「あう、あうう~」
一面絨毯が敷かれたリビングをはいはいしながらこちらに手を伸ばしてくる赤ん坊。私は赤ん坊の少し前に膝をついて、両手を広げる。
「ほら、こっちだよ、木乃香」
近衛木乃香。この赤ん坊の名前だ。半年前に生まれたばかりの木ノ葉の娘で、アルヴィンとの子供である。
木ノ葉譲りの艶やかな黒髪とやわらかい優しげな顔立ちをしていて、将来は木ノ葉そっくりの京都美人になることだろう。……性格のほうはあまり似て欲しくないけど。
「あすあ! あすあ!」
木乃香が私に抱きつきながら名前を呼ぶ。私は木乃香を抱きかかえながらつぶやく。
「あすあじゃなくて、アスナだよ。ア・ス・ナ」
「あすあ!」
「ア・ス・ナ」
「う~……あすあ!」
「…………」
「あすあ! あすあ!」
「……まあ今はそれでいっか」
ちゃんと名前を呼んでもらえないのは残念だけど。まだこの子は生まれて半年も経っていない赤ちゃんなんだし、仕方ない。家族の名前と顔を認識できてるだけでも十分だろう。
私は木乃香を抱きかかえ、おもちゃであやす。木乃香はガラガラとなるおもちゃがおかしのか、元気な笑い声を出しながら笑う。本当によく笑う子だ。こっちまでうれしくなる。
ガラガラで遊んでいると、ふと、木乃香が廊下へ視線を向ける。
誰かリビングに来たのかな? 私も視線を向けて見ると、そこにはエヴァが立っていた。……リビングと廊下の丁度境目に、巨人の星を目指す親子を様々な柱の陰に隠れるように。
エヴァに気づいた木乃香が両手を伸ばしながら叫ぶ。
「へばぁ! へばぁ!」
「う……」
木乃香に呼ばれて表情を強張らせるエヴァ。素直に出てくればいいのに、エヴァは躊躇うように視線を泳がせてる。一方の木乃香はというと、エヴァに両手を向けながらまだちゃんと発音できない名前を呼び続けていた。
…………。
「エヴァ。こっちにおいでよ。木乃香が呼んでるよ」
「む……だが、私は……」
「はぁ……。もう前みたいに突然泣くことは少なくなったから、大丈夫だって」
「……そ、そうか?」
「うん。だから早くおいでよ、このままじゃ木乃香が泣いちゃうよ」
「わ、わかった……」
しぶしぶ……ニヤけそうになる顔を何とか我慢しながらエヴァはこちらにやってくる。エヴァが私の前に膝をついて座ると、木乃香はうれしそうに両手を伸ばした。
「へばぁ! へばぁ!」
「お、おお……。よ、よしよし」
きゃいきゃいとうれしそうに笑う木乃香の頭を、エヴァはまるで割れ物を扱うように撫でた。頭を撫でられた木乃香はエヴァにヒマワリのような笑顔を向けて笑う。
「は、はは……。か、かわいいものだな、赤ん坊というのもは」
「そうだね」
うん、かわいい。赤ん坊もだけど、エヴァもかわいい。木乃香が生まれてまだ数週間ぐらいのときに一度抱っこして泣かれたからって遠慮して近づかなくなったエヴァもかわいいよ。抱っこしたいのに、かわいがりたいのに指咥えて、機嫌よく名前呼ばれたらニヤニヤ笑って。
「ほんと、かわいいよね」
「ああ、そうだなぁ。――ほら木乃香、ベロベロ~、ばぁ~」
「きゃははは! へばぁ! へばぁ!」
「あっはっはっは! 面白いか! ベロベロ~、ばぁ~」
……くっ、ま、マズい……私の腹筋が崩壊する。
◆
かなり危なかったけど、何とか無事だった。毎日のようにアリカに鍛えられてよかったと初めて思った。
今はリビングに敷いた赤ん坊用の布団で木乃香はお昼寝中。木乃香の隣にはエヴァが一緒になって眠っている。
……さてと、残った私はどうするかな?
