

 

「では」

 

 もう一度アリカに頭を下げたあと急いで病室から出て行く。あとに残されたのは私たち3人とベッドの上のトリプルT(狸寝入り)。

 

 病室の窓から空を眺めながらアリカはつぶやく。

 

「人はそう変わらぬか……。ナギよ……」

 

「まあ、詠春のほうは変わったようだけど」

 

 とりあえず、今さっきベッドで意識を手放したトリプルTはこれからどうなるんだろう? 女子中で卒業コースかな?

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

 半年後――。

 

 関西呪術協会所属の呪術師、近衛木ノ葉は処女懐妊にて無事に女児を出産した。

 

 女児の名前は近衛木乃香。

 

 父親は不明。

 

 関西呪術協会では『黒龍の姫君』と呼ばれ、大切に育てられている。

 

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