木乃香が起きるまで時間はあるし。修行しようにもエヴァは寝てるし、アリカはアルヴィンと麻帆良学園に行ってて家にいない。ニィは家いるけど、まだ寝てる。夜遅くまで何かの編集をしてたらしい。……茶々ゼロは、訓練でも本気で襲い掛かってくるからなし。
うむむ……何もすることがない。
まだ赤ん坊である木乃香を見守るって仕事もあるにはあるけど、このリビングって常にモニタリングされてるんだよね。
だから木乃香に何かあったらすぐにわかるし、何かあっても数分かからずかけつけられるから、私がここにいて見守ってる意味があまりない。
まあ、木乃香やエヴァの寝顔を眺めてるだけでも楽しいけど。
することのない私がソファに座ってボーッとしてると、
「ただいまぁ~」
気の抜けるような、やわらかくてやさしげな声と共に木ノ葉が帰ってきた。廊下を通ってリビングへ木ノ葉がやってくる。
「おかえり、木ノ葉」
「ただいまぁ、アスナちゃん」
まだ寝てる2人を起さないよう小声でのやり取りだったけど、母親の声に反応したのか木乃香は目を覚ました。木ノ葉は布団の隣に腰を下ろし、目を擦っていた木乃香を抱きかかえる。
「ただいまぁ、木乃香」
「ん……おかあ、しゃん」
「ふふっ、よしよし」
木ノ葉は安心させるように木乃香の背中を撫でる。ゆっくりと、ゆりかごのように腕を揺らしながら木乃香に微笑みかける。
木ノ葉に抱かれ、甘えた声をだす木乃香。
「あら? ご飯が食べたいの?」
「んーっ、あー」
「はいはい、ちょっと待ってね」
木ノ葉はそう言ってソファに腰掛ける。……泣き声で赤ちゃんの気持ちが分かるってすごいよね。
「木ノ葉、服脱ぐまで私が木乃香を抱っこしてるから」
「うん、ありがとう」
一旦私が木乃香を預かる。
「もうすぐおっぱいもらえるからねー」
「うんしょ、と……」
帯を外して、和服の胸元を肌蹴させる木ノ葉。和服って胸だけ肌蹴させるのって結構難しいんだよね。全部脱ぐのは簡単だけど。
「ほな、アスナちゃん」
「ん」
木乃香を木ノ葉に渡す。木ノ葉は木乃香をしっかりと抱いて、口元におっぱいを差し出した。元気よく吸いつきながら木乃香はおっぱいを飲み始める。
木ノ葉はおっぱいを吸う木乃香を愛おしそうに眺めながら微笑む。やわらかい空気が部屋に広がっていく。
……いつみてもいいなぁ。なんだか安心する。
「そういえば、木ノ葉」
「んー、なんやぁ?」
「悪魔にならないってホントなの?」
「うん、そうやでぇー」
なんでもないように、木ノ葉はうなずいた。私は木ノ葉を正面から見ながら言う。
「でも、悪魔にならないとすぐに死んじゃうんだよ?」
人間の肉体は脆いし、人間の寿命は悪魔と比べるとものすごく短い。今はそうでもなくても、10年、20年と経てば老いもやってくるし、
「木乃香はハーフなんだよ」
悪魔と人間のハーフ。生まれる前からかなり高度な術を使い、人間とあまり変わらない成長速度にしてるけど、いずれ成長も止まり、果てしなく長い年月を生きることになる存在なのだ。
長くて100年ほどしか生きられない人間のままじゃ、木ノ葉は木乃香と一緒にいられない。
悪魔であるアルヴィンの眷属になることで簡単に悪魔に転生できるなら、そうするべきだと私は考えてるし、私も将来悪魔に転生して皆とずっと一緒にいたいと思っている。
けど、木ノ葉は悪魔になりたくないと思っている。
木乃香の頭を撫でながら木ノ葉はうなずいた。
「ちゃんと全部わかっとるよ。人間のままじゃ悪魔と一緒になれんことも。例え一緒になれても、少しの時間しか共有できんことも。……人間よりも寿命の長いこの子と一緒にいてあげれる時間がものすごく短こうなるのもわかっとる」
「だったら……」
「――でもな、ウチは最後まで人間のままでいたいんよ」
「人間のまま……」
人間のままでいたいという気持ちは、はっきり言って私にはわからない。元々私は成長を薬で停止させられていたし、この姿のまま100年以上生きてるから、今さら悪魔になったとしても何も変わらない。むしろ、アルヴィンたちを一緒にいられる時間が増えるとうれしく思う。
授乳が終わった木乃香の背中をトントンと叩き、ゲップをさせる。すぐにまた眠り始めた木乃香をあやしながら木ノ葉はつぶやく。
「それに、ウチは西の長やからな。――西の呪術協会をまとめるモノが人間じゃなかったら下もまとめられと思うし、人外になれば長になれるって勘違いさせるのもあかんやろ?」
「長なんか、ならなかったらよかったのに……」
出産後数ヶ月で西の長になってしまった木ノ葉。長の仕事があるため、木ノ葉は長くこの家にいられない。京都にある木ノ葉の家に転移門を設置して、ドアを開ける感覚でこちらに行き来できるが、それでも長い時間京都から出ることはできないのだ。今も何かあったときのために、京都側に側近である千草が残っている。
私の言葉に木ノ葉困ったように苦笑する。
「まあ、ウチも進んでなろうとは思っとらんかったけどなぁ。他になれそうな人間もおらんかったし。元老の爺ちゃんや婆ちゃんにアルヴィンはんのことや木乃香のことで色々わがまま聞いてもらったりお世話になっとったからな」
「それは……聞いてるよ」
戸籍のこととか、木乃香の父親が誰かわからなくしたり、色々便宜を図ってもらってることも知ってる。西の呪術協会の元老してるお爺さんやお婆さんにかわいがられてることも知ってる。
「――けど、木ノ葉と別れたくないよ」
「ふふっ、ありがとうな、アスナちゃん」
微笑みながら木ノ葉が頭を撫でてくる。いつものように。木ノ葉はニコニコと笑う。
やっぱり、私は木ノ葉とずっと一緒にいたいよ。
◆
木乃香が生まれ、早6年。赤ちゃんだった木乃香はすくすくと元気よく育ち、小学生になっていた。
少し前まではいはいで動き回っていたのに、今は嘘みたいに2本の足で走り回る。
舌足らずでちゃっと名前が呼べなかったのに、今はハッキリと私の名前を呼んでくれる。
おっぱいを卒業して、自分でフォークや箸を持ってパクパクとご飯を食べている。
少し前までオシメを変えたりしてたのに、今は自分でトイレに行ける。
書けなかった文字も、今じゃ簡単な漢字ぐらいなら書けるようになった。
数えられなかった数も、今で足し算や引き算ができるようになった。
幼稚園に入るまで我慢の苦手な駄々っ子だったのに、今では我慢することも覚えてる。
木乃香は色んなことを毎日感じて吸収し、驚くような速度で成長していく。
変化の遅い私たちに大きな驚きと変化をくれる。
本当に、子供というものはいいものだ。
「アスナ~、アスナ~。どうしたん?」
「ん? ああ、うん。別になんでもないよ、木乃香」
「そうなん? けど、さっきから全然給食の食べてないで?」
「ちょっと考え事してただけだよ。給食もちゃんと食べるから」
そう言って給食を食べ始める。木乃香はしばらく箸を咥えながらこっちを見ていたけど、本当になんでもないとわかって自分の給食を食べ始めた。
お昼休ご飯の時間はまだまだある。木乃香を眺めながらゆっくり食べよう。
「アスナさん! よそ見しながら食べるのは行儀が悪いですよ!」
「……いいんちょも、食事中に大声だすのは行儀悪い……」
「うっ……それは失礼しましたわ。ですが、よそ見しながら食べるのは行儀が悪いですし、危ないんですよ」
「はいはい」
「はい、は1回」
ビシッとこちらに指を突きつけてくるのは木乃香と同い年……同級生のいいんちょ。他の小学生たちより知的で物心もついてるようだけど、いかんせん硬い。
あと、注意される私の身にもなってほしい。知らないと思うし、わからないと思うけど、私は年上なのだ。……同じ小学生だけど。
はぁ……。
何も魔法薬の効果が丁度木乃香の小学校への入学と同じ時期に解けたからって、私も一緒に小学校に入学させることはないと思うんだけどなぁ……。学力も一応大学卒業レベルはあるんだし。
アルヴィンやアリカ、木ノ葉は家族以外の集団生活に慣れるためとか、友達を作れるかも、とか……。木乃香からも一緒に行こうって誘われて入学したけど、想像以上に周りが子供なんだよね。
ちなみに通っている学校は、麻帆良学園の敷地に存在する小学校。
『立派な魔法使い』を目指すの巣窟であり、私たちにとってある意味敵地になるんだけど、木ノ葉が住んでる京都の山奥には学校なんてないし、麻帆良学園の表向きが学校と言う事もあって最高の教育機関なんだよね。
呪術者として木乃香を育てるとしたら、私たちの教育だけで十分なんだけど。やっぱり様々なことを学んで好きなように生きて欲しいからって、この学校に入れたのだ。
だけど、この学校……麻帆良学園全域に張ってある意識を逸らす結界のせいかも知れないけど、テレビで見る他の地域の子供と麻帆良学園に通う子供ではかなり、違う気がするんだよね。変に無邪気すぎるっていうか……。
唯一、別の意味で他の子供ちは違う、妙に大人っぽいいいんちょとは友達になれそうだけど……。
「あら? なんですの、アスナさん。私の顔に何かついてますか?」
「んー、別に」
そもそも私は友達の作り方が知らなかったりする。
まあずっと家族とばかり過ごしてたし、周りは大人だらけで、子供に見えても年寄りだったりしたからなぁ。友達っていう関係は今までいなかったんじゃないかな?
木乃香は……木乃香からは家族であり、年が近く見えることもあって親友っぽく思われてるようだけど。私は生まれるときから木乃香の面倒を見たりしてるので友達というより、年の離れた妹だったりと家族として思ってる。
ただの友達と呼べる存在は、まだいない。
◆
放課後。真っ赤なランドセルを背中にからい、私と木乃香はある場所へとやって来ていた。
麻帆良学園の女子校エリアに程近い、表通りに建っている一件の喫茶店。店の名前は『龍の隠れ家』といって、アルヴィンがやってるお店だ。名前の由来は、どこかで見たらしい『○○の隠れ家』という喫茶店から取ったらしい。
6年ほど前、頻繁に麻帆良散策してるから気になっていたけど、まさか店を開くなんて。……まあ店を始めた理由は、木乃香の父親が無職だと体裁が悪いとかだったけど。
店の扉を開けて、なかへ入る。入店を知らせるためにドアに付けられた鈴が心地よい音を響かせる。
私たちに気づいたアルヴィンがカウンター席の内側からやって来ると、木乃香は元気よく走り寄り、足元に抱きついた。
「ただいまぁー、お父さま」
「おかえり、木乃香」
アルヴィンはよしよしと木乃香の頭を撫でる。木乃香は頭を撫でられ、気持ち良さそうに目を細めた。
「おかえり、アスナ」
「ん。ただいま」
私もアルヴィンと挨拶を交わし、ランドセルを置いてカウンター席に座る。私が席に座ると、カウンター席の内側に設置されたドアからアリカが現れた。
「おかえり、アスナ、木乃香」
「ただいま、アリカ」
「ただいまぁー」
「いまおやつをもってくるからの」
「うん」
「はーい!」
返事を返した私たちにアリカはニッコリと微笑み、おやつを用意してくれる。今日のおやつは苺のショートケーキに甘さ控えめのミルクティーだった。
木乃香と隣同士に並んでおやつを食べ始める。……うむ、美味しい。さすがアルヴィン。戯れにだけど、何百年と修行してない。
「ほら、口にクリームがついておるぞ」
「ん~……」
「よし、取れたぞ、木乃香」
「ありがとぉ!」
それにメイド服を着用したアリカも、なかなか……。清楚や清純さを全面に出した露出の少ない本場のメイド服を、エヴァとニィが主導になってかわいらしくリメイクしたもので、アリカの高貴な立ち振る舞いとよく合ってる。いつもはストレートにしてる髪をアップにしてまとめてるのも高得点だろう。実際、かなり人気があるんだよね。男の人だけじゃなく、女の人にも。
私と木乃香がケーキを食べていると、カウンターの内側にあるドアから、もうひとりのメイドが登場した。
ふんわりカールした金髪のメガネの女の人で、すっごい美人の巨乳。
「こんにちは、しずなさん」
「こんにちはぁー」
「はい、こんにちは」
メイドはニッコリ笑顔で私たちに挨拶を返す。彼女の名前は、源 しずな。麻帆良の学園都市内に存在する女子大に通う学生で、アルバイトしにきてるメイド2号。ちなみに、麻帆良学園所属の魔法使いで、2年ほど前まで女子高生をしていたアリカと3年間ずっと同じクラスだった友達でもある。
まあ、3年間同じクラスだったのは作為的なもので、元々しずなは学園長にそれとなく遠巻きからでもアリカの様子を観察して欲しいと頼まれた、完全に魔法使い側の人間だったけどね。なんでも1,2年ほど過ごしていくうちに自然と友達になったらしい。
友達になってからもアリカが魔法世界の元女王であることや、アリカが住んでる家に麻帆良学園都市の影の支配者が住んでることを知らされてなかったしずなは、ほいほい誘われるままに家に遊びに来て……。
1回、2回、3回と遊びに来る回数が増えていって……。
――アルヴィンに食われた。
小学校以降、女子校通い+初めて接する家族や教師以外の男性+保有魔力も多く、ルックスもいいし、金持ちでもある。
さらに、女の扱いに慣れてて来るもの拒まずだ。
アルヴィンと知り合って1年ほどで、ついにしずなからアプローチをかけて、そのまま一気においしくいただかれたのだ。
しずなを警戒していたアリカがエヴァと駆けつけた頃にはベッドの上で艶々してたらしい。
まっ、それから激怒のアリカと呆れのエヴァとか色々あって、しずなはセフレの位置に収まったそうだ。たまに家に泊まりに来て翌朝艶々して帰っていくんだよね。
ショートケーキの最後の一口を食べて、ミルクティーを飲みながらしずなを見る。
いつみても見事な巨乳だ。将来私もあれぐらい育って欲しいけど、無理だろうなぁ。
「どうしたの、アスナちゃん?」
「んー……なんでもないよ」
「そ、そう?」
「…………」
しずなは恥ずかしそうに両手で胸を隠す。――だけど、全然隠れてない。むしろ手の平から溢れてる部分が胸の大きさを強調させている。
試しに私もしずなと同じように胸の前に手を当ててみる。……こちらは完全に隠れてしまう。
「……羨ましい」
「えっと、アスナちゃん?」
「……羨ましい」
「そ、その……あまり大きくてもいいことないわよ?」
「……そう言えるだけもってるからこそ、そう言えるんだよ」
持っている者は持たざる者の気持ちを本当にわかってない。
「エヴァを見てみなよ。昔からずっとツルペタなんだよ。通販でバストアップの器具を買って頑張ってるのにダブルA止まりで、ブラジャーを一度も付けたことないんだよ」
「そ、それは……。ごめんなさい、私が軽率だったわ」
「わかってくれればいいよ。――あと、しずなさんは絶対にエヴァの前では胸の話は禁止だからね」
「ええ、気をつけるわ。私も捥がれたくはないから」
「ん」
本当に気をつけてね。エヴァは巨乳の持ち主が基本嫌いだから。
「まっ、成長薬が完成すればエヴァの悩みもなくなるけどな」
アルヴィンが笑いながらつぶやくけど……。
「でもそれってまだ5、6年は完成しないんだよね?」
「なにせ真祖の吸血鬼に効く薬だからなぁ。時間はそれなりにかかるさ」
アルヴィンの返答に、私はしずなの胸を眺めながらつぶやく。
「それまでエヴァは巨乳を憎み続けるのか……」
「……私の胸を見ながら不吉なことをつぶやかないで欲しいのだけど、アスナちゃん